「……」
キョロキョロと気配を消しあたりを見回す者が居た。
「(右よし左よーし前方オッケー!視界クリア!リィン、いっきまーす!)」
ただの阿呆だった。
「(センゴクさんは怖い、時々厄介事の気配を感じさせると仏の仮面を被った
まァ
とにかくここまで(意図せずとも)サボっている状態だとマズイ。非常に焦っていた。
雲の上の怒りより目の前の怒りの方が怖く感じる。
ちょっと想像してみようじゃないか。
『七武海の元に行ったと思えば七武海に攫われる?
『し、しかしながらどうしょうもない理由ぞ存在するしまして…』
リィンはため息をつく上司に焦ります。何事もヒエラルキーは怖いのです。
『理由?言い訳だろう?』
『はい…ごもっともです……』
もう土下座でもしてやろうかと考えます。プライドは美味しくありません。
『言語不自由な上に仕事もまともに出来ない、更に油断もする。そして阿呆。これ以上海軍に置いて置けぬな…秘密を知ったからには』
『おーけー待つぞするか』
予想以上に責められ心が折れそうになりますが寸前で耐えます。
『インペルダウン?生温い、処刑だ』
『情は無きですか!?』
『お前の母親が誰だと思っている』
生まれた環境をこの時以上後悔した日はありません。
『さらばだリィン、次生まれた時は無能を卒業出来るといいな』
いくら不思議色の覇気(仮)を使えたとしても伝説の海兵達に捕えられてはどうする事も出来ません。リィンは静かに処刑台に連れていかれました。
『この娘は戦神の娘!よって処刑する!』
今、黒い刃が振り下ろされます。覇気付きとはなんと卑怯な。
『お前がそこまで無能だったとはな…』
『わらわの敵はこれでおらんなった!はーっはっはっは』
『的を得ている』
『リィン…しらほし姫様にはきちんと伝えておこう』
『健やかに眠れ弱き者よ』
『俺の秘密を知ってる奴が1人でも死ぬのを見るのは気持ちいいな…』
敵なのか味方なのか分からぬ6人しか居ない七武海はその姿を
かろうじて雑用の皆は悲しがってくれますが
『エース、ルフィ、ごめんぞ…』
遠い東の海に居る兄に謝罪を述べます。
悟りました。
『じいちゃんが伝えておくからの!リィンは死んだと!ぶわっはっはっ!』
脳天気なクソジジイが隣で笑います。そして激しい痛みも来ること無くリィンは静かに目を閉じました。その生涯は何ともちっぽけなものでした。
『堕天使様の根城へようこそ』
目の開けると憎き敵の声が聞こえました。
『ちくしょう』
頑張れリィン、次の人生は報われるといいね。
「(
生まれたての子鹿の様にリィンはガクガクと震えた。マズイ、絶対まずい。
言われた通り弱点の一つや二つ手に入れなければ非常にマズイ!
「(その為にも今夜弱点を握る!もしも本人や幹部に見つかったら「迷っちゃった♡」で乗り切ろう。多分いけるはずだ)」
──グイッ………
「へ…?」
──バタンッ…!
何者かがリィンの腕を引っ張り部屋の中に入れ、扉はそのまま閉じられた。
廊下に残った物は何も無い───。
==========
「海軍の女の子、あなたはドフィの何を知っているの?」
私の喉元に突きつけられたナイフ。
「ど、どなた……」
「ファミリーの幹部、ヴァイオレット」
ヴァイオレット…だめだイブの自慢の中に話題が無かった人だ
「それで………あなたは
グッ、と力が込められる。
ちょっと自分の置かれている状況が分からなくなってきた。
───私の?───
ドンキホーテファミリーの幹部以上は家族の様な関係。私の嫌いな仲間意識がとても強い。
その発言にふと違和感を感じる。
考えろ、考えろ。今の状況を打破できる方法を考えろ。
早く考えろ。
海軍の女の子、これを知ってるのは幹部以上。これに間違いは無いだろう。
私の部屋に入れた、これはこうやって聞き出すため、他の幹部が部屋の中に居ないことを考えると単独行動なんだろう。
私の敵か味方か。ドフラミンゴの敵でも自分の味方という可能性がある。
そしてそれは海軍に関係があるのかもしれない。
とりあえず情報を手に入れない事には現状どうする事も出来ない。
ドレスローザの事もドフィさんの事も幹部の事も圧倒的に事情情報不足。
「何を、焦る?」
「……!」
「味方ぞ……」
そう言うと首からナイフが離れた。良かった良かった。
「本当に?私は見たわ、仲良さそうにしている所を…!」
………嫉妬?
