2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第61話 ミッション!革命軍を味方に引き入れろ!

「リー!おはよう!」

「おはようごじょりまひゅ……ぐぅ…」

「あ!おい寝るなよ!エース!ちょっと起こすの手伝ってくれ!」

「フェヒ爺の所無理やり連れていくか?」

「フェヒ爺は断固回避!おはようごぞりました2度邂逅(かいこう)は皆無ぞ!」

「あっはっはっ!リーはフェヒ爺苦手なんだなー!」

「ルフィはあの様なる鬼をご存知無き故に戯言ぞ申すが可能ぞりん……!」

「じいちゃんの方がこえーぞ?」

「否定…不可能……!」

 

 昔はこんな普通とかけ離れた生活なんて嫌だと思っていた。

 怖い爺さんに虐待紛れの修行をつけられ、一生懸命人外じみた兄について行き、ご飯はいつも肉の丸焼き。

 

 

 

 私は井の中の蛙なだけだった。

 

 

 海に出てもっと非常識な事を知り、胃の壁をすり減らして、色んな出会いがあった。

 

 

 

「リー…、おはよう」

「んむぅぅおはようぞ」

 

 頭を優しく撫でられる手もガシガシともみくちゃにされる手も飛びついてくる衝撃も。同じ布団で寝る温もりも無くなって、涙が零れた。

 

「今日は鹿肉だな」

「あれ硬ェんだよなァ…」

「文句言うなら食わせないぞ」

 

 喧嘩の騒音も、何も無くなって。

 

 

 

 

 最初無くなったのは──。

 

『リー!早くいけ!』

 

 可燃ごみの日。

 

 

『嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!』

 あの時の後悔は忘れた事は無い。夜になれば、炎の海を見てしまえば。震えが止まらなくなる。

 

 私は、居ないのに……エースが味わった炎の景色が頭の中に流れる。

 

『俺の大切な兄弟なんです───ッ!』

 

 私は居ないのに。誰かの記憶が流れる。

 

 

 

 

 

 

 わたしは只の傍観者だ。

 

 

 

 でも、それはもう止めたい……。

 ()()()()、望む未来を作りたくて。

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

「っ!ドラゴンさん!ガキが目を覚ました!」

 

「あ…おは………ようご…ざいま……ぐぅ…」

 

「って寝るのかよ!コアラー!ちょっと起こすの手伝ってくれ!」

「はいはい」

 

 起きると目の前にはいつもサボが居た。怪我した時も熱を出した時も。

 

 

「…っ! サボォ!?」

 

 意識が一気に覚醒して体を起こす。

 

 部屋は倒れた部屋と変わっていて、倒れて運ばれたのか私はベットの上だ。女の人とサボと思われる人が部屋の中に居た。

 

「あァ、起きたか……」

 

 扉を開けて入ってきたのはドラゴンさんと魚人。

 

「…ご迷惑ごめんなさいです」

 

「……ゴア王国」

 

 聞きなれた言葉が聞こえて音の方向を向く、それはドラゴンさんだった。

 マントから覗く顔が少し見えて、そこには赤い刺青が顔の左に書かれている。

 

「……やはりお前はあの時の……!」

「あぁぁぁあ!い、刺青の人!」

 

 思い出した!サボを探していた時に会った人だ!

 

「怪我、怪我!ご、ごめんなさいです!」

 

 無意識に爆発を生み出してしまって手を怪我させてしまった人。

 

「んー、待って、また話がついていけれないんだけど……」

「6.7年前に少し会ったことがあるだけだ」

 

 女の人がストップをかけるとドラゴンさんは説明した。

 忘れもできない可燃ごみの日。

 

 

 なんだか、頭痛くなってきた。

 

「ちなみにキミは2日寝たまんまだったからね」

「2日ァ!?」

 

 衝撃の事実に驚きが止まらない。大丈夫かな、海軍。

 

 すると魚人の人がじっと私を見てくる。なんだろう居心地が悪い。魚人さんはゆっくり口を開いた。

 

「……ずっと気になって居たんだが、救世主か?」

 

 なんだか凄いどこかの人魚の王妃様に言われたセリフと被る。なんだろう、凄い嫌。

 

「……げ」

 

 喉の奥から絞り出された声は女の子の声じゃ無い。

 

「やはり!私はオトヒメ様暗殺未遂事件を見ていたのだよ!魚人島の救世主殿にまさかこうして会えるとは…!」

「な、なに、ゆえにその呼び方を……」

「オトヒメ様直々にお呼びされていたので民衆は皆そう呼んでいるが?」

「っ、あの、天然人魚……!」

 

 私はなるべく目立った事無く過ごしたいのに…!

