2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第44話 人生は不安定で後悔

 

 女ヶ島からの帰途(きと)、硬っ苦しい海軍の制服を脱いでダラダラと飛んでいた。

 

「あー……疲れたぞ」

 

 口調も、態度も、何もかも。

 今更考えると七武海相手に何やってんだか。もう関わりたくない。まあ今後の課題だな…感情的になりやすいのは。

 

 しかしあの海賊女帝、自分勝手過ぎやしないか…。なぜ私が殺されなければならない……。でも七武海招集にも応じない不良七武海だから本部で遭うことは無いだろう、こっちからも関わりたくないし。

 

 とりあえずマリンフォードまでなんの苦労も無く辿り着く事が出来れば上等。

 

 

 

 

 

 

 

 そして私は忘れていた。

 

 私の災厄吸収能力と、ここが偉大なる航路だという事を。

 

──ゴォオオオ!

 

 空を飛んでても関係なしのこの気候(巨大トルネード)を。

 

 

 

 誰だったかな、数キロも飛ばすことが出来るトルネードが稀に起こるって教えてくれたのは…………。

 打ち付ける風に思わず意識を手放した。

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

 夢を見ていた。

 

 楽しそうな夢を。

 

 

 私は居なくて、知らない人が沢山。

 大海原に麦わら帽子が映える。

 

 あァ、海賊になったんだね。

 

 夢だったもんね。

 

 

 

 私もそこに混じっちゃダメかな?

 

 

 

 

 ==========

 

 

「……い、おい…大丈──……──よ…起きろ…おいっ!」

 

 うっるさいなァ…私の眠りを妨げる奴には容赦しないぞ…あともう五分。海賊女帝と会う為に往復で乗った箒のお陰で疲れてるんだから……ただ行きならまだしも帰りに巨大トルネードに会──

 

 巨大トルネード?

 

 うっすら目を開けると誰かがそれに気付いたのか声をかけた。

 

「…! おいお前大丈夫かよい! 意識はハッキリしてるか!? 名前は言えるかよい!」

「………………ぱいなっぷる…」

 

「誰がパイナップルだ糞ガキ」

 

 ぶにっ、と頬を(ひね)られる。

 

「いだだだだだだ! 放す! 放すが最良!」

「んよし、こんだけ元気なら大丈夫だろうよい」

 

 頬を捻っていた手を離して頭を撫でてくれる。

 あ、パイナップルじゃなくて人間だった。

 

「マルコー!手を出してないよねー?」

「サッチじゃあるめェし誰がするかよい」

「酷っ!それ俺の事絶対侮辱してるよな!?」

 

 あー、状況把握出来てきた。女ヶ島からの帰りに巨大トルネードに遭って意識失って、それでここの人に助けられた、と。人間色々と限界を迎えると意識飛ぶんだな………現実逃避?

 

 

「この度は助けるぞして頂きありがとうござりました、です。私ぞ名はリィンと申しますです……」

「ん。偉い偉い」

 

 挨拶にお褒めの言葉を頂いたので嬉しく思いながら

 

「あの、失礼ながら、こちらは何処にぞ…………」

「不思議な喋り方するなァ。リィンちゃん、ご飯食べる?」

「サッチは黙ってろ…っよい!」

「ぐはっ!」

 

 パイナップル頭の人がリーゼントの男の人に肘打ちを食らわした。おお、凄い。

 

「どうして遭難したか覚えてるか?」

 

 着物を着た女の人が目線を合わせて聞いてきた。

 

「んと、巨大トルネードに遭って、飛ばされましたぞ……」

「よく生きてたな…」

 

 パイナップルが…──パイナップル頭の人が感心半分同情半分と言った感じに発言した。いや、ほんとに、全く、悪運強いね、私。

 

「帰り道…分かんねェよな…。どこの島だ?」

 

 え、まさかとは思うけど送ってくれると言うんですか?え、見ず知らずの私を?

