ある人間は言った。
「彼らは怖い」
ある人間は言った。
「彼らは腑抜けた奴ら」
ある人間は言った。
「彼らは政府につこうが所詮海賊」
ある少女は言った。
「彼らは一部を除くが関わる事全力回避が最良」
これはそんな彼らと1人の少女の物語。
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ある日の昼下がり。マリンフォードに大量の荷物が届いた。
「(なんだこれ…………)」
リィンは自分宛に届いた荷物に頭を悩ませていた。
もしかしたら
──ぷるぷる…
肩に乗る電伝虫が鳴いた。このタイミングは嫌な予感しかしないので正直無視したいが電伝虫1日出なければ不機嫌になるドフラミンゴだと厄介なのでリィンは渋々出ることにした。
「もしもし……」
『遅い、わらわの電伝虫は常にワンコールで出よとあれほど』
「間に合ってるです」
──ガチャ…
海賊女帝 ボア・ハンコックだった。
どうしよう、凄く無視したいけど
──ぷるぷるぷるぷる…!…ガチャ…
「何事ぞ!うざい!」
『な、うざいじゃと!?毎日の様に電伝虫をかけるドフラミンゴよりは良いであろう!』
「だから、
ハンコックが言えばリィンは頭を抱えた。仲が良くなる反動でこちらに被害がくるのなら険悪になれ!と。
『ところで菓子は届いたか?』
「お ま え の し わ ざ か 」
『さ、最近菓子作りにハマっておるだけで甘い物好きのそなたの為に作ったわけでは無いから勘違いするでないぞ!』
「待つして、あれまさか海賊女帝の手作りです?」
『それがどうした』
「スモさんとヒナさんに全部あげるです」
『な、な、なななな、何故!』
「怪しい故に」
電伝虫から焦った声を聞きリィンはある可能性に気付いた。
『わ、わらわの…わらわの想い……』
「──冗談です。全部私が食すです」
毒が入っているかもしれない。そうなると常識人という貴重な彼らに毒入り菓子を渡すのはあまりにも勿体無い。
「(1口食べて美味しかったら全部食べよう。食べ物に恨みはない)」
毒に強い自分なら食べれるかもしれないという甘い考えで完結した。
食べ物に目がくらんだ雑魚は自分にも効く毒の可能性を頭から全力でぶん投げたのだ。食べ物に対する執念はもはや呪いレベルである。
『そ、そうか…!わらわに感謝するが──』
「失礼されますた」
リィンはさっさと話を切った。今日は忙しくなりそうな予感がする。
「(よーし、今日も空元気に頑張るぞー!)」
七武海と関わるとろくな事が無いのは経験則だ。
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「おお、リィン。元気そうじゃな」
「ジンさんくまさんこんにちはです。今日はどのような御用です?」
「魚人島への交易船の手配じゃよ」
七武海海峡のジンベエは天然と現実逃避が入っているが常識人。七武海全員が彼の様な人だったらどれだけ有難いだろうかと毎回思ってしまう。
見習ってくれ
「くまさんは……あァ。交渉です?」
「的を得ている、俺の交渉相手は元帥じゃないがな」
「理解するしたですぞ」
「また『ぞ』を使っておる。おつるさんに怒られてしまうぞ?」
「う、ぐ……しかしながらジンさんも使ってるです」
「わしはいいんじゃよ」
「理不尽!」
大人は汚いと唸っていれば手袋越しだが肉球の様な感触がリィンの頭に添えられた。
「安心しろ…お前も十分汚い人間だ」
「1番心にくる……………」
安心出来ない言葉を貰った。
「次はいつ魚人島に来るんじゃ?」
ジンベエは持ち前の天然で胃に追い討ちをかけてくる。
「は、ははは………」
電伝虫がかかってこないのをいい事にリィンは未だ海軍大将を黙っていた。
キリキリと胃が雑巾絞りされてしまう。
「……いいのか雑用」
「はい?」
「クロコダイルとドフラミンゴが会議室でたむろしてたぞ」
「帰るです」
くまも負けじとリィンの胃を痛めつけに来る。悪意が無いから恨めないだろう。
「(この野郎っっっっ!)」
思いっきり恨んでいた…。
「あ……海賊女帝から大量のお菓子が届くしたので貰うしてです」
