2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第4話 迷子と言われると微妙な子猫さん

 

 あー、寝た寝た。

 結局寝れたんなら別に魔法っぽいの使わなくてもよかったんじゃね?とか思ったけどまぁ使えると分かっただけでも進展進展。

 

 

 身体に異常なし。ちゃんと動きます。首もある模様。

 

 ただ、先程の室内とは雰囲気が違います

 

 

 Q問題です、ここはどこでしょう

 Aわかりません

 

 寝てる間にどうやら移動した様子。でも変わらない叫び声は聞こえる。

 

 はぁー。辛い。静かにしてほしい。なんだ、もう一回マッチの灯火(ともしび)みたいな魔法しておきますか?

 やめておこう、あんな弱々しいとは思わなかった。

 

 別に強くなって世界征服だぜー、とか勇者になるぜー、とか思ってないけどセオリーじゃない?魔法と剣の異世界生活のセオリーじゃない?

 

 この世界で非常識だったら出会い頭に非常識と罵ってきた堕天使様に日常返せとぶん殴りに行くと誓います。生まれて何十回目かの誓い。

 

 はぁ、ただ座ることが我の運命。時と流れに任せて悠々と過ごしてみたいものです。

 だから騒がないでいただこう。

 

「だからガープぅ!てめぇは何度言ったらわかんだい!ここは託児所でも保育園でもないんだよ!」

「お前さんらを捕まえんだけええじゃろうが!」

 

 ゴッツイ爺さんにガラの悪そうなおばさんよ。私の睡眠を邪魔して面白いか、楽しいか。

 

 私どんだけ睡眠に拘るんだっていう話ですよね、わかります。仕方ないじゃないですか、私まだ1歳くらいですよぉ?睡眠欲が滞ることを知りません。

 

 ん?私冷静?悪い人だったらどうする気だ?

 大丈夫、流れに任せるしかないと思うんだこの場合。よく考えてみて、喋ることもままならない赤ん坊の私がどう考えても体格のいい大人相手に逃げただのあーだこーだ出来ると?

 

 ムリムリムリムリ、自然が一番。

 

「……」

 

 流れに任せるとは言ったけど不満はある訳ですよ。

 

 そう、いつの間にか真横で私を見ている君は私の首根っこを掴んでどうする気だ。

 人質に取っても役に立たない自信しかないぞ舐めるなよ。

 仕方なく目線をそちらに向けるとそこに居たのは幼い子供でどう育てたらこんな目付きになるんだっていう感じに眉が寄っていた。

 

 なんだか良くわかりませんが苦労したんでしょうね。

 

 何だよ私誰目線だよ。

 

 そしてこんな次々と疑問しか湧いてこなくて自問自答を繰り返して奴誰だよ、私だよ!!悪いか!!

 じゃあその原因は誰だよ!!

 

 あのクソジジイだよ(真顔)

 

 

 興奮とか通り越して冷静になって言ってる気がする。

 

 日を重ねる毎に貴方への想い(憎悪)が止まりません。貴方の姿を思い浮かべるだけで私の胸はドッキドキ(高血圧)して思わず束縛よろしく首まできゅってや(殺)っちゃいそう

 

「おい、お前」

「にっ」

 

 『なに』って言おうとしました。努力は認めてください。

 

「こっち来い、巻き添えくらうぞ」

 

 巻き添えって何。いや、意味は分かりますよ?何で巻き添えくらわないといけないの?

 

 その子は私をつまみあげると人の合間をぬって外に飛び出した

 つまみあげんなせめて抱えろ。

 

「話は大方聞いたけど……はぁ…あのジジイも本気かよ…こんなちびっこい奴を普通山賊に預けるかぁ?ちっ、めんどくせぇことしやがるぜ、海兵に仕立てあげたいんならテメェで何とかすればいいものを」

 

 おぅ…なんですかこの卓越した判断力を持つ比較的常識人であろうお坊ちゃんは。

 こんなに考えをつらつらと言えるとは驚き桃の木なんとかの木ってやつですよ。

 

 うんうんと思わず頷く。

 

 

 

 

 つらつらと〝言える〟?

 

「ほぎゃん!?」

 

 言えるって事はあれですよね?たった2、3日前まで単語すらも聞き取れなかった耳が進化したってことですか!?それとも脳みその突然な進化!?いや、嬉しいんだけどね〝言葉がわかる〟って!

