2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第6話 ある日森の中

 

 おはようございます!今日もいい天気ですね!

 朝、お粥っぽいのをダダンさんに食べさせられてお腹を膨らました私は自分で走れる程度になるために筋力を付けたいと思いハイハイしてつかまり立ちしようとしてた所をエースくんに捕まっちゃいました!

 

 

 

「びにゃぁぁぁぁあ!!!」

 

 

 そして紐で固く結ばれた私は今森の中でダッシュしているエースくんの背中。

 

 お前何歳児だよってほどのスピードで体感速度が早いのなんの。

 

 

 なんで岩を飛び越えたの!?

 平坦な道を走りましょう!?

 なんで橋をダッシュするの!?

 ギシギシするでしょう!?

 そしてなんで私を背負ったんだよ!

 落ちたら危ないでしょぉぉ!?

 

 と言うか、危ない以前の問題だよね!これ!

 

「ふぎゅぁぁぁぁあ!!」

 

 

 

 

 ……誰でもいいから助けて。

 

 

 ==========

 

 

 

「よぉし!やるか、サボ!」

「夕飯探しと海賊貯金だな!」

「ふひゅ………………」

 

 自分走ってないのに、何でこんなに疲れてるんだよちくしょう。

 

「リー、大丈夫か?」

 

 サボが心配そうにこっちを見て優しく頭を撫でてくれる。

 こいつ、絶対将来モテる(確信)

 

「んぶぁ!」

 

 大丈夫じゃない、休ませろって言いたいのに!!なんでこのポンコツスキルは!

 

 

──ガサ

 

 自分の左から音がして無意識にそっちを向く。

 

「…」

 

 スラリと長い身体、細い顔、美しい肌の色、艶やかな肌質、パチリとした丸い瞳。

 

 

 そして、長い舌。

 

 

「びぃぃぃぃぃぃぃっっっっ!?!?」

 

 

 

 ヘビぃぃぃぃぃぃっっ!?!?

 

「はは、リーは元気だな」

 

 何が元気だな、だ!

 逃げ、逃げよう!?逃げましょう!?ヘビってきみどんなのか知ってますか!?噛まれたらアウトだよ!?痛いよ!?下手したら毒持ってるんですよぉ!?

 

 危ない。危険。

 私の脳内裁判では1秒も経たないうちに満場一致で逃亡の判決になりました。

 

 だからね?お願いします鉄パイプを持ち出して君たちは何をするつもりだい?

 

「この程度の雑魚に手間取るかよ!」

「エースに任せていいのか?」

「任せろ!」

 

 

 あ、私多分死ぬわ。

 

 

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

 

「ふぎゅぁぁぁぁあ!!」

 

 今度はなんで叫んでるかだって?

 

 じゃあ聞くが

 

「やるぞ!熊肉!」

「美味いんだよなぁ」

 

 森の中でクマさんに出会ったらどうしますか?

 

 お嬢さんは落とし物はしてません!!森におかえりくださいーー!!

 

「いくぞ!」

「おう!」

「んぎぃぃぃい!!」

 

 無理にきまってんだろぉおおお!!何倒そうとしちゃってんの!?君たちあれでしょ?小学校一、二年程度の年齢だよね!?普通尻込みするから!お姉さんの精神年齢的に君たちより年上だと思うけどお姉さん叫んでるからね!?

 

「おりゃ!」

「まだまだぁ!!」

 

 鉄パイプでめっためったにクマさんをいじめてる子供。あなたはどう思いますか?……私誰に話しかけてるんだろうね。

 

 異世界の常識恐ろしい。こんな子供でもクマさんは敵じゃないってか。

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

 

「んだばぁぁぁぁぁあ!!」

 

 次はなんで叫んでるかって?

 

 

「ニぃぃい!」

 

 エースくんは私を背負ってワニに挑むの。

 

 

 

 

 

 

「ワニ肉と熊肉ってどっちが美味いと思う?」

「俺は熊肉かな…」

「へぇ、エースは熊肉の方がいいのか」

 

 狩り終わったこの2人はクマとワニを担いで森をゆったりと歩いている。

 

 と言うかクマもワニもいる森に子供を放置ってどうなの。1回ダダンさんに抗議する必要があると思うんだ。

 

「んび…」

 

 走ってる時にギャーギャー騒いでた自分に叱咜したい。この程度で騒ぐなよ、って。

 

 なんていうか馬に乗るだけで疲れるって聞くが多分感覚あんな感じなんだと思う。全力でヘビクマワニと挑んでいくエースの背中にずーーーっとがっくんがっくん浮遊感に揺られながら一生懸命しがみついてたらそりゃ疲れるわ…。

 私、多分将来ワニ嫌いになる。むしろ今から嫌い。

 

 すると眠りにつきそうなくらいの疲労感が襲ってきた。

 

