2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第64話 新たな仲間、新たな敵

 白ひげ海賊団に数人、家族が新たに加わった。

 

 最初の頃は白ひげを殺そうと何度も挑んだが少しも敵わない。

 そんな彼もようやく家族に慣れ、向かうところ敵なしと意気込み、平和な日々を送っていた。

 

「マルコ〜?」

「なんだエースかよい」

「海の方なんか見てどうしたんだよ」

「いや…ちょっと嫌な気配を感じただけだよい……。何か2つ程…」

「えーっと、見聞色………。だっけ?」

「エースお前覇気知ってんのか?」

「サッチ…!ま、まぁな!昔口うるせェクソジジイに教えられたんだ!つ、使えはしねェけど……」

 

 オレンジのテンガロンハットを被ったエースと呼ばれた男は1番隊と4番隊の隊長に鼻を高くして自慢する。

 

「強かったのか、そのクソジジイって奴は」

「おう!」

 

 上機嫌に(うなず)けば帽子を深くかぶり直しニッ、と笑った。

 その時──。

 

 

「うわぁぁぁぁ───ッ!」

 

 高い声が聞こえ空から白い物体が落ちてきたのは。

 

「い、いきなり投げるは禁止!」

 

 慌てた様子で海に向かって叫ぶ姿は意味が分からない。

 

「こいつ…海兵……ッ!」

 

 白い物体は海軍の制服、しかも将校の制服を着ていた。帽子を深く被っているせいで顔ははっきり確認出来ないが間違い無く敵だ。

 

──トスン

 

 新たに敵が現れた。

 

 

 

「青雉ッ!?」

 

 流石に1番隊の隊長マルコはその知った姿に驚きの声を上げる。

 青雉はあららと一言呟くとその場に座った。

 

「あ、俺ァお前らに興味無いから見逃して」

「「「「「お前海兵だろォ!?」」」」」

 

 見逃してとは随分とふざけた事を言う。普通追われる側である海賊がいうセリフだろ、と誰もが心の中で思ったが大将の名前は伊達じゃない。警戒はもちろんした。

 

「えーっと、私は海軍本部大将女狐です」

「「「「「ふざけんな!」」」」」

 

 自己紹介を始めた海兵に再び驚きの声を上げる。ほんとにふざけんな大将2人が乗り込んで来るなど洒落にならない。

 

「おいおい言っちゃっていいのォ?」

「まァ……、良きかなと」

「「「「「良くねェわ!」」」」」

 

 どうやら白ひげ海賊団の皆さんはツッコミの経験者が多い様だ。何かコントでもやってるんだろうか。

 

「警戒してるのが馬鹿らしくなってくるよい……」

 

 流石の長男もマイペース大将達に参っていた。

 

「私の目的はポートガス・D・エースの捕縛又は討伐です!」

「俺、が………?」

「エース下がってろよい…」

 

 一応念の為、と呟けば大人しくマルコの後ろに行くエース。女狐──リィンは一声かけた。

 

 

 

 ==========

 

 

 

「───()()()?」

 

 その言葉(地雷)にエースはピクッと反応した。

 エース1人ならば何とかなるかも知れないと考え、数人の隊長よりエース個人を標的にした。

 リィンは苦い思い出を振り返る。

 

 

 ──お、おいエース!さすがにまずいって!()()()ぞ!

 ──何でだよ、俺は逃げねぇぞ。1度向かい合ったからには

 ──エース!!

 

 そう、コルボ山に来てすぐ全く動けない自分を背負った状態で危機感も感じているのに逃げなかった虎遭遇事件を……。

 

「(泣きそう)」

 

 こっそり涙を拭った。

 

「誰が逃げるって…?俺は、逃げねェ」

「能力者、です?」

「良く分かったな…〝火拳(おれ)〟の名は体を表すぜ?俺はメラメラの実の能りょ──」

「確保」

 

 リィンはどこからか取り出した網をツラツラと語っているエースにかけるとエースはまるで()()()()()()()()にヘナヘナと倒れ込んだ。

 

「え…あれ…力が…」

 

