「フッフッフ……、やっと来たか……」
ソファに偉そうに座る姿を見てやっぱりもう少し逃げたかった
ええい!女は度胸!いざ出陣!
私は逃げ道となる扉を開けたままドフラミンゴさんの部屋に入った。
「随分ベビーと仲良くなったんだな」
この人どんだけ家族好きなんだよ。
「イブはとてもいい子ぞ。仲良くが嬉しき」
ドフラミンゴさんは奴の目の前にあるソファに腰かけろ、と催促してきだした。
勿論、座らない。
逃げるためにすぐ走れる様にしておきたいから。
「…………」
あれれーなんだろー…身体が勝手に動く。
ドフラミンゴさんを見ると指先をクイッと動かしている。それに合わせて私の身体が勝手に動く。
なるほどこいつの能力か。
「…イトイトの……」
「よーくご存知じゃねェか」
「知る事は大事と思ってる故に」
──グイッ
「じゃあ俺も知らねェとなァ……」
身体が動き、ドフラミンゴさんの目の前に来たかと思うと腕を引っ張られ距離が一気に縮まった。サングラスの奥にある目は、こちらからは見えないけど私の目をがっちり捉えている様な気がしてならない。
聞いたことがある、人は嘘をつく時目に様子が表れると。
「何故、お前が俺の秘密を知れる…?」
薄ら笑いではなく無表情。
思わず恐怖を覚えた。
「……………私にも、よく分からぬぞ…何故センゴクさんが私の如き子供に情報を託すのか、は」
事実と何ら変わりない言葉を放つと眉をひそめた。
「………そりゃァ、少しも分からないのか?」
「いや、否定。理由、私の把握できる理由としては…母親ぞ」
「…!」
ピクリとドフラミンゴさんが動くのを確認して私は続きを再開した。
「私の母親、大物らしく、センゴクさんとも縁が深いらしいぞです」
「…………一体誰だ?」
「シ、シラヌイ……」
その言葉だけでドフラミンゴさんの口が開いた。
「なるほどな…伝説の海賊、ロジャー海賊団のメンバーか。……
ドフラミンゴより行動範囲の狭いミホさんでもクルーを知っていたのに?有名でないとなれない七武海で、色々な所に拠点のある海賊が?
「俺はこう見えてもお前を高評価してるんだぞ?歳のわりに賢い糞ガキだとな」
「…
嘘くせぇ…。
そんな態度が現れていたのか、ドフラミンゴは片眉を上げて口元に笑みを浮かべる。
「おいおい疑ってんのか?本当だぞ?…──ベビーの性格を把握し手玉にとってファミリーの情報を聞き出す事を企てられる、くらいには、な?」
「な、な…ななな、に、ゆえ…!」
私がキョドっているとドフラミンゴさんは懐から電伝虫を取り出し、私に見せる様に目の前に持ってきた。
「ベビー相手にしては80点。詰めが甘かったな、俺が海軍の人間を警戒しないと思ったか?」
小さなでんでん虫を撫でるように動かす。この形状、まさか盗聴用の電伝虫か!?
「悪趣味……」
「何とでも言え」
「鬼畜 変態 もふもふ 」
「殺すか?」
何とでも言えと言ったのはキミだろうが。
「……それなんだよ」
電伝虫を机に置くと目の数センチ前まで人差し指を持ってきた。
「俺が歳の割に賢いと思うガキが、なんで俺を挑発する様な真似をする?お前になんのメリットがある……何故だ?」
「メリット…………」
あれ、そう言えば無いな。ただムカつくから口がぽろりとしちゃったけど。
なんでだ?
「メリットは無き…。でも、おかしきが、信頼は致したぞです」
「信頼?」
「傷付けない信頼。最初手に触れた時、暖かく感じるぞした……害をなす人物の手はびっくりするほど冷たかったぞ…」
「…………信頼におけない理由だな」
ええ本当に信頼におけない。手の暖かい冷たいで害をなす人間かそうでないかを判別してたまるか。
嘘ですから。めちゃくちゃ。
なんかいい感じの言葉言って流してやろうって魂胆ですから。
「私の経験則……、どうぞ?」
挑発するように笑うと、ドフラミンゴは驚いた顔をしたがスグに破顔した。
「フッ…フッフッ……悪かねェ判断だな」
しばらく喉の奥で笑っているが、突然真剣な顔である提案をしてきた。
「……海軍の雑用のバックに七武海を付ける気はあるか?」
「……どのような意味で?」
「ファミリーに入るか、と聞いているんだ」
なんで!?
