私は少し長くなりそうなのでくつろぎ用のソファと机を取り出して牢屋の前に置き、取り押さえられているドフィさんを見下ろしながら優雅にティータイムと洒落こんだ。
「ええっと、大前提の話。私はドフィさんに『望み通りの対応』をしてもらうことを目的として動くすてました」
「望み通りの対応というのは?」
「すごく簡単に言うと『ドフィさんが孤立すること』『幹部や協力者を遠くに行かせること』──それらを全て『ドフィさんが考えて出した結論』だと疑わせないように誘導する。っていうところです」
結論までの脇道を丁寧に丁寧に潰して行ったんだから。
「まず魚人島を出た私たちはパンクハザードに上陸しますた。お客さんとして白ひげのマルコとビスタも居ました」
偶然だけど、すごく分かりやすい『繋がり』と魚人島で出会ったからね。
私はほぼ無理矢理、ルフィの押しの強さを利用してあの二人を船に乗せた。ドレスローザまで乗せるつもりはなかったけど、それでも外部からの目撃情報があるか、一味の人間がポロッと漏らすレベルにね。
「パンクハザードではシーザーが子供を誘拐し監禁していました。麻薬付きで。これは本当に……上手い話が転がってたわけですよ……。他にも兵器の開発をしていましたが。世間的には後者の方が大きくとも、私的には前者の方が大きかったです」
「それは、
「はい!子供は、存在するだけで象徴になりますから」
分かりやすい被害者。
加害者にはならない立場。
世間的に『子供が巻き込まれた事故がありました』というニュースが飛び交って、非難を集めるのは子供側ではなく大人側だ。真実はどうであれ。
今回は真実も子供が被害者なので、より一層リアリティが増すってものよ。
「ローさんはドレスローザで合流、またはそれ以前にシーナ……協力者に連れてきてもらう予定ですたので、私の協力者がパンクハザードに居ました」
私はこの時点で巻き込む予定だった餌をベラミーからシーザーに変更した。
「で、なんやかんやあるすて、ドフィさんからの連絡もありますたよね?シーザー宛に」
「あぁ……。俺はたまたまだが、ヴェルゴをパンクハザードに派遣させていた。ローもいた事だしな」
「ヴェルゴ中将はちょっと誤算ですたねぇ。本当はスモさん使って海軍側の動きをわざとリークさせて戦略を絡め取るつもりだったですけど、まぁどの道動かせなくするのは決まっていたので結果的に最適解」
ヴェルゴがドレスローザで海軍と戦い始めたら被害は少なくなかっただろうしね。
「私もスモさんも、元々ヴェルゴがドフィさんの犬だってご存知ですたから」
パンクハザードは麦わらの一味の実力を測って、ドレスローザでの戦力振り分けに変更がないか確かめるための行動でもあった。
ドフィさんは『パンクハザードに来たからスパイがバレた』って勘違いしただろうけど。
「一体いつから!?」
「え、6歳」
「なんでだよ!!!!!」
そりゃシーナと出会ってからだよ。
シーナ、初対面の6歳の女の子相手に情報ボロボロ零してくれましたからね。誘拐された6歳の私(箒破損中)を海軍本部まで送ってくれましたから。その間にね。
今思えば、私がエースくんだって気付いたからベラベラ喋ってくれたんだろうな。
おかげでヴェルゴ中将のことはずっとスパイだと分かっていながら行動していたよ。
「その時、私には隠さねばならない存在が二つありますた。ひとつは革命軍、もう一つは情報屋」
シーナを覗いた情報屋、つまりはテゾーロのことがメインだね。テゾーロは対ドフィさんの最終手段だったから。
だから私はドフィさんに麦わらの一味を注目するように餌をまいた。
「幾つか腑に落ちないところがあるんだが、シーザーに手を出してSADにまで手を出せばカイドウが黙っていないだろ?」
「ですね」
「リィンちゃんが麦わらの一味という隠れ蓑にカイドウの恨みを向ける、という手が違和感で。俺の考察は間違っていたか?」
「いいえ、それどころか大正解です」
違和感を抱くのも当たり前だろう。
「だってそこ、私の考えるすた作戦じゃ無きですもん」
「は?」
「私の協力者…もっと言うすれば、ルフィ達兄のことをワンチャン殺せたらラッキーって思う人達が考えるすた作戦です。故に、麦わらの一味に対するリスクを全く度外視して考えますた」
あっ、それからもうひとつあったね。
「ドフィさんには新聞から情報を仕入れて欲しかった故に、麦わらの一味とローさんの同盟を大々的に発表が必須ですて」
「お前……それで麦わらの一味の出航に合わせて新世界の入口に海兵を多く配置していたのか……」
