遡ること2年前──
「第38回。ドフラミンゴぶち殺そう会議〜!」
「パプパフパプパフ」
「ヒュ〜〜〜〜〜〜〜!」
「今回の司会進行は、俺、名無しのピエロことシーナがお送り致します!」
シーナの発言をきっかかりに、その場は異様な盛り上がりを見せた。
「よろしくお願いします!」
「盛り上がって、参りました!」
「お前らこんなことしてたのか……」
上からリィン、テゾーロ、サボ。四名でのドフラミンゴが可哀想な目に遭う(確定)会議である。
会議は終盤に差し掛かっており、情報屋
今回は、最終工程として革命軍との連携を取るための情報共有の場でもある。
「恨みつらみが蓄積すて……」
「中盤は愚痴ばかりでしたよ?」
「はいはいはいはい、皆さんお静かに。ではオーナー、最終確認ってことでドレスローザ現地でのコンタクトなどをおさらいしようと思うのですが、いい?」
「はぁい」
許可を貰ったシーナがゴホンと咳払いをした。
「まず──」
「ちょっと待ってくれ、先に『目標とする決着地点』を確認してもいいか?」
サボが待ったをかける。
三名の視線がサボに降り注ぐ。妹が居たとしてもすごくやりにくい仕事の場所だということには変わらず、喉の奥が引き攣りそうになるのを堪えて発言を続けた。
「アラバスタの一件では、決着地点がリィンの頭にしかなく、行動を遂行すべきか分からない場面がいくつかあった。そういったようにドタバタはしたくない。今回の作戦を聞くにあたっても、最初に頭に入れておきたいんだが……」
「それは……まぁ良きですけど…………」
しぶり気味のリィンの様子にサボはおや?と首を傾げる。
悩むことなく『良い』と言われたものの、複雑な顔をしていたのだ。
「多分、絶対結論だけ気くすても理解は出来ぬですよ?」
不穏な予感だ。
「アラバスタという前例がある故に、私もそれをオマージュすべきとは思いましてね」
「警戒……されないか?」
「はい。故に、色々と変えはします。決着方法は『醜聞を世界各国に広げ、ドンキホーテ・ドフラミンゴの支持率を落とし、
「…………まだ理解は出来るが、そんなことが出来るのか?」
リィンはとある看板を掲げた。
「──英雄も悪役も、簡単に作れるですよ?」
その看板に見覚えがあったサボは、深く深くため息を吐いた。
「……。もしかして、それって、お前らの?」
「うん!」
「5年は前から、あるよな?」
「おっ、詳し〜〜!」
リィンの笑顔を見てサボは引き攣る。
「私たちはですね、サボ。ドフィさんに……盛大に自爆してもらおうと思うんです」
結末には前段階がある。
醜聞や支持率を下げるにはどうすればいいか、世界政府はどうしたら『ドンキホーテ・ドフラミンゴ』を見限るのか。脅しに屈しないようになるのか。
「ドフラミンゴは強敵だ……。まさか、
「はい、故に2、3手フェイクを入れる必要あるですね」
結末へ辿り着くための、地獄への1歩前。チェックメイトとも言える、自動的に勝敗を決める一手。
その『方法』があまりにもあんまりで、サボは頭の中をひっくり返しても出てこない手段に頭を抱えた。
「リー……!」
「なぁにサボ」
「酷い」
「酷くない!私がダイレクト誘拐された私の方が酷き目にあってる!」
否定は出来ないため、それもそうかという雰囲気になった。
「俺もドフィに殺されてるし」
「じゃあ本題本題。その結末の為に行う事は主に五点」
リィンが片手を開くのに合わせて、シーナが空気を払拭するように言葉を発した。
「その一、ローの参入と生存」
「その二、現地での諜報活動と味方作り」
「その三、情報で視野を狭くさせる」
「その四、ドンキホーテファミリーの戦力の分散」
「その五、ドフィに自由を与え、オーナーには──身動きを取れなくしてもらう」
サボが顎に手を置くのに合わせて、テゾーロが追加で言う。
「まぁ、五点上げていますけれど、終息してしまえばドフラミンゴには手のひらの上で踊って頂こうということです」
「なる、ほどな」
「はい。故に作戦は三重に立てます。『結末の為の真の目的の為の作戦』と『テゾーロとシーナの作戦』と『リィンの作戦』です」
「……具体的には?」
リィンが頷く。
「まず、私とドフィさんは仲良しです。思考回路が特に、お互い読みあえます」
七武海とリィンの付き合いは長い。アラバスタで手の内を明かしているからこそ、読まれやすい。
だからリィンだけの作戦にはしたくなかったため、複数の参謀役で作戦を固めた。
「まず、私の身動きを取れぬようにするという点からあるのですが。今回、私、作戦は基本考えるすてません」
「……ほう?」
「私はドフィさんの思考回路ぞトレースしドンキホーテファミリーとすて、テゾーロとシーナには麦わら側とすて、互いに練り合いました。ドフィさんならこういう手を取る、と」
「なるほど。つまり……『リィンの作戦を破ったと見せかけ、その裏で手の内を明かしていない二人の手を張り巡らせている』ということか」
「はい」
要するに囮である。
リィンは読み合いで勝ち切れる確証は無い。そのため、リィンは徹底的にドフラミンゴの取る手を予想した。
リィンの作戦を相手にするドフラミンゴの動きを予想し尽くした。
そしてその対処を、テゾーロとシーナが考えるという二重の作戦だ。
「故に、私はこれ以上手が打てない、という状態にするために──『わざとクロさんに捕まります』」
全て、読んでいたのだ。
ドフラミンゴであれば七武海を呼び寄せる事ができると。
