2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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番外編8〜お誕生日〜

 これはリィンがまだ海軍の雑用として本部に居た時の話。

 

 

「待ってジンさん!それはまだぁぁぁあ!」

「そうか、すまん」

「ふむ…魚人島も女ヶ島もどちらも美味いな」

「あ!鷹の目!まだ食うな!」

「ドフラミンゴ、お前も食うか?」

「アホだろこいつ……まだ食うなって言ってんだろうが」

 

 日にちは9月5日

 場所は海軍本部第5会議室

 

「早く準備しねェと鰐野郎来ちまうぞ?」

 

 七武海サー・クロコダイルの誕生日会である。

 

「俺は甘い物を食べに来ただけだが」

「お前は黙ってろ甘味バカ」

 

 ドフラミンゴがミホークを叱咤しながら背の高さを活かして高い場所の飾り付けをする。

 

「意外です。くまさんやジンさんは心優しきですし同士(甘い物好き)のミホさんが来るは予想可能ですたがドフィさんがノリノリとは」

「リィン…お前俺をなんだと思ってる」

 

「クロさんがチヤホヤされて照れるなり面白そうな格好するを写真にしながら冷やかす物だと」

 

「フッフッフッ…正解だ。良く分かってるじゃねェか俺の事…そんなに好きか」

 

「私が特別に医務室にご案内するです」

 

 いつも通りのやり取りにジンベエは呆れながら食事の準備をする、と言っても並べるだけだが。

 

「しかし突然呼び出すので何事かと思ったわい…」

「親に内緒でサプライズを企画する子供の様だな」

「そうじゃのぉ〜」

 

 くまとの談笑にドフラミンゴが悪ふざけを提案した。

 

「フフフフ!親子か、いいじゃねェか…!リィン試しに『パパ』って呼んでやれよ」

「採用」

 

 ここでクロコダイル弄る同盟が組まれた。世界で1番(クロコダイルにとって)最悪な同盟かもしれない。

 

「で、俺はダーリンで」

「不採用」

「おいおい酷いぜハニー」

「ミホさん呼ばれてるですよ」

 

「………………何の用だダーリン」

「トイレ行って吐いてくる」

 

 ミホークは甘味によって機嫌がいいらしく随分珍しい物を見たとリィンは笑い出した。

 

「ふひひひぃっ!お腹つる!ヒィッヒッヒッヒッ!」

 

 女子がする笑い方じゃない。

 

「良くこの部屋が借りれたのォ」

「センゴクさんに頼みますた」

「リィンの頼みならセンゴクらも無下には扱わんだろう。あれだけ長距離任務を頼まれていたらな」

「ハハハ……」

 

 最近はシャボンディ諸島ばかりだが確かに常識で考えれば半日程の時間をかけ長距離飛行など考えた事もない。

 

「じゃあ私もうそろそろ下に行きてクロさん出迎えするです」

「頼んだぞリィン。部屋に入る時はくれぐれもノックを頼む」

「はいです!」

 

 ビシッと敬礼してリィンは普段クロコダイルが来る門へと向かった。

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

 待つこと20分。

 見慣れたオールバックがリィンの目に入った。

 

「クロさん!」

「…! 珍しいな、出迎えがあるとは」

「先ほどの仕事がこちらの掃除ですた!よって出迎えた所存にござります!肩に乗せて!」

「楽しようって魂胆丸見えなんだよ!歩け若者!」

「ケチ〜」

 

 リィンはブツブツ言いながらもクロコダイルの斜め後ろをテコテコついて行く。

 微妙に会話が無い空気に耐えられずクロコダイルが話題を提供した。

 

「あー…最近どうだ」

「なんですその思春期の娘に話しかけようと頑張るすた父親の如き台詞は。何事ぞパパ」

「例が具体的過ぎる…っ、パパァ!?」

 

目を見開いたのを無視してリィンは会話を続ける。

 

「最近は絶好調です〜、長距離任務も無きなのでシャボンディ諸島の任務に当たるてます」

「……何してんだ?」

「ゴミ掃除」

「ふーん………」

 

 ゴミと言っても人間のゴミだが。

 行くたびにどこからか現れる自分の父親が鬱陶しくてならない。かれこれ半年、シャッキーに2年後と言ってしまった自分としては凄く恥ずかしいのだ。

 

「父親で思い出したが…」

「…?」

「お前両親は?」

 

 長い付き合いになるがお互いの事をあまり聞いたりしない仲で素性はほぼ不明だった。生まれも育ちも家族も。

 

「母は…いるですが幼き頃より会えて無きです」

「ここに入る前か?」

「肯定」

 

 インペルダウンにいるって聞いたけど生存不明だしね!