「はぁ〜い!もちろん!」
大きな大きな目くらましになっただろう。ドレスローザに辿り着くまでにローさんを回収し、もしくは回収出来なかったとしてもドレスローザ最終的に本土で合流予定だった。
==========
「──だから俺、ローの後をずっと尾行てたんだよ」
「どっかから視線があると思えば!」
シーナは麦わらの一味とローに向かって説明を加えている。
「麦わらの一味がパンクハザードに来なければローをさりげなくフォローして出航させ、二人で麦わらの一味……というかリィンに迎えに来てもらう予定だった」
「だが偶然、お前らはパンクハザードに来た、と」
「そういうこと。いやぁ、パンクハザードで失敗したローを救う、ってことで恩を売れるかなって思ってたんだけど、麦わらの一味がパンクハザードに来ちゃったからなぁ」
その言葉を聞いてウソップは『タチ悪い』と呟いた。全体的にリィンと作戦を立てる方向性は似ているのに、人を扱うことに関してはリィンの方がマシなんだなということに気付いてしまった。
……敵に対する容赦の無さはダントツなのだが。
「その間、俺は既にドレスローザに上陸し、モーリーと隠れ道を用意した状態であえて玩具になった後だった」
「多分だが……麦わらの一味の完全復活の新聞が配布されたすぐ後くらいか?」
「おっ、そうそう。トラ男の言う通り、それが合図だったんだ。俺たちはスピード勝負だったから、革命軍をドレスローザに巻き込む準備が終わったら即座に記憶を消させた」
サボという革命軍との繋がりは大きかった。
ドフラミンゴの油断を誘う為にも、玩具の解放は必要不可欠だったのだ。
「『抜け道を隠す』『革命軍の繋がりを隠す』そして『玩具に対する手段を取ってないと思わせる』為に、俺はドフラミンゴの思考回路から消し去る必要があったからな」
「玩具に対する、手段を取ってない。というのは?」
「それは……まぁちょっと後で説明かな。所でロビン、不思議だと思わなかったか?」
「何から何まで不思議なことだらけで何に対して疑問を持てばいいのか分からないわ」
「ははっ、確かに」
軽く笑ったサボはそばにいたルフィの肩に手を回した。
「なんでエースが居たと思う?」
「え、それは……戦力的な問題かしら?リィンか貴方が呼んだのでは無い?」
「実は、四皇の存在が必要だったんだ」
リィンの兄、ルフィの兄、そこを隠れ蓑にして裏に目的を隠した。
「エースは……白ひげを。ウタは赤髪を。あの船には四皇を動かし得る存在が二人もいる」
「おいおいおいおい、それじゃリィンは四皇を動かしたんじゃないだろうな!?」
「そっかー、ウタってシャンクスの娘だったな〜。俺忘れてた!」
そこでサボはローに視線を向けた。
「トラ男はまずどんな作戦を立てていた?」
「……カイドウとドフラミンゴをぶつけるつもりだった。ドフラミンゴの最大の取引相手は四皇だ」
そう、ここまで四皇の繋がりが深い。
だから誰だって『リィンなら四皇を扱う』と思うはずだ。
「トラ男の足取りを調べると、どうやってもカイドウの作戦にたどり着くだろ?それからエースのところには別の四皇の関係者もいる」
そしてドレスローザに至るまでの船の上で、リィンの発言を思い返したロビンは口元に手を当てた
「……もしかして、全部罠」
==========
「シーザーは私にとって餌でした。ドフィさんを誘導するための」
大前提として、シーザーはドフィさんに偽情報を流すためだった。
だから船の上で麦わらの一味に言っていたことは罠だ。
「私、絶対シーザーを奪われなく無かったです。だってドフィさんとカイドウとぶつけるにはシーザーの確保は絶対必要じゃなきですか」
「あ、ああ」
「で。そうなると工場も狙うでは無きですか」
「でもリィンちゃんに関してそれは『囮』だと思った。工場まで手にかける必要性は無いよな?」
手札はいくつかあった。
だからあえて囮を2個使った。
「──だから逆に、奪われてしまえばいい」
絶対に奪われたくないと思わせる必要があったから、そこに戦力を固めて目眩しの囮を放った。
囮は工場。
そして私自身だ。
「四皇が3人も現れるかもしれない状況、海賊と海軍を両方扱う状況、ドフィさんにとって指揮役が誰かなんて考えるまでも無きです。じゃあ誰を止める?多少の犠牲を払ってもどこの歯車を壊せば良き?……私はねぇドフィさん、貴方が私を評価してくれていることを、十分ご存知なのですぞ」
私のこと、止めざるを得ないよね?
