エースに言った潜入の話を帰って早速怒られながらセンゴクさんに提案した。『仕事の幅を広げるために潜入を経験したいです!(意訳)』と。もちろんそりゃ最初は猛反対。子供が出来るわけない、とか 潜入するまでの経験が足りない、とこ。
もちろん粘った。私の心の平穏とルフィのトラブルに胃を痛めるのを阻止するために。
結論として
勝ち取りました。
つまりルフィが名をあげる前に潜入して2年間時間を潰せば良いんだな。
条件として。
・雑用のリィンは海軍脱退
・指名手配
・定期的な連絡
の三つが提示された。
海軍に属していた、という事実自体スパイじゃないかという疑いがかけられるから辞めろというわけか。
さっきと同じ理由だとは思うけど。指名手配されるのは不服だ、でもそこは顔が見えない様に手を回しておくし金額も下げる。NO問題NO問題。
定期的な連絡。これは『おかき』と『あられ』が合言葉で潜入してる海賊の様子だとか安否確認をするらしいけどそんなにおかき好きか。どうしてその言葉にこだわる。
随分と甘い対応だな。
表面上厳しいけど私にはもう一つの
あとは七武海と関わらなければきっと大丈夫でしょ、関係禁止禁止。
拠点に近寄らなければきっと会わない。フラグとか信じない。
「おいリィン…」
女狐が私だと話してあるので隠れてする必要も無く、スモさんの部屋で悠々と(引き継ぎとか、ガープ中将の損害の後片付けとか、階級が変わる人の移動とか、その他諸々の)書類仕事を行っていた。
「…? スモさん任務終了?」
「まあな。とりあえず荷物置いてこれから新米兵の訓練で……ッじゃなくて、元帥がお呼びだ」
「げ……仕事増量予定…」
どうやらお呼び出しがかかったようで向かわなければならないらしい。デスクワークの後の出張はかなりキツイので出張じゃありませんように。
「お前ここんとこ仕事増えすぎてねェか?手伝って欲しい事あったら俺やヒナに言えよ。力になってやるから」
「スモさんマジ天使愛すてる」
残念ながら大将女狐の名前が必要な書類が多いから手伝って欲しいのに出来ないけど身近な常識人の言葉って癒される。
……顔や体格は癒し系じゃないけど。
「アホな事言ってねぇでさっさと行け」
「はぁーい」
さてと、2年後の平穏の為に頑張りますか。
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元帥室。
「嫌、です!」
NOと言える日本人。私は受け渡された任務にハッキリと拒絶した。
「確かにお前は七武海を相手にする程の実力はあるし同年代では間違いなく強いだろう」
いや、それはどう考えても違うと思う。
よく考えてみて、私ミホさん相手にする時どんなことしてると思ってる?砂利で目潰ししたりアイテムボックスにいれた石で遠距離攻撃して逃げまくってるだけだよ。
「だが実戦を知らなすぎる」
出来れば一生知りたくありませんでした!
「潜入を行いたいと言うのならせめて大将としてきちんと実力を蓄え経験をするべきだ」
「……ごもっともな正論です。ですが!」
クシャッと手にある
「シャボンディ諸島にて海賊撲滅運動は無いです!」
渡された司令は『最近シャボンディ諸島で海賊が増えて困ってるから実戦経験を兼ねて適当に潰してくれないかなッ☆』という死の世界と今の世界の間を綱渡りする様な司令だった。
はっきり言って子供にコレはキツすぎる。
「何故天竜人が時々現れ無法者ウロウロする様な場所に私が行く強要…!」
「これをしなければ潜入は許可できん」
「いってきますぅぅぅぅぅうう!ド畜生ぉぉぉぉおお!」
半やけくそ状態で叫びながら元帥室を出る。ちくしょう!それを出されると泣きそうになる。
でも潜入して任務任務任務の仕事三昧七武海からの絡まれ三昧の日々を卒業したいし海軍辞めると私の血筋的に殺されちまうしぁぁぁぁぁああああああーーー!こんな世の中くそだぁぁぁあああーーー!
