2度目の人生はワンピースで   作:恋音

57 / 278
海軍編下
第52話 王家に関わる気など皆無


 

 この世界には4年に1度世界会議というものがある。

 世界の中心である〝聖地マリージョア〟にて行われる世界最高峰の会議。

 

 そこに参加する国は170国以上の加盟国の中から50カ国のみ。

 

 

 

 

 我々海軍は各国に一つ軍艦が付けられる。

 

 今現在、護衛は中将及び大将を護衛兵として軍艦を連れていくというルールなのだが、まァもちろん全員じゃない。

 そっちに力を入れすぎていて他の支部や本部を狙われては元も子もないだろう。

 

 

「先の説明の通り、本来ならば〝守り〟を掲げる大将女狐にも参加してもらいたい」

 

 うん、守る対象は自分だけどね。

 

「ただ、大将就任より4年経ったとしても、いくら何でもまだ8歳、部下にそれを説明するわけにもいかない……。今回の世界会議で各国王や護衛の重鎮達には伝えなければならないが今下手にバレるとマズイ」

「それは理解してるです…」

「よってマリージョアには単独でこっそりと移動して貰いたかった……──」

 

 

 たかった?

 どうして過去形?

 

 センゴクさんが頭を悩める姿を見て首をかしげる。なんだろう、厄介事の予感。

 

「──のに!………リィンにある国から護衛メンバーへのリクエストがあった」

 

「ま、まことです?」

 

「…………こんなめんどくさい嘘を付くわけがなかろう」

 

 心から絞り出した様な声が聞こえる。そりゃそうだ。

 しかし私を指名するってどこの国だ?

 

 竜宮王国?……いや、あそこには私が海軍に所属していると言う事は言って無い。

 ドレスローザ?……確か4年前は参加してる国だった。王が変わって参加できるのかどうか分からないが可能性としては凄く有り得る。やっぱりここが可能性高いな。

 

「…アラバスタ王国だ」

何故(なにゆえ)!?」

 

 確かに、関わりが無いことは無い。

 初めての航海でゲロ酔い状態の私は確かにアラバスタ王国に降りた。そして王女ビビ様と自己紹介をして人攫いから助けた。

 でも1日にも、むしろ1時間にも満たないたったそれだけの事。

 

 私を指名する理由にもならないし私はあの時海兵になるとは言ってなかった、はず。言ったっけ?言ってなかったっけ?

 まァ例え4年前の私の語彙力(ごいりょく)じゃ子供には伝わらないだろう。自分で言ってて泣きたくなるけど。

 

「……厄介な事に王女であるビビ様も付いて来るらしい…ほんっとに、頼むぞ!?」

「は、はァ…」

「国王直々の指名だからな?頼むぞ!?」

「そ、その様に念を押すしなくても…」

 

「あともう少し自然に喋れんか」

「無理です」

 

 これでも成長したんだぞ!?ここ最近おつるさんの口調指導が厳しいのもあるけど。

 

「………それでここからが1番問題なんだが」

「……はい」

 

「人員不足だ」

 

 え、人員不足?それでいいのか海軍。

 

「正確に言うと中将以上の人員不足だ。実は…予定していたオニグモ中将が今回参加出来なくなった…」

「え、オニグモ中将が?」

「ちょっと、な…重大な任務につかせていて、南の海に居る。思ったより時間がかかりそうなのだよ………。私が護衛に付くわけにもいかぬしボルサリーノはここの守りに入ってもらうし……、手の空いた中将以上の兵が全く居らぬ」

 

 中将の人は私がお茶くみ係として会議に参加しているお陰で私=女狐だ、という事を知ってる人が多い。しかし大佐以上の階級、もちろんその中に中将は存在しているがそういった人はそれぞれの海で支部を設けられるので知らない人も案外居る。

 オニグモ中将は本部に勤務しているので前者だ。『相変わらずちっちゃいなァ』と言って抱え上げて来るから毎回子供扱いするなと髪を引きちぎってやりそうになってしまう……。年上相手にそんな事やる勇気は無いけど。

 