私がいたら色んな立場の人動かせるもんね?
リアルタイムで手を打てる人間、止めたいよね?
「ずぇーーったい、私、ですもんね?ドフィさんの一番の脅威!」
「腹立つ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
ガンガンと海楼石を床にぶつけ始めるドフィさん。私は高笑いが止まらないよ。
「止めたいよねぇ?読めないもんねぇ?なら作戦実行されたり、指示出される前に、即時に確保したいですよねぇ?」
「あ゛ーーーっ!」
「ざあんねぇん!もう、全部の作戦はとっくに作り終わるすてたんですよねぇ!!!!」
私のことを誘拐すると思ってたんだよ。
わんちゃん殺されるかなって思ったけど、ドフィさんは私のことを正しく評価してくれている。
「シーザーを失うのはカイドウを敵に回すけど、私を殺すすれば世界を敵に回すもんねぇ???」
あっはっはっはっ!
これが私の伝手だよ!!
誰が動くと思う?いったい、誰が?
正解は世界でーーーす!!
「だって、私誰も信じるすてないですもん。自分の手で戦況を操作したいじゃなきですか。ドフィさんもそれを想像すてたのでは?」
「まぁ……」
「だからもう、あえて逆手に取るすた」
例えば……うーん。
「ドフィさん、シーザーからどんな情報ぞ来た?」
「あ?」
私の問いかけに苛立ちながらもドフィさんは数えるように答えてくれた。
・パンクハザードに白ひげの2人が居た
・シーザーの護衛にジンベエを使った
・リィンは臨機応変に作戦を指示する
・麦わら達だけじゃドンキホーテファミリーと相性が悪く勝てない
・シーザーの死守
・交渉の余地が無い
・四皇を持ち出す可能性が高い
「──ですよねぇ!!!!!」
だってそれ。
「ぜぇぇんぶ、嘘ですもぉん!罠ですもん!」
「本当に性格が悪い」
「四皇?使う気ありませぇん!作戦?とっくに作ってまぁす!ジンさんが護衛?直接戦闘が苦手な足手まとい達を船に載せてるのに!シーザーの死守?ハハッ!!!」
「煽り方に品がねぇ!!」
だからシーザーと私の存在を重要視した時点でドフィさんは読み違えたんだよ。
ダメじゃないドフィさん、敵の手の上で、踊っちゃあ?
まぁ私がフリーになればそれはそれでなんとでも出来るのかもしれないけど。
「ドフィさんはさぞかし『私がどうやって玩具を解放するのか』という難題に頭を捻らせていたでしょう。まぁ?私も?玩具に関しては何も覚えてなかった故に……焦りはしてますたよ?焦りは」
でも私がここまで完璧な作戦を打ってるのに玩具の作戦に関してすっぽり抜けてたのは、内心焦ってたよ。
「〝戦術を立てる時は、相手の戦術を計算に含める。〟でしたっけ?」
随分カッコつけてましたもんねぇ!