「……何故、潜入にこだわる…!私は、潜入して欲しくなど……!」
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「はぁ………」
何度目かの上陸シャボンディ諸島。こうなったら適当にブラブラして潰そう。『実戦経験少ないから手こずっちゃった!テヘッ』って誤魔化そうと思っていました。
あ、でもそうなると『ほら見ろそんなんじゃ潜入なんて出来ないだろう』とか返されそう。
でもとりあえず目先の問題をなんとかしなければならない。
簡単に言えば30分程前人攫いと思われる人間達に捕まった。
はぁー…これどうしよう。私はどんな鍵でも外せるから戦える人がいるであろう今ここで逃げ出すより一旦店まで連れていかれた方が逃げやすいかな?
よし、(センゴクさんに)バレない様に頑張ろう。
「………にしても。なーにゆえ、潜入を認めてくれぬぞり…」
私が子供だからか?でも潜入した方が圧倒的に安全だと思う。むしろ白ひげ海賊団とか赤髪海賊団とか絶対楽って知ってるでしょうに。
「まぁ、
どうでもいいか。とりあえず首に金がかかる前に…出来ればルフィが出航するであろう
すると急に視界が開けた。眩しい。
「あぁ、確かに上玉だ。毎度毎度よく連れてくるな」
急いで周囲を確認する。1番
「おい嬢ちゃん名前は?」
「あー…んー…。リ、リ、リリリ……リン?」
「リンちゃんね。この子今から売られるって理解してるのか〜?随分と大人しいな」
「理解可能!あの、私が売却される場合何割が経営元に渡すされるぞ?」
「は?そんな事気にして何になる。えーっと首輪首輪…このサイズか」
ガサガサと私の首のサイズに合う首輪を用意して付けられる。
「じゃあ後で金は取りに来るぜ」
「はいよ」
「…残念、受け渡す不可能」
「…? ほら付いてこい」
「はーい」
ここで抵抗するのはマズイからセリが始まった時に逃げるのが良いかな。警備も手薄になるだろうし。売られそうになったらその場でドフィさんに電伝虫かければいいし。
「入れ」
ドンッと背中を押されて檻の中に入れられる。扱いが酷い。
まぁ
「いててて、盛大に転げる…」
でも痛いもんは痛い。
「お嬢さん大丈夫か?」
「はへ?」
檻の中は若干暗いから相手の顔は見えないけれど、親切な人が声をかけてくれた。人の心配するより我が身を心配したらどうですか売り物。
「この状況が大丈夫に見るなればそれはとても節穴です」
「…! ハハハッ、それもそうだな。
「運、悪いですからね……。保険のある状態の危機なれば大分慣れという物が存在するぞです…不本意ながら」
「と、いうことはお嬢さんはここを脱出出来る保険があるという事かね?」
「……ひ・む・つ」
「ひみつ、じゃないか?」
…………。
「お爺さん?は何故こちらに?」
「ん?あァ、酒代が無くなってしまったから売られるついでに買い手と店からお金をスってやろうと思ってね」
常識人かとおもったお爺さんは思ったより常識人じゃ無かった!
「パワフル……」
「よく言われるよ」
このお爺さんは逃げ出す手段があるという事でしょう?私もついて行って良いかな…。作戦的にまだ強行突破くらいしか思いついてないんだよね。
あ、でも買い手からも盗むって事は1度売られる予定なんだろう。仕方ない、どっちみち道ずれ無しか。
「ま、
「どういう事だ?」
「………今口に出るすたです?」
「あぁ。思いっきりな」
どうやら私の口にチャックというものは無いらしい。
「ドフィラムンゴさんが失脚すたならばこの店も運営不可能かと思考です」
「ほぉ、つまりキミにはそのドフラミンゴがあと数年で失脚すると?」
あ、この人普通に海賊に詳しいし頭いい部類の人だ。
「まァ、革命軍が予想通り動くすたなれば」
正直彼らの大きな動きによって変わってくる。
失脚っていっても私政治だとか詳しくないし計画性も皆無だからなかなか考えられないんだよな…。ローさんは倒そう倒そうとしてたけど元七武海のグラッジさんとか比にならないくらい強いんだよな、現七武海って。
シャンクスさんや白ひげさん四皇とぶつけたりとか出来たら自分の手を汚さずに片付けれるのに。なーんか
「お嬢さんはどうやら…見た目通りの人間と見ると痛い目を見そうだ」
「………正解です」
少なくともツテは不本意ながら沢山手に入れたしね。物理的な痛みは少ないと思うけど。
『……──……─!………──!』
扉の奥で盛り上がる雄叫びみたいな声が聞こえ出した。きっと始まったんだ。
「よし、逃亡開始」
首と手に付いてある錠を外そう。
一応針金を出してピッキングの
──ガチャンッ
「これは驚いた。そんな針金で外してしまうとは」
そもそもの話、普通一般人は針金で鍵を外すやり方なんて知らないからね。私は前世では一般人だったはず!いや一般人に決まってる!お願いします一般人にさせて。
「外すは可能ですが付けるは不可能です」
とことんまでへっぽこだよね私って!