え、なんで。私嫌ですよ?
なんでメリットも無いのに入らないといけないの?確かに七武海は海軍に狙われる可能性は無い。けどだからって安定した立場が保てる海軍の地位を蔑ろにするつもりは全く無い。
「私にその力は不要」
「賢くない判断だな」
「確かに、立場を上げる為、そして同期や海賊からの安全の為必要と推測するぞ…」
「そこまで分かってるのなら何故…」
「…不要だから、ぞ。
含みを持たせた言葉にドフラミンゴさんは表情を変えた。
「雑用の私に確かにメリットは存在す、しかしながら必要無いのぞー……」
「七武海を背後につけるメリットを理解していながら何故話を受けない」
確かに、メリットはある。まずここは一つの国だし逃げ込める場所となる事も可能。無法者が後ろについている事で相手の予測出来ない事をしでかすかもしれないと言う恐怖や不安感が私に手を出す事への
でも、それがどうした。
殺されるわけでも無い。危害はあるかも知れないが所詮は将校未満の成すこと、そしてそれがもし将校以上ならば、
「……それは」
まァ
「………………それは?」
「私自身の地位とバックが最早そのメリットをカバー可能だからぞ」
未だに掴まれている腕にギリギリと力が加わる。折れる。折れるから。馬鹿力おい。
「俺の納得できる理由なんだろうな?」
なんでキミが納得しないといけないのが前提なんだろう。
あれか?天竜人の時の名残か?自分一番だってか?…全く、
「私の地位は最高戦力、それぞ、力不足?バックは秘密、ぞり」
「…! テメェ一体
「バリバリの6ぞ」
本当の事を述べているのに疑いの目を向けてくる。失礼な話だ。
「2年より前に加入致した、ドフィラムンゴさんより先輩ぞ」
ドヤ顔したらぐいっと引っ張られて顔面が近付いて。
──ゴッ!
頭突き………。
待って、痛い。めちゃくちゃ痛い。頭突きめちゃくちゃ痛いんですけど。待って、顔が近づいたらちゅーとかじゃ無いんですか?そうなったら全力で燃やすけど。
私がその場で
「腹が立った」
それだけで頭突きをくらわせるな。
「最高戦力っつー事は女狐か?」
「肯定…痛い……」
「お前は狐ってより鳥だろ、アホウドリ」
頭突きをくらってこの扱いは解せぬものがあるわ。
「それ、なんで俺に教えた?」
「イブの保護者故、そして私の一方的な信頼故」
まァもちろんこれも表面上だけ、センゴクさんが言っていたが国王などの重鎮には言わなければならないとか。だから遅かれ早かれって判断だ。
「本当にそうか…?」
「………。」
「おい」
反応にちょっと遅れてしまった。
私だってこの人が馬鹿だとは思ってない。むしろずる賢い。普通海賊は国王になれっこない、元天竜人で脅し道具を持っていたとしても。そもそも私が政府側なら秘密を握っているのなら口封じ、消す。権力の幅が広がる国王だなんて絶対につかせない。
つまり、民衆に海賊でも国王になって欲しいと言う強い
例えば──
暴動を起こした王から民衆を守る とか。
さっき私の体を動かしたみたいに操ったのなら、それを悪役に自分がヒーローになれる。
というか、私の頭の回転が同年代より優れていたとしても、年上や目上の人に敵うわけがない。ドフラミンゴの能力を知った程度の知識でここまで予想が出来たんだ。……上が気付いてない筈がない。
どんだけ重大な秘密と自分の身を守れる強さを持っているんだこの人は。
「………おい、聞いてるか?」
「ん………聞いてるぞ…」
「絶対聞いてないだろ」
ドフラミンゴさんがため息を吐くと私の体はふわりと浮き上がった。
「よく考えたらもう夜中だもんなァ糞ガキ。ねんねの時間か〜?」
「
「ほら、さっさと寝やがれ」
ボスンと音がなる。ベットに放り投げるのはちょっとどうかと思います。
「ドフィラムンゴさんのベット?」
「あァ…」
「私、取る?」
「…? 別に気にする事ァねェぞ?変わりにファミリーの為に海軍の情報ちょろまかして来てくれるンならな」
恩を作ろうってか。
そう簡単に恩を作ってたまりますか!
