2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第324話 同族達の音楽会

 

 

 ドフラミンゴは警備の配置を対四皇に合わせて変更していた。

 

「四皇全員がかかってくると思って動いたほうがいい」

 

 それを裏付けるようにかは分からないが、リィンの過去の動きを思い返せば、アラバスタでも白ひげの隊長格を動かしていた。さらに言うなら、……あいつの部下にはワノ国の出身の人間もいる。

 もちろん身内だからこそ、というものはあるのかもしれないが。出そうと思えばいくらでも出せる手だ。

 

 麦わらとローの組み合わせは、ドフラミンゴにとって厄介ではあるが、四皇は比では無い。

 備えずぶつかる方が厄介、というものだ。

 

「……チィッ、七武海を呼んでおいて正解だったな」

 

 

 リィンの打つ手を次々と潰していく。いや、正確に言うと既に打っていた手を。

 

 

 海軍に──ボア・ハンコック

 赤髪に──ジュラキュール・ミホーク

 

 白ひげに──モリアとピーカー

 

 ビッグマムに──ジョーラとマッハバイス

 カイドウは──残された幹部で標的を変更する方向だ。

 

 まず、赤髪と白ひげ相手だと丸め込めない。繋がりはリィンの方が強く、奴らは善政で動く可能性が高い。

 

「ビッグマムとカイドウ、話は通じないが、余地がある」

 

 両者ともにシーザーを利用した取引を行っている。そのため、共闘して麦わらにヘイトを向かせる可能性がある。

 主たる思考のリソースは、その二角に対する交渉と誘導。リィンがどの手を打っているのか、どう誘導しているのか、それに対抗出来うる条件などを考えなければならない。

 

 リィンが差し出すメリットよりも大きなメリットを提示する。

 

 ひとつ、またひとつ。

 リィンの手を予想して潰して行く。

 

 

「ねぇ若!」

 

 ドフラミンゴの部屋にデリンジャーが入ってきた。少し焦ったような表情。例え僅かな情報でも、幹部には報告義務が設けられている。

 

「デリンジャー、どうした。ローや麦わらの一味の捜索はまだか?」

「それは、ロー兄ぃの姿見えないけど……それよりも大変なの」

 

 闘技場から急遽呼び戻し、海側からデリンジャーは敵の位置を探らせる任務につかせていた。

 ヴァイオレットが居ればいらない仕事だったが……ドフラミンゴははなからその女を信用して居なかった。

 

「で、何があった?」

「ロー兄ぃ達を探してたんだけどね、海に」

「海に…?」

「魚人がいた。しかも、多分兵士」

「……ネプチューン軍の兵士、か」

 

 ドフラミンゴは嫌な手にひくりと喉がなった。

 

 脳裏に掠めるのは、リィンが宣戦布告をした新聞の情報。

 

──

 

 

複数の大事件において、ドフラミンゴの影が取り沙汰されてきた。

アラバスタ王国での反乱事件、ヴェズネ王国で発覚した麻薬流通、パンクハザードでの爆発事故、魚人島における反乱。さらに、人身売買ネットワークや奴隷オークションの黒幕としての噂がある。今回の同盟がこれらの構造にどのような影響を及ぼすのか、注視が必要だ。

 

 

──

 

 

 

「──魚人島における反乱、か」

 

 一切合切関わっていなかった『魚人島』のなまえ。他は心当たりがあるのでちょっと黙っていたが、見逃しては居なかった。

 

 まさかまさかとは思っていた。

 今まで四皇、海賊同士のやり取りを視野に入れていた。

 

「(国を持ち出すのは、話が違ぇだろ……!)」

 

 ドフラミンゴは七武海。

 カイドウは四皇。

 立場は違えど、所詮基本は海賊だ。

 

 勝った負けた、それで済む……という訳では無いが、まぁそこそこ終わる。

 

 ──しかしドフラミンゴは国王である。

 

