2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第60話 歯車は再び動き出す

 

 

「おはようございまーす!」

 

 (世界規模の)届け物の雑用をこなす私は大分成長した。今は10歳の冬、正しい誕生日が分からないけどあと少しで11歳になる。

 

「リィンちゃんおはよう、元気だね」

「情報部、今日も作業お手伝いするですね〜!」

 

 冬といえど島によって季節が決まっているから少し肌寒くなるだけなので普段より本部では作業がしやすくなっていた。

 

 情報部に出入りする私はいつも通り書類の整理をし始める。

 

「今日はまた情報多いぞですね」

「あ、やっぱりそう思う?賞金首が一気に増えたからその情報もあるし北の海(ノースブルー)でまた国が落とされたんだよ」

「国が?怖いですね……」

「まァセントヘレナは元々民衆を敵に回してる様な国だったからね…仕方ないといや仕方ないよ」

 

 トントンと書類を整えると箱に分けていく。

 こっちが賞金首の出生やら能力の情報、こっちが世界情勢の情報……。それとこっちが商業施設の情報に…、こっちは届けないといけない方か。

 

「ヘェ、そんなにも不安定な国ですたか……」

「革命軍が動くのも無理も無いよ……俺たち海軍にとって敵だけど個人的に応援したくなるなァ…おおっと反逆罪反逆罪」

 

 お調子者ジャンさんが時々こう言った発言をすると自然と暗くなってしまう情報部に笑いが生まれる。ムードメーカーとして情報部に欠かせない存在だろう。

 

「そう言えば革命軍の新戦力が目立った活躍してんなァ……怖い怖い」

「新戦力ゥ?」

「年代的にリィンちゃんが兵士になる時には対峙しなきゃいけなくなるんじゃねェかァ?」

 

 ニヤニヤとからかう笑みを浮かべるジャンさんの頭を反射的に引っぱたく。

 全く───。

 

「怖い事言うは禁止です!」

 

 私は雑用にいるもん。そうしたら表立って討伐隊に行く事も無いだろうし!

 

「こっちも怖かった…」

「ジャンさん酷いです!」

 

 泣き真似をするとジャンさんが書類を渡して来た。

 

「ほい、とりあえず元帥に届けるやつね」

「はーい」

 

 例のセントヘレナとか言う国の書類か。革命軍って未だに不明な所があるんだよね。

 革命軍のトップは世界最悪の犯罪者と呼ばれるドラゴン…──名前だけしか知らない、顔も出生も何も知らない人間。

 

 でも私は一つだけ知ってる事がある。それは彼が──。

 

「だってよ〜、このサボって新戦力まだ子供だろ?」

 

 

 

 

 

 

 

「サ…ボ………?」

 

 書類に目を落とす。

 

『新戦力の一つとしてサボと呼ばれる少年が一人。恐らく見聞色と共に武装色の使い手で───』

 

 別人の可能性だってあるけど…。

 

 サボって、私の…────。

 

──ガタッ

 

「リィンちゃんどうし…」

「私これそ早急にセンゴク元帥にお届けするです!」

 

 他の書類に目もくれず、私は走り出した。情報部は比較的元帥室と距離が近いから、全力ダッシュしても体力は持つ。

 

 

 

「はァ…はァ…!」

 

 息切れからの動悸(どうき)なのか、分からないけど心臓がうるさい。耳に入るのは心臓の音だけ。

 不思議と周りの音が入らなかった。

 

 

 この感覚、とても懐かしい。

 味わいたく無かったこの感覚。

 サボが死んだとドグラの口から聞いた時のこの感覚。

 

 期待するな、期待するな。期待が外れた時に辛い思いをするのは自分だから。

 でも期待する、期待してしまう。ずっと探し求めていた情報だから。

 

「サボっ…!」

 

──バンッ!