 しかし、それはかなりまずいな。もういっその事誰か少将を階級上げして中将にするか、いや、それだと経験や対応能力に差ができる。

 少将と中将は階級として一つしか違わないが壁に凄く差がある。

 

 世界会議に参加する程重要な国の護衛に力不足の兵を下手に中心に置かない方が良いだろう。

 

「とりあえず1国、リィンにはアラバスタでの護衛担当責任者を裏で行ってほしい」

「責任者………何故(なにゆえ)私が」

「位が大将という事で後で世界会議で言ったとしても不満は湧かないだろうしそれがアラバスタ王国なら、あの国の王は寛大(かんだい)だ。本来このような事があってはならないが被害は少ないだろう」

「は、はぁ……」

「そして悪魔の実の能力者というのはかなり重要視される。そしてお前の箒などを風で動かす事が出来るということはある程度大体のトラブルは何とか回避できるやもしれん」

 

 要するに、『後で雑な護衛でも説明出来るしお前なら何とかなるだろ』って事だな。

 確かに、ビビ様に泣きつけば何とかなりそうな気がするけどそんな重大な任に私をつかせていいわけ?

 

「では、表は…」

「……ボガード少将なら、お前が大将という正体がバレてもと思ったんだが、アレを護衛につかせるには性格に少々難がある」

「確かに………」

 

 ボガードさんは良くも悪くも平等主義。ヒエラルキーをあまり気にしない性格でもある。確かに難ありだ。

 

「リィンの知り合いに信頼出来る奴は居ないか?階級はなるべく大佐以上がいいが……」

 

 信頼出来るって事は私の正体に目をつぶってくれて私が船に乗ることに抵抗の無い人間という事でしょう?

 

 参った、大佐以上となると私は主にジジの直属部下と中将にしか知り合いが居ない。ドーパンさんでは自由が効かないだろう。

 

「無茶を承知で申すですが、少佐でも可能です?」

 

 私が聞くとセンゴクさんはふむと(あご)に手を添えた。

 

「ヒナ少佐とスモーカー少佐か?」

「はい。地位も低いし、実力は確かに劣るです。しかし私の信用可能な将校は彼等です、2人揃えば力不足も補えるが可能かと」

「なるほど…少佐2名に若手大将1名の護衛責任者か……、悪くない案だ」

 

 ……。まァ力不足が何人集まろうと力不足だけどね。私が胃を傷めずに平穏に過ごせれるメンバーだとしたらこれ以上いい人選は無いだろう。

 

「私もあの2人には目をかけているしこの際だ、とりあえず大佐にまで昇格させダブル護衛に付いてもらうとしよう」

「今直ぐ伝える方が最良ですか?」

「必要無い、言い方は悪いがコレは実力などでは無く不正だからな……。今あの2人に大佐の階級は手に余るだろう」

 

 中佐ならまだしも大佐だからそれだけ一気に責任やら何やら襲って来るだろう。…襲って来るかな?スモさんとか責任に押し潰される様な軟弱な人じゃないと思う。アレ、不良だし。ヒナさんは元々責任感の塊だから今更変わらないだろうし。彼女なら完璧に仕事をこなすだろう。

 

「細かい時程などは追って連絡する。本日から世界会議まで何があるか分からないから本部で待機しておいてくれ」

 

 私待機する気満々なのに放浪癖がある様な言い方やめてくれません?私じゃなくて他の海賊が悪いんじゃないか。ちゃんとお詫びとしてドフィさんの時も弱点調べたでしょう?…バーベキューだけど。

 

 

──プルプルプルプル

 

「─……」

 

 このタイミングで鳴るでんでん虫は嫌な予感しかし無い。居留守の使用は可能ですか?

 肩につけた通常より1回り大きめのでんでん虫を横目で見る。

 

 でんでん虫の受信には個体差があって、私は各地を物理的に飛び回っているから大きめのが支給された。アイテムボックスに入れてしまうと音事聞こえなくなってしまうから基本外に出してる。ただ大きくて頭か肩という不格好な位置に付いてるんだよね。

 

「出ないのか?」

 

 私のつまらない現実逃避を止めたのは我が上司でした。

 

「………………出ても宜しくてですか?」

「あァ構わない」

 

 否定するのを期待してたんだけど質問された状態では望みが薄いのは分かってた!分かってたもん!