かるったリュックの中に手を突っ込みアイテムボックスを開くとお菓子の箱を2つ取り出した。
「仲が良いんじゃなァ…」
「何故仲良く見えるです……」
毒が入ってますようにと願いながらリィンは2人にお菓子を渡した。
「わらわの扱いが酷い気がする……」
女ヵ島で何やら嫌な予感を感じ取ったハンコックだった。
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会議室には
七武海サー・クロコダイルと同じく七武海ドンキホーテ・ドフラミンゴだ。
「さて……今日もやるか…」
「いい度胸じゃねェか鰐野郎」
テーブルの上に置いたのはトランプ。
「フッフッフ……運も実力の内。今日はドーナツでどうだ?」
ドフラミンゴがニヤリと口をゆがめるとクロコダイルの顔を見た。
「ガキクセェが106勝105敗のテメェにはいい選択じゃねェか」
「………………鰐野郎覚悟しろ」
「上等だ鳥野郎。約束は覚えてんだろうな」
「当たり前だ。16までに決着をつける」
ドフラミンゴが七武海に就任して数年。この2人は良く勝負をしている。何年もかかる賭け事を。
賭けは…『リィンを自分の所に引き入れる権利』
もちろんリィンは知らない。
勝負締切はリィンが16になった時、勝利の多かった者がその権利を得る。
もちろんリィンがどちらかに入りたいと言えば本人の意思を優先させるのだが何度も何度も断られている2人はこうやって勝負を始めた。
「さァ………始めるか」
パラパラ、とトランプが円をえがく。
「次は俺が勝つ」
「次も俺が勝つ」
ほぼ同時に呟けば口元に怪しげな笑みを浮かべトランプを手に取った。
──バンッ!
するとトランプが爆発したようにビリビリに破ける。
「ゼェ………ゼェ………ゼェ…………、なんという事ぞ賭けに利用するしてるぞテメェ達は!です!」
嫌な賭け事の噂を他の七武海から聞き飛び込んできたリィンの能力だ。なるほど、風を使う能力だと聞いていたが飛行以外に爆発も出来るのかと感心する。
「頼むから俺達の理解出来る言葉で喋れ、口調戻ってるぞ。あと張本人だろうが邪魔するな」
「張本人故に邪魔するぞ!?」
クロコダイルがギロリと睨めば何故睨まれなければならないと反論に移った。理不尽だ。
「はぁ…今日は止めだな。鰐、今度お前の所に行って決着をつけるからせいぜい覚悟決めておけよ」
「なんで毎度毎度俺の所だ!勝っても負けても酒を大量に飲むだろうが!」
「俺が移動した方が早ェだろ……。わーったよ、次は酒持ってくるさ。フフフ…」
「(こいつら仲良しかよ)」
頭がいい2人だからこそ馬の合う所があるんだろう。ただ、絡む原因や話題を自分にしないで欲しいと心から願った。
「私これにて帰るです、約束が存在するですから」
「雑用はもう無いだろ……?何の用だ?」
「…………自然と私の仕事内容の把握を言うは気持ち悪いです」
「自然とスケジュール把握するな糞鳥野郎死ね、だとよ」
「クロさん!?私その様なこと………思うして無きぞ!?」
「間があったぞ?リ ィ ン ち ゃ ん ?」
「クハハハ…!焦ると元の言葉が出るんだな…面白れェ」
「……………………はげろ…………」
「おい今随分流暢な言葉でディスっただろ」
「私 言語不自由 謝罪」
「こいつ…ッ!」
やはり変態共を相手にするのは精神的に凄く疲れる。
「私ボーイフレンドと約束存在する故に失礼するです」
「「え…………」」
リィン曰く、『まるで娘に彼氏がいると伝えられた父親の様だった』らしい。
実際
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「丁度いい所で会ったなリィン、手合わせするぞ」
「ま、私取引…ミホさぁぁ──ん!?」
鷹の目に引きずられ訓練場へと連れていかれる姿は本部の海兵にとって日常となり、生傷絶えないが五体満足で帰ってくると知っている為か止める者は誰も居なかった。
「(次会うまでに頑張って見聞色身につけて逃亡してやる……!)」
フェヒ爺より行動的なもう1人の師に対して斜め上の決意を固めた。
キリがいいので番外編を挟みました!
オチアンケートの締切は第70話の投稿した日がラスト、という事にさせていただきます!