 何だ凄いいい人じゃないか。

 

永久指針(エターナルポース)ぞ持ちてるぞ…」

「どこに?」

「アイテ──────」

 

 まて、アイテムボックスの事を気軽に喋ってもいいのか?いや良くない。よく分からん内に手の内晒すのは怖い。

 

「─ポケット」

 

「あいて、なんちゃらってのが気になるけど……ほら、渡しな。オヤジに許可もらってくるよい……──あ、やっぱり病み上がりで悪いが付いてきてくれよい、オヤジに会ってくれ」

 

 ポケットでアイテムボックスを開きながらマリンフォードへの永久指針を取り出しそのままパイナップル頭の人に渡した。

 

「あ、俺も付いて行く〜」

「じゃあ僕も〜、イゾウもね〜」

「は?……いいのかマルコ」

 

「しょうがねェな…勝手に付い…──え」

 

 会話をしながら永久指針(エターナルポース)を見たパイナップル頭の人が動きを止めた。

 

「マリンフォード…………?」

 

「「「前半の海ィィ!?」」」

 

 パイナップル頭の人が一言呟けばこの場にいる残りの3人が驚きの声をあげた。

 

「ま、まままま、待つぞしてくださいです。ここ、どちらで…そしてどこでござりますですか?」

「………偉大なる航路(グランドライン)後半の海、ここは──白ひげの船だよい」

 

 

 

 神は私を見捨てた。

 なんでこんな居るだけで胃の壁をすり減らす様な船に拾われる。

 

 制服着てなくて本当によかったけど…本当にどうしよう。

 知ってるよ、白ひげって四皇だよね。後半の海を支配する4つの海賊団のことを四皇って言うんだよね。海賊王と渡り歩いた最強の海賊なんだよね。

 

「マジカヨ……」

 

 その一言しか出てこなかった。

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

「グラララ…マリンフォードに連れて行きてェ、か」

 

 私の目の前には大男、白ひげエドワード・ニューゲート。

 

「場所が場所だが俺が拾っちまったんだよい…責任もって届けてェ」

 

 横にはパイナップル頭の人もとい1番隊隊長マルコさん。そして後方に他の隊長が数名。

 

 これ、正体バレたらガチで死ぬよね。

 

「あの、無理無謀であれば1人で……」

「この海舐めてるのかよい!ガキは黙ってろ!」

 

 なんで怒られた。解せぬぞ。

 私クザンさんと共に小舟で航海した経験あるぞ?……まぁゲロ酔いだったしヒエヒエの実っていう便利なものがあったけど。

 

「第一さぁ、どうやって巨大トルネードに遭うんだよ…。何、船に乗ってたりしたの?」

「ハルタ、ちょっと黙ってろ……」

 

 カエルの王子様を模した様な人を抑える着物の女の人。彼らも隊長だったのか。

 

 泣いていい?逃げられないじゃないか。

 

「あの、箒さえあれば…」

「だからガキは黙ってろい!…っ、あ、すまねェ…ビビらしちまったよな…」

 

 え、なにこの人凄い良い人(本日2回目)

 

 うわー、海賊に裏切りそうー!やだもー!七武海と直接対決させる様な鬼畜&キチガイ海軍より絶対海賊の方がいいー!

 

「まァ…近くまでなら送れるだろうよ…グララララ…。そこからはテメェの仕事だ、マルコ」

「あいよオヤジ」

 

 〝父親〟と〝息子〟っていう立場は白ひげ海賊団の中では常識。そして何より私がここにいて私は海軍で、何が言いたいかと言うと素晴らしく胃が痛い……。

 

「ところで娘っ子、オメェ名前は」

「リ、リィンとぞ申すぞです……」

「リィンか。いい名前だな」

 

 

「じゃあよ、オヤジィ!宴か!?」

「おォ、開いてやんなァ」

 

「いよっしゃぁぁあ!腕によりをかけて作ってやんぜ!リィンちゃん好きな食べ物は!?」

「あ、甘い物……」

「任せろ!」

 

