2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第45話 災厄は押し付けたいと心から思う

 

 ピリピリとした空気が肌に伝わる。

 

「覇王色に当てられて倒れんなよい…」

 

 ボソリとマルコさんが独り言の様に呟いた。

 

「っ!」

 

 バタバタと誰かが倒れる音。

 

「………何してくれてんだよい…」

 

 本当は突っかかりたいのか抑え気味の声で小さく呟いた、私がいる事を危惧(きぐ)しているんだろう。

 やっぱりマルコさん達良い人過ぎません?

 

「おっ。お前は一番隊隊長のマルコか!どうだ、俺の所来るか?」

「誰が行くかよい」

「冷てェなァ」

 顔は見えてないけどこの声間違いない。シャンクスさんだよ……。あァくそぅっ、災厄もここまでくればむしろ感謝したくなるよ。

 

「久しぶりだなァ白ひげさん。今日は酒を持ってきたんだ」

「鼻ったれがいっちょ前に覇王色全開で乗り込みやがって……」

「敵船につき、失礼」

 

 白ひげさんとシャンクスさんの会話を早く終われと念じながら時を待つ。

 

「───ところで」

「……」

「白ひげ海賊団はいつの間に俺の覇気にぶっ倒れないガキを乗せたんだ?」

 

 覇気って覇王色?ガキ、ガキってこの船に──────、私しか居ない…?

 

「っ!」

 

 見聞色か!なるほど凄まじい見聞色の使い手だったのね。

 く、女は度胸!他人として乗り切ってやる!

 

「見つけた」

「うぎゃお!」

 

 いきなり声をかけるのは禁止です。

 

「パ、パピー…このおじちゃん怖い……」

 

 サッチさんの腕にしがみついて睨みつける。頼むバレないでくれ。

 

「お前サッチだったよな……いつの間にガキを…」

「え、あ、いや、お──いでっ、……そーだよ。ちょっとミスっちまった」

 

「「「「……」」」」

 

 周りから冷たい目がサッチさんに注がれる。ごめん。

 

「お嬢さん…名前はなんて言うんだ?」

「おい赤髪…ウチの所のガキに手ェ出すんじゃねェよい」

 マルコさんがサッと壁になってくれる。

 

「マルコ…まさか少女趣味(ロリコン)が」

「ンなわけあるかよい!」

 

「おいリ…──」

 

──ドゴッ

 

 名前を呟きかけたサッチさんの横腹を肘打ちの刑に処す。

 

「ん?お嬢さんの名前は〝リ〟なんて言うんだ?」

「リ、リアン……」

「そうかそうかリアンちゃんか」

 

 誤魔化せれた、のか?

 そう言ってシャンクスさんは私の頭を撫でようと手を伸ばし──そのまま頭を鷲掴(わしづか)みにした。

 

 ヤベェこれ絶対バレてる。

 

「確かにな、海賊の高みへと言ったさ、でもそれはあくまでもルフィに言ったつもりだ…。しかも大人になってからだとばかり思っていた。

 さて、どうして高みどころかこんな四皇の、大物の、白ひげ海賊団の船に乗っているんだ死霊使い!」

「だ、誰が死霊使いぞ!黒歴史を掘り起こすは禁止!…───いだだだだだだ頭、頭痛い!いだだだだだだ!」

 

 両手でグリグリと頭を締め付けられた。グーで。

 

「放すぞ!ハゲェェェ!」

「まだハゲてねェよ!」

 

「お、おい……お前ら何やってんだよい」

 

 横の方でマルコさんが呆然としている。見てないでたすけて。

 

「よォリィン!久しぶりだな!2年ぶりか!?」

「ヤソ、ヤソップさ、ヘルプ!シャンクスさんぞ止め、停止!」

 

 聞き慣れた声を聞いてヘルプを求めたけど笑って傍観体制に入りやがった。裏切り者め。

 

「マルマルマルマル…!」

「言いたい事は分かった。後で説明しろよいっ!」

 

 ゴンッと強い音がして頭の圧迫感から解放された。マルコさんがシャンクスさんの頭をぶっ叩いたんだ。いや、確かに助けて欲しかったけど一応彼アレでも四皇ですよ?まァ私には関係ないからいいけど。

 

「パピー!」

「お、おう。凄まじく複雑な気分」

 

 サッチさんを盾…もとい頼りに赤髪海賊団を警戒する。

 

「はい確保」

 

 しかし盾も後ろまでは防御出来なかった!ぐいっと首あたりの服を掴まれ視界が一気に高くなる。

 

「く、クマさん……」

 

 この低い声は聞き覚えしかない。顔で判別出来ないから声で判別してるだけだけど、この人は赤髪海賊団の副船長だ。

 

「だからその呼び方をやめろと…。元気だったか?」

「一応何度か死にかけましたぞりです」

 

「なんだお前らそのガキと知り合いか?」

 

