2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第337話 可憐で可哀想な被害者の出来上がり

 

 そこはトンタッタ族の隠し拠点。

 麦わらの一味はトンタッタ族の手を借り、そこに集合していた。

 

「すんません、何がなんだか全然分かってないので誰か親切な人、説明してくださーい…」

 

 厳密に言えば、リィン以外。

 ウソップがそろりと手をあげれば、同意ですと言いたげにロビンやビビは頷いた。

 

「サボ、一体どういうことなの?」

 

 この場には麦わらの一味からルフィ、ロビン、ビビ、ゾロ、ウソップ、フランキー、カルー。

 ロー、サボ、シーナ、テゾーロ、はっちゃん。

 ゲストとして錦えもんと、彼が救いたかったカン十郎という侍、そしてキュロスだった。

 

 コアラなどの革命軍は既に別の場所へ移動し、スペード海賊団は足早に去っていった。

 

 サボは『リーが戻り次第すぐに出発した方が良い』と忠告をしてはいたが、そんなことより、本当に無事を心配するフェーズとか上手く逃げ出せるかなという心配より。真相が気になって仕方がない。

 

「まず私達の船が無いことに加え、サンジも居ない、それにドフラミンゴとドフラサンゴについて、それから一体ドフラミンゴを一瞬で無効化したり、七武海に対してとか、本当に色々気になるのよ」

 

 ロビンが気になる順で適当に質問事項を述べていく。

 

「なんつーかさ、何も全体が分からねぇんだよな」

「お前ら以外だけどな。スゥーパー分からねぇ!」

 

「そもそもまずハチは何してたんだ?」

「にゅ?俺は魚人島から来る兵士の誘導をしてたんだ」

 

 お互いがリィンに貰った指示の内容を確認しあっていた。フランキーは指示通りの大立ち回りをすれば幹部が何故か時間差で釣れ、ロビンはトンタッタ族との合流とスペード海賊団とのコンタクトが取れ、ビビは問題なくリク王家の元へ行けた。

 一角だけを乗り切るための指示だと思いきや、全てが蜘蛛の巣のように繋がっており、ドレスローザの崩壊に至ったと言っても過言では無いだろう。

 

「ままっ、麦わらの一味の他のメンバーについては一旦置いておき。すっごくざっくり言うと、皆様には『幹部の足止め』をお願いしたかったのですよね」

「幹部の足止めねえ」

「このドフラミンゴブッコロ大作戦は……」

「ちょっと待てぇい!作戦名が物騒!」

「ドフラミンゴ☆恥辱大作戦はの中核はズバリ、ローの能力を使ってドフラミンゴをエイヤッ♡する事なんですよ」

 

 シーナは簡単な説明として口を出す。適当に見える説明に呆れたような視線を全員が向けるが、何処吹く風と言った様子だ。

 深くため息を吐いたサボがシーナの口を止める。

 

「俺が代わりに説明する。トラ男を加え、このピエロとテゾーロ、それからリーはそもそもドフラミンゴに対して並々ならない恨み辛みがあった」

 

「だろうな」

「正義感で動いてるとは思ってねぇ」

「七武海嫌いのリィンちゃんだもの」

「俺も同意だな」

「元海兵とは……」

「リーはともかくお前らもミンゴ嫌いだったんだなぁ〜」

 

 激しく同意。麦わらの一味はウンウン頷いた。

 

「で、リーは分かりやすく言うと()()だった。リーはすこぶる弱いし、()()()()()()()()()()()()だったからな。乱戦に入れるよりはマシだと思って」

 

 まるで──自分が作戦を考えたかのような口ぶりで説明をしているサボだが、誰が作戦を考えたかなど、今この場では特に重要な話ではない。

 

「ほとんどの人間は七武海とドンキホーテファミリーを王宮から引き離す役割。俺は玩具の解放。そしてトラ男とピエロとテゾーロでドフラミンゴを抑えに行った。……ここまでで質問は?」

「はい!」

「お、いいなルフィ。何が質問だ?」

「俺、なんで王宮まで行ったんだ?」

 

 ドンキホーテファミリーを王宮から引き剥がす役割を持った、ということは理解したのだが、三兄弟であえて王宮に乗り込んだ意味はあったのだろうか?