 

「ハックが昔言っていたアレか……」

 

 ドラゴンさんが顎に手を当てて何故か納得すると今度は女の人が声を上げた。

 

「あーーー!」

「え。今度は何です」

「……………ごめん。私だけなんの接点も無いと悲しいなァって」

 

 テヘッと頬を染めながら頭をかく姿を見て人騒がせな、と肩に入った力を抜く。

 

「いや、そんな事無いぞ?」

 

 ハックと呼ばれた魚人さんが女の人の頭を押さえた。

 

「タイヨウの海賊団」

「…タイヨウの海賊団?」

 

 聞いたことある単語に思わず反応する。

 

「ジンさんとアーロンの……?」

「…!ジンベエさんを知ってるの!?」

「ぎょわっ!ご、ご存知故に頭、もげ、もげるぅぅ!」

 

 乗り出して来た女の人が私の肩を思いっきり揺さぶる。待って…!それ以上やられると首が取れる…!

 

「コアラ少し待て、なァ答えろ。お前は一体誰だ…?」

 

 サボが眉を寄せながら私の目をじっと見る。きっと嘘をつかないかどうかの判断。

 

 

「私の名前はリィン!職業は海軍本部雑用と大将女狐で入隊理由は海賊を目指す兄の支援と行方不明の兄を探す為で義理の祖父はガープ中将で実の母親は戦神シラヌイ・カナエぞ!以後よろしく!」

「ちょっと待てェ!情報が処理しきれない!」

「……サボ、さん。実は頭悪いです?」

「比較的いい方だと思ってるんだが……」

 

 情報を処理しきれ無いように言ったのは私だけど。

 

「……………すまないリィン」

 

 ドラゴンさんが頭を下げた。

 え、何。何が起こった。

 

「俺の仮定が全て合っているのならば…君や君の兄妹達にひどい事をしてしまった……!すまない!」

 

 ドラゴンさんが私やルフィとエースに謝る必要がある事。

 よく考えろ。私達にとってひどい出来事と言えば…この人に関係ある事と言えば──サボ。じゃあもしかして可燃ごみの日、ドラゴンさんはサボと出会って、殺されたと思ったのに革命軍に拾われていた可能性がグッと高くなる。

 そして目の前にいる人物がサボだという可能性も。

 

 もっと考えろ。

 

 マグラがサボの殺された瞬間を目撃したという事はどうやってもゴア王国付近でサボとドラゴンさんは会っている事になる。つまりサボがどこの出身なのか分かる可能性が高いんだ。

 

 

 サボは何らかの理由でコルボ山に帰れなかった。

 

 それはドラゴンさんが引き止めたという様な理由か、サボの別人の様な様子を見ると記憶喪失か。

 漫画かよ…………。

 

「私達は、正直辛いですた。それは今も同じです」

「自分勝手な判断で引き離してしまったのを今日、初めて理解した。判断材料は十分にあった、そして調べる時間もきちんとあった」

「そうです。もっとちゃんと私達を調べてくれれば…私は海軍に入る必要はほぼ皆無ですた」

 

 それでも、親の重大さを知ったら迷うこと無く入っただろうけどね。

 ここは責任を押し付けますよ。返される恩の為に。

 

「…………すまない…」

 

「ドラゴンさん…?何を……」

 

 

 私モンキー三世代に振り回され過ぎだと思う。

 

「私個人が求める事は3つ!」

「出来る限りなら応えよう」

 

「一つ!海軍としてで無く、私個人として革命軍と協力体制を取ること許可するしてです!」

 

 このままサボとの繋がりを切れさせる事だけはダメだ。せっかく掴んだチャンスを逃してたまるか。

 

「………それは我々の情報を海軍に漏らさない、という事も含まれるな?」

「もちろんです。女狐が居る場合はマズイですが私は個人的に繋がりを保つしたいです」

「それなら構わない」

 