 えーと、リーゼントの人名前なんて言うんだっけ…、あ、サッチさんだったな。

 サッチさんが慌てて外に出てバタバタしだした。

 

「リィン、ほら、甲板まで連れてってやるよい」

 

 片手を出してくれるマルコさん。うわ、優しさで涙が止まらない。

 

「その…怖がらせたみてェでホントに悪かったよい……」

「気にすると老けるぞ、です」

「助けるんじゃなかったよい」

「ごめんなさいでしたよい」

「真似するンじゃねェよい」

「よーい!」

「返事みたいに使うンじゃねェ!」

 

 

 

 そしてそこからの白ひげ海賊団の皆の行動は早かった。私に1回り絡んだ後急いで宴の準備を始めるんだから。

 海賊の宴に対する執念怖ェ。

 

 

 

 

 

「あ、えっと…マ、ルコさん」

「ん?どうした?」

「電伝虫ぞ貸し出し願い……」

「電伝虫? 貸して欲しいのか? 待ってろよい」

 

 1日や2日で帰れそうも無いからセンゴクさんに連絡入れておかなければ。アイテムボックスには入ってるけど今出すと怪しすぎる。

 

「ほら」

「ありがとうござりましたです」

 

 私の不思議語に苦笑いを浮かべれば送り出してくれた。

 ちょっと席を離れて電話をかける。

 

──ぷるぷるぷるぷる……ガチャ

 

『もしもし』

「あ、セ…───────パパ」

『パパァ!?』

「リィンだぞりんちょ」

『うん、そんな不思議語喋るのお前しか居らん』

「お使いの最中に巨大トルネードに遭遇、のち拾われた故に戻るのにしばらく時間ぞかかりそうです」

『は!?巨大トルネード!?なんでそんなレア物に引っかかる!?どこまで飛ばされた!』

「んぁー……後半の海?」

『は!?』

「とにかくぞ、大丈夫です!」

『まさか海賊に拾われた等と──』

「──以上生存報告ですた!」

 

──ガチャ

 

 これ、どっちにバレても私やばくないですか?

 

 いざとなったら海軍おさらばして七武海ところに逃げ込もう。うんそうしよう。

 

 

 

 

 

 なんで私浮気した夫の気分になってるのかな……災厄なんてくそくらえ。

 

 

 

「リィンちゃーん!呑んでるかー!」

「まだ子供(ゆえ)に呑むぞ禁止ー!」

 

 そして思ってたより海賊がいい人多すぎて泣きそう。

 

 

「サッチさーん!そちらの手にある物は如何なものぞー!?」

「ふっふっふっ、聞いて驚け……チョコケーキ」

「いや、サッチお前そんな驚く事じゃ…」

「私はサッチさんぞ大好きー!」

 

 美味しい物くれる人はいい人です。

 

 今なら美味しい物くれる人について行っちゃうぞ〜!いかのおすしは「()くぜ!()()()菓子は()っごい素敵なので()んでも食べたい!」の略だからな!(※テンション上がってます)

 

 

 早速手に入った甘い物を口に頬張る。あ、これすっごい美味い……、何これ美味い。今までで一番美味い。

 

「こ、これサッチさんが?」

「おうよ!」

 

「私切実にサッチさんお嫁に欲するぞ…………」

 

 いや、これマジで美味しいです。

 

 一応給料もそれなりに貰ってるし貰えなくなっても不思議色あるから何とか養えるし……。

 

 ねェお嫁さんに来ませんか?