 ルフィは言語化が苦手だが、ふわふわっと疑問が頭に浮かび、折角なので質問をした。もちろんサボはその意図をきっちり読解してニコニコと微笑む。

 

「いい質問だなルフィ!まず俺やルフィやエースは『妹が誘拐された!』ってなったらどうすると思う?」

「誘拐したやつぶっ飛ばしに行く!リーなら自分で脱出しそうだけど」

「そうなんだよ」

 

 サボはルフィの頭をワシワシと撫で、頷いた。

 

「『リーが誘拐されたのはドフラミンゴの策だった』『リーが居なければこちらは不利だ』『正面突破でぶっ飛ばし』…………そんな風に普通なら思う。だからドフラミンゴの警戒の方向性をこちらから指示したんだ」

 

 ロビンはこの時点で納得したのか、真意に気付いて目を見開く。他のメンツは首を傾げてしまった。

 

「あはは、分かりにくいよな」

 

 サボは一から説明した方がいいか、と座り直した。それに加えて注視すべきことはある。

 

 

「曰く……」

 

 サボがこれから起こる事件を想像し、流石に苦笑いを浮かべる。

 

「──リーは、七武海を貶める為なら自爆も辞さない」

 

 ==========

 

 聖地マリージョア

 

「……。」

「…………。」

「……ううむ」

 

 五老星と海軍元帥は顔を付き合わせて無言で渋顔を作っていた。

 

「…………まさか、王下七武海のドンキホーテ・ドフラミンゴとトラファルガー・ローの七武海同士が潰し合うとは」

「いや、『麦わら』と『ロー』の海賊同盟だ」

「CP0を向かわせたが、さてどうなる事か」

「このせいで七武海の空席が二つ空くことになるな」

 

 もしもの話だ。

 リィンが裏で操作していなければ、ローはドフラミンゴに七武海の脱退を求めていただろう。そして元天竜人のドフラミンゴは七武海の脱退をし、油断を誘った上で再び七武海に戻ったであろう。

 そうなれば海軍の面子は丸潰れで、サカズキも堪忍袋の緒がブチ切れていたはずだ。

 

 しかし現在、彼らの心はひとつになっていた。

 

「……。七武海同士、いや、このドフラサンゴという男が居なければ。このような偉業は成し遂げられなかっただろう」

 

 ドレスローザ王国の崩壊──死者0名。

 過剰とも言えるほど海兵があの国に居合わせた。重傷者はもちろん居たが、届いた報告によれば国民海兵共に死者無し。

 

 これは過去一度も無い快挙である。

 

「…………我らの孫が裏で何かをした、ということか?」

 

 五老星としては面子などどうでも良いのだが、脳裏に浮かぶのは前元帥の言葉。

 

 

『……彼女は、己の正義のためなら悪ですらも利用する人間です。分かりやすく言えば『悪役作成』でしょうか』

『麦わらの一味で、そして七武海でそれを成し遂げようとしているのかな?』

『はい。海賊が潰し合いをしてくれれば海軍は戦力を割くこと無く海賊を潰せます。私とリィンはそれを狙っています』

 

 

「──ドフラミンゴのこの一件の裏で、リィンと正義にとって不都合な存在を消そうとしているな」

 

 

 思いっきり私怨だということには気付かず、いい年をしたお爺さん達が行動の深読みを始めた。

 

「海賊同士に潰し合いをさせ、海軍は戦力を削がれる事なく目的を達成する。なるほど、アラバスタでもわかったがドレスローザで実感した」

「ドフラミンゴごときのために世界が振り回されにゃいけんのかと思っておったが……クロコダイルの件を考えりゃ……その……怒るに怒れんで……」

 

 別名同情。

 酷い目に遭うことは分かりきっている為、ちょっと気持ちが優しくなってしまう。

 

「アラバスタ、ドレスローザ共に──海軍本部の大将が絡んどるけぇ、威厳を損ねる事にもまるっきり嘘にもなっちょらんのはええんですがね」

 

 海軍が未介入であれば偽りの英雄を作り出されて面目を保つことに必死になっていただろう。

 しかし、嘘とも言い難い。

 

「報告によれば女狐が頭を下げたとありますが」

「だが王家はそれを許したと」

「これが世界中に放送されてたんじゃあ話は違いましたが、どうやら随分前からドレスローザの救済に悪知恵を働かせていたようで」

「全てはリィンの手の内、ということか」

「えぇ……」

 

 無言の時間が続く。もう正直何を言ったらいいか分からないのだ。手を離して褒めることも出来ないし、叱るにはしっかりしすぎている。おそらくアフターフォローや尻拭いもこの後する、という自信しか無い。