 

──ガチャ…

 

「もしもし、こちら海軍本部。事件ですか事故ですか」

『おいおい寂しい事を言うんじゃねェか…リィンちゃん』

「………生憎と1日1回以上でんでん虫をかけてくる海賊(ドフィさん)程暇の存在は皆無ですので、では」

『国王として用があるんだが?』

「お断り致すです」

 

 チラリとセンゴクさんに目を向けると額を抑えた。後で胃薬差し入れしよう。

 

『世界会議の護衛に海軍大将女狐を指名し…──』

「手遅れです」

『チッ……遅れたか…』

 

 こいつ絶対今日こういう会話がある事を知っていたな。

 

 やだこのストーカーっ!どこにスパイがいる!

 

 

 閑話休題

 

 

 

「そもそも強いです、護衛など、不要!」

『それは俺の実力を認めてくれてる事か?フッフッフ、可愛いじゃねェか』

「情緒不安定お疲れ様です。私は純粋に強いと思ってるですよ?性格の残念さがマイナス要素に存在してるのみで」

『雑用部屋はどこだったかな…』

 

 今日はヒナさんの所に泊まろう。うん。

 このストーカー、相手に出来ない。

 

「用が無いなら失礼致すです」

『おい待て、──マリージョアに隠されている秘密をバラしても良いのか?』

 

 ピクリとセンゴクさんが動いた。

 

「はァ……そうですか」

 

 センゴクさんの口が動く。なになに?

 

 『 う け ろ 』

 

 どんな秘密を握ってるのか少し気になり始めた。でもこれだけはマズイ。知ったら厄介事に絡まれる予感しかしない。

 仕方ない。

 

「受けません」

 

 受けない事にしようじゃないか。

 

「…!?」

『おいおい大胆だな……良いのか?』

「だって私8歳だ……ぞ、私に関係が無い事は脅しに効かぬ!」

 

 センゴクさんもドフィさんも冷静さを失っているのか、脅しというのは自分自身に関係のある事でしか使われない。利用出来ないんだ。

 いくら私が政府側の人間であったとしても政治など何も分からない〝子供〟なのだから。

 

 つまり『私を動かしたいなら私にメリットがある事を持ってこい』って事だ。

 

「そしてそれが発覚する前に私は切る!」

 

──がちゃ…

 

 いくら糸巻き巻き人間でも電話は操作できない。

 

「何故そんなに喧嘩っぽい……」

「だって、私、ドフィさん嫌いです」

「………………それには同意するが」

 

「コラさん殺すが原因となった政府も嫌いですが」

 

 バッ、とセンゴクさんの顔が上がった。

 

「いつ…、コラソンの事を…!」

「2年前に。帰った時言うのはセンゴクさんの胃に負担と思った故にです」

「………………そう、か…」

 

「コラさんの本名は、ドンキホーテ・ロシナンテで合致ですか?」

 

 私がそう言えばセンゴクさんがコクリと頷いた。

 ロシナンテさん。ね。

 

 

 

「………………」

 

 

「どうした?」

「兄弟喧嘩とは悲しき物ですぞね…」

 

 うぅっ、エースとサボとルフィに会いたい…。もうそろそろホームシックだ。むしろ引きこもりたい。

 

 もうそろそろサボの手がかり掴めないかなって思ってるけど…。ひょっとしたら名前を変えてるかもしれない。

 

 しかし!こっちは世界各地四つの海から前半後半まで飛び回っているんだ。サボに貰った青いリボンを付けて。

 

 私が分からなくてもサボが気付いてくれる可能性がある。から。

 お願いだからもうそろそろ見つかってよ………。情報部に暇さえあれば出入りしてるのにっ!

 もちろんあーだこーだ言われないように許可は取ってますが?

 

「失礼致しますた」

 

「う、うむ…」

 

 カモメが今日も可愛らしい。

 




原作で少将ヒナがアラバスタの護衛についていましたが今現在は中将以上、です。
これは特に深い意味はありませんが後々。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。