「ドフィさん私のこと大好きですぞねぇ?私もだぁいすき、手のひらの上で転がる無様なドンキホーテ・ドフラミンゴ(41)♡」
「世界中を敵に回しても、俺はリィンちゃんを世界のために殺さなきゃならない気がしてきた」
「ええ〜?どうかなぁ?」
クスクスと笑って見せれば、センゴクさんが気づいた。
「リィン、言語がまともになっているが、わざとだな?」
「はい!」
私が不思議語を喋らなくても会話出来ることくらい、ドフィさんならわかっているだろう。
「ドレスローザでは『幹部や協力者をドフィさんの作戦通りに対処させる』という方向性に重きを置いていました」
「……それで、四皇を持ち出したのか。一切四皇の手を借りる気なんて無かったのに、さぞかしこの後四皇が来ると思わせた」
「その通りですぞ。だって私をよく知るならそう思う。七武海やら、幹部やら、温存しどこからの奇襲にも備える必要ぞあった。ヴィオラ王女を除いた戦力で。……さぞ、頭を困らせたでしょう、さぞ七武海が居て良かったと安堵したことでしょう!」
ドフィさんは全てが上手くいっていると勘違いしてもらわなきゃ行けなかった。
「──架空の敵に怯える姿、もっと見るすたかったなぁ?」
「クソガキ」
だから『決死の思いでシーザーを取り返し』『私の救出』を麦わらの一味達にしてもらわなきゃならなかった。
そこで用いられたのはサンジ様と兄達3人。
サンジ様にシーザーの奪還をしてもらえるよう、まずヴィオラ王女に誘導をお願いしていた。シーナが。
そして私の奪還に3人で正面突破して貰えるように誘導してもらった。サボとシーナに。
シーナ、大活躍。
「あとはまあ、ドフィさんが悟った通り。私はサボという繋がりを意図的に忘れ、サボだけが玩具の対処をした。そしてあえて──私の肉体をテゾーロに封じてもらった。海楼石+アルファで」
「テゾーロはリィンちゃんの手札だったってことだな?」
「そりゃそうぞ!ドフィさんなら私を必ず拘束して、無力化すると思った。その無力化が……入れ替わった時のドフィさんへの拘束になると知らず?念入りに念入りに、逃さぬように頑張ってますたねぇ?」
おもちゃを解放させたあとは、ドフィさんはパニックに陥ると思っていた。
今までドフィさんの手の内に居たと思っていた全ての情報が崩れ去って。何が何だか分からなくなっていたはず。
「そこが最大の隙」
ニッコニコなのだ、私は。
「あとは私が合図を出し、ローさんに入れ替えさせ、私がドフィさんのフリをして裁かれる……。この後の調理はお楽しみに!」
いやぁ楽しみだなぁ!
これからドンキホーテ・ドフラミンゴがどうなって行くのか!
「この戦いはただの殴り合いじゃなきですよ。情報と準備と人脈のぶつけ合いで、勝つべくして勝つ者だけが生き残る。まぁ勝ち確の戦いなのですよねぇ?」
相手に気付かれない内に念入りに作戦を整えた方が勝ち、だ。
麦わらの一味達が国の中で幹部相手に戦う手札争いも、そりゃー大変頭をひねり散らかしましたよ。
でもそこら辺はテゾーロとヴィオラ王女が二人で情報精査をし、サボが戦況を組み直すというやり方で何とかしてもらいました。
そこら辺は今の私には分からないので細かくはサボに聞かなければならないけど、死者ゼロ名という報告だけでも私としては満足だ。
==========
「──というわけで、俺はひとりで玩具になって、パニックの引き金役をしなきゃならなかった」
「別にそのまま忘れ去られていても良かったんですがねぇ」
玩具に関しては事前にサボの根回しもあった。
時が来れば元に戻るから、と。キュロスもその言葉を知っていたため強く頷いた。
「元々玩具達には共通意識があったから。彼の言葉に半信半疑だが希望を持っていた」
「リーはわざと目立つコロシアムでクロコダイルの手を待ち、『これ以上打つ手が無い、ピンチだ』と思わせるために捕まった。麦わらの一味が知らなかったのは状況にリアリティを持たせるためだ」
「しかしながら、リィンという小娘一人が囚われただけでドフラミンゴが身動きを制限出来るとは思えぬのだが」
リィン慣れしていない侍の錦えもんが疑問符を浮かべる。
「それはまぁ、ドフラミンゴってリーが6歳くらいの頃から執着してるみたいだから、幼児趣味の変態野郎の考えは理解できない方がいい」