 

 ……まぁ尻拭いというか死体蹴りだろうが。

 

「だが七武海に空席が出来ることに変わりあるまい。それをどうするか……」

「それが…………………………」

 

 サカズキは懐から1枚の手紙を取り出した。

 

「報告書としては未完成ですが、リィンから預かっとります」

 

 

──

 

サカズキ元帥

並びに五老星各位

 

本書簡は、ドレスローザ上陸前の時点において私が記した暫定的な報告となります。

現在私は海賊船上に身を置いている都合上、通信環境および書類作成環境が整っておらず、正式な報告書の形式を取れない点についてご容赦ください。

 

なお、本件に関する詳細な経過および最終的な結果については、状況が確定次第、改めて正式な報告書として提出いたします。

 

さて、既にドレスローザに関する情報が本部にも届いている頃合いかと存じます。

私の予想通りであれば、現在の王下七武海は二席の空位が生じている状況ではないでしょうか。

 

つきましては、次期王下七武海として二名の人物を推薦したく思います。

 

彼らの名は、ドレスローザの一件を世間へ広める際の象徴として、またそれをさらに上書きする形で世論を動かす材料としても十分な影響力を持つものです。

 

現在のところ、当人らとの正式な交渉はこれから行う予定ですが、勧誘が成立する可能性はおよそ八割程度と見込んでおります。

当人らに脅し――もとい説得をらする必要にはなるでしょうが、最終的には双方とも快く了承するものと考えています。

 

これが実現した場合、頂上戦争以降、海賊勢力に対して傷ついた海軍の威信を回復する上で、極めて有効な一手となるでしょう。

 

なんせ、両方私……いえ、海軍大将女狐に対して恩がありますから。これで変化しつつある縄張り争いに終止符を打てるかと思います。

 

もっとも、私の本来の目的は古参戦力の確保そのものではなく、次世代の台頭を見据えた布石にあります。

とはいえ、旧世代の兵力も同時に引き込めるのであれば、それに越したことはありません。

 

以上の件につき、事前承認という形での許可をいただければ幸いです。

 

ご判断をお待ちしております。

 

海軍本部大将

女狐

 

──

 

 

「──本当にとんでもないな!?」

 

 新しい七武海候補として挙げられた名前は目玉が飛び出るような予想外の名前だった。

 

「それからローですが、どうやらリィン的には『まだ利用する予定』のようで……海軍での扱いは準七武海という扱いにして、政府の判断は間違いではなかったという『ヒーロー』扱いにしようとしているようで…」

「あっはっはっはっ!何を考えとるんだ!最高だな」

「流石孫」

「ガープになんぞやらん」

「海賊がヒーローとは、片腹痛いな」

 

 これは下手に手を出すより女狐が完全に動くのを待つ方がいい、と六名が結論を出したその時──1人の海兵が駆け込んできた。

 

「──失礼します!ドレスローザの放送局からリアルタイムの映像が!」

 

 

 五老星と元帥は恐る恐ると言った様子でその映像を見た。

 

 その映像の先でリィンが泣いていたのだった。

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

 はぁいこんにちは。

 現地のリィンちゃんです。

 

「みんなぁ!!!」

 

 後始末をしている海兵の塊。ドレスローザの新聞社らしき人だったりどこかと連絡を繋いでいる要人も居る。

 海兵に質問をしていることから予想通り新聞社なのだろう。

 

 そしてセンゴクさんもいた。何でいる???

 え、ほんとになんでいる?

 

 

「リィンちゃん……っ!?」

「どうしてここに!」

 

 月組かな?もしくはファンクラブかな?

 まぁどちらにしても私に好感がある人が多いところにわざと来たので、私はぎゅっとスカートを握りしめて目に涙を溜めた。

 

 ギョッとしている海兵に向かって、私は言葉にならない声を上げていた。

 

「ドフラ、ミンゴがっ、終わっ、わたし、ずっと」

 

 ポロポロ涙を零せば、私の企みを察したセンゴクさんがスっと前に出てきた。本当になんでいるの?でも好都合だ。

 

「リィン……」

「センゴクさ、センゴクさんっ!私っ」

 

 私の涙が止まらなくて嗚咽を出している姿を見て、記者や放送局らしき人達が慌てて電伝虫を用意し始めた。はよしろ、いつまでも泣いてるわけにはいかないんだぞ。早く決定的なことを言わせろ。

 

