2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第329話 仕込みの時間

 

 

 ドンキホーテ・ドフラミンゴを陥れる同盟が何年も前から始動していた事はご存知の通りだが、佳境に入り、一足早く名無しのピエロことシーナことドンキホーテ・ロシナンテはドレスローザに上陸していた。

 

「さて、と。まずは妖精探しからか」

 

 シーナは、実は並外れた見聞色を持っている。それは情報屋をする上で鍛え上げられた分野であり、純粋に耳がいいとも言える。

 並外れたドジの代わりに身体能力や銃の腕、それから五感が発達したと言っても過言では無いとシーナは思っている。

 

 過言である。

 

「……居た」

 

 難なく妖精の跡を尾行たシーナは、人が入るには少々小さな穴まで辿り着いた。

 

 

 

「だ、誰れすか!!貴方!」

 

 反射的にシーナは両手を軽く上げ、声を張った。

 

「名無しのピエロことシーナでぇす☆」

 

 

「──怪しいれす!」

「──怪しい大人間!」

「──バーリア!」

 

 シーナはこんなにも善良なお巡りさん居ないのに、としくしく泣いた。

 

 すすり泣くような声を出しつつ、ちらりと穴の奥を覗く。反応が弱まったのを確認すると、動きを止めた。

 

 数秒後、姿勢を正し、仮面を押し上げ素顔を晒すと、シーナは『おふざけはここまでにして』と呟いたあと、深く頭を下げた。

 

「……頼む、トンタッタ族。俺に、力を貸して欲しい。──ドフラミンゴを倒すための情報が欲しいんだ」

 

 シーナの真摯な態度に、先程までブーイングしていたトンタッタ族は不思議そうな互いに顔を見合せた。

 

 やがて、数体のトンタッタ族がシーナの前まで現れた。警戒を解かないまま、距離を保ち、互いに小声で相談している。

 

 シーナはその様子を遮らず、地面に胡座をかいたまま待った。

 

「話を、聞いてもいいれすか?」

 

 その言葉さえ出てくればもうあとは攻略したようなものだ。

 

 再びシーナは仮面を被り、身振りを交えながら、過去の出来事を順序立てて説明し、要所では声を詰まらせるような間を挟んだ。

 聞くも涙、語るも涙な嘘を。

 

 その結果どうなったかと言うと──

 

 

「──ぐすっ、ぐすっ、そんな、大人間にそんな過去があったんれすね…っ!ドフラミンゴが……!大人間の両親を殺した上、仮面でしか生きられないような体にされて、その上、その上、大人間の大事な人を今もまだ捕らえたままだなんて!!!」

 

 八割真実な嘘である。

 グズグズと涙を流すトンタッタ族は、騙されやすいという特性を持っているのだ。

 

「分かりました、我々が協力するれす!我々とてドフラミンゴには恨みつらみがあります……利害の一致というものれすね」

「助かるよ。あとは玩具にも反旗を翻すやつが居ればいいんだが……」

「……。上手くいくか分かりませんけど、候補はいるれす!最近僕らを見つけたすごい玩具れす!」

「へぇ、そいつは……」

 

 さぞ、記憶を失わされる前は有能だったに違いない。

 

「あんたらに頼みたいことがある。情報収集だ。ドフラミンゴ本人、それからファミリー全体の動き。拠点、移動、接触している人間──全部だ」

 

 シーナは指を一本ずつ立て、項目を区切るように続ける。

 

「トンタッタ族の利点は、速さと小ささだ。見つからずに入り、見つからずに出る。それを最大限に使ってほしい」

 

 トンタッタ族は人から隠れて生活している。そのため、ロシナンテはかつてからある妖精伝説に当たりをつけてやってきていたのだ。

 

「それからもうひとつ。王家の存在だ。リク王家の血脈、現在地に至るまで全部探し出してくれ。期限は──2年。出来るか?もちろん俺も定期的に来るし手伝う」

「あっ、それは大丈夫れす」

 

 トンタッタ族の返事にシーナは不思議な顔をした。

 

「──リク王家の方々の場所は、把握してるれすよ」

「……は」

 

 

「コロシアムに二人」

「ドフラミンゴのファミリーの中に一人」

 

 指を折りながら、淡々と数が示される。

 

「生き残った三人れす」

「場所は確定してるれすよ」

 

 シーナの仮面の奥で、口角が持ち上がる。

 

 思わぬ拾い物だ。しかも、かなり大きめの。目的が一致しているからこそ、事前にいくつか情報を抱えていた節がありそうだ。

 

「……なるほど、話が早くて助かる」

 

 トンタッタ族が誇らしげに胸を張る。

 

「トンタッタ族を甘く見ると痛い目を見るれすよ!」

「承知した、肝に銘じておきますね」

 

 軽く頭を下げたところで、ふと質問が飛んできた。

 

「ところで大人間は、なんて名前れすか?」

 

 シーナは一瞬、動きを止めた。

 数拍置いてから、静かに答える。

 

「……俺の本名はもう無い。今の名前は──シーナ。大事な名前だ」

 

 

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 私は1人、これまでの伏線(わな)を思い返していた。

 

 

 

 パンクハザードでは予想外の転がり物があった。シーザーと子供たち、それからヴェルゴ中将とモネさん。

 ローさんの計画、『四皇とドフラミンゴをぶつけよう』という表立った計画をぶち壊してしまったことは申し訳ないと思ってなくもないけれど、ローさん自体も自分が死んだあとの予備の策として立てていたものなのだし、一旦黙っていただいた。

 

 

 

 正直言うと、私達の作戦の中に『スマイル』は必要なかった。ドフィさんの一番の弱点ではあるのだけど、ドフィさんもそれは自覚している。だからあえて、使わないでノーマークのところからぶん殴るつもりだったのだ。

 

 結局囮に使うことになっちゃった。

 まぁ良しとしましょう。

 

 

 

 パンクハザード出航後。

 

 

 私は仲間と──シーザーに説明をした。

 

 

『作戦は──無計画!これです!』

『これです!じゃねぇだろ!』

『やだぁウソップさん、ケースバイケースというものがあるではなきですか?まぁまぁ、安心すてくださいよ。私が適度に指示ぞ出しますし』

 

 

 船上での情報は全てシーザーの耳に入ってしまう。

 だから私はあえて、シーザーに全て聞かせることにしたのだ。シーザーなら、必ずドフィさんの手に渡った時に吐くから。必死に情報を拾い集めて欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 私は仲間たちにいくつか指令を出した。

 

「ロビンさん、ロビンさんには『この場所に向かってください』」

 

 地図を手渡した私に、ロビンさんは怪訝な顔をした。

 

「……それだけ?」

「あとはまぁ、流れるままに」

「…………すごく不安な指示ね」

「でも、ロビンさんならどうせ大丈夫ぞり。安全策は取っておく故に、余程地雷を踏まぬ限りは大丈夫かと」

「やだ、地雷は何?何をしようとしているの?」

「地雷は……うーん、私も一度しか会うすたことがなき故になんとも?」

 

 ロビンさんにはトンタッタ族と合流してもらおうと思った。そのついでに、エースの仲間を経由させ、コンタクトを取らせておくのだ。

 特に、赤髪の娘の方。バレットの方はバギーさえ居ればなんとかなると思っていた。というかそちら側で何とかするつもりだったからね。

 

 

 

 

 

 

「サンジ様には、割と危険なお願いがあるです。カルーと一緒にカルーの修練場所に向かって欲しきですぞ」

 

 私の言葉にサンジ様は微妙な顔をした。

 

「危険な目に、遭わせてくれるという信頼がリィンちゃんの中であるのはすごく嬉しいけど、リィンちゃんが言うレベルならいよいよやばいよな、って」

 

 上手く伝わっていれば、そこにシーナが動かしたお姫様がいるはず。

 

「そこで俺は何をすればいい?」

「最前の手を打つすてください」

「……そりゃまた曖昧だ」

 

 状況がズレてしまえば上手くいかない。

 サンジ様には、『シーザーの奪還』か『私の奪還』のどちらかをお願いしようと思ったのだ。両方に通じる理由がひとつあって、『私が動けなくなるのが本当に麦わらの一味にとって避けたいことだ』という印象を付けたいのだ。

 罠の装飾って感じ。

 

 私はおそらくメインの客室に囚われる。というかそうする。

 だから、地下通路が繋がっている客室に……おそらくシーザーが行くはずだ。

 

「よろしくお願いします」

 

 

 

 

 

 

「ナミさんには、かなり先までのお願いになりますが。必ず、私が戻るまでモモの助くんと一緒にいてください」

 

「それは、いいけど。どうして?」

「どちらかと言うとカイドウ対策ですかね……。モモの助君はまだ悪魔の実に慣れるすてなき様子ですし……それに………」

 

 私はナミさんを見た。

 

「なっ、何?」

「船を動かせるのって、ナミさんか私だけなのですよね」

 

 あ、もうひとつお願いごとがあるので、追加でナミさんに指示を入れる。

 

「それから、おそらく途中で──」

 

 

 

 

「ビビ様。ビビ様にお願いしたきことは二つ」

「二つ?」

「ひとつは海軍の相手。もうひとつは……王家の方々のフォローをお願いしたきです」

 

 私のお願いごとを聞いたビビ様は顎に手を当てた。

 

「それは、とても大事なお願いごとだわ。うん、分かった。海軍の方は……ちょっと荷が重いのだけど……」

「具体的な方針としては──」

「……ほんと?本当にそれで行ける?」

 

 

 

 

 

「フランキーさん、あのですね、多分フランキーさんのいる場所では大きめな戦いがあると思うです。大立ち回りをお願いします」

「大立ち回り?」

「『地図のこことここを往復して、最初に現れた幹部をなるべく長くカッコよく引き止めながらあちらの増援が来るまで戦闘をしてください』」

 

 フランキーさんは引き伸ばすという単語に苦虫を噛み潰したような顔をした。

 

「かっこよくってところもちょっと意味わかんねぇけど、増援が来たあとは?」

「その時は……──」

 

 

 

 

「ブルックさん、ちょっと難しいお願いをしますね」

「はい。なんでしょう?」

「ブルックさんには船番をお願いするです。そしてですね──まずドフィさんに襲われます」

「!???!!?」

「ドフィさんなら必ず向かうので。それからですね……『サンジ様がシーザーを連れ帰ったら、出航すて次の島に向かってください』」

 

「……1度シーザーを奪われるということですか?」

 

 飲み込みが早くて助かるよ。

 唯一表情筋がないのが、貴方の最大の利点だからさ。

 

 

 

 

 

「ローさん、『私が、合図を出した時──』」

 

 私の言葉に、ローさんはぎょっと目を見開いた。

 

「それは!妹屋が危険すぎるだろう!?」

 

 どうなるのか分かっているのか。

 そう言いたげな視線を向けられても、私は怯まない。

 

 

「私は、どうなるすてもいい。これは海賊としての私より、海兵としての私の覚悟です」

 

「ローさん。この指示は貴方にとってもしかすると腑に落ちぬ結果を招くかもしれませぬ。でも、必ず」

 

「──あのピンクのもふもふ野郎を地獄の底まで叩き潰すすて、ロシナンテの敵討ちします故に」

 

 

 むしろシーナの本懐だから協力してね。

 

 

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

 

 しっかしまぁ。

 

 

「どう出る、何を打ってる、聞いたって視線で惑わされるだけだ、集めなければ、情報を、パラサイトで追い込め、少しでもこちらの手を増やす……四皇は、魚人族の目撃も……海軍はこうなったら指示済みか…?」

「ん゛ーーーっ!んんっ!んんんん!」

 

「リィンちゃん、邪魔だから騒音辞めてな?」

 

 やること無くて暇だし喋れないんだからちょっとくらい構ってよ。

 

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