2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第334話 社会的抹殺など暗殺より楽

 

「……えぇ?」

 

 王宮の下で、ちょっと、いや、かなりドン引きして居る男が一人。

 

 

 

「まじかよドフラミンゴサイテーだな!」

「なんって酷いやつだ」

「気持ち悪い男だな」

 

 巨人族の船長ハイルディン、薔薇の貴公子キャベンディッシュ、人喰いのバルトロメオといったコロシアムで

 

 

「──若!!!くっ、邪魔をするな!」

「バーーリア!へへっ、効かねぇべ〜?」

 

 

 今回のドフラミンゴ失脚大作戦の大筋の流れはこう。

 

 他の幹部や七武海を遠くへ追いやり、拘束された状態のリィンとドフラミンゴをローが入れ替える。

 そして入れ替わったリィンがドフラミンゴに成り代わり、ドフラミンゴ断罪放送☆を行う。という手筈だ。

 

 

「若にコラソン以外の血縁がいただなんて……っ!くそ、どけ!!出せ!!」

「これでいいんだべかお兄様」

「誰がお兄様だ」

「さ、サボ大先輩!」

 

 一応偶然ではあるものの、バルトロメオがリィンに心酔し、その影響で兄であるもの達の言うことを聞く。しかも無敵バリアというものを用いるため──ドフラミンゴの幹部を食い止めるという点において最強だ。

 

「サボー!次のやつ連れてきた!」

「ロメ男、こいつも追加だ」

「喜んで!」

 

 ドフラミンゴ本体への(精神)攻撃はリィンとロー、シーナに全てを任せている。

 それ以外の人材がしなければならないことはドフラミンゴ(リィン)の動きを邪魔させないことだ。

 

 案の定、幹部は『ドフラミンゴの兄上』という架空の存在に動揺し駆けつけようとしていた。

 

「ルフィありがとな。次はロビンの方に向かってくれるか?トンタッタ族のレオという戦士が……幹部のディアマンテという男に押され気味らしい。全部蹴散らしてくれ」

「任せろ〜!」

 

 サボは現場での指揮官だ。ヴィオラ王女の目を借り、ルフィとエースを最大限動かし劣勢の戦況を覆している。

 

 ──と、いえど。

 

「(どこがどこでぶつかるか、戦力の割合がどうなっているか。それは見ただけじゃ簡単に分からない。特に歴戦の猛者ではなくヴィオラ()()なら尚更)」

 

 サボは背中に伝う冷や汗を確かに感じとっていた。

 

「(戦況の予測は全て、リィンが立てていた)」

 

 あくまでもちょっとしたイレギュラーをサボが修正しているだけで、ドレスローザ全体の勢力図や事前に分かっていた敵味方の予測はリィンの手腕である。

 

 サボが考えなければならない箇所はバルトロメオを筆頭とした『上陸時に存在する戦力』の割り振りのみ。むしろ大半が金に目がくらみ味方になるのと思っていたから、想像の範疇ない。むしろ思っているより味方になったイレギュラー陣の戦力に、負けはないと確信していた。

 

 

「というかドフラミンゴが『ああ』なった時点で作戦は全部終わってるから、負けることは無いんだよなぁ」

「大先輩?なんか言ったべか?」

「……いいや。ちょっと、ドフラミンゴにドン引きしていただけだ」

 

 ドフラミンゴが入れ替わりさえすればあとは沙汰を待つだけ。ローが心変わりしなければ。

 だが、映像を見る限りリィンはさりげなくローでさえも拘束していた。演出も兼ねているというかおそらく9割演出なのだが。

 

「あの、サボさん」

「なんでしょうヴィオラ王女」

 

 サボはルフィの手によって運ばれてきたマッハヴァイスの元気を吸収して無力化させた後、バルトロメオに引き渡す。バルトロメオは一瞬バリアを解いてふたたびバリアの中に閉じ込めていた。

 

「あのドフラサンゴという方。あの、仮面の方なのです、よね?」

「えぇ、まぁ」

 

 ヴィオラ王女は良く見えている。逆に見えすぎて混乱しているようだし、作戦の詳細は知らないためドフラミンゴとリィンが入れ替わっていることは気付いていないのだろう。

 しかし何年も前からドレスローザに上陸しトンタッタ族と交渉し、ドフラミンゴの失脚を狙ってきたシーナが、いまドフラサンゴと名乗っているのはわかっていた。

 

「……勝てるのかしら、あの男に」

 

 サボは口をきゅっと閉じた。

 