「理解は出来ないが納得はしたでござる……」
さて、気を取り直して麦わらの一味全体の動きを復習しよう。
「リー側はさておき、俺たちはピエロとトラ男以外でドンキホーテファミリーと七武海を抑えなきゃならなかった。ドンキホーテファミリーにドフラミンゴの邪魔をさせないように、食い止める必要があったってわけだ」
「……もしかして俺が鷹の目に会ったのは偶然じゃねぇのか?」
「そう!いいな、その通りだ。トンタッタ一族の拠点からリク王家がいる方向に向かおうとすると、赤髪の拠点の方角に出る。天夜叉なら赤髪対策に鷹の目を動かすだろ?」
ダグラス・バレットはクロコダイルとピーカを抑え込むために動かした。
そしてフランキーを陽動役にし、工事の破壊…と見せかけて幹部を釣り上げていた。
「幹部は主にルフィとエース。それから他の海賊は賞金をチラつかせた上で時間稼ぎ」
「えぇ、もちろん払いますよ?賞金!でもまぁ…皆海軍に回収されたようなので、誰が討伐したか一切合切分からなくなってしまい……」
残念だと言わんばかりにテゾーロがため息を吐く。わざとだと皆分かったので無視をすることにした。
「ロメ男がいい感じの能力だったし、俺もカナエさんの能力を手に入れたし、元気を吸い取って幹部の完全無力化。あと狙撃手の鼻!」
「誰が鼻じゃくらぁ!」
「お前便利だなぁ、かなりの遠距離射撃が出来るから、戦場の錯乱にピッタリだった。強者同士の戦いでは外部からの援軍の存在をチラつかせるだけで大きく崩れやすい。特に種?あれが特殊だったから助かったよ。革命軍にもぜひ紹介して欲しい」
「そっ、そんなこと言っても嬉しくねーぞ!ってチョッパーなら言ったけど、俺はちょー嬉しい。ルフィとリィンの兄ちゃんの助けになれたんならすごく嬉しいな」
鼻高々と言わんばかりにウソップが胸を張る。
「正直、ゲッコー・モリアは想像してなかったんだよ。だけどそこら辺は、コロシアムの海賊たちに頑張って貰った」
もし何かあった時はウタの能力をフル活用するという最終手段はあった。
しかしそうなると、エースのスペード海賊団が世界から睨まれやすい。
「(それに、ドフラミンゴの醜聞に、海軍と海賊側で大きな英雄を作りたくなかったってリーは言ってたよな)」
この作戦で人の目を集めるのは一体誰だろうか?
ローとルフィの海賊同盟?
それももちろん目を引くだろう。
白ひげ海賊団から独立したスペード海賊団?
もちろん、デビュー戦にふさわしい動きをバレットがしただろう。
だが、あくまでも海軍や政府が見逃せない、黙ってられない目撃情報ってだけで──ドレスローザの救済に関わった訳ではない。
「(話題になる人物はドフラサンゴとドフラミンゴ。このふたりだけ)」
そして分かりやすい被害者の代表としてリィンがついに動いた。
「いやぁ…………怖いなぁ……」
サボは相変わらずの腕前に鳥肌が立った。
「──で、ここで戻るのはルフィや俺達がなぜリーをちゃんと助け出そうとしたかなんだけど。それはドフラミンゴに『リーが無力なまま何も出来ない』と油断させるため」
ローを見たサボは軽く笑って合図を出した。
「……。ドフラミンゴの所へピエロ屋と向かって、妹屋からの合図のその時──俺はドフラミンゴと妹屋を入れ替えた」
「入れ替え、た?」
「ドレスローザ上陸まで妹屋が遊んでいただろう。麦わら屋や、ピエロ屋と、入れ替わって」
「あーーーー!!!???」
思い出したようにウソップが大声を上げた。
キュロス達は首を傾げている。
「俺の能力は体と精神を入れ替えることができる。今考えれぱ、妹屋はピエロ屋と入れ替わって身体のチューニングをしていたんだろう」
「な…!つまり、つまりは、あの放送のドフラミンゴはまさか!?」
「あぁ……──あれは妹屋が中に入ったドフラミンゴだった」
麦わらの一味は揃って頭を抱えた。
そ、それは最強の手段を手に入れてしまったのではないのか、と。考えうる中で1番与えてはならない手段だ。
「だ、だからリィンって捕まりに行ったのか」
「そう……」
「それで都合のいい展開の放送だったのね」
「そう………………」
「やけに素直に図星をつかれると思ったら」
「そう……………………」
すげぇタチ悪い〜!