 白ひげさんが不思議そうにこの光景を見る。いや、助けてくれませんかね。これ結構首締まるんです。

 私何度助けてって思ったかな。現実逃避したい。

 いや、現実逃避じゃなくてこの場から全力で逃げ出したい。

 

「東の海で2.3年くらい前に会ってな。そっちはどうしてコイツと?」

「さっきマルコが拾ってきた」

「よい……」

 

 するとシャンクスさんは私の方を睨みつける。

 

「なんで拾われる事になってんだ死霊使い」

 

 いつまでそのネタ引っ張るつもりだ老け顔。

 

「巨大トルネードに遭遇…」

「じゃあついでに聞こうか。何故トルネードに会う海に出た?」

 

 クマさんが背後から射撃を加えてきた。おい、私の味方はどこですか。

 マズイ、ジリ貧だ。ジリ貧だぞ。どうする、どうやって逃げる。

 

「お、お使い……」

「誰に何を頼まれてどこにどう行った船で?」

 

 船!?船になど乗れば酔うでは無いか!ってあれ?私ここに来て酔った?

 んー、船が大きいからか。確か大きいと揺れが少なかった筈。それのお陰かな。

 

「あ、えっと、保護者に頼まれ…会いたい人がいるらしく会いに…、にょ、女ヶ島まで……」

「「「「女ヶ島!?」」」」

 

「くそ!羨ましい!」

「なんで俺は男に生まれたんだ!」

「女ヶ島…!死んでも行きたい!」

 

 なんか凄まじい威力を発揮してるな。

 

「女ヶ島の、誰に?あァ、ちなみに嘘をついたら……すぐバレるぞ?」

 

 後ろからの威圧が凄い。あれ、クマさんって覇王色使えるっけ。

 

「海賊女帝…………」

 

「「「「「羨ましいぃいい!」」」」」

 

 海賊の心からの叫びと思われるものが鼓膜を破る勢いで発せられた。うるさい。

 

「海賊女帝って絶世の美女のだろ!?」

「そ、その様に感じる事は不可能でしたぞ…」

「行きたい行きたい行きたい行きたいオヤジッ行こう!」

「アホンダラがァ……」

 

 なんか、大変そうね。このまま逃げ出せれば。

 

「で、保護者は?」

「えーーーっと…んー……………さらば!」

 

 ビュンっとナイフで後ろのクマさんの顔目掛けて突き刺す。

 びっくりして力が緩んだ隙に腕から抜け出すとそのまま箒を掴──めなかった!折れてた!

 

「リィン逃げんなよ?久しぶりの友人だろう?」

 

 目の前で赤い髪がなびいた。

 そもそもこのキャラの濃い凄まじい面子から逃げ出そうとした私が馬鹿だったね。

 

「……うっ…………か、海軍元帥センゴクさんぞ…」

 

「「「「「はぁぁああ!?」」」」」

 

「ど、どういう事だリィン…フェ、フェヒターさんは」

「ジジに誘拐され入隊させられ殺されかけお使いして遭難したのが今現在の説明ぞ………」

 

 ごめんなさいジジ、ちょっと責任押し付けました。

 

「なんだ………じゃあお前さんは敵なのかよい」

 

 私が心の中で謝罪しているとマルコさんから鋭い視線が飛んでくる。フッ、その程度の睨みじゃ私はビビらないぜ。

 

「あ!そうだ!」

 

 ジジで思い出した。シャンクスさんの嘘を。

 

「シャンクス老け顔さん!おま、絶対戦神の事ご存知ろ!」

「げっ…」

「センゴクさん達よりお聞きしたぞ!シャンクスさん昔海賊王の見習いだったらしき!」

「いや、悪かったよ…カナエさんの事はなるべく漏らさない方がいいと思って」

 

 私が指さすと数歩下がった。

 

「………こんなガキに敵対心向けてた自分がちょっと恥ずかしいよい…」

 

 (すみ)で膝を抱えてるマルコさんの肩をヤソップさんが叩いた。

 

「アレはアホだから仕方ねェって」

「そこにぞなおれぇぇえ!!」

 

 ビシッと指をヤソップさんに向けなおすと退散した。失礼な奴だ。

 

「マルコさん…やはり私1人で帰還するぞ…。雑用であろうとも私はそちらから拝見したなら敵…、ごめんなさいじょ」

「言いてェ事はある程度分かるが、とりあえず俺が拾っちまったんだ。ガキが立場だとかそんな細かい事を気にするんじゃねェよい」

 

 立ち上がるとマルコさんは私の頭を撫でた。やだ、良い人すぎる。

 

「しかしながら…私は海軍で届けるのも敵地…」

「そんなモン変装してりゃ平気だろい。心配すんな」

「マルコさん好き…!優しき!」

「ありがとさん」

 

 おぉ!これが大人の余裕ってやつですか。スゲェカッコイイ、大人になったらこんなカッコイイ人になりたいものだ。

 