 

「父は…最近知りますた。最近は喋るしてるです」

「死んでないのか」

「勝手に殺すなかれ…と言うか殺しても死なぬ様な気が…………」

 

 アレは異常な人物だからな、と遠い目をしてしまう。クロコダイルは少々不機嫌ながらも話の続きを催促した。

 

「その父親と何の話をしてる?」

「えーっと『嫁に出すなら相手は私より強い人にしろ!』と」

「クッハッハ…!鳥野郎辺りからなら余裕で大丈夫じゃねェか?」

「まさか!フェヒ爺……剣帝でもきっと勝てぬ、絶対勝てぬです!」

 

 クロコダイルはお前の父親何者だよ、とツッコミたかったが知ったら知ったで後悔しそうな気がしたので黙った。

 

「……」

「………」

 

 それを機に会話が途切れて無言で歩く。よく考えればこうして話しているのも不思議だと考えた。

 七武海と海兵。相容れない存在だがこうして親しくなれたのも貴重だ。

 

「(それでも…俺は計画は止めない。アラバスタと七武海。どちらを味方にするか分からないが──願うなら…)」

「…?」

「俺の所に来るか?」

「クロ、さん?」

「(お前が来たら、間違い無く味方。もしも敵対する事を考えると恐ろしいと思うのと同時に悔しい……まさかこの俺がこんなに情を抱くとは思わなかったが)」

 

 自分の部下に対して、こんな事は思わない。それはきっと8年以上も時間を共有した友人だからこそ思う事だ。

 

「何度も言うしますたが海賊稼業は危ないです。よって私の保身故にお断りします」

「………お前は国に関わりたいと思うか?例えば友人がいる国に」

「まっっっっったく!」

 

 ハッキリ言ったリィンに安堵を覚える。

 良かった敵になれば自分の手で殺す、それが出来ない事が何よりも安心した。

 

「例えばドフラミンゴとか」

「あれはもはや友人と認めませぬ」

「クッ…ハッハッ、それでこそリィンだ」

「その反応こそイルくんです」

 

 ぴらっと一つの紙を取り出したリィンを見てクロコダイルはギョッとする。

 そこには寝ているリィンと手を繋いで寝る自分──正しくは変な海兵の能力で幼くなってしまった自分だった。

 

「雑用部屋の人が撮るしてくれてますた」

「…………………ホォ」

「クロさんが気配に気付かぬとは驚き桃の木山椒の木ですた…可愛いですね〜」

 

「その写真を寄越せぇええ!塵にする!」

「だ、ダメですぅぅう!」

 

 砂に変わり勢いを付けたクロコダイルに追いつかれないようにリィンは箒に飛び乗った。クロコダイルが贈った箒に。

 

「ぴぎゃぁぁぁあああ!」

 

 急いで第5会議室に向かう。

 距離を離せ。

 距離を取れ、と。

 

 

 

 

──ドンドンドンドンッ!

 

「く、来るです!急ぎて!」

 

 中でバタバタする音が聞こえそして背後からクロコダイルが追ってくる。

 

「おいリィン!」

 

──キィィッ… パァンッ!

 

 扉が開いて中からクラッカーの破片と火薬の臭いが広がる。

 

「お誕生日おめでとうクロさん」

「同じく」

「同じくだ」

「同じくおめでとう、クロコダイルよ」

 

「……………は?」

 

 呆気に取られフリーズした。

 

「あれ?ドフィさんは?」

「まだトイレで吐いている」

「長っ」

 

 リィンとミホークの会話も聞こえない。状況整理がつかなかった。

 

「え…は、ど、な……?」

 

 恐らく「え?はァ?どうなってんだ?」と聞きたいのだろうが呂律が回らない。

 

「サプライズですクロさん」

「俺、の誕生日……?」

 

 するとクロコダイルの後ろからピンクのもふもふが突っ込んで来た。

 

「入口で突っ立ってんな主役糞野郎」

「その主役に対しての扱いを考えろ鳥野郎!」

 

 どうやら意識が覚醒した様でいつも通りの喧嘩腰でドフラミンゴと騒ぎ始めた。

 

「パーティぞ!クロさん!食べ物沢山食すて!」

「それにお前の手料理が入ってるのか?」

「……入ると想像すれば皆苦笑い」

「人に出せない程じゃねェだろ、まぁ要は料理が苦手なんだな」

 

 昔コルボ山で作ったトラウマがあり以来一切料理をしてないリィンにとってご馳走など作れるはずもなく女ヶ島から大量に送られてきた食べ物や魚人島から持ってきた食べ物が主に机に並べられていた。

 料理と言う名の女子力ともう既に離縁済みだ。

 

 決して他の女子力があるとは思わないが。

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

「フフフフ……これで貴様も終わりだ!」

「さて…どうですかね……、追加して返すぞ!」

 

