2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第322話 頭脳派の者達

 

「ゴフッ……」

「おおよしよし。また赤い液体を吐いたのか?仕方ない、枯らしてやろう。動いたらお前のその顔面も乾くと思え」

「……っ」

 

 どえらい物騒な脅しをするんじゃねぇよこの野郎……。

 

 リィンです。私は相変わらずクロさんの膝の上で1ミリも動けない状態にいます。

 

「フッフッフッ、楽しそうにしてるな、リィンちゃん?」

「これのどこが楽しそうです!?顔面1回くり抜くすてくれませぬ!?」

「おーおー、物騒だ」

 

 胃が痛くて仕方ないし、頭もクラクラするし気持ち悪くて吐きそうだ。

 

 

「──トマトばっか食わせやがるすて!!!!!」

 

 

 拷問を受けてます。誰か助けて!

 

「俺と、お前の、子供が作ったやつだ、たーんと食えよ」

「それはイル!クロさんの子じゃ無きです!誤解ぞする言い方辞めるすて!!!!!」

 

 その話題は他の誰かに聞かれたらどうするんだよって話題なので本当にやめてください。

 

 この二人、ご飯は出してくれるのだけど……。

 

『クーロちゃん、せっかく凶悪な敵を押さえ込んでくれてるんだ、好物でも用意してあげなきゃなぁ?』

『くっはっはっ、ならばトマトを頂こう。俺の好物だ』

『ちょうどリィンちゃんの子にもらったトマトがあったんだったなぁ。それでいいだろう?』

『おぉ、ならリィンにもやらねぇと、悲しむな』

 

 いじめっ子2人のやり取りを要約するとこんな感じ。ドレスローザのことも気になるけど、私の眼前に迫ってくる赤い物体のダメージが大きすぎてもう何も出来ない。トマト、トマトの呪い、うっ、吐きそう。

 

「食え」

 

 圧。

 食えないなら食えなくてもいいよ、じゃなくて、『食わなきゃどうなるか分かってんだろうな?』の圧がすごい。私が数秒躊躇っても口の中に無理矢理入れて口を押さえてくるので、本当に飲み込まなきゃダメなのが辛い。

 

「ぅぅうううう……………こんなのってないよぉ……」

「拷問してないだけありがたく思えよ?」

「!!??これが拷問では無きと!!??」

 

 今この世で1番残酷で最悪な拷問受けてるんだけど。

 

 

「…………。」

 

 

 ドフィさんは私の目の前の机に腰掛け、手配書をいくつか取り出した。

 

「お前の手札は、麦わらの一味。それから、ロー。んで、海軍」

 

 一味の手配書とローさんの手配書だ。ご丁寧に、ローさんのクルーの手配書まで用意してある。

 

「海軍は、藤虎。中将クラスが数人。ただ、動きが妙だ。俺が『女狐の味方ではない』と認識してはいても『海軍の敵』には踏み込めてない。あくまでも、この島に来る海賊相手に警戒してます、といった様子を崩さない」

 

 ドフィさんの推理が鋭い。

 明らかに私の手の内を探ろうとしてきている。

 

「あとよ、リィンちゃん。ひょっとして……正体、藤虎に言ってねぇな?」

「…っ!!」

 

 は、やいな。

 イッショウさん達新米大将にはまだ招待を伝えていない。混乱を避けるためというのが1点。それから……。

 

「──俺の脅しを効かないようにする、って目的があるな?」

「……。」

「俺がリィンちゃんに『バラしてもいいのか』と言ったって、あの場にはリィンちゃんが女狐だと知る将校はたんといる。フォローができる状態だ。しかし、俺が藤虎()()に『リィンちゃんを殺してもいいのか』と聞いたとて。脅しにはならないわけだ」

 

 なぜなら現場の最高指揮官が知らないから。知らないものに、脅そうとしたって意味は無い。

 

「更に。リィンちゃんにはいくつか手札がまだある」

 

 

 更に広げられたのは四皇の手配書。

 

「カイドウ……これは俺の取引相手だからこそ、俺の弱点になりうる。俺の不手際を潰そうとしてくる」

「ビッグ・マム……ここに関しての繋がりは分からないが、お前ならどうせ、やる」

「赤髪……昔からの知り合いで、赤髪の娘もこの島に居る」

「白ひげ……言うまでもなく、お前と繋がりの深い連中。パンクハザードで隊長の目撃もある」

 

 ドフィさんは追加でいくつも手配書を取り出す。

 

「スペード海賊団。お前の兄だ。麦わらに続き、お前のためならよろこんで巻き込まれる」

 

 そこでドフィさんは、ロジャーの手配書を取り出した。ロジャー、の手配書の金額、相変わらずやばいな。

 

 

「────幻のエース」

「っ!」

 

 私は予想外の名前が出たことに驚き、顔を上げる寸前にグッと我慢した。

 

「えっと……エース?」

 

 二つ名が変わったのかなー?と知らないフリをして見れば、その様子を見てドフィさんは片眉を歪めた。

 

 ドキリと心臓がはねる。

 

「……やっぱりな」

 