「(あれ、すでに中身リィンだからもう勝ってるんだよな)」

 

 ちょっと可哀想なまでに。

 暴露放送の中身自体はサボは関与していない。なので何が飛んでくるのか疑問だったのだ。

 

「まさか、あの男が口に出すのも憚られるような趣味を持っているだなんて……」

 

 ヴィオラ王女の顔は青い。

 

「そりゃそう…………」

 

 だって、ドフラミンゴが自分の分身とBL(柔らかい表現)している写真が出てくるだなんて思わないし、子供たちの誘拐をしているのもそうだし、カイドウに体を売ってたのはわんちゃん分かるが、リィンを毎日電伝虫ストーカーしていたのは流石に盛りすぎだろうと思った。

 

 多分どこから真実で盛ったりしているんだろうな。どうやって情報を抜いたのかな。

 サボの頭の中には予想でしかなく、じっさいの様子などは分からない。が、まァドフラミンゴは己の名前に不名誉を植え付けられたのだ。

 

 そしてその不名誉さえあれば、リィンはどこからどう転んでも遊べる。

 

「クロコダイルは絵本だったからなぁ……」

 

 あれは普及率という意味でもかなり大きいものだった。手軽な値段で、全年代に行き渡る。知る人ぞ知る歴史をばら蒔いた。

 

「…………次はなんになるんだろうなぁ」

 

 流石に同情を禁じ得ない。

 だが、もちろんいいぞもっとやれと言う気持ちはある。

 

 そのためサボは吸収した元気で肌ツヤが良くなるのを感じつつ、放送を見守っていた。

 

 もちろん、最初から保存出来るようにはしている。安心して欲しい。

 

 

『──兄上!貴方は、また俺を邪魔するのか!ドレスローザの時もお前はロシーと共謀して俺を貶めようとした……!』

 

『当たり前だろう。俺はお前みたいに醜悪で人を人とも思わない男では無い。闇のブローカー・ジョーカーとして兵器や毒を幾つもの海賊に渡していることも把握している。お前さえ消えてしまえば、世界は安泰だ』

 

『どうして…、どうして!俺は俺を愛しただけなのに、未来を信じていただけなのに!あんたは俺に何も教えてくれなかったじゃねぇか!いくら踏みにじられても、両親も、あんたも、弟も、誰も俺を愛してくれなかったじゃねぇか!』

 

『……だからといってお前は罪もない子供達をお前に染めていいわけが無いだろう』

 

 そりゃそう。

 

 

 ローを筆頭にリィンへ続き、今はパンクハザードの子供たち。パンクハザードに関してはドフラミンゴと言うよりはシーザーの仕業が強いが。

 

 ドフラミンゴは子供に手を出しすぎた。

 それは洗脳であり虐待でもある。傍から聞けば。

 

「──おい」

 

 サボに声をかけた男はダグラス・バレット。

 男のそばには目を回して完全に潰れているピーカと。

 

「………………………………。」

 

 口元に手を当てて顔を伏せているクロコダイルがいた。

 

「こいつが、戦意喪失した」

「あーーーーーー」

 

 バレットはサボがエースの兄弟ということを把握している。一応この島で起こっておることはそいつに話しておけばいいんだろうなぁー、と考えて報告した。

 

 クロコダイルはかつてアラバスタでまぁ、リィンにて酷い目に遭わされている。

 

 『下準備もそこそこ故にアラバスタではそこまで大きな結末は作れなかったです』とリィンは悔しそうにしていたが。充分すぎるだろうに。

 彼には未来永劫ロリコンで国家反逆罪で悲しい片思い男のレッテルが貼り付けられてある。絵本付きで。

 

 

 最悪なことに、今回は準備期間をしっっっっっっっかりと、しつこいほど、めちゃんこ確保して細かく細工している。

 

 ドフラミンゴの未来はお察しだ。

 

 そんな未来を察して、過去の犠牲者のクロコダイルは何を思うだろう──。

 

 

 

「…は、ハハ、クハハハハハ!!!!」

 

 その場にいたクロコダイルはとつぜん笑い声を上げた。流石のバレットも、豹変した男を目にして一歩下がる。

 

「──ざまぁみやがれドフラミンゴ!!次はお前の番だ!!!!」

「こいつ同族に喜んでやがるな」

「さんっざん面白おかしく俺の被害について喋りやがって!今度はてめぇの番だ!せいぜいリィンに面白おかしく仕立て上げられやがれ!!」

 

