2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第323話 忘れ去られた玩具

 

『熊の玩具さん曰く、ここの近くの公園に行けば、いいことがあるかもねって言ってたよ』

 

 ウタの軽やかな声が、ふと脳裏をよぎる。

 その言葉を足がかりに、ゾロ、ビビ、ロビンは草むらの合間から漏れる、小さくてせわしない声に導かれて歩いた。

 

「こっちれす」

「違う違う、もうちょっと右」

「左じゃないれすか?」

「大人間から見て後ろれす!」

 

 小さな掛け合いは子供のように無邪気だが、三人が従うと、木の根元がさっと開き、風が抜ける。ぽかりと空いた穴は薄暗い洞穴のようだ。

 まるで滑り台のように滑り落ち、地下に誘われる。

 

 

 暗がりを抜けると、目の前に広がっていたのは想像よりずっと大きな空間だった。

 普通の人間の身長の五倍はあろうかという穴、いや穴というには広い空間がそこにはあった。

 

「来なされたれすか。私はガンチョ。この国で妖精と呼ばれるトンタッタ族の国王なのれす」

「私はコアラ。久しぶり、ロビンさん」

「コアラ……!」

 

 導いてくれたであろう小人たちの中から、めかしこんだした小柄の人物(?)が頭を下げる。

 隣には見覚えのある顔、革命軍のコアラがいてロビンは嬉しそうに顔に笑顔を浮かべた。

 

「コアラさん!」

「ビビ王女もお久しぶりです!」

 

 コアラとハックはアラバスタにて共闘した仲、かすみがかったあいまいな記憶の中でも、麦わらの一味の三人にとって懐かしい顔だということは分かった。

 

 更に言うならば、ロビンの二年間の滞在場所は革命軍だった。

 

「そっか、この国、革命軍が動いていたのね」

「……えっと、それが」

 

 コアラは苦笑いを浮かべた。

 

「実はアラバスタに運ばれていた武器から辿ってドレスローザには辿り着いていたの。ここの港から出るであろう武器が世界中の戦争を助長してるからって。ただ、記録でしかなくて、今回は視察としてやってきたの」

「視察……?」

「革命軍は何度も人を送り込んで居るんだけど、どこから情報を得たのか、抹消されてて。だから今回は私とハック君で来たの」

「間違いなく、玩具にされているわね」

「データだけは確認したよ」

 

 コアラはやれやれと言いたげに肩を竦めた。

 革命軍がドレスローザに対して動いていた最大の責任者であり、交渉を行っていた人物。それは──誰の記憶にも無い。

 

「じゃあここからは私が説明するね。トンタッタ族はこの国のグリーンビットっていう小さな島を住処としているこの国の妖精なんだけど、どうやらおもちゃと結託してこの国に反乱を企んでたみたいなの」

 

 コアラが港で探っている最中、トンタッタ族からのコンタクトがあり交流を得たのだ。

 

「我々は、二年前から計画を立てているのれす。片足の兵隊の玩具、我々は彼を隊長と呼んでいるのれすが、隊長と麦わらの一味でドフラミンゴを討伐してもらうのが、我々の計画なのれすよ」

「……。おかしいわ。二年前から、麦わらの一味の名前が貴方達の所に上がっていたの?」

 

 特に、二年前といえば麦わらの一味が完全崩壊し、消息をたったタイミング。

 

 ロビンの脳裏に嫌な予感と、姿の見えない恐怖が浮かぶ。

 それは玩具のせいなのか。なんなのか。

 

 他のメンバーの行動が分からない以上、結論を出すには早いがロビンにとってあまりにも『出来すぎている』のだ。現地の情報、戦力、さらにはドフラミンゴの部下の情報まで、運良く全てが運んでいる。偶然と豪運で乗り切る船長がいる一味にいる以上、不思議な事では無いかもしれないが。

 

「で、結局俺ァ何をすればいいんだ?あっちこっちで色々あるせいで、何をすればいいのか検討がつかねぇんだが」

 

「であれば、我々の作戦に乗っていただきたいれす」

 

 ガンチョがぺこりと頭を下げる。

 

「作戦とは?」

「玩具を解放し、人に戻しこの国をあるべき姿へ戻す。もちろんパニックに陥るれしょうが……。大まかな作戦はそちられす」

 

「合理的ね」

「ただ、そのためにも陽動が必要だよね……。多分、いちばん堅いだろうし」

 

 ロビンとコアラが考え込んだ時、レオと呼ばれるトンタッタ族が声を上げた。

 

「──そっちは必要ないれすよ!」

 

 疑問を浮かべたのは全員だ。しかしトンタッタ族だけはわかっている何かがあるらしい。

 

「巻き込んで申し訳ないのれす。もちろん主な作戦は玩具の解放とパニックなのですが、我々がすべき事はそれとは別にあるのれす」

「それって?」

 

「リク王と、我が娘マンシェリー姫、それから新しい玩具の救出れす」

 

 

 

 ==========

 

 

 

「チッ! ゲッコー・モリアを探せ!」

 

 ロー達は影で取られたトンタッタ族。人質のせいで工場を破壊出来なくなっていた。

 

「七武海と七武海が手を組むなんざ、クレイジーじゃねぇか!スーパー!最悪だぜ!」

 

 ドタバタと男共は撤退していく。

 玩具の兵隊も想定外の事態に内心イラついていた。

 

「トンタッタ族は、貴重な戦力にもなりうる。それを失うのもまずいし、私は彼らを助けたい!」

「それはわかってんだよ!」

 

 全員がどうするか悩ましげな悲鳴を漏らす。

 

「な、なぁロー。お前確かローになんか指示を貰ってたよな?あれ、どうなんだ?」

「俺の指示は『合図』があり次第だ。妹屋と連絡が取れない以上、妹屋からの合図が使い物にならない」

 

