私の母親は謎の伝言をエースに残してインペルダウンへ消えていったロジャー海賊団の旗揚げ初期メンバーで予知的中率は90%幸運吸収体質で能力者の戦神シラヌイ・カナエでした。
どこのチートだこの野郎。
「………私は恵まれて無き」
と思っていた時期もありました。
ですがシャンクスさんの一言で目が覚める。
「でもガープさんやセンゴクさん、白ひげさんやシキが全盛期の時よりはずっといいだろ?」
ごもっとも。
「リィン、来い」
「ミホさん?」
ポンポンと膝を叩いてるミホさんに呼ばれました。なんだ、そこに座れってか。もしも何かあった時に逃げ出さない様にするのは君ら
「何事ですか?」
見て見ぬふりをして目の前に正座する。子供相手にゃ口に出さないと伝わらねーぜベイベー。そして私は自ら逃げ道を塞ぐ事はしないぜベイベー。
「……剣帝とどの様に過ごしていた?」
「フェヒ爺?」
口に出す言葉を少し悩んだのか少し間が空いて質問が投げかけられた。
フェヒ爺とどの様に、ね…。
脳裏に栗色の髪の憎たらしい顔が浮かぶ。あ、殴りたくなってきた。
「初期段階は…、狩りた得物と拾うした物を交換するのみですた。1回限りの初期段階のみ、後は誘拐のごとく兄に連れ去られランニングや筋トレ。結果は血とともに流水ぞです」
ブルージャム海賊団のあれ、雑魚、そうミスター雑魚くんに背中ぶった斬られて私の筋肉が血とともに消えていった。ついでに記憶も消えてくれるととてもありがたかったのに。
「拾った、物?リィン、まさか孤児の出か?貧困層やスラム街など…」
「あ、およそ想像と逆ぞ。私…正確なればエース達が獲物を狩りて、フェヒ爺が拾うた物の交換ぞ」
「……剣帝が物を拾って?……ますます想像つかないな」
まァたしかに
「……昔いた七武海のグラッジが言うには……いや、やめておこう」
昔の七武海?グラッジ?凄く聞き覚えのある水人間ですねこの野郎。
「……何故そんな事をしていたか、知っているか?」
「んえ…?んー…」
結構前の事だから覚えてないな…。不必要な記憶は自然と削除されていくから正直記憶に無い。なんでだろう。
片思いの人、と、離れる?いや、もしかしたら海賊王と離れる?
まァ人の気持ちなんか分からないや。自分の気持ち一番なんですもの。
「不明!」
「流石に分からないか……」
「逆に質疑応答」
「…?」
「何故海軍本部やミホさんはフェヒ爺の刀に異常反応?」
あァ…、と少し呟くと言葉を選んでいるのか考える素振りを見せた。
「五老星は知っているか?」
「肯定」
「鬼徹、それは3代目だったはず。実はな、元々五老星の1人が私的に管理していたのだが一つは行方不明。一つは強奪されたんだ」
「……何故か私嫌な予感がムンムン」
「強奪された方は3代鬼徹で剣帝カトラス・フェヒターが所持していたんだ」
最高権力者に何やってんだクソジジイ。
「何度か手を合わせた事はあるが剣帝の剣はあまりにもデタラメで予測不可能勝つ為には手段を選ばない邪魔する奴は全てたたっ切る精神の持ち主故苦戦を強いられ…」
ホントに何やってんだ。
「お前と戦闘スタイルがよく似てる」
「不名誉極まりない」
「…殺し合いじゃない普通剣の訓練や試合において砂利で目潰しは無いだろ」
「生きればよし」
どうやら悔しい事に〝生きる為の剣〟を扱うフェヒ爺と
「ミホさんは、何故私を〝強き者〟と呼ぶ?」
時々思う事がある。私より強い人なんてこの世の中、いやむしろ海軍の将校ならほとんどが強い。
私は武装色の覇気は自然系の人を捕まえられる程度だし、見聞色だってその存在自体私はどうにも分からないし、素質があると言われた覇王色はうんともすんとも言ってくれない。それに空中を飛ぶだとか皮膚を鉄のように固めるだとかの海軍武術の〝六式〟は知識だけで鍛錬が足りない為か全く出来ない。
どうしてそんな私がミホさんにとって〝強き者〟の部類に含まれるのか不思議であった。
「…………そうだな、正直な話自分でも分からん」
おい。
「最初は剣帝の弟子という事ではあったが今では俺の弟子でもある。ただ弟子が強いと思うのは親バカに近いものであるんだろうな」
お話にならなかったわこのバ海賊。
「リー?もう話終わったか?」
「およそ」
後ろから顔を覗かせたエースと目が合う。
「やっぱこの海賊団いいな!船長はショタコンだけど!」
「さり気なく俺をディスるなシスコン!」
「事実ぞショタンクスさん。昔エースに会いたいと進言すた時私はてっきりツンデレに毒されてしまった変態かと…」
「毒されてねーよ!」
「ツンデレじゃねーよ!」
遠くでシャンクスさん、近くでエースが同時に叫ぶとヤソップさん達が大爆笑した。
「ショ、ショタ、ショタンク…ッ!」
「ヤソップ〜〜〜ッ!」
ぎゃあーっ、と逃げ回る声とザクザク何かを斬る音が聞こえる。
「……帰るか」
「……賛成」
立てかけてある箒を取れば跨り、エースも後ろに乗る。
「…………くっつきすぎじゃないか?」
「…そう?」
「クロコダイルが最近忙しく本部に来れないから悪い虫が付かないようにと忠告されているんだ……正直めんどくさい」
「仲良しか。父親か」
なんでほんとに七武海って仕事の多忙度の連絡だとかするの!?仲良し!?ねェ本当に見習ってよ海軍!仕事の報告書きちんと提出しないで喧嘩する元帥と中将は特に!