いや、違うか。そもそもドフィさんは覇気の使い手、覗き見をしてたら気配で分かる。思いっきり気配を消さない限り。
私はこう見えても気配を消すのが大得意だ。影が薄いとか言わない。
不思議色の力を使う時、集中力が必要だから気配を消すことに集中するのは得意なんだ。時たまにクロさんやミホさんを後ろから現れて驚かせれるくらいには。
気配を感じるのはからっきしだけどな。
そうなると、それを見れるという事は。
「悪魔の実?」
「………ギロギロの実…」
警戒しているのか正面に来ても睨みつけながら会話をする。
ギロギロの実、は確か覗き見ができる能力。そして記憶も。
マズイ…立場がバレる……!
「………………………何を隠してるの?」
「っ!」
このままじゃヤバイと思った私は水を作り出し蒸発させた。
水蒸気で視界が塞がれる。
大丈夫、大丈夫。視界を奪われれば記憶は探れないから。
きっと大丈夫。
「目くらまし…っ!」
そのまま比較的近い窓をぶち破って外へ飛び出た。
「弱点、聞き出すんだったぞかな…………」
飛び降りながらそんな事を考える。
王宮が思っていたより高くて現実逃避をしたかったんです。
箒が折れてるのを完璧忘れてた……。
==========
「……ドンキホーテ・ドフラミンゴ…っ!」
遡ること数分前、ドレスローザに1人の訪問者が居た。
奴がこの国の王の座についたと知って急いでやって来た。
「……!」
王宮の側に居ると人が降ってきた。ちょっと理解が追い付かない。
「……………は?」
素っ頓狂な声を出すが周りにいる人間は自分ひとり、見捨てるのも罪悪感がするので慌てて受け止めた。
──ポスッ
「……だい、じょうぶ…か?」
「…!っ!こ、怖かっ、怖っ!」
この少女は一体何をして何をされたんだろう。その男は考え出したがキリがない。
「ありがとうござりますた。感謝」
ペコリとお辞儀をして王宮に向かおうとする少女はふと立ち止まり男の方を振り返った。
「名前、私リィンですぞ…そちらは?」
「──………─」
月明かりが男の顔を照らした。
「………………何故…、生きてる」
「…………分からない、何が起こったのか。殺されてしまった以上、もうあそこには居られない」
少女はその見覚えのある顔を見て、一つボソリと呟いた。
「…誠に吸血鬼の如き野郎ぞ……」
「……そうだな」
今度こそ少女は去ろうとした。
「………………俺を見た事は誰にも言うなよ」
「……了解致したです。何があったか知らぬるが、早まるは禁止」
「……あァ」
「……あ」
何度目か、振り返り聞いた。
「ドフィさんの弱点ご存知無き?」
「じゃ、弱点…?
………………………バーベキュー?」
「…………ありがとうござりますた…」
凄く要らない情報を手に入れたのだった。
これにて誘拐ドレスローザのお話しは終わりです。
この後箒をコツコツ直して逃亡しました。バーベキューが嫌いという弱点を掴んで。
ヴァイオレット事ヴィオラ様が本編より厳しめなのは「敵を信じぬいたサンジ」が居ないのと「ドレスローザを奪われたばかり」で刺々しく状況がきちんと理解出来てないから、です。美人がキツイのは…きますね((
最後に登場した謎の男はこれから多分かなーーーり後にならないと再登場しないので「ほーーふーーんはーーー」くらいに捉えていただいて結構です!まァ控えめに言えば『触れるなよ、触れるなよ』です。出川のフラグじゃないですからね
そしてアンケート。
相変わらず七武海大人気。
他のキャラがあまり関わって無いことも影響してるでしょうけど。
あ、票入れたい人間が変わった場合は自分のコメントを消して変更してくださいね!これからまだ出て心変わりとかあると予想する上での配慮となります!