 

「元帥ッ!」

「なっ!……いきなりどうしたんだリィン」

「革命軍が北の海(ノースブルー)で一つ国が落とすされたです」

「………またか…、最近活発になっておるな…」

 

 センゴクさんは作業の手を止めて私から書類を受け取る。

 1通り目を通すと今度は視線を私に向けた。

 

「それで?リィンはどうしたいんだ?」

「セントヘレナに行く経験がするたきですぞ…!それなる話は昨晩の話、今から行けば革命軍を一目でも見る可能性があるです!考えれば私は革命軍との情報が少ないです、故に行きたいと思うたです!」

 

 練習した口調を放り投げてでも理由を一息で説明するとセンゴクさんは驚いた顔をした。

 

「いつもこう言った事は不満げなのにな」

「革命軍は市民の味方、私は市民になりすます事可能性だからです」

 

 簡潔で単純だがこれは私がまだ子供だから使える技でもある。

 もしバレたとしても回避行動の一つとして考えはあるけど。

 

 

「…分かった、但し危険な事は無──」

「行ってくるです!」

「──早いなオイ!」

 

 最後まで聞くこと無く元帥室から飛び出した。手には箒。

 

 

「あ、おいリィン。どっか行くのか?」

「はいです!スモさんおはよう!」

「お、おう…?」

 

 窓から飛び降りるのは怖いので階段で降りて箒に跨る。

 

 そして私は──飛び立った。特別手当はこれの場合出るのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

 

 時刻は夜、場所は北の海(ノースブルー)元セントヘレ王国。偉大なる航路(グランドライン)で天候が悪く進む速度が普段より遅くなってしまった。

 セントヘレナの革命からもう1日、革命軍が居ない可能性が圧倒的に高い。

 

「あ、あのっ!革命軍がどこか知ってるですか?」

 

 白い息を吐きながら通り行く人に聞いていく。革命された国の国民にとって英雄にも等しい、だからもしかしたら隠れている船や基地を知っているかも知れない。

 

 大丈夫、今度は頭が回る。

 

 もう二度とあんな思いはしたくないから。ゴア王国と同じ様に歩き回る。

 違う所は私の頭が寒さのおかげでクリアな事と人に聞ける事。

 大丈夫、きっと見つかるから………。

 

「待ってろよ…革命軍……!」

 

 ザクザクと雪を踏む音をBGMに手当り次第革命軍の情報を集めていく。

 もちろんなかなか集まらない事は覚悟済みだ。

 

 

 

 

 私は少しの可能性に賭けた。

 

 革命軍に私がどれくらいの時間を掛けられるか分からないけれど、夜中になっても諦められない。

 それにもし会えるのならドラゴンさんにも会ってみたいし…。

 

 

「すいません革命軍知ってるですか?」

 

「いや…知らねぇな…」

 

「ありがとうございますた…」

 

 

 本当に思えば思う程可燃ごみの日と類似する。夜中始めた探索、1人のサボを探す探索。炎の熱で暑くは無いけど、雪の冷気で寒い。風はあの時の同じ、強い風が吹く。

 

 

 大丈夫、今度は見つけるから。

 例え別人でも、少しでも可能性があるから。

 

「へくしゅっ!」

 

 でも流石に寒すぎやしませんか北の海(ノースブルー)

 

「革命軍知ってるですか?」

 

 繰り返される言葉、知らない、数えるの億劫(おっくう)になってくるくらいには聞いてる。

 

 

 

 

 

 

 時間はもう夜中と言っても過言では無い。年が開けた冬場の北の海(ノースブルー)の夜中はやはり寒くてもうそろそろ体力的にもやばい。

 

「あの…革命軍知ってるですか?」

 

「…。革命軍に何の用があるんだ?」

 

 質問に質問で返されたので私は少し考えて答えた。

 

「入りたい……」

 

 もしもこの人が革命軍で無かった場合、知人に会いに、と言えば簡単だろう。でももし革命軍だった場合、知人だとすぐに確認が取れてしまう。サボが別人だったら…マズイだろう。

 

 

「そういうのは港を探すべきじゃないか?」

 