「もしかして堕天使リィンか……?」

「こんな可愛い幼気な女の子だっただなんて!」

 

 

 これは──私の顔面を世界中に公開する方法を使った自爆戦法。

 

「センゴクさんっ、ドフラ、っンゴが、ようやく、私、ずっと怖くて」

「リィン……海軍からお前が脱走したと聞いた時、私は自分の耳を疑った。何事にも一生懸命で真面目なおまえが、なぜ、と」

「…っ、私!海軍本部にいる時、誘拐されたんっ、です!ドフラ、あい、あいつに!」

 

 ヒクヒクと告げ口をするように言い放った言葉の断片に記者たちは『ドフラミンゴの放送で言ってた少女』だと気付いたのだろう。パシャパシャという鳴き声が増えてきた。

 

「毎日毎日、私の電伝虫にかかってきて、海賊が怖くて、6歳の私には何も出来ませんでしたっ」

「……お前が誘拐されたのは知っていた。よく無事だったと、私はすこぶる安堵したよ」

「私はあいつが怖かった、何よりっ、私が海軍にいることで、あの男に執着されてる私がいることで、大好きな皆が、大好きなセンゴクさんが…!あの男に害されるんじゃないかって、私、ずっと思って」

「裏でそんな事があったんだな……気付いてやれなくてすまない……」

「ううん!」

 

 私は大きく首を横に振った。

 そして祈るように手を握りしめ、微笑んだ。

 

「私にとって海軍は……家族でした。私は皆に迷惑を掛けたくなかった、これは、私の弱さが招いたんです。だから私は……海賊になった……普通に過ごしていたらきっと私は、ううん、私の周りはあの男に酷い目に合わされる、だから逃げて、逃げて、迷惑のかけない所へ」

 

 海軍脱退の理由って今のところ海賊側には『親が海賊だから海軍に見捨てられたんだ』って伝えているんだけど、実は正式に決まっていなかったんだ。

 

 辻褄合わせはこの後どうとでも出来る。

 

 本当にどうとでもできるもん。だって私の『今』が本心からだって思ってる人、多分知り合いに居ないよ。

 あくまでも世間に対する言い訳兼ドフラミンゴ死体蹴りの一つ。後半の方が意味合いとしては多いですけどね。

 

「結果的に海軍と敵対する立場になってしまいましたけど……後悔はしてないんです……だって海軍の敵ってことは七武海にとっても敵だから……あいつに大事な人の誰も人質にできない!」

 

 そんなことは無いけどね?

 普通に人質に出来るけど、ちょっと頭が足りてない女の子を演じるのだ。

 

「…………海軍には、もう、私は戻れないです。こうしてあの男が居なくなっても、私は海軍にとっての裏切り者。分かってます、分かってるんです!」

 

 私は涙を凍らせて流した。凍った涙はダイアモンドダストのように神秘的にキラキラ輝いているだろう。

 

「だから、褒めてください。よく頑張ったって、よく耐えたって。大好きな海軍の人達に、褒められたい」

 

 微笑むと演技派センゴクさんはグッと息を飲んだ。

 

「本当は抱き締めて欲しい所ですけど、海賊の私がそんなことを頼むのはお門違いですし……ただあの男から無事逃げ通した10年間を、褒めてくださ──」

 

 私の体は大きな体に包まれていた。

 

「よく、っ、良く──」

 

 センゴクさんの涙がボタボタと私にふり落ちてくる。

 

「よく頑張ったな…っ!ドフラミンゴの執着をその身一つで受け止め、私達海兵を守った、リィン、お前は私の自慢の娘だ…………っ!」

 

「う、っ」

 

 そこまでやるとちょっと海軍が悪いふうに見えるので私はこれを美談にすべくその胸に抱き着き返した。

 

「うぇええええん!!!パパあああ!!怖がっだぁあぁあ!!」

 

 じーっという鳴き声とパシャパシャという鳴き声が聞こえる中、私はしばらくセンゴクさんにしがみつき泣き叫んだ。

 

 

 

 ドフラミンゴ、お前のわかりやすい被害者をここで作成したぞ。さぁ、パーティーの始まりだ。

 今から仕込みの海兵が『私へのドフラミンゴからの被害』を語り始めるので、覚悟するように。

 

 あっ、牢屋の中だったか♡

 

 

 

 ==========

 

 

 

「こいつは酷い」

 

 世界中のよく知る方々の感想第一声はこれだった。そうなのっ、ドフィさんってとっても酷い人だったのっ!

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