 ドラゴンさんは個人じゃ無い。個人として取引をするのでは無く革命軍のトップとして取引をしているから危険地帯を踏む事は無いようにしよう。

 

「というかむしろ逆に協力するしたいです」

 

「……それが二つ目か?」

「はい!二つ目はある国の革命です!」

 

 革命して欲しい国は2つある。

 

「一つはゴア王国。理由は───理解可能?」

「あァ、俺もあそこの出身だから分かる。あの表面だけの国の愚かさを」

 

 これは問題無いだろう。

 お互い共通している所だろうから。そうじゃないと可燃ごみの日にドラゴンさんが居た理由が読めない。

 

 私もただ頼むだけじゃなくてゴア王国の世界会議での発言力を削ぐことに手を回していたりする。ゴア王国より上に、ツテはあるんだ……。あんまり使いたくないツテだけど。

 

 

「もう一つはえっと…ドレスローバー…」

「…ドレスローザじゃないか?」

「それですた」

 

 ちょっと記憶があやふやだったから。

 別に私の発音が危ういとかそんな事は無いから。……そんな事無いからね!?信じてよ!?

 

「その国は革命候補に入っている」

 

 私の思考を知ってか知らずか、ドラゴンさんは話を勧めていく。

 

「だが、不思議な事に人を送り込んだ形跡があるのに記憶が無いんだ……!」

「……それ、幹部の悪魔の実の能力ですよ?」

「………………は?」

 

 ドラゴンさんが素っ頓狂な声を出すと固まった。

 

「ドンキホーテファミリーのクローバー、とれー、とれぼーる、とれ、…特殊能力チームの幹部にシュガーという女の子が居るして。ホビホビの実を食すたです」

「待て、なんでそんな事知っている……」

「ドフィさんの部下のイブが…───あ!ドフィさん忘れるした!」

 

 慌ててマントの下に手を入れてアイテムボックスから電伝虫を取り出す。音が聞こえないから忘れてたけどあの人1日電伝虫に出なかっただけで機嫌がすこぶる悪くなるのに!

 

──ぷるぷるぷるぷる…

 

「ひいっ!」

 

 かかってきた電伝虫に怯えれば、革命軍の人達は何か遊びなどでは無い事を察した様で静かになった。アイテムボックスから出した事はとりあえず黙っていてくれるらしい。

 

「………っ」

 

──ガチャ…

 

「も、もしもし」

『……………』

「あ、の………」

『リィン…一体何日出なかった?』

「ふ、2日………です…」

『…………………3日だ』

「ごめんなさいです…」

 

 電伝虫は相手の表情を示す。電伝虫がする表情は──怒り。

 

『この謝罪としてファミリーに入ると言え。一体何年待たせる』

「嫌です!何度言うと良いです!?」

『お前がよく泊まるスモーカーの部屋の引き出しの二重底に隠してあるいつでも食べれる用の菓子を燃やしてもいいんだぞ?』

何故(なにゆえ)知ってる変態(ストーカー)死ね」

 

 ヒナさんとスモさんが部屋に集まる時に食べる用のお菓子を奪われてたまるか!絶対にバレない隠し場所を見つけてやる。

 

「とにかく!入るしないです!それと任務中故にかけてくるなです!」

 

──ガチャッ

 

 受話器を急いで電伝虫に取り付ける。そのままブリキのおもちゃの様に革命軍の人達を振り向くと、彼らは何とも言えない表情をしていた。

 

「──同情するならば早くドフィさんの失脚をお願いするです」

「何年かかるか分からないが必ず革命しよう、ホビホビの実という有益な情報を手に入れたんだ」

 

 

 どうしてもドフィさんの奇行には耐えられない。正直ノイローゼになる。

 

「なァ女狐、お前はどうしてそんなに繋がりがある?不自然な程に」

 

 サボが私がもっとも気にすることを聞いた。確かに気になるよね。だが残念だったな…それは私が一番知りたい!!声を大にして言おう!何故だー!

 

「災厄、です…………」

「ふーん…」

 

 必要な事を聞いて興味が無くなったのか冷たい視線に戻った。胸がズキリと痛む。

 はー、結構くるなァ……。

 

 この4人の中で記憶喪失(仮)のサボだけ繋がりがない事になる。警戒心が他の3人より強くなるのは必然と言えば必然だけど、こういう時って兄妹パワー、とかなんとかで記憶が戻ったりしないの?