 まずい、まずいまずいまずい。バレた?いやバレようもないはず。まさか、いや、ドフィさんですら無理なはずなのに。

 

 胃が、とんでもない勢いキリキリし始めた。

 

 冷や汗が止まらず、体がこわばる。

 知らないふりをしなければならないのに、椅子になっているクロさんにはその動揺に気付いてしまっているだろう。

 

「シラヌイ・カナエの兄、もしくは弟。昔の海賊に詳しいやつはそれなりに居るんだよ」

「……っ、は」

 

 バレて、ない。

 ここの安堵は悟られたらまずい。私は物理的に顔を下げた。せめて表情だけでは分からないように。

 

「お前ならその男でさえ使ってくる。なぁリィンちゃん、ダグラス・バレットを抑え込む抑止力はそいつだろ?」

 

 そこはバレてるんかい……。

 クソ、クソクソ、本当にコイツ……!

 

「だから、リィンちゃんは暴走しがちなダグラス・バレットを操縦出来る。怖いなぁ、お前ってやつは」

「……。」

 

 心臓がバクバクと揺れ動く。

 

「リィンちゃんの狙いはスマイルの工場。シーザーを誘拐した時点で、まぁローの巻き込まれだろうが、カイドウと俺をぶつけるためにシーザーと工場の両方を潰す」

 

 ドフィさんはグイッと無理矢理私の顔を上げた。

 

「──と、見せかけた罠。もちろんそうなりゃ俺はカイドウ相手にタダじゃ済まないが」

「それが罠だって証拠はあるのか?」

「当然だな。と言っても状況証拠だけだが。……リィンちゃんの打つ手がぬるい。これに尽きる」

「へ?」

 

 私は予想外の推理に素っ頓狂な声を上げた。

 

「リィンちゃんは、戦闘面ではクソだが」

「ねぇ」

「対人スキルに関してはトップレベル。そのリィンちゃんが工場に関して何も動いてないのに違和感がある」

 

 ドフィさんは2つ指を出した。

 

「パンクハザードにて。リィンちゃんはローだけを動かしていた。破壊は全てローの仕業。対するリィンちゃんはシーザーと共にいるだけ」

「そりゃ、あの、捕まるすてますたし」

「今回の工場も。人員の動かし方が弱い。作戦の本筋にする割には、人手を分散させすぎている」

 

 私はふと違和感に気付いた。

 

「ドフィさん……、どこまで把握すてるです」

 

 あまりにも、戦力だとか、そういう所を把握しすぎている。

 

「……リィンちゃんがこの島を通る、と分かっていて、対策を取らねぇ方がおかしいだろ?こちらから喧嘩を売らなければリィンちゃんは買わないと思っていたが」

「確かに。俺も正規のルートで、リィンが来るとなれば丁重に持てなしてたな」

 

 私は背後のクロさんを見上げた。振り返るより見上げる方が顔を見るのに早い。

 

「……具体的には?」

「国をあげた歓迎。それから麦わらの一味を招待して、眠らせて沈めていた」

「ぶっっっっそう!!!!!」

 

 というかそれウイスキーピークであった賞金稼ぎのやり方じゃん!!!

 100人くらいで入りたての賞金首で資金集めしていたやつ。

 

「…………非効率だよなぁ」

「あ?何が?」

「ウイスキーピーク。100人の人数が圧倒的に赤字ですし、各海からの賞金首なんて雀の涙でしょう?それなら悪名ぞわざと高めさせ、不当に賞金を吊り上げるすたあと討伐すた方が楽に高い金額を」

「どっちが物騒だよ」

 

 バギーみたいに勢いと運だけの海賊をわざと多めに作り出して、七武海の立場を利用して賞金首の金額を高め、それから息のかかった三つ巴みたいな賞金稼ぎグループで仕留める。

 こっちの方が手間はかかるけど、利益率は高いと思うんだ。

 

 最終的に悪名高い海賊が海から消えるので、評判も上がるだろう。

 

「悪巧みすると右に出るやつが居ないな……。もし麦わらの一味が七武海になったら正直めちゃくちゃ怖いな」

 

 それはもう本格的に海軍の傀儡ですね。

 

 

「雑談はさておき。俺はリィンちゃんの手の内で1個気になる箇所があるんだよな」

「答えぬですけど、聞くだけ無料ですぞ」

 

「グリーンビットの小人たちと麦わらの一味が何故繋がっている?お前はこの国に来たのは片手で数えられるほど。繋がりを作り出すような時間は、なかったはずだ」

 

 私は笑顔を浮かべた。

 

「……。逆に、何故だと思うです?私はどうやって小人達にコンタクトぞ取るすた?」

 

 ドフィさんはその言葉に、すこぶる嫌そうな顔をした。

 

「嫌な回答だな」

「お褒めにお預かりお光栄でおございますわ」

 

 ドフィさんの脳内には2個、選択肢が産まれた。

 

 ・私が小人達とコンタクトを取り操作している

 ・麦わらの一味の起こした偶然に乗っかって知ったかぶりをしている

 