 ここは裏路地に近い。港で探すという選択肢は早めに外した。

 理由はいくつか考えたけど、

 

「一般常識に囚われるは無いと」

 

 この世界の移動手段は船だ、だからと言って港に必ずあるとは思えない。

 そもそも革命軍は海軍の敵で港に海軍が来る可能性が高いから。

 

 それにこの世界は悪魔の実という一般常識からかけ離れた能力があるからどうとでもなりそう。

 

「……付いてきなさい」

「……………………へ?」

「私は革命軍の1員だ。話は通すからついて来い」

 

 

 

 

 思わずポロポロ涙がこぼれ落ちる。

 

 当たった……。当たったよ。

 

 

「やった…やっと、手がかりが………!」

 

「え、ど、どうして泣くんだ!?」

「う、嬉しく……て…」

 

 とりあえず第一段階がクリアしただけだ。

 後は軍の中でサボに会うことが大事になってくる。その為にも少しでも良い、ドラゴンさんに近付ければ。一つだけ…なんとかなる。

 

「カラスに乗って革命軍の船に行くから覚悟を決めるように」

 

 今聞き捨てならない言葉が聞こえ、涙は全部引っ込んだ。

 

「…え?カラス?」

「カラスだ」

「……………自分で飛ぶしても良いです?」

 

 流石にカラスに乗って飛ぶ勇気は無かった。仕方ないと思う。

 

 

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

 箒に乗ることに驚かれたが革命軍の人はカラスに、私は箒に乗ってセントヘレナから離れた所に留めてある船に降りた。

 

「寒いだろうから船内に。ちょっと上に掛け合ってくるから待っててくれるか?」

「はい…!」

 

 しばらく1人で待っているとさっきのカラスの男の人が戻ってきた。

 

「こっちだ。──そう言えばキミはなんの能力者だ?」

「実の内容は不明ですが、風関連だと思うです」

「……え? 風だって?」

「…? はいです」

 

 目がギョッと見開かれて驚かれる。なんだろう、ムズムズする。

 

「…………まァいい。この部屋だよ、私は入れないから入って来るといい」

 

 焦げたような色の扉をノックすると「入れ」と低い言葉が聞こえた。

 カラスの人を見るとコクリと頷く。多分「さっさと行け」って事だろうと思った。

 

「失礼するです……」

 

 扉を開けて中に入ると目の前の椅子に座っている男の人が1人、その両脇に女の人と魚人が1人ずつ。そして少し離れた壁際に1人いた。

 カラスの人は部屋の中に入らなかったけど扉の前に待機してる。足音が聞こえないからきっとそうだ。

 

 なるほど、もしもの襲撃に備えられる様な配置か。

 

 

 にしても魚人が革命軍の中枢にいるとは…。私魚人に縁があるのかな。

 

「魚人を見るのは初めてかな?」

「…!?」

 

 じっと見ていたのがいけなかったのか、話しかけられて肩がはねた。

 

「い、いえ……魚人にお友達居るです……」

「そうか…!是非とも紹介して欲しいな!」

 

 口角を少し上げる魚人。

 嘘は言ってないよ。ただお友達が七武海のジンさんだとか、竜宮城の王女王子だとかの常識外の面子なだけで。多分紹介は出来ないかな。

 

北の海(ノースブルー)で魚人を知ってるとは珍しいな」

「……そう、ですか」

 

 椅子に座った人が警戒を紛れさせる。

 緑に近い色のマントを被っているから顔までは分からないけど。

 

「…あの、失礼ですが名前は聞いて良いです?」

「……………ドラゴンだ」

 

 わ、わーお。まさか北の海(ノースブルー)に革命軍トップがお越しでしたか。じゃあこの部屋にいる人達の立場ってかなり高いんじゃ……。運は良いかも知れないけどワンクッション挟むつもりでいたからちょっと胃が痛い。

 

「……キミが革命軍に入りたい子か?」

 