「なるほど、じゃあローさんは今後もリィンちゃんに良いように扱われちゃうわね……」
「一生涯の付き合いになりそうで今から怖い。俺、まだ妹屋との『契約』があるんだ……」
「可哀想………」
怪我無し、とはいかなかったが正直ドフラミンゴと戦わなかった分余裕がある。
皆致命傷は避けている。やはりというか、七武海を相手取らなければならなかったゾロを筆頭に消耗は激しいが、ローなんかは体力の消耗だけで無傷だ。
「正直こんなにあっけなく終わって、終わった実感がない」
「でも、ドフラミンゴはすごく怯えてると思うわ」
ビビがそっとローの肩に手を置いた。
ビビには気持ちがすごく分かる。なぜって?
「──ボスも未だにとても怯えているから!」
「………ボスって?」
「サー・クロコダイルよ」
つまりは過去の犠牲者。
ローは断片的に知ってる事件だったがドレスローザを味わった今は分かる。これ、クロコダイルも同じ目に遭ってるな、と。
「じゃあ、ちょっと俺出てくるから」
「しっかりやってこいよ」
「言われなくとも」
シーナはそろそろかな、と言いたげに腰を上げた。その様子に思わず全員が警戒してしまう。お前、まだなにか企んでるのか、と。
「俺がドンキホーテ・ドフラサンゴだなんて架空の人物を作ったのには理由があるんだよ。それは……まぁリィンがまた後で教えてやるから」
そしてローの頭に軽くポンっと手を置いたあと──盛大にすっ転んだ。
「いっっっでぇ!!!」
「転ぶなよオメーよー」
「タバコ咥えてないだけセーフセーフ。ほんじゃ行ってくる」
ローは、思わずと言った様子で顔を上げた。
==========
「で、ご質問は?」
私はお茶菓子を取り出してセンゴクさんに私、雁字搦めのドフィさんに問いかけた。
「リィンちゃんがすっげぇ念入りに俺の事嵌めようとしてるのはめちゃくちゃ理解した…」
「それは僥倖ぞり!」
こちとらドフィさんを貶めるために半生注ぎ込んでますからね。クロさんの方が先にひょんなことから復讐叶っちゃっただけで、本来ならお前を苦しめる方が先だったんだから。
幸い、今の王族に悪印象は抱かせてないみたいだから上手くいったよ。
「これからどうなんの?」
「天夜叉の行く先はまぁ悲惨ぞり?聞きたい?」
「きっ、聞きたくない」
「少なくとも、ドフィさんは天夜叉の名前もう名乗りたくなくなるのでは無いかなと」
「そんなに!?」
絶望です、と言いたげな表情だ。
まぁもちろん、全ての噂と結果はドフィさんの元に届けられる。
「私、ドフィさんには天夜叉って名前、もう名乗らせるつもり無きですよ!」
「本当に嫌なんだけど……」
「大丈夫大丈夫」
私はにーっこりと笑顔を深めた。
「まずはあの放送、保存してるので世界中に広めるでしょ?それからドフラミンゴ現象みたいな感じで心理学のタイトルに入れるでしょ?海軍訓練学校の教科書に犠牲者ゼロで乗り切った伝説の代表例として載るでしょ」
「やっ、やめて」
まぁ語るより体験する方が早いのでそこから先は直接世界を目にしてもらおう。
世界中でドフラミンゴの名前が──遊ばれる様をね!!!