 青雉は自分が何度も捕まった経験がある網にどうしても苦い顔を隠せずにエースに同情する。

 あれは海楼石のビーズを網の所々に通して対能力者専用にリィンが作った物だった。

 

 いつまでたっても捕まえることが出来ない氷相手に夜なべして頑張って作ったかいがあった様だ。

 

「(メラメラの実…──夢でエースが発生させていた能力と同じ…益々嫌な予感がする。あれは予知夢だとかなんだろうか)」

 

 堕天使がふざけた転生を行ったんだ。そんな非常識な(正夢)があってもおかしくはない。

 

「はい、手を出すしてぞー」

 

 ガチャンと海楼石の錠がその手に()められた。

 これには思わず白ひげ海賊団の面々は顔を青白く変えた。折角新しく出来た家族なのに。

 

「エースッ!」

「近付く、な…マルコ……これ海楼石で…」

「バカ言ってんじゃねェよい!」

「なァマルコ…俺、生まれてきても良かった…のかな……」

「何言ってんだよい!良いに決まってんだろい!」

 

 マルコやサッチが一生懸命網と錠を外そうと苦戦している中リィンは他の隊長達から剣や銃を向けられていた。当たり前の対応だろうが泣きそうなものは泣きそうだし結局胃は痛くなるのかとため息を吐いた。

 

「はァ……おーっとーー。私ドジっ子残念の子、うっかり錠の鍵を落とすたー、あー、海賊達に拾うするしない内に回収するはずなのにー、どこに落すたー」

 

 完全な棒読み。うっかり鍵を落とせば周囲はポカンと間抜けヅラをした。

 

 

「あれ?いいの?彼捕まえなくて?」

「いや、命令は捕縛又は敵情視察。どちらを優先しても私の勝手ぞ、です」

「普通捕縛を優先でしょうよ…あ、俺帰ってもいい?」

「センゴクさんに良いように言うするなれば」

 

 青雉はじゃあ帰ろうと海に置いた自転車に向かおうとした。

 

「お前は帰らないのかよい…」

「少々用事存在するぞ」

 

 手首を擦りながら縄と錠から解放されたエースとため息をはいたリィンの視線が交差する。

 

「なァ…。お前名前なんて言うんだ?」

 

 エースの質問にリィンは考えた。

 一応1度来たことがある海賊団、覚えられていたら殺される確率は低くなるだろうと。

 

 その代わりエースに、自分の兄に歯向かったとバレてしまうが。

 

「……………………リ、リィン」

 

「「「「「はぁぁぁぁ!?」」」」」

 

 リィンの存在を知っている隊員が叫んだ。そりゃもう大声で。

 

「パピー、約束のフルーツケーキプリーズぞ。そして結婚して」

「ちょっと待て状況を整理させろあと結婚はしません」

 

 サッチに催促するとエースが真剣な目でリィンに近付いた。

 

「(流石にバレちゃったかなー…元々いつかは言うつもりではあったけど怒られたりとか……)」

「リィン、か……」

 

 ポツリ呟くとエースはしっかりとリィンの手を掴み目を見てわかりやすくはっきり自分の言葉を伝えた。

 

「いい名前だな!俺と結婚して子供作ってくれねェか!?」

 

 

 

 船に静寂(せいじゃく)が訪れた。まるで北の海(ノースブルー)に点在する雪に覆われた無人島の様に…、生き物は過酷な環境に耐えられず滅びゆく、冷たい冷気が肌につきささる様な。あれ、ていうかまじで周囲の空気何度か下がってる気がする。

 他の船員は海賊から敵である海軍しかも大将+どう考えてもガキにプロポーズするエースを冷めた目で見る者と頭がついていかない者に分かれる。当たり前の反応だろう。

 対してリィンはかなり混乱していた。

 

「(え、私リィンって言ったよね??マルコさんやサッチさんは分かってくれたんだよ?もしかしてこいつ───妹だと気付いて無い?もしくは子供の約束だと忘れてしまった?何?幼少期過ごした3年間は私の夢だったわけ?なんだ、まじで忘れてるのか?あれか?記憶喪失?サボと同じで?は?ふざけてるの?この調子じゃルフィまで忘れてる?え、何これ、なんだこの気持ち)」

 

 心臓がドクンドクンとうるさく音を立てる。

 

 ──これが…恋?