 先ほどの雰囲気とは打って変わって、殺伐とした雰囲気が部屋に充満する。

 原因はドフラミンゴ、リィン。そしてクロコダイルだ。

 

「っ、おい!これ俺が6枚取るハメになるだろうが!」

「「計画通り」」

 

 三つ巴だが実質2対1の『クロコダイルを虐めようUNOの会』が開催されている。

 七武海の中で参謀の役割に近いドフラミンゴとクロコダイル、歳に似合わないがそれなりに頭が回るリィン。手元にあるカードや相手の表情を観察しながらの一瞬足りとも気を抜けないガチンコ勝負だった。

 

 正直混ざりたくなかった残りの面々は個々で食事を楽しんでいる。

 

「っだぁぁあ!お前ら絶対赤を回さないように調節してんだろ!」

「……?」

「『なんの事?』って顔をするなクソガキ」

 

 こんなに必死になっているには理由がある。

 

 それは罰ゲームとして用意された『ビリが残りの2人の言うことを一つ聞く』という地獄にも等しい出来事が用意されているのだ。正直こいつらに命令されてたまるかというのが3人の本音だ。ゲームを楽しむ気など1ミリたりとも持ち合わせていなかった。

 

「鳥野郎が裏切るせいで……!」

 

 最初、利害が一致してるであろうドフラミンゴと手を組んだクロコダイルだったのだが、時既に遅し。彼が現れる前に組んだ同盟を知らない為に自爆して行った。

 ドフラミンゴはとりあえず鰐を虐めることに決めたのだ。

 

「るんるんるる〜」

「………ご機嫌だな、そんなに罰ゲームが楽しみか」

「楽しみです!女装です故!」

 

「……………絶対に負けられない戦いがここにある…! 威厳以前に人として色々失う…!」

 

 ギュッとカードを握りしめて震えだしたクロコダイルを2人が大爆笑する。

 嫌い嫌いと言っていても利害一致をしてるとここまで仲良くなれるのか、と革命軍の幹部であるくまがポツリと呟いた。

 

 詐欺だ。

 

 

 ──30分後──

 

「上がり!」

「私もあがり!」

 

「クソがぁぁぁあ!」

 

 ガンガン頭を机にぶつけ出した。末期かもしれない。

 

「無効に決まってるだろ!無効!」

「フフフフ…往生際が悪いぜクロコちゃん」

「気持ち悪ィ」

 

 一刀両断。

 しかしドフラミンゴには大したダメージを与える事は出来ない様でギリッと歯ぎしりした。

 

「女装ですよ〜!メイド服とかどうです!?蛇から沢山贈るされます、嫌がらせですかね!?」

「じゃあ俺からの命令は写真撮影で」

 

「それをするくらいなら命懸けで今すぐテメェらをミイラに変えてやる…!」

 

 一気に戦闘態勢に入ったクロコダイルを見て同盟2人は予想していたと言わんくらい余裕の態度で視線を交わした。

 

「リィン、分かってるな」

「ドフィさんこそ」

 

「「散れ!」」

 

 バッ!

 

 クロコダイルはばらけた2人を追いかけた。ここで逃げるのなら逃がしてあやふやにしようという考えが浮かばないのは怒りと焦りのせいだろう。

 

「先にテメェからだ鳥野郎ッ!」

 

 砂に変化すると待ってましたと言わんばかりにリィンが指を鳴らした。

 

──バサッ!

 

「!?」

 

 あらかじめ用意されていた網が天井から砂に向かって被さった。

 ……海楼石のビーズ入りの網だ。

 

「ん、な……!く、海楼…石……ッ!」

「フフフフフ…ひっかかったなクロコちゃん」

「ごめんぞクロさん…個人的に脅しネタを増やしておきたく思うしたです。大人しく海楼石に酔うしてです」

「野郎を脱がすのに抵抗はあるが娯楽のためだ、着替えは任せろ」

「小道具とカメラ及びメイクは私に任せろです」

 

 最強で最恐の同盟は七武海内で恐れられた。

 

 

 

 

 

 本日の主役は本日1番の被害者だ。

 




その後クロコダイルの話は誰も語ろうとはしなかった。

クロコダイルさん誕生日おめでとう!誕生日なのに何故か1番の被害者になっちゃった!ごめんね!(反省ZERO) リィンとドフラミンゴは組ませちゃいけないコンビだと改めて思いました。


この作品を作った当初はクロコダイルさんがこんなにキーキャラになると思ってなかったんですが偶然にも私とクロコダイルさんのお誕生日が一緒になってしまうと言う奇跡。何かの企みを感じます。クロコダイルさんの女装姿を想像しながら楽しい1日を過ごすとしましょう!もう1度言う、ごめんなさいクロコダイル!おめでとう誕生日!

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