──ぎゅ…
「ドフィラムンゴさんが手、暖かいぞ…」
「そんなにか?」
「そんなにぞ……」
ベットから去ろうとするドフラミンゴさんの手を遠い方の手で掴んで握る。
驚いた顔をしたがベットに腰掛けた。
「……ドフィだ」
「ドフー」
「ドフィ」
「ラムンゴが消え失せた事件」
「その呼び方一々地味に腹が立つから変えろ」
ケチ臭い。男がそんな一々気にしてたらハゲるぞ。
「……」
「いたっ、何故無言で脳みそチョップするぞ」
「腹が立った」
「高血圧は体に悪き、飲酒は控えろむしろやめようそうぞそうするしようぞ」
「さっさと寝ろ」
「ケチ」
意識を途切れさせない様に会話を間髪入れずに続ける。大丈夫私ならきっと出来る。
「ドフィさんはジョーカー?」
「……っ!? 何を知ってる…!」
「へ?だって、ダイヤのでぃまあんてさんクラブのとれーぼうるさんスペードのぴーかさんハートのコラさん、残りはどれにも属す無いジョーカーぞ?」
「……あァそうだな、だが、半分違う。俺ァキング、王だ」
一瞬凄い動揺が目に見えたけど、ドフィさんは直ぐに落ち着きを取り戻し口角を上げて話した。
というか最高幹部をトランプにするって結構お洒落だな。自分の服にセンスはないのに……。ちょっと可哀想になってきた、優しくしてあげよ。
「…その同情を込めた目が気に入らないんだが、その目消してもいいのか?」
「いますぐとじーゆ!」
自己防衛の為に目を閉じると手の温もりが消えた。
「そのまま寝ろ……おやすみ」
「はーい」
ガチャ、とドアノブに手をかける音がする。
「───服にくっつけた電伝虫は外しておくから早く寝ろよ?リ、ィ、ン、ち、ゃ、ん?」
バレてたーーーーー!
会話をすると見せかけてこっそり空いてる方の手でアイテムボックスから盗聴用でんでん虫をモフモフにくっつけたんだが、流石にバレてたか。
正直会話の内容はどうでもよかった。とりあえず電伝虫さえ付けれればどうとでも良かったのに。せっかく私が自分の手を犠牲にしてくっつけたのに……!
流石海賊、亀の甲より年の功ってやつか?
それなら仕方ないなー!だって私まだお肌プルプルの子供ですもん!はーっはっはっはー!
──ゴンッ
糸の塊が顔面に飛んできた。能力乱用反対です。痛い。
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「どうした若…機嫌良さそうだな」
「グラディウスか…。丁度良い人材を見つけてな…フフフフフ……」
愉快だ、と笑う姿にドンキホーテファミリーの幹部であるグラディウスは席を立った。
「酒か?」
「あァそうだな………、いや、紅茶だ」
「珍しい…」
上機嫌になると度のキツイ喉が焼ける様な酒を飲むのがドフラミンゴ。その様子にもの珍しさを感じながらもお茶の用意をし始めた。
「(………引き入れてェな、海軍に入れておくには勿体なさすぎる)」
本物の海賊というのをきちんと理解してないのか知らないのか、それとも知っている上で
海賊や立場を恐れること無く会話や挑発やターゲットにする度胸。
そして何より自然と相手の懐に入っていく自然さ。
女の術を磨かせれば
あれほど有能で便利で伸び代のあるガキなど居ない。
あれさえ手に入れば今現状の海軍の中枢にツテが出来る。
「(ヴェルゴは今確か大佐だったか……)」
欲しい、益々欲しくなる。
アレを
「フフフフフ………」
楽しそうに笑う姿にはどこか恐怖を覚える。
「手玉にしてェなァ………フッ…フッ…フフフフ……」
雑魚はどうやら変人ホイホイの様だ。
書き足していけばいくほどドフラミンゴがHENTAにI