 絶望的だ。

 他の状況が分からないが、ロー達は運悪く全ての作戦や計画を潰されている。

 

 最悪、工場を破壊しなくても構わないとは思っている。なぜなら、ローの目的はカイドウとドフラミンゴをぶつけることではなく、自らの手でドフラミンゴを終わらせることだからだ。

 

「一体どうすれば──」

 

「──教えてやろうか?」

 

 ローの横からにゅっとピエロの仮面が生えた。

 

「!!!????」

「お、シーナ」

「あんちゃんどこいってたんだ?」

「ちょーっと色々な。巻きで。んで、これからどうするべきか分かんなくなってんだろ?」

 

 シーナはぴょこぴょこと音のなる靴を履いたまま、ローの肩に手を置いた。

 

「ちょうど良かった。ピエロ殿。侍を見なかったか?」

「カン十郎という!記憶があるゆえ、玩具にされてはないことは分かるのだが」

「あぁ、そいつならゴミ捨て場だな。……おっと、いけね。キャラ設定、忘れてたわ。んんっ……わたくしの情報によりますと〜、スクラップ場を最後に目撃情報が途絶えておりま〜す☆」

 

 あからさまな芝居に、ウソップがずっこけた。

 

 今更な猫被りならぬピエロかぶりにローは軽蔑の眼差しを向けていた。恩人とも知らずに。

 

「あいわかった!すまぬ、拙者は別行動しても良いだろうか!」

「あ、あぁ」

「感謝する!カン十郎を救い次第、すぐにお主らと合流しよう」

 

 錦えもんは情報を聞いた途端即座に離脱した。

 止める間もなく突き進む侍。

 

 もとより、シーナにとって錦えもんは『例外』部分なので止めはしなかった。

 

「ロー、お前は今から王宮に行く」

「は!?」

「工場が破壊出来ないのは仕方ない。残り二人はゲッコー・モリアの討伐」

「お、俺たち二人だけでか!?」

「七武海相手は荷が重いな……だがスーパー引き受けた」

 

 シーナは愚痴るように呟いた。

 

「ひでぇ巻き込み型だよ。どっちの陣営も。調節する俺の身になって欲しいもんだ…」

 

 冗談めかして笑うが、その目は笑っていない。

 混乱の渦中でも、ただ一人、次の盤面を見据えている。

 

 なんで七武海──特にゲッコー・モリアが出てくるんだよ、という気持ちでいっぱいだ。

 

 そしてシーナは勢いのままローをかつぎ上げた。ずしりとくる体重に、シーナ。否、ロシナンテは仮面の中で嬉しそうに微笑む。

 

「休憩してろ」

「…っ!」

「じゃ!私たちはこれにて〜!兵隊さんも、貴方は貴方のなすべき所へ」

「分かった……!」

 

「おい、ピエロ屋。お前、玩具とトンタッタ族ってやつと繋がってるのか」

 

 シーナは肩の上に担いだローを見て仮面の下でにこりと微笑んだ。

 

「気張れよロー。13年前のケリを、つけようぜ」

「……妹屋の、リークか」

「さぁてどうだか」

 

 標的はドンキーホーテ・ドフラミンゴ……

 

 

 ──以外のファミリー。

 

 

 

 

 

 ==========

 

 

 コロシアムではルフィとエース、それから数人の幹部とレベッカやジーザス・バージェスが最終戦へと挑もうとしていた。

 

「リーが居ない……!どうしよう」

「お、怒って出てったとか!?」

 

 兄ふたりがもう一人の兄妹を想ってワタワタとしている。

 コロシアムの外ではこちらを警戒するように海軍がいるのにルフィが気付いた。

 

 

「なぁ!そこの海兵!!!」

「ルフ…ルーシー!???お前何してんだ!!???」

「リー見てないか!?リー!金髪の、可愛い女の子!リィン!俺の妹なんだ!」

 

「む、麦わらか!?!!??」

「あっやべ、バレちゃいけないんだった」

 

 ルフィは慌てて口を閉じた。

 しかし、それに海兵は大声で答えた。

 

「我らが大天使リィンちゃんなら!ドフラミンゴがお前らの人質に確保したって言ってたよ!許せねぇよな!」

 

 運がいいことに、ドフラミンゴと藤虎の会話を聞いていた海兵の巡回だった。ルフィに情報が渡され、そのことにエースはちょっと絶句した。

 

「まじか!教えてくれてありがとう!許せねぇから安心しろ!」

「おう!」

「月組によろしくな!俺、これが終わったらリー助けに行くから!」

「絶対捕まえるからな麦わら!」

「ただし!リィン様を救ってからだ!」

「傷一つ付けたらおめー地の底まで追いかけるからな!!!!」

 

 お互いに手出しが出来ないからか、コロシアムの柱を境に互いにやり取りをする。

 

 エースはルフィの肩に手を置いた。

 

「あの、ルーシーさん?どういうこと?」

「リーは海兵に人気だからなぁ」

「ごめん答えになってない」

 

「エース、俺リーを助けに行く。試合でやっさんの悪魔の実さっさと回収した後、俺、王宮に行くよ」

「……ルフィ。俺が協力しないわけが無いだろ?」

 

 兄弟の視線がぶつかり、わずかに頷き合う。

 その瞬間、どうやら入場のアナウンスがあったようで、観客の歓声が、まるで号砲のように響いた。 

 

 

 

 

 

 

 

 目立て。

 

 眩いほどに。

 

 視線を集めろ。

 

 

 もう少し。

 

 もうすぐ。

 

 

 

 

 

 

 

「   魔法が、とける」

 

 とある場所。とある人物。忘れ去られたもう一人が、時を待っていた。

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