 その立場を望んでいたし、足枷になったとは思わない。七武海の中でもかなり有利に運ぶスペックで、ジョーカーとしての取引も、国王という立場が信用の後押しになった。

 政府、サイファーポール、諸々を利用出来る立場だ。

 

 しかし!国と国のやり取りは話が違う。

 国王同士は対等であるし、それがよりにもよって、王下七武海のジンベエに縁が深い魚人島。

 

 国家戦争まで行けば、立場も揺らぐ。

 

 しかも国が深海にあるため、能力者の多いドンキホーテファミリーから攻めにくい欠点がある。

 

「(四皇同士や七武海同士の縄張り争いとは規模が違う……!)」

 

 どんなに裏社会に精通していても、国際問題だけは闇に葬れない。

 

 もし、ここで他国と衝突をしてみろ。海賊という地位が一気に足を引っ張る。

 『やはり海賊が治めるから』と、国としての国交は減退するだろう。

 

 七武海である前に、王としての彼が問われる。

 それは海賊行為ではなく侵略行為だ。

 

「(海賊ならまだ潰し合いで済む……だが、国同士となれば外交が絡む。今は海賊相手だからとお目こぼしされているだろうが、世界政府も黙っちゃいねぇ)」

 

 ましてや、ドレスローザもリュウグウ王国も世界政府加盟国だ。

 加盟国同士の武力衝突は、世界会議の案件に直結する。

 

 マリージョアの連中にまで「ドレスローザ王、軍事行動」と報告が上がれば──。七武海の称号どころか、王位も、国も吹き飛ぶ。

 もちろんドフラミンゴも元天竜人であるため、世界政府を脅しかけることは出来るが。

 

「(相手が、海底の通行路というのもデカイな)」

 

 ドレスローザは貿易国家だ。

 裏取引でどれだけ稼ごうと、表向きの交易網が止まれば金は腐る。

 国が国を敵に回すというのは、流通も信用も、全ての基盤を敵に回すのと同じだ。

 

 国も海軍も、リィンは堕天使として動かせる範疇をゆうに超えている。指揮こそ取れないものの、その影響力はバカにできまい。潰し合わせなければ。

 

「あ、でも──」

 

 追加の報告に、ドフラミンゴは口角を上げる。

 

「何か、探しているようだったけど。3、4人かな。あたしの姿を見て深海に戻って行ったよ」

 

 デリンジャーを海岸側からの偵察に使っていたのは、彼が半魚人だからだ。海中に強いデリンジャーだからこそ、狙っていた通り『海からの出撃』に備えられる。

 

「フッフッフッ……なるほど、何かを探していたんだな?」

 

 おそらくは、リィンだ。

 

 リィンの指示ありきで動かなければならないのだろう。シーザーの言っていたように、作戦は『リィンが随時リアルタイムで変更していく』方針。

 

 その指揮役を捕らえている今、対処が打てる。

 

「デリンジャー、お前は適度に海底にいるやつらをびびらせろ。闘魚と砲弾使って、威嚇しておけ。手は出すなよ、こちらが『お前らを警戒している』と知らしめ続けろ」

「キャハハ!了解!」

 

 ひとつ、手段を潰す。

 

 思っている以上の規模で、リィンの巻き込み癖が大きくなりすぎている。とんっでもなく厄介な相手だ。

 

「しかし、だ。俺たち七武海は、どれだけリィンちゃんの手を読めると思う?」

 

 ──答えは、ほぼ。

 

 勝利を確信するには早いが、手の内は読めているのだから対策を打てる。

 作戦が分かっていて負けるのは愚者だ。

 

 盤面が見えないリィンに追加行動はできない。であれば後追いの対処でも充分に間に合う。

 クロコダイルがリィンを逃がすような愚かな真似はしない。

 

 すると、デリンジャーと入れ替わるようにベビー5が慌てて入り込んだ。

 