「リー、眠そうだな」

「あい……」

「眠いなら寝てていいぞ」

「あだ……」

 

 力なく返事をして、私は重たい瞼を──

 

 

 

 

 

「ガルルルルルルルッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 ──閉じさせてくれなかった。

 

 

「びぃ!?!?」

 

 

 目の前にいるのは虎でした。

 

「お、おいおい…」

「やばいぞエース…」

「2人で殺れるか?」

 

 疲れてんだよクソ野郎っっ、これ以上私に反応求めても「んば」としか言えないぞ。

 「あ、これ死んだ」って言いたいけどな。はっ。

 

 半分自暴自棄になってる自分を無視してエースが戦闘態勢に入ってる。

 

「んびょ!?」

 

 やばいぞとかって危機感感じてる癖に戦おうとしてるの!?馬鹿なの!?阿呆なの!?

 

「お、おいエース!さすがにまずいって!逃げるぞ!」

「何でだよ、俺は逃げねぇぞ。1度向かい合ったからには」

「エース!!」

 

 命あっての人生でしょーが!親の顔が見てみたい!

 

 やばい、やばいぞ。サボが危機感持ってるしエースも分かってる筈なのに逃げない。そもそも虎は出会ったら即逃げるが常識でしょうて。

 日本でお目にかかれるのは檻の中の虎だったけど。

 

「っ、分かったよ!エース1人だけ戦わせれるかよ!」

 

 サボぉおぉ、君なら止めてくれると思ってたのになんでそっち側についちゃったのぉぉぉ!?

 何とかしなきゃ。とりあえずこの2人止めよう。

 

 じりじりと1匹と2人+足でまといが睨み合って隙を狙っている。

 

 やばいやばいやばい。

 私は2人の服をガシッと掴んで引っ張った。逃げようと合図したかった。

 

 

「ガァァァァァア!!」

 

 それを隙って言うんですね。

 

 虎がわたしたち目掛けて右手を振りかぶった。

 

──ドゴッ!

 

 エースとサボは後ろに飛びその攻撃を回避したけど私達の丁度後ろにあった岩をいとも簡単に粉々に砕いた。

 

 

 

 ………わぁ。

 

 

 アレが私達だと想像すると血の気がサーーっと引いていくのが分かる。

 もう1回死んだら天国に行けるかな。どうか狭間に落ちません様に。

 

 ネガティブ思考にしかならない自分を叱咜して何かないかと探る。

 地形 能力 気候。

 なんでもいい、なんでもいいから使えるものを探す。けど私は身動きすら取れない。だから頼れるものはただ一つ。

 

「っ!」

 

 魔法。

 

 私の弱々しいマッチの火では虎を倒す事に使えない。風も一体どれだけ使えるのか分からない。

 弱いと過程するととてもじゃないけど倒せない。

 

 もし失敗して相手が余計怒ったら?間違いなく標的に向かって猛ダッシュ。

 一か八か、1回限りの賭け。

 成功すれば生き残り失敗すればパクパクムシャムシャ。

 

 私が絶対嫌だ。

 

 地形を利用するのが有効だけどここに目立ったものは無くて少し開けた場所。でも、でも。

 

 

「ぎゃけ!きゃわ!ひゃし!!」

 

 崖と川と橋がある!

 

「えーふ!ぎゃけ!ぎゃーーーーーけ!!」

 

 あっちに行くように訴えかけるけど伝わるかどうか不安。

 

「ぎゃけ?」

「あだ!だだだ!」

 

 バシバシ背中を叩き橋のかかる崖を指指すとようやく分かった様で疑問に思いながらもサボに呼びかけた。

 

「サボ!崖の方に向かうぞ!」

「なんでだ!?」

「いいから!」

 

 ひゅ、と喉からおかしな音が出たけど気にしない。

 

 私の作戦はこうだ。崖の傍に虎を近ずけて風や火で体勢を崩してどぼん!

 名付けて〝殺人事件でありがちな自殺に見せかけて他殺作戦〟

 

 これは風や火の威力と賭けをした。おどかせる程度の火や体勢を崩せる程度の風を起こせれば私の勝ち。起こせなかったら私の負け。くっそつまらない作戦!もっと頭使えよ私ぃ!

 

「くっ!リー、大丈夫か?」

「んぶ!」

 

 大丈夫じゃないです。

 

「そっか大丈夫か、心強いな」

 

 サボ、君は私の心を反対にして読む天才かな。

 

「んむぅぅぅ……」

 

 唸り声をあげながら力を溜める。3回目の魔法は比較的早く血がぐんぐん巡っていつでもいける状態になった。

 

 後はタイミングを合わせれば完璧なのだが。そこは意思疎通出来ないけど2人に任せるしかない。

 

 

 

 

 

「グルルルルルル……」

 

 

 

 

 今だ!

 

 


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