 前半だけならまだ良かった。私の思考回路を探るだけでいいのだから。

 しかし後半が選択肢に出てきてしまえば、それは時の運であり私を探ってもヘンテコな着地をしてしまう。

 

 解決策はひとつ。

 真っ向から力づくで小人を踏みにじり、2つの選択肢がどちらになろうと意味が無いようにする。

 

 しかしそうは簡単に出来ないのが小人の特性だろう。

 

「むしろ、私はずっと聞くすたかったのですが。どうしてカナエさんのチュウチュウの実程度でここまでの集客が出来たです?」

 

 コロシアムで多くのならず者が集められているのは知っていたけれど、所詮ほぼ無名の悪魔の実。

 

 そこだけは心底謎だった。

 

「簡単な話だ。……ベラミー、という名前を貸しただけの海賊がある日空島から黄金に輝く柱を持って帰った」

「……空島に?」

「あぁ。約3000トン。その柱は額にすれば30兆はくだらねぇ。もちろん一気に流通に出せば額は崩れるがな」

 

 まさか、黄金の鐘の柱のサイズ感……?

 どうやって持ち帰ったんだ、そのレベル。

 

 重さを軽減させたり圧縮する悪魔の実が無いとかなりキツイ。

 

 しかも30兆……国ひとつ献上したようなレベル。

 

「10分の1であっても……人を集めるには上等すぎる。それにシラヌイ・カナエのネームバリューは低いが、ロジャー海賊団のクルーってだけで大きい」

 

 ドフィさんはにこりと微笑んだ。

 

「だが安心しろ、悪魔の実をくれてやるつもりは、一切ねぇよ。あそこまで便利な悪魔の実もそうそう無い」

「……なんです?」

「吸収能力。戦闘で使ってもあれは地味だ。シラヌイ・カナエの使い方は、下手だったろうよ」

 

 脳内では悪用方法が沢山浮かんでいるのだろう。

 

「強い悪魔の実は必要ない。欲しいのは、俺の役に立つ能力だ。……情報の吸収、感情の吸収、他にも確率や時間、意識。寿命や若さと言ったあいまいな部分を吸収していたシラヌイ・カナエの能力。国として活用するに、使い勝手がよすぎる」

 

 統治向けって訳か……。本当に罪悪。何が最悪つて、思考回路。

 

「──それから、作戦を奪える」

 

 私の脳にドフィさんは手を当てた。

 

「お前が、シュガーの能力を知らないはずがない。お前達は必ずシュガーを狙う。さぁ、どう狙う?どう動かす?いや、お前はここにいる。チュウチュウの能力がありゃ、ヴァイオレットの能力を使わずとも奪える。……正解に近い憶測だがな」

 

 私もドフィさんが提示した使い方は出来ると考察している。

 そうだよ。カナエだからこそ、あの悪魔の実は平和に使われた。

 

 科学と、耐久の高い肉体と、高い頭脳を持ってすれば、吸収能力と噛み合えばとんでもない結果を生み出しかねない。

 

 例えば私が食べれば、間違いなく他者の毒は無限に吸い取れるだろう。それから運も吸い取れる。ベガパンクの力を借りれば、広範囲に吸収した後排出出来るような装備を作れるかもしれない。

 

「それは、すこぶる厄介ですぞね……」

「だろう?」

 

 

 これは、オペオペの実の能力も狙われているんだろうな。吸収と治療系は相性がいい。

 

 

 

「戦術を立てる時は、相手の戦術を計算に含める。残念ながらリィンちゃんの居ない麦わらの一味で警戒すべきはニコ・ロビン程度。リィンちゃんならどう動いた?リィンちゃんの立場ならどの手札を切れる?」

 

「……、ドフィさん私のこと大好きですぞねぇ?」

 

「あぁ。好きだよ、玩具(リィン)ちゃん?」

 

 寒気が走った。

 ドフィさんは楽しそうな目をしているが、その目の奥には理性が宿っており、今、この時も、ひたすらに頭を回転させて『どうすれば私を敗北に追い込めるか』を考えているのだろう。

 

「リィンちゃん、楽しいなぁ?」

 

 喉の奥が締め付けられる気分だ。

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

 

「──いまなら、ドフラミンゴは堕天使を相手にしてるからシーザーを奪還できるわ」

「それはそれで大いに問題がある」

 

 サンジとヴァイオレットが隠し通路で話し合っていた。

 

「俺しかシーザーを奪い返せる状況じゃ無いのは分かっているが、ここまで七武海が多いとジンベエの力を借りるべきだな」

「お仲間の?」

「あぁ」

「……堕天使は今のところ、無理矢理トマトを食べさせられている程度で拷問などは受けてないみたい。私は見るだけだから会話は分からないのだけど」

「それだけ分かれば上等だよ。ありがとうな、ヴァイオレットちゃん」

 

 サンジはふと、気になっていたことを聞いた。

 

「どうしてヴァイオレッタちゃんはあの洞窟で待っていたんだ?」

 

 その質問にヴァイオレットは少し躊躇った後、簡単に答えた。

 

「一方的に見たの。私の能力で、今なおドフラミンゴに抗おうとする彼らの姿を」

 

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