「ドフィさんはきっと『これ以上手は打てない』と考えるはずです。既に全て、打ち切って起きます。過去の私たちが現在進行形のドフィさんの手足の動きを全て封じるです」
2年の月日を経て、ドフラミンゴの対処法を読み切り、全て潰す。
作戦の本質はそこにある。
「それを確実にするために、ドフィさんには分かりやすいゴールを辿っていただいて。ある起点でパニックに陥らせます」
「パニックに?」
「……ドフィさんに醜聞を与えるためには、皆に知られなければなりませぬ。ドフィさんの罪と、分かりやすい檻が」
その時になれば、『リィンの作戦を読んでいた』こと『ドフラミンゴの対処が追いついていた』こと、それから『民衆の対応』が全て無茶苦茶になり、ドフラミンゴは打つ手が遅れる。
「で、そのパニックをサボ1人に任せたいです」
……まさか、と。サボはリィンの顔を見る。
「玩具に、なってください。玩具になって私と革命軍の繋がりをドフィさんに読めないようにしてください。もう手を打てないと思わせ、サボが、おもちゃを解放してください」
ただ解放するのではなく、規模を隠すために。
麦わらの一味は囮だ。リィンも盛大な囮だ。
全てはサボを隠すために行う手だ。
「……リーらしくない手を取る、よな。リーなら『玩具になった人物を忘れる』なんて、脳内に把握できない空白を好き好んで作るとかしないと思うんだよな」
「テゾーロの案です」
「もし犠牲になるなら貴方だけで済みますから。ギリギリにおもちゃになっていただければ、我々は何かの手を打ったはずだと思うはずです」
「(つまり、俺は忘れられても特にテゾーロやシーナのデメリットにならない。むしろワンチャンメリットってことか……)」
サボの目には冷たく光る二人の視線をたしかに見に受けていた。
……逆に安心した。
リィンを大事にするために、サボのことを邪魔だと思うような存在がリィンの味方で。
「──分かった。ただ、モーリーも巻き込もう。モーリーがいれば地下通路も作れる」
「なるほど……!」
「地下通路なら思い出すまで忘れていたって問題ない。一度、ドフラミンゴを狙うという『囮』は作りたい……が、俺があまり作戦の根底に口を挟まない方がいいな」
「おや、よくお分かりで。作戦に細かな抜けがあると困るので、貴方様はあくまでも我々の作戦を聞いて適度に手を加えるスタンスでいてくださいね」
全く、とんでもない奴らだ。
「それにしても、まさか……」
「まだなんか驚くことでもあったか?」
「いや、驚くことっていうか、まだ飲み込めてないんだよ……」
サボの驚きに改めて『リィンの作戦部分』である、最後の一幕に思いを馳せた。
「──リーの身動きを封じることが、勝利に繋がるなんて、普通なら思いつかない」
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「……どうする、どうすりゃいい」
現在。
ドフィさんは私を抱えたまま悩んでいた。
鳥籠を発動させ、外部に漏れ出すことを阻止したとは言えど、麦わらの一味達を追い込むにも『それを読んでいた』ため阻止した。
ドフィさんは懇切丁寧な戦略家だ。
突発的な作戦と言うよりは、まるでレースを編むように綺麗に綺麗にひとつずつ作っている。
そして綻びが出来ても、力が、握る弱みが、全てを修復するというパワープレイもできる。
だからドフィさんはトンチキな作戦には追いつけない。
通常ありうる作戦、革命軍の加入などまでは読む。それは土壇場になろうと足元まできちんと確認し、ほころびを見つけるのだ。
対してクロさんはオマージュが得意だ。詰めが甘いが、なりふり構わない形での作戦が上手くハマる策略家。
2人に手を組ませてはマズかった。
エースを巻き込むことは決まっていたから、バレットを利用する手は使わない他なかった。
ドフィさんはとても強いし、政府に脅しかけられる弱味を握る程の権力を持っている。
でも私は政府側の人間だし上にも顔が効くから貴方の長所をひとつ潰せる。
「リィンが既に打ってる手は…」
ねぇドフィさん。
私の強みって何か貴方は知ってるよね。
私は10年以上にも渡り増やしてきた伝手がある。プライドは高いけれど、人を多く巻き込むことは大いに得意で、伝手という暴力で貴方を上回る事ができる。幸い、貴方に敵は多いみたいだし。
──四皇。
貴方が怯える存在。
私が使える伝手でもある。
だから。
「(私は、四皇を使わない)」
あえて使いませ〜〜〜〜〜〜ん!
貴方は仮想の敵に対して最大限警戒し、戦力を分散させ、私の
シーザーがいい仕事をしてくれたよ。私がパンクハザードでマルコさんたちと話していたのを知っているから、しかも隠すようにしていたから、本命のように見えただろう。
私にもう、次の手は存在しない。
次に打つとしたら、チェックメイトだ。
玩具に関しての手を打ってなかったとパンクハザードでは焦っていたけれど、片足の兵隊さんが言ってくれた。
──おもちゃは初めてですかな?お嬢さん、おもちゃは怖くないですよ。
あれは、サボが回してくれた手だ。
過去の私は手を打ってくれていたことを確信した。
「誰が何を企んでいる、まじで本当になんだ、特にテゾーロ。あいつ本当に何をしたいんだよ」
回る視界の中。
金属に固められ身動きの取れない私と、ドフィさんが自由に動き回れる状態を見て、心の中で深い息を吐いた。
あぁ、眠いな。苦しくて、しんどくて。
早くてめぇの負けっ面を拝みたいよ。