「うふふっ、ふへへ、ぐへへへ!」
「センゴク!センゴク助けて!お父さん!!!」
「誰がお父さんだ。リィン、他には何をするんだ?」
「このクソ海軍!!!」
「──ミーム」
「……は?」
「だから、流行にするですよ、ドフィさんのこと。ミームとして」
「は、はは、はははははは、頭おかしいんじゃねぇか!!!???」
コンコンコンコンと長ったらしいノックの音が響いた。
「おっ、きたきた」
私は立ち上がって扉の方に向かう。
センゴクさんは立ち上がろうとするけど、そのままでいるように手だけで指示する。
「ドフィさんさ、本当に聞くこと無き?」
「まぁある。あのドフラサンゴって、結局なんだったんだって話がな」
「そう!そうなのです!」
なんで架空の人物を使ったのには理由がある。
「今回あのドフラサンゴを演じた人なのですが」
私は扉を開いた。
「──おっれでーーーーす☆」
そこには海兵の変装をしたシーナが元気よく転がり込んできた。
「出やがった…………シーナだっけか……」
なんで出るんだよと言いたげにドフィさんが嫌そうな声を出す。
センゴクさんは険しい顔している。
「さぁてドフィさん」
「なぁドフィ?」
私はシーナにもたれかかってドフィさんに問いかけた。
「私が幻のエースを利用したって予想してますたけど、実は半分当たりで半分間違いなのですよ。幻のエースは私の伝手じゃあ無いです」
「じゃあ誰かって?そこで答えが出るのは俺だ。俺は幻のエースの、まぁなんというか、一瞬弟だった、的な?」
センゴクさんはその言葉に驚いた顔をしている。センゴクさんは私がエースくんだと知ってるほぼ唯一の人間。
「俺はな、お兄さんに助けられたんだ。家族がみんな居なくなった時に、海軍まで送り届けられた。親も死に、兄も居なくなり、頼る先が無くなった絶望のタイミングで。だから俺、あの時死ねなかったんだ。お兄さんに会うために死にものぐるいで生きなきゃって」
シーナは銃を突きつけた。
「──〝なぜ俺の邪魔をする〟と。お前はかつて俺に聞いたよな」
「…………?」
「今更だけど答えるよ。俺が、お前と一緒だからだ。お前が家族を大事にするように、俺も家族が大事だから、必死に邪魔をしたんだ」
ドフィさんはなにかに気付いた。
動揺したように声にならない息を吐いている。
「なぁ、兄上?」
「……………………偽物?」
「だーー!!なんでだよ!リィンお前のせいだぞ!お前が割とトラウマをえぐるためにはなんでも出来ちゃうせいで!俺の生存が疑われる羽目になる!!!」
「うるさいシーナ!ところであっちは?」
「予定通り。はぁ〜〜〜俺にはリィンっていうとっても頼りになるかっこいい家族が出来ちゃったのでぇ、兄上はお呼びじゃないんだけど……。叩きのめすなら細部まで」
「分かる〜〜!」
キャッキャッと楽しんでいたら、同じく動揺していたセンゴクさんがガバリと立ち上がった。
「ロシナンテ、か……?」
「お久しぶりですセンゴクさん。あっ、俺海軍に戻るつもりは無いんで!今変装してるだけであって!俺リィンの所離れるつもりは無いんで!というかガチで戻れないっていうか……」
「──ッ、リィン!!お前だな!!!???」
「もー……すぐ私のせいにする……親にして子あり……」
シーナが生きてたのは私のせいじゃないでしょ。せいぜい匿ってたくらいだよ。
「俺、ひょっとして愛されてる?」
「そりゃそうでしょ。シーナのためにスモさんも本気出してたし」
「えへへ〜。ローにもあんだけ愛されてるし、俺って幸せもんだな」
未だに混乱の最中にいるドフィさんに私はしゃがんで語りかけた。
「ね、ドフィさん。何故サンゴだなんて架空の人物を私が作ったと思うです?」
「…………ロシナンテが生きていることを隠すため、か?」
「残念!」
ここまで当たりばかりだったのに、問いかけに外れたドフィさんに目を合わせる。
「あのねドフィさん、今から私、天夜叉の名前を醜聞の塊にするです。死んでも名乗りたくなる、そんな名前に。ドフィさんのプライドから何から何まで、名乗りたくないとぐちゃぐちゃになるまで」
「だから兄上には、ドフラミンゴの名前を捨ててドフラサンゴになってもらいます!」
「………………は!?」
なんのためにシーナが変装してサンゴの旗を広げていると思ってるの?
シーナはドフィさんそっくりなんだよ。
そして今、ドフィさんの髪を
「──ドフィさん、七武海、やる気ない?」
その七武海ね、武器商人で時々色んなところに寄付してたドフラサンゴって言うんだよ。
というか拒否権があると思う?さぁ、死んでもドフラミンゴだとバレたく無くなる状況を作り出そうね。
3/20に9周年を迎えました!驚き……