「あー…盛り上がってる所悪ィが俺達が連れていくさ…。一応そいつがちっこい頃からの付き合いだからきっと良いだろう」

「赤髪、それは俺達が信用ならねェって言いたいのかよい……」

「いや、そうじゃねェ、師匠の弟子を気にかけるのは兄弟子として当然だろ?」

 

 シャンクスさんが片眉を上げると視線が一気にこちらに向いた。え、怖っ。

 

 シャンクスさんの言う師匠というのは間違い無くフェヒ爺の事だ。私と同じ師を持たないと兄弟子なんて言葉は出てこない、そしてフェヒ爺が海賊王のクルー初期メンバーというふざけた立場の剣帝 カトラス・フェヒターだから。

 それを知った時は思わず倒れかけたけど。

 

「……アレの弟子なのか」

「はいぞり」

「適当だろ、あの人…。何度戦闘中に落胆した事か…………」

 

 思わず否定しかねてしまった。

 確かに教え方も適当だった。文面で説明するのは得意な癖に言葉で説明するのはもう別人かよ、と疑いたくなるくらい適当だった。

 懐かしいなぁー…正直剣や刀に関しては剣帝(フェヒ爺)より鷹の目(ミホさん)に指南する方がずっと分かりやすい。……その分傷跡が増えていくんだけどね!

 

「あの人を虐める事が趣味の如き鬼畜で変態のジジイが…──」

「フェヒターさんにチクるぞ」

「──と、ヤソップさんが申してありますた」

「おい」

 

 さり気なく罪を擦り付けたら冷静なツッコミが返ってきた。打てば響く人間は面白いですね。

 

「自然と責任を押し付けるなよリィン!」

 

 

「さて、マリンフォードだったか…」

「あ、赤髪。届けるんなら永久指針(エターナルポース)持って行きなよい」

「お、悪ィなパイン」

「……………………………あんたが四皇じゃなきゃ殺してた」

「おぉ、そりゃご苦労なこって」

 

 ぶわりとパインさん…マルコさんから殺気が溢れ出る。毛穴が、毛穴が肥大化する!鳥肌だぜ……!

 

 

「1人百面相してねェで行くぞ」

「あー…リィン、海兵でもまァいい。いつでも来い……歓迎するよい」

「マルコさんデレた!まさかのツンデレでござりますか!?」

 

「やっぱり来るなよい」

 

 冗談じゃないか。酷いなぁ。

 

 

 

 口には出せないけどこんな胃の壁をすり減らす様な船に2度と来たくないな。

 

「またねーリィンちゃーん!今度来たときはフルーツケーキ用意してあげるからなー!」

「……!?はい!」

 

 また来ようかと揺れ動いた。

 

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

「さてと…、行くかマリンフォード」

「……………酔いそう」

 

 小さく呟くとシャンクスさんがこっちを見た。なんだ。

 

「お前酔いやすいのか?」

「肯定…軍艦で酔いた」

 

「で、お前階級は?」

「雑用……」

「──じゃ、ねェ事くらい簡単に予想付くに決まってろ。どこだ?」

 

 なんで予想付く。まァ実際雑用じゃない事は当たってるからこの人の実力は図りきれないな。流石、四皇赤髪のシャンクス。海賊王の船に乗ってた見習いなだけある。知った時には開いた口が塞がらない状態が暫く続いたけど。

 

「……大将女狐」

 

 ドヤ顔をして見せればシャンクスさんは一瞬呆気に取られたがワシワシと頭を撫でて「上出来」と一言言った。

 

 むぅ、いつもと調子が違うとこっちも調子狂うぜ。

 

「へぇ、お前っていつの間にそんなに出世してんだ?」

「ヤソップさんには到底叶わぬスピード出世ぞ…」

「喧嘩売ってるのか」

「そんなまさか」

 

 相変わらずの反応に何故かホッとした。私が海に出て半年経つ頃には新聞には一気に縄張りを増量して四皇とまで呼ばれてる赤髪海賊団を見た時は正直ゾッとしたから。身近にいた人が遠い雲の上の人になったみたいで、あれ、実際そんなに変わってたか…え、変わってた?

 変わらないくらい阿呆だった。

 

「あ、そうだリィン。前半と後半の間に赤い土の大陸(レッドライン)があるのは知ってるよな?」

「ご存知…」

 

 やばいちょっと酔ってきた。まだ五分も経ってないのに……。

 

「なら上と下どっちがいい」

 

 上と下?なんだそれ。とりあえず気持ち悪いし上って嫌な予感しかしないので下で。

 

「し…た………」

「ん、なら魚人島だな」

 

 魚人島?まてまて凄い聞いた事あるぞ?

 ジンさんの出身地で魚人が沢山居る島だよね?………海底1万メートルに存在するって言う。

 

「シャボンコーティングしねェと……」

 

 まさかとは思うがシャボン玉をこれに包んでで海潜るの?潜水艦は?馬鹿なの?死ぬの?

 

 

 

 

 

 察した。

 こ い つ 私 を 殺 す 気 だ 、と。

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