 

 『その青いリボン……リー…リーなのか?』

 『サボ…思い出したんだね!そうだよ!あなたの妹のリーだよ』

 

 とか何とか。

 

「三つ目は、なんだ?」

「あ……それは、ですね……ちょっと情報が欲しいと…」

「裏切るのか……!」

 

 サボが慌てて拳を握りしめる。

 

「ちが、違うです!……ここに来るの結構無理したです…、だからドラゴンさんの嫌いな食べ物とかの簡単な物でいいので弱点になりそうな情報を下さい…です…」

「要は形だけでも報告できるものが欲しい、と言う事か?」

「はい………」

 

 サボがドラゴンさんに視線を移すとドラゴンさんは軽い調子で答えた。

 

「なら写真撮っておくか?」

「え………?」

 

「どうせ俺が表立って出る事は少ない。近々参謀総長という人間が出来そうだしな……」

 

 この人は本当にルフィのお父さんでジジの息子なんだろうか…。

 

「どうせいずれあの口の軽いクソジジイから素性は割れるんだ、遅かれ早かれ変わらない」

「え…でも……」

「カメラは持っているか…?」

「あ、はい…」

 

 マントの下から取り出すとやはり不思議な顔をされた。

 

「そのマントは異次元か何かに繋がっているのか?」

「不明です…」

 

「……」

 

 じっとサボに睨まれながらもドラゴンさんの撮影会が始まった。

 

「やり直し」

「これじゃダメだな…」

「もっと影が差す様に」

 

 この我が儘さ、ルフィを彷彿(ほうふつ)させる……!

 

「はい、チーム!」

「そこはチーズじゃ…」

「サボ!さん、うるさいです!」

 

 時々ダメ出しをくらいながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当にこんな貴重な情報くれてもいいですか?」

「あァ、構わない……。その代わり──」

 

 ゾクリと嫌な予感がする。

 

「──キミには少しドジっ子になって欲しいなァ…」

 

 それって意訳すると「うっかり海軍の情報漏らしてね」って事、ですよね。

 

 

 

 

 教訓、人の優しさに騙されるな!疑え!常に裏があると思え!

 

「うぅ……分かったです」

偉大なる航路(グランドライン)の途中まで送ろう。聞いたが箒で飛行出来るんだってな?」

「あ、そうです。ありがとうございますです」

 

 この親切にも裏があるんじゃないかと思ってしまう。でもとりあえず大きすぎる情報を手に入れたし労働くらいしても良いかな。

 とりあえず船に乗ることがわかったから世界政府科学班がやっと作ってくれた超強力酔い止め飲んでおこう。高いけど。

 

「あ、ドラゴンさん。ちょっと寄りたい所があるんだけど……」

「どうしたサ…──あァ、近くだったな」

 

「?」

 

 私が首を傾げると女の人が教えてくれた。

 

「近くに革命に失敗と言うか、とっても可哀想な国だった所があってね、サボ君はそこに行きたいって言ってたの───あ、ちなみに私はコアラね、ジンベエさんによろしくっ!」

「そうですか……コアラさん、ありがとうです。ちなみにどこです?」

 

「フレバンス、だ」

 

 コアラさんの代わりにサボが答えた。

 どこかで聞いたことがある。どこだっけ……。白ひげ?赤髪?クザンさん?いや違うな…。ミホさん?女帝?ドフィさん?なんだか乗り物酔いしそうなメンツが頭に浮かんで来るね。

 

 

「あ!白い町!」

「なんだ女狐、知ってるのか?」

「女狐呼びは嫌です…。っじゃなく、私もそこに行きたいです!箒に乗せるですからついて行かせてです!」

 

 

 思い出した。

 フレバンスって珀鉛病が流行ったドフィさんの所に居た子供の出身地!

 

「箒に…?()()()乗ってみたかったんだよな……」

 

 

 

「え?」

「あ、れ…?俺今なんか言ったか?」

 

 サボが無意識だろうがおかしな言葉を口に出した。

 

 記憶が、完璧に失われてるわけじゃない?

 

 

「行こうです!白い町!」

 

 ちょっとだけ、元気が出た。




まだ少しだけシリアス引きずってるぅぅぅぅ!

私が目指す路線はギャグです。そこ、出来てないとか言わない。

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