 

 

 

「(いや、違うね…これは純粋な)」

 

 ──怒り。

 

「……………………盛大に遠慮するです、土に還れェェェェ!」

 

 リィンは心配そうに様子を見ているサッチの手から錠と鍵を受け取るとエースの手につけ──鍵を海に向かってぶん投げた。

 

「「「「「鍵ィィィィィィッ!」」」」」

 

「あれ…リィンちゃんいいの?あれ、予備って持ってきて無いよね?」

 

 先程の行動と矛盾するリィンにクザンは思わずツッコんでしまった、いや、仕事としては捕まえる事だけども。

 

「マルコさん…。白ひげさんの存在する所にぞ案内願う……」

 

 

 クザンを無視した言葉に長男はオヤジ逃げてと思ったが信頼するオヤジなら大丈夫だろう。ほんのちょっぴり心配になった。

 

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

「随分と大きくなって出世したんだなァ…剣帝の弟子」

「その肩書きは嫌いです…久しぶりです白ひげさん」

 

 元々最初にここに来た時も大将だったんだけどな!と黙っていた事にリィンは胃を痛めながら大物海賊と対峙した。

 

「エースがすまなかったな」

「大丈夫です…奇想天外予想外の常識外は慣れが存在です」

「リィンはエースを捕まえる気は無かったんだろい?」

 

 なんだか泣きそうになっていると数少ない常識人がリィンの肩を叩いた。

 

「はいです…、今の錠は…普通にお腹が直立を」

「腹が立ったんだな…グラララ……」

 

 本題に移ろう、空気が変わったのを感じて白ひげとマルコは口を噤んだ。

 

「私、一つ夢を見たです。それはエースが処刑台に居て白ひげさんが助けるくる夢です」

「……」

「その夢を見るしたのは──エースがここに入ると知る前、おかしきと思いませぬか?()()()()()()()()()か」

 

 少し長いが夢を全て話した。

 エースが悪魔の実を食べた事が当たっていた事も、デカイ顔の人──ゴア王国で見た事があるからきっと革命軍の1人の事も、海軍本部の作戦も、スクアードだったか蜘蛛が顔にかかれた人の謀反も、麦わらの男の奮闘も、七武海の面子が変わっていた事も。

 そして2人の死亡が赤犬や黒ひげと呼ばれる男だった事も。

 

「黒ひげ…?」

 

 マルコはその名を聞いたことが無く不思議な顔をした。年をとったとは言えども自分達のオヤジは世界最強、夢とは言えど信憑性(しんぴょうせい)のありすぎるその話にそんな人物が出れば疑問に思うのは最もだった。

 

「たしか…能力は…………ヤミヤミ」

 

 実の図鑑には詳しく載って無かったが実在する実の名前だと言う。

 

「頭には入れておく、すまねェな…完璧に信じてやれなくてよ」

「仕方なきですぞ、私自身が海軍の作戦と疑うが最良です」

 

 夢の中センゴクが言っていた『死ぬ意味』

 海賊王の息子だと言う事は言っていない、これはきっとエースの口から言うべきだと思った。

 

「白ひげさん、マルコさん。エースを助けるしてです!お願いします!」

 

 2人は腰を折ったリィンに思わず目を見開いた。てっきりエースの事を嫌っているか苦手意識を持っていると思っていたから。

 

「エースは〝父親〟に否定的と思うです、だから白ひげさんが〝オヤジ〟になるしてくれて、安心したです。ありがとうございますた!」

「エースの()()()父親か……。どうやら知ってるのは海兵だからっつーわけじゃねェみてェだな」

「………内緒です」

 

 ヘラッと笑えばリィンの頭に大きな温かい手が被さった。

 

「任せろ、息子は守ってやる」

「……お願いするです」

 

「(やばいやっぱり海軍より海賊の方が優しいのかもしれない。優しさを海軍に分けてください)」

 