「悪い虫否定私の兄」
「……」
「火拳、助けを求める目をするな」
「さよならミホさんまた今度が来ませぬ様に」
「可愛くない」
「べーッ!」
舌を出して反抗してそのまま箒を浮かび上がらせる。うん、この箒の扱いにも大分慣れてきた。
刀より軽くて振り回しやすいから棍術でも勉強してみようかな。ちょっとした自衛手段に。
「バイバイショタンクスさーん」
「ふざけた名前で呼ぶな死霊使いィィィ!」
「そちらこそふざけるするー!」
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「よォ…随分と長い空旅だったみてェだなバカ兄妹」
「マルコ…もしかしなくても怒ってるよ、な?」
「………怒ってないよい」
「ダウト!」
「逃亡は勝利!」
「賛成だけど〝逃げるが勝ち〟な!」
「惜しい!」
甲板で陣取ってた白ひげ海賊団長男さんに追いかけ回される未来は予想して無かった。あれれ〜?私一応海軍大将なんだけどな〜。おっかしいな〜?
「気を抜くなリー!見聞色で先回りされるぞ!」
「ふぎゅわぁぁぁあ!鬼ぃぃぃい!」
比喩表現じゃ無くてまじで鬼だと思った瞬間でした。
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「2泊もお世話をぶっかけますた!」
「お世話になりました」
「なりますた!」
甲板に立って隊長さん達や白ひげさんに頭を下げる。
ホント、元々1泊の予定だったのに良く敵のお泊まりを許してくれたよね。むしろ予定より延びた帰りで怒りの雷を降り注ぐセンゴクさんの方が海賊より怖くて帰れないや。
「おう!また来いよリィンちゃん!」
「次会う時はクッキーを所望ぞですサッチさん!」
「お嬢、元気でな」
「イゾウさんも元気百倍お願いです」
「……リィン」
「マルコさん。夢のこと、頼むました」
「任せろよい」
「グラララ…心配症も程々にな」
「私の心配は自分の身のみです」
中でも親しくなった人達と挨拶を交わす。
いや本当にまじでよろしくお願いしますマルコさん。
「──リー」
最後に1歩前に出てエースと顔を合わせる。
「お前は、これからどうするんだ?」
「どう……んー……。私の目的は半分程達成すたし…」
兄どもの援助が主な目的だったんだけど、エースは身バレしたけど白ひげさんの保護で何とかやっていけるし、サボは探し出せれたしドラゴンさんって人がいるし。正直不安なのが一番のトラブルメーカールフィなんだよね。
「潜入、する」
「潜入?まさか危ない所に…!」
「まさか」
むしろ本部の方が危ないって言ったらどんな反応するだろう、例えば七武海とか。………あと海軍大将だからと上の権力フル活用されて毒の耐性実験を行ってくる科学班だとか。殺す気か。
「望むのならばルフィの船?」
「…! ハハッ、それなら安心だな」
わしわしと頭を撫でる手を止めるとエースは青いリボンに触れた。
「……。まだ、付けてるんだな」
「うん」
「……はーー…妬けるなァ」
「うん?」
「サボ、どっかで生きててくんねェかな」
「うッ。うーん…」
「やっぱり結婚しねェか?」
「……殴る」
「ゴメンナサイ」
分かってる筈なのになぜ諦めないこんちくしょう。手軽な位置にあるからか。冗談行き過ぎてる。
私は兄の将来が不安だよ。これから先出会う女の人に色々手を出しそうで怖いよ。
「手、出せ」
「…?」
手を出す出さないの話してたからちょっとびっくりしたけど素直に手のひらをエースに向ける。
「……」
手のひらに柔らかな唇の感触とチクリとした痛みが伝わる。
……こいつ何してんだ。
「今はこれで勘弁しといてやる」
「か、感謝…?」
「今度はこっちから会いに行くからな」
「頼む、本部にだけは来るするな」
エースはニカッと笑うともう1度頭を撫でた。うむ、私の兄貴はイケメン。
手のひらにキスとか外国人かよ。あれ?外国人じゃなくて異世界人?いやでも私はこの世界に住んでるし…。ま、いっか。
「エース」
「ん?」
「死ぬ事は禁止」
「……ん、ありがとな」
私はその言葉を聞いて箒に飛び乗って空に向かった。
「リー!愛してるぜー!」
海に落ちかけた。
私は手を振っている自分の兄の将来が怖い。小悪魔になんかならないでくれよ……。
フェヒ爺の謎がふかまる話。
そしてミホークさんと初めてまともな絡み。
これでルフィ出航の時間軸でのリィンの動きが決定しました!オチが誰になろうととりあえず麦わらの一味に入る事になりましたよ!
余談ですが本編の一番最後は昔サボがリィンに思った事と一緒でした。
ワンピースエピソードオブイーストブルーとても綺麗でもう号泣ものでした。頑張ってちょびっとの原作改変がんばるぞー!おー!