 は…、まさか私に眠れる才能が開花したとか……。

 

 

 とにかく違和感の正体に気付くの遅すぎやろ私という奴は。

 

「ん?どうした?」

 

 その少年は人の頭をグリグリと押さえつける様に撫でて来る。

 

 いたたたたっ。

 いくら子供とは言えども手加減無しで撫でられるのは痛い。手加減して!お願いします!

 

 いやそれ以前にこの子なんと言いました!?海兵!?山賊!?私の知らない間に何があった!?

 

 いや、むしろ知ってる間に何かあったのかもしれないけど私の眠れる才能がまだ開花してなかった時だからクリーナーどこぉおおおお!!!!

 

 

 

 こんにちは、私リィン。今冷静な頭を探してるの。

 

 

 思わず肩を落としてため息を吐きそうになるけどそれを静止させたのは新たな登場人物だった。

 

「エース!さっき海賊貯金を増やして…………ん?その子は誰だ?」

「見りゃわかんだろ…、餓鬼だ」

「いや、それはわかるけど何でこんな森に連れてきたんだ?何処の子供?」

「ダダンの所に置いてあった」

「へ?」

 

 間抜けな声を出した子を無視してこちらに目線を合わせると自己紹介を律儀にしてきた。

 

「あぁそうだ、俺はエースって言うんだ。よろしくな!お前の面倒、ダダンが見れれるわけねぇから俺が代わりに見てやるよ」 

「あ、お、俺はサボ!エースが面倒見るんなら俺も面倒見るよ!よろしく!」

 

 

 こいつらは普通赤ん坊と言われてもおかしくない子供に普通の挨拶…いや言葉が分かるとでも思ったのだろうか。

 別に世話する人が誰であろうが問題ないけどおもちゃじゃないんだぞガキンチョ共。

 

 

「リー!リィんぅ」

 

 金髪の男の子がサボで黒髪の男の子がエースね、OK覚えた。

 髪色は。

 

 慣れてないせいか顔の判別が付きにくくて困る、まぁ髪色が違うしほかの人と体格が違うからそれで判断出来るだろう。

 

 ほらあれだよ、アイドルを見ても全部同じ顔に見えちゃうスペシャルマジック。年寄かよ。

 ちょっと凹んだ。

 

「リー?へぇ、お前リーって言うのか」

「リィじゃないのか?」

「だって最初にリーって言っただろ」

「絶対違うって。リィだよ」

 

 お前ら両方違う。

 

 言葉が分からなくても何度も呼ばれていたら『あ、これが私の名前か』って思って使ってるけど実際合ってるのか分からない。

 まぁいいさ細かいことだ。

 

「分かったよ、じゃあリーだね」

「おう!改めてよろしくな、リー!」

「ぶも!」

「変な返事」

「はにょ?」

 

 聞くのと喋るのとじゃ難易度の差が激しすぎるEASYからHARDにくら替わり。イジメかな。イジメだろ。

 クソジジイ、少しは配慮して。ちゃんと喋れる様にして。

 

 余談だけどこうやって聞き取れる様になったのはあのクソジジイの力だと思ってる。

 本当はどうか分からないけど80%くらの確率で『まさか特典!?』みたいに思ってますだから眠れる才能は忘れろあれは悪ふざけだちくしょう

 

「俺たちよりちっさいな…」

「うん、だから連れ出してきた。踏み潰されたら一発だぞ」

「可愛いな」

「それはどうかは分かんねぇだろ」

 

 おい。

 

 いや別に可愛さに拘ってるわけじゃないけどお世辞でも使えこのたれ目無神経クソガキ。

 

「あ、ジジイが帰っていく……」

「じゃあ俺も今日はここまでかな。明日からその子連れてくるのか?」

「うーん、海賊貯金貯めにくくなるよな。でも家に残すと心配だし…」

「ぽぎゃ」

 

 声を大にして言います。家に残してください。

 

 ここは森ですね、異世界ですね。よぉぉぉく考えてみて、魔物いそうじゃない?もし魔物がいなくてもイノシシとか出てきそうじゃない?小さい子がいるってことはある程度安全性は確保されてると思うけど心配なものは心配なんです。

 

 誰だ流れに任せるとか言った奴

 いーんだよ!身の安全第一!話を聞いてもらえる相手だから自分の意思はなるべく言います!

 

「一緒に来たい…のか?」

「ぺも!?」

「そっか、分かった。サボ、明日からリーも連れていく」

「分かった。落とさないような紐探しておくよ。ダダンさんだっけ?用意してるとは限らないし」

「おう!じゃあまた明日な!」

 

 

 

 あれぇ?

 

 


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