 ドラゴンさんが再び口を開く。

 

「私は革命軍に入るしないです」

 

 ガタリ、周囲の人間がいつでも戦闘に入れる状態に変わった。

 やっぱり10歳相手でも警戒はするよね。最近革命軍の戦力が一気に上がって色々と狙われる可能性が高くなってるんだから。

 

「では、なぜ来た」

「サボという人に会いに、です」

「…………サボに?目的はなんだ?」

 

 張り詰めた空気は緩まる事が無い。もうそろそろ胃痛が酷くなって来るんですけど、もう少し警戒心解いてくれませんかね。私はこれを言わないとどうにもならないんですけど。

 

 そもそも潜入捜査の許可は取ってないのに入っちゃったら立場が危うい。

 

 

 でも、立場云々の前に一つだけ言いたい事があって。首が飛ぶ覚悟で言ってやった。

 

「────安否確認です育児放棄(ドラゴン)さん」

「ちょっと待て」

 

 ドラゴンさんは額に手を当ててふぅーっと大きく息を吐いた。

 

「ジジイの手の者か?」

「……肯定と言えば肯定ですが否定です」

 

 魚人さんや女の人は会話の意味が分からなくて首を傾げている。

 

「私、興味本位で聞いたです。『ルフィの両親は誰か』と」

「ルフィとは、どういう関係だ」

「盃の、兄妹です」

 

「ちょっと待てドラゴンさんにキミ!は、話の流れが分からないんだけど……」

 

 女の人が静止の声をかける。私は、容赦しないぞ育児放棄。

 

 

「ドラゴンさんはモンキー・D・ガープ中将の息子で私はドラゴンさんの息子の義理の兄妹です」

 

 

「「はぁぁぁああ!?」」

 

「第一!ドラゴンさんが育児放棄などしないならば!ルフィは風船に括りつけられジャングルに飛ばされる事も!赤髪のショタンクスさんに目をつけられる事も!目下に怪我する事も!無きですよ!?」

「わかった、わかった………」

「それに───────」

 

 ちょっとした違和感に気付く。何か、何か。

 

 ふと壁際で黙っている男の人に視線を向けた。シルクハットを被っている姿が──被る。

 

 

「サボ………?」

 

「「「!?」」」

 

 周囲の人達の様子で確信する。彼が革命軍新戦力のサボ……。そして顔を見て、確信した。

 

 左目に大きな焼け跡、金色の髪、あどけなさが残る顔。

 

 彼が兄妹のサボだ。

 

 

「サボ………っサボ!ずっと、探しすた、6年以上、ずっと、サボ…サボ……!」

 

 黒い目が開かれる。

 

「私、私………」

 

 

 

 

 

「お前は誰だ?」

 

 

 

 

 

「…………………………え?」

 

 

 ガンッとハンマーで殴られた様な衝撃が頭に走る。

 

「私リィンです。サボ、嘘ぞ……?ずっと青いリボン、私着けて………」

 

 言ってもずっと首を傾げている。眉間によった皺はそのままで──敵を見る目。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ─────サボ…

 

 

「冗談、言って……。嫌、嫌だ。いやぁぁぁぁぁぁあ!」

 

 私の意識はそこでまた途切れた。




記憶喪失サボとの再会。
サボは三兄弟の中で頭が1番いいと思っているので革命軍に現れた『入る気のない謎の少女』を全力で警戒しています。
今この時ではサボは誕生日がまだの16歳なので革命軍の参謀総長になるのには早いかなと思い参謀総長候補の戦力としての立ち位置になります。

ドラゴンさんはサボと逆で警戒心が薄いと勝手に解釈しているので話がトントンとスムーズ…では無いかも知れませんが門前払いはされない事にしました。だって警戒心ナニソレオイシイノ、のルフィ君とガープ中将の血縁関係ですしグレイターミナルの助けた人間を問答無用で船に乗せてくれる人ですから根は凄く優しすぎる人じゃないですかね(あくまで自己解釈)

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