 

「ギャハハッ!良かったなサッチ!初めてモテたんじゃねェのか?」

「やめろそれを言うな悲しくなる!」

「リィン…正気に戻れ」

 

「あ、マルコさん虫さんありがとうござりましたです」

「どーいたしましてよい」

 

 サッチさん達と騒いでいるとマルコさんがやって来た。

 私の横に居た電伝虫を手渡せばマルコさんは私の頭を撫でる。私の頭無でるのそんなに好きか。

 

「そうだリィン、空中散歩してみるか?」

「くーちゅーさんぽ。空。あ、箒!私の箒はどこぞ!?」

 

 思い出した、アレがないと私は飛べない。

 いや、他のでも飛べなくは無いけど飛ぶっていうイメージがあの箒にぴったりでそれ以外だと上手く操作出来ない…。あの箒は出会った時から〝空を飛べる箒〟だから、ただの〝掃除の為の箒〟じゃない。全く別物だよ。

 

「箒?あ、ジョズー!海で箒拾わなかったかよい!」

「ん?あァ…でもあれ真っ二つだぞ?」

「!?」

 

 真っ二つ!?え、私の可愛いエリザベス(箒)が真っ二つ!?

 

 比較的大きな体格の男の人が持ってきたのは確実に私の箒だった。

 

「あァ……私の箒……………」

 

 どうしよう。色んな街巡って箒を手に入れるか?いや、でもそこに行くまでどうする?私は風が使える能力として認識されてるから一々箒が必要だとセンゴクさん達に言えるわけも無い…。そうなるとクザンさんに放浪途中に頼むか?いやいやあの人の脱走は今私が阻止してるんだ。 ど、どうしよう。

 

 

 私が落胆しているとマルコさんが横脇から手を突っ込んで持ち上げた。

 

「ひょわっ!」

「──飛ぶよい」

 

 飛ぶ?私考えてた事口に出てうわっ!

 

「と、とととと鳥、青き鳥!」

 

 マルコさんが鳥に変わった。

 蒼い炎を(まと)った翼、黄色い尾。触れてるのに不思議と熱くない。攻撃に転じる炎じゃなくて癒しの、綺麗な復活の炎。

 

「驚いたかよい。悪魔の実──」

「──動物(ゾオン)幻獣種(げんじゅうしゅ) トリトリの実モデル不死鳥!?」

「……! 知ってたのかよい」

 

 そのまま飛び跳ねる様に高く舞い上がるとぐるっと空中を旋回し始めた。

 

「ご、ご存知。悪魔の実の特徴は主に、頭に詰め込むぞ致したです」

 

 自分の力の代わりになりそうな能力を調べていた時覚えたんだけど。

 

「マ、マルコさんマルコさん!高、高い、たかたかたかたかたかー!!」

「分かったから落ち着けよい……」

 

 マルコさんが少し高度を下げようと周りを見る。私も釣られて周りを見るとふと遠目に船が見えた。

 

 あ の 旗 は マ ズ イ 。

 

「……………マルコさん」

「ん?」

「船にぞ急ぎ戻る!早く!」

「え、ちょ、どうし…」

「お先に失礼!」

 

 マルコさんの背から飛び降り船に標準を合わせた。

 

 正確にはサッチさんに向かって、だけど。

 

──ドゴンッ!

 

「うぎゃ!」

「どわっ!」

 

 自分の服を浮かせれるかな、と思ったけどなかなか難しいね。

 

「ちょ、リィンちゃん一体……」

「白ひげさん!」

 

 マズイ、

 

 私は知っている。

 四皇の衝突が戦争と呼ばれるほど大変な事に。

 私は知っている。

 あやつが四皇だと言うことに。

 私は知った。

 

「赤髪ぞ現れたぞ!」

 

 あの人は四皇でシャンクスだという事に。

 

「「「「「!?!?」」」」」

 

 丁度降りてきたマルコさんが白ひげさんに向かって頷く。多分本当だと言うことを伝えたんだろう。

 

「マルコさん!サッチさん!匿って!」

「「は?」」

 

 厄介事は無いに越した事は無い。もしも私が此処に居ることがバレて立場が芋づる式でバレる確率はある。

 素っ頓狂な声を上げた2人を無視して私は背中に隠れ潜んだ。

 

 

 

 

 

 私は必死できちんと頭が回ってなかった。

 


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