 海賊に寝返るのも時間の問題かもしれない。

 

「お前、一体何者なんだよい」

「エースが、海軍や世界政府を嫌いする故に…、傍より見れば完璧敵対状況の私は言う不可能です」

 

 マルコの目には悲しそうに笑う少女が見えた。何か深刻な悩みでも抱えてるのでは無いか、とても心配だった。

 

「(サボにもエースにも忘れられてる私って…………クソ、お腹空いた)」

 

 完璧後半の方が重要視されているリィンには気付かない方が無駄な幻想を抱いていれるだろう。

 

「なァリィン。その夢の事なんだけどよい、不自然な所は無かったか?」

「んー……マルコさんがハゲ…ては無き、白ひげさんの病気ぞ進行もやむを得ず……」

 

 少しずつ、体を(むしば)み始めている寿命という敵は。いくら最強と言われる男でも太刀打ち出来ないだろうと判断し不自然な事には含められなかった。

 

「あ……」

 

 一つだけ思いつく。

 あくまでも夢であり、記憶が混濁(こんだく)してるのかもしれないが数えやすい彼らが欠けていた。

 

「隊長が揃うして無き」

「……隊長が?」

「2人…存在が皆無ぞ」

 

 隊長すべてを覚えてはいないが夢を思い出して特徴のある2人が居ないことに気付く。

 

 ──2番隊のルーリエさんと4番隊のサッチさん

 

 前に1度訪れた時オカマの様な風貌をしたルーリエは結構印象に残っていた。そして結婚したいと7割本気で思ってるリーゼントの彼も。

 

「ルーリエは死んだよい」

「…!?」

 

 エースが入る数ヶ月前、2番隊の隊長であるルーリエは四皇である白ひげに喧嘩を吹っ掛けてしまった愚かな海賊にスキをついて殺られてしまったとマルコは語る。

 もちろん、家族を失って怒る白ひげを誰1人止められる筈もなく、敵船は沈められたという。

 

「益々信憑性(しんぴょうせい)が高くなるばかりだよい…、でもサッチは生きてる。多分──負傷とかで出られなかったんじゃないか?」

 

 そうだと良い。

 そう思いながら自然と震える手を庇って笑った。

 

「(あいつ(親友)が死ぬなんて俺が許さねェよい……)」

 

 落ち込んだ時おちゃらけた調子に、空腹を満たすあの腕に、海に落ちた時助けてくれるあの手に、何度救われた事か。

 決してそんな事にはさせないときつく誓った。

 

 

「オヤジ!マルコ!リィン!」

 

 バンッとその場の空気を変えるように飛び込んで来たのは白ひげ海賊団の末っ子、エースだ。

 

「サッチが宴しようって!あ、後青雉だっけ?あいつは帰った!それとリィン!いい加減こいつ外してくれ!」

 

 矢継ぎ早しに要件を伝えるエースはまるで子供。3人が笑うとエースはキョトンとした顔になった。と言うか海楼石つけてるくせにそんなに元気とかいいのかよ。もっと働いてくれ海の石。

 

「え?え?」

 

「リィン、宴は参加するかい?」

「するです、ついでに1泊」

「グラララ…!図太い小娘じゃねェか…!」

 

 マルコは未だに帽子を被ったままの頭を撫でるとエースを向いた。

 

「エース、この船の管理は俺がやってるのは知ってるよな?」

「え?あァ……」

「今隊長に一人欠員がいる。ちょっと前からオヤジとも話しててな……──エース。2番隊の隊長にならないかよい?」

「え…お、俺がぁぁ!?」

 

 海楼石を付けながらも仰天するエースに感心しながらも考え込む。

 

「(あの夢、2番隊の欠員を無くせば(わら)にもすがる思いだけど変わるかもしれない。エースを処刑台から引きずり下ろすし4番隊の嫌な欠員も防げるかもしれない。……たかが夢に振り回されるだなんて情けねェよい)」

 

 

 マルコも、リィンも、白ひげも

 

 気付く事は無かった。

 

 

 

 

 

 ──その夢の欠員である2番隊隊長がエースであると言う事に。

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