「それでは!」
「あぁ、お嬢さん名前は?」
「………………………一般人A」
「…! また随分と面白いお嬢さんだ」
出来れば関わりたくないので名前は言わないし聞きません。出来れば永遠とさようなら。
私はお得意の気配を消して建物の外へと向かった。
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あー、空気が美味しい。
あの中ジメジメしてて気分が悪いぜベイベー。
「手配書を見ても顔の判別不可能ぞベイベー………」
ホントにへっぽこ過ぎて辛い。
「……」
実戦経験は積まないといけないみたいですね。チラチラと建物や木の影からこっちを見てる人が数人見える。隠れんぼ下手くそかな。
「はぁ……」
とりあえず
「オニーサン、なーに?」
「ん〜?それはお嬢ちゃんが1人だからお兄さん達が守ってあげようと思ってね〜」
むしろ逆だろうが。
「そっか〜。ありがとう」
集中して狙いを定める。狙うはガラの悪い人とボスが固まってる足元。陥没陥没………。
あれ、出来ない。
「…! ここ諸島!」
そうだ、ここは大きな木、ヤルキムンムングローブだとかなんだとかの根っこが島みたいに群集してるんだったか!あー、しまった。植物を操るのは苦手なんだよ…イメージが付きにくいから。
仕方ない、習い始めたばかりだけど棍術を使ってみるか。もしもピンチだったら秘密道具使って箒で逃げよう。
「っりゃあ!」
──ゴンッ
「〜〜〜〜〜っ!」
近付いて来た人間の股間を思いっきり箒でぶっ叩く。悶絶。フハハハ、人間弱点は恥とかそんなの関係なく無理やり狙うんですよ。弱点つかずになにをつく。
「き、汚ェ!」
「よりにもよって股間を狙うだなんて…!」
「悪魔だ、悪魔の所業だ!」
「貴様に情けというものは無いのか!」
普通海兵に向かって言われる言葉じゃないと思う。普通逆だよね、セリフ。
「おーい嬢ちゃん。俺が誰かしらねェのか?」
「知らないです」
「そーかそーかそりゃ仕方ねェ…懸賞金8000万ベリーの──」
「──どぉぉぉぉおりゃぁぁあ!」
話してる間に脳天に向かって箒を振り下ろした。聞こえない聞こえない懸賞金なんて聞こえない!あれ、グラッジさんって元どれくらいの懸賞金だったんだろう。やめて、私の実力はそうあるもんじゃ無いから絶対8000万とか無理ぃぃぃい!
「テメェ…!船長に何しやがる!」
「会話をわざわざ待つとは言うして無き!」
船長、と呼ばれた男はゆっくりと起き上がった。チィィッ!流石に1発で仕留められないか!
「覚悟は…出来てるんだろうな糞ガ…」
「出来てませぬぅぅぅう!」
私はすぐさま船長さんの別方向に向かって走り出した。最後までセリフなど聞いてられるか!
「「「「「待てやゴルァ!」」」」」
「待てと言われて待つ人間の存在は皆無ぅぅう!見逃せぇぇぇええ!」
ちょっと離れたら箒に乗って隠れよう。そうだそうしよう。賞金首に真正面から立ち向かう方が馬鹿なのだから!もっとスキを狙って影から仕留めるべきだ!
──ゴォオ…ッ!
「ぐ…!」
「…!」
ドクンと心臓が握りつぶされるくらいに強い威圧と風圧が周囲にかかる。何度か味わったことのあるこの嫌〜な感じ。
「はおう、しょく」
後ろを振り返ると追いかけて来た海賊は既に倒れていて、その屍の中をゆったりと酒を飲みながら歩く人間が居た。
「ふむ、やはり覇気については知っていたか……なぁ、不思議なお嬢さん──一般人A、かな。先ほどぶりじゃないか」
「ハ、ハハハ…先ほどぶりですぞ」
この天然パーマの爺さん何者だよ。
名前は言ってないけどきっと誰かわかるよね。
ご都合主義万歳