2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第73話 可もなく不可もなく

 

 

 

 

 ポカポカ程よい陽気の中のんびりと小舟は海を進んでいた。

 

「腹減った〜〜…」

「酒が飲みてェな……」

 

 天候に合わない私のこの気持ちは飲食にルーズな全員に対して苛立ちを募らせていくばかり。

 

 

 食料0、ましてや酒などあるわけが無い。

 

「早く島につかね〜かな〜」

 

  ルフィが呑気に呟いた。

 あやつはこの状態の危険さというものを把握していない!雨風を防げないこの船に、欠片も残って無い食料、そして目的地に向かう術を持ってない3人!

 航海術、習っておくんだった………。

 

 箒には必要無いから優先順位が低かったんだよ〜…。うう、まさか海賊になるのに航海術持ってないとは思わないじゃん!?海を渡る賞金稼ぎがただ放浪してその資金の為に海賊狩ってただけとは思わないじゃん!?

 

「そういえば…聞きそびれてたんだが」

 

 ゾロさんが思い出した様につぶやいてルフィを見た。ルフィは視線に気付くと首を傾げるだけで終わった。

 

「なんで腕が伸びるんだ?」

「今更!?」

 

 思わず叫んでしまった為視線がこっちにも向く。

 ゾロさんはワンテンポ遅れて理解する人なのかな?

 

「俺はゴムゴムの実を食べたゴム人間なんだ!しししっ!」

「悪魔の実なァ…初めて見た」

「やはり悪魔の実は珍しいから仕方ないぞです……」

 

「ん?じゃあお前は悪魔の実の能力者を知ってるのか?」

 

 ゾロさんの疑問に記憶にある能力者を片っ端から思い浮かべる。仏マグマ氷光砂糸メロメロ肉球煙檻火水不死鳥…あ、もう面倒くさいくらいいっぱいいた。

 

「とりあえず両手を凌駕すたですね」

 

 ルフィは純粋に凄いと思っているのかキラキラと見ている。……きっとルフィに生まれたら人生楽しいんだろうなー。

 

「あー、ダメだ!腹減った!」

「こいつ口を開くとそれしか言わないのかよ……乗る船完璧間違えた」

「え!?これお前の船じゃないのか!?」

「そういう意味じゃねェ!アホか!?」

 

 天然ルフィと真面目に相手してると疲れるというのにゾロさんは丁寧に付き合ってる。えらいわァ。

 

「あ…、リーって悪魔の実食ったんじゃないのか?」

「へ?え、あー」

 

 ……そういえばルフィには飛行は一回しか見せて無いから認識は薄いんだったかな。

 私のチート不思議色の覇気(仮)は万能の様で万能じゃないから能力者としていくべきか非能力者として過ごすか迷うところではあるよなー…。

 昔は力に頼らないと絶対にすぐに死ぬ自信があったけど今は別にそこら辺の賞金首程度なら遅れは取らない、と、思うけど…。1000万以上は流石に自信ないな、東の海の平均は300万くらいだったからここでは安心出来るし…。

 

 うーん…。でも絶対偉大なる航路(グランドライン)目指すよね、ルフィは。

 

「一応能力者、です」

「へー、何の実だ?」

 

 純粋な疑問なのかゾロさんが聞いてくる。

 

「それが不明…です。あ、でもある程度は」

 

 例えば、と口に出して海を操るイメージを持つ。万全の状態なら集中力はさほど要らないからイメージだけで充分

 

──グラッ

 

「わ!」

「っ!」

 

「おっ、………とぉー…───」

 

 上手く海流を生み出すことが出来たのだが、そこでバランスを取れなくなった船の上の人間にトラブルが起こった。

 

 

 私はタイミングが掴めているのでバランスは取れたが、隣に座るルフィとその前に座るゾロさんがぶつかった。

 

 

 

 正確に言うと口と口が。

 

 

 

「「………」」

 

「正直本気で悪いと思うしてるです」

 

 止まらない海流に乗って船は沈黙のまま海を進んだ。

 

 ……………ごめんなさい。

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

 変なトラブルがあったが呑気に海を進む中、シェルズタウンには本部より派遣された軍艦が一つやって来た。

 

「ガープ中将、ご苦労様です!」

 

 本来ならばこういった場に出向く筈の無い地位。そして迎える筈の無い軍曹、しかし彼はこの支部で1番上の地位故仕方ないのだが緊張はどうしようも無かった。

 何せ相手は普通の中将では無く、あの海賊王ゴールド・ロジャーと何度も対峙した〝英雄〟と言われる伝説の海兵。

 

 ただ佇む姿でさえも圧倒的な威厳を感じる。

 

「あァ、その書類なら私が受け取ろう」

 

 ガープの隣に待機するボガード少将が前に出て筒を受け取ると早速開いて中身を見始めた。

 

「(すごい…伝説の海兵が此処に…!)」

 

 あの事件の後、早速雑用になれた彼は友人となったヘルメッポが心配そうに見るのも気にせず目の前の光景に感動していた。

 

「(リィンさんの言っていたことの意味は分からないけど海軍に入れたのは彼女のおかげだ…ありがとう)」

 

「…。理解した。コビー、という少年はどこにいる!」

「うぇっ!?え、は、はい!」

 

 自分が呼ばれるとは思ってもおらず、声が裏返りながらも返事をし敬礼する。

 

「それとモーガンの息子…ヘルメッポもこちらに」

「…は?え、はい!」

 

 お互い顔を見合わせ首を傾げた。

 どうして雑用の自分達が呼ばれたのか、疑問しか出てこなかった。

 

「なるほどの〜、リィンが言っておったのはこいつらの事か。任せろ儂の天使!──あ、それとモーガンというアホもこっちに連れてこんか」

 

 コビー達2人はガープの言葉に処理能力が追い付かず、ボガードに大人しくついて船室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの娘の…──海軍大将女狐殿より指名だ。キミ達2人を女狐の所属にし、この船で色々学ぶ様にとの計らいだ」

 

「えぇええ!?た、たたた、大将女狐ェ!?」

 

 憧れの海兵が自分を部下にと指名してくれた、これ以上嬉しい事はあるのだろうか。

 

「どういう事だ、ですか」

「ん?知らないのか?……まァいい。

 お前達が会った金髪の娘がいるだろう?」

「リィンさん…ですか?」

 

 当てはまる人物が1人しかいないので聞くとボガードは素直に頷いた。

 彼女は元々海軍本部の雑用、ひょっとしたら知っているのかもしれない。

 

「まさかガープ中将の孫