「──ジョーカー!シーザーが奪われた!」

「……。おいおいリィンちゃん、往生際が悪いぜ」

 

 どこから、一体誰が。

 次々と襲い来る情報で目眩がしそうだ。

 

「……だが。今更シーザーを連れていかれても、工場も『いい子ちゃん』達には破壊出来ない。カイドウを俺と敵対させるには、弱すぎる。シーザーを奪った麦わらの一味に、ヘイトが行く」

 

 ということは、リィンちゃんの手ではなく、麦わらの一味かローの独断の可能性がある。

 

 シーザーは手に渡った。

 工場はまだ手の内だ。

 

「フッフッ……フッフッフッ……!」

 

 笑い声が響く。

 

「俺がここまで焦る事になるとは、いつぶりだろうな……。──だが、だが!」

 

 ベビー5はその楽しそうな姿を見て心底怯えた。

 殺意も悪意も何も無い、ただの快楽だけで震えるほど恐ろしいのだ。

 

 何が恐ろしいのか分からない。

 けど、彼が恐ろしい。

 

 ──そして、そんな男の全力を受けてしまう親友に、同情した。

 

 ドンキホーテがこの戦いに勝利し、七武海を続ける。

 それで物語は終わるだろう。

 

 

 

 ==========

 

 

 

「いーーーやぁーーー!!ま、またこの船に戻っちまったよぉおおお!!!!!おおおーんー!ジョーカー、助けてくれぇええ!!」

「黙ってろてめぇ!」

 

 サンジとカルーが船に戻ってきた。肩にシーザーを担ぎ。

 ベン!と船に落としたサンジはシーザーを思いっきり蹴飛ばすが、水揚げされたばかりのようにビチビチと跳ねる。

 

「あれこれ色々喋りくさりやがったんだろうなどうせてめぇはよォ!おかげでリィンちゃんがドフラミンゴに捕まってるし」

「「ええ!?」」

 

 その情報が初耳だったサニー号組は驚きの声をあげた。

 

「ど、どうしよ〜〜!た、助けに行った方がいいよな!?」

「リィンが捕まるだなんて……」

 

「俺はカルーと共に『とある場所に行け』という支指示しか貰ってない。お陰でシーザーをひっ捕まえることは出来たが、リィンちゃんは最悪な事にクロコダイルの膝の上」

「ゲーー!!!」

「ふむ、クロコダイルも居るのか……これは少々厄介な……」

「残念、クロコダイルだけじゃなくて。七武海全員だ」

「うわぁ、大変だねぇ。リィンってば、どういう運勢してるんだろ」

「ほ、ほんとに最悪じゃない……!」

 

 焦る仲間たち。

 彼らはシーザーを奪われた上にリィンを助けられていない。その失敗続きの負い目がある。

 

「──ヨホホホ!まぁ、大まか問題ないでしょう」

 

 しかし、ブルックは朗らかに笑った。

 

「さ、我々は今すぐ出発しましょう」

 

 ブルックの言葉に全員が首を傾げた。

 どういうことだ?仲間を待たないのか?もしくは、仲間を助けに行かないのか?

 

 それぞれが疑問を頭に浮かべている。

 

 ブルックはそれを理解していた為、()()()()()()にミッションを口に出した。

 

 

「こちらの任務はシーザーをドフラミンゴに渡さないこと……」

「う、うん」

 

「──最終的に、ですけども!」

 

 

 

 ブルックに、顔色を変えるための皮膚も、演技のための表情筋も無い。

 

「どういうことじゃ……?」

 

 ジンベエの疑問は皆の心の内を代表する言葉だった。

 

 

「『1度シーザーを奪わせて、取り戻せたらすぐに船で離脱すること』がリィンさんのご依頼です」

 

 

 

 

 さぁ、手のひらの上で踊りましょう。

 指揮者の姿は見えずとも、音楽家の旋律は指揮棒の先にある。

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