 余程鬱憤が溜まっていたのか、高笑いが止まらないクロコダイル。

 勝手に一人喜んでいる。

 

 この状況がリィンの手によるものと察しているのだろう。流石はリィンと付き合いが長いだけある。

 

「クハハハハハ……俺をダグラス・バレットとぶつけたのは、『これ』を邪魔されたくなかったからか。なるほどな。んで、こうなれば俺は面白がり本気で戦わないと……よく考えやがる」

 

 その推理にサボは思わず息を飲んだ。

 大まかあっている為、警戒が滲む。

 

「……だがリィンの手の上で踊るのも楽しくはねぇ。その企みが見えた時点で俺はリィンと敵対する」

「クロコダイルっ」

 

「──が!」

 

 クロコダイルは再び堪えきれない笑いを出した。

 

「クッッッハハハッ!!!ハッハッハッハッ!!」

「く、クロコダイル…?」

 

「──ここでドフラミンゴの味方をすると俺まで普通に巻き込まれるから手を出さない(真顔)」

「切実だな。正解だろうけど」

 

 本当に正解なのである。

 リィンはもしこのドフラミンゴ暴露放送で乱入者が現れた場合、『ドフラミンゴの彼ピッピ♡』として無理矢理巻き込む気満々だったのだ。

 

 クロコダイルは七武海で、七武海同士が仲良いとは言えど。沈み行く泥船に乗る訳には行かないし沈むならひとりで沈んで欲しい。

 

「俺がインペルダウンにいる間に何があったんだこの世界はよぉ」

「簡単に言えば、強さだけじゃどうにもならねぇ人間がこの海を裏から支配しようとしてるってとこだな」

 

 必要なのは頭だ。

 クロコダイルはリィンのことを思い浮かべながら再び口角を上げる。

 

 バレットは怪訝な顔だ。

 

「……ますます欲しい」

「やらん」

「アレが居れば、ある程度は安泰だ。多数の海賊に強い影響があり、世論なんて簡単に操作できるだろうな」

 

 リィンが最初からクロコダイルの味方であればクロコダイルはアラバスタを問題なく乗っ取り、世界会議にも政治面にも強い力を与えられていただろう。

 

 革命軍についていれば今頃天竜人や世界政府は滅亡していたかもしれないし勢力図も大きく代わり革命軍が世界の支配者や裁定者になっていただろう。

 

 またドフラミンゴについていれば、どうなっていただろう。少なくとも政府や海軍は内部から食い潰され傀儡となり、海賊の派閥などはドフラミンゴが優勢になっているはず。

 

 政府にいれば。

 国にいれば。

 

 今は最小規模の海賊という元に居るからこそ

リィンの威力は最小限に抑えられている。

 

「惜しいな……。世界に目を付けられる前に俺が目を付けていたのに」

「クロコダイル!」

 

 サボの声にクロコダイルは煽るように顎を上げる。実際目をつけていたのは誰よりも早かったのだ。

 女狐になる前からクロコダイルはリィンに目をかけた。ついでに砂かけもしたが。物理ではなく精神的に色々。

 

「そう怒るなよ革命軍。泣かせるじゃねぇか、兄弟愛にしちゃ過ぎてるぜ?」

「いやそんなことはガチで無いが?妹に降りかかる変態ストーカーとか執着ロリコンを払っているだけだよが?」

 

「……おっ、ドフラミンゴがやられてるな」

「そらすな話を!!!」

「倒置法で返すな」

 

 

 映し出されている映像の中のドフラミンゴは、血を流しながら唸っていた。

 

『ドフラサンゴッ!許さないえ!俺の、子供だけの、家族だけの世界を作る夢を!邪魔をするのか』

 

「いやとんでもない夢だな?」

 

『それで肉体の逆行と言う秘薬の計画書が出てきていたのか。ローの能力を利用して。幼児趣味も大概にしろ』

『最初はクロコダイル辺りに試すつもりだったのに…ッ!せめて、せめてあいつだけでも幼児化を』

『失せろ変態!お前はこの世にとって害悪だ!』

 

「…………これドフラミンゴじゃねぇだろ」

「現実を受け入れろサー・クロコダイル、お前は同僚の幼児趣味に狙われていたことを」

 

「(クロコダイルは鋭すぎるが、リィンの演技力が高すぎて他は騙せている)」

 

 だがこれだけは確実だ。

 

「(──巻き込まれるのは、決定事項だったみたいだな)」

 

 哀れクロコダイル。広告塔の道は険しい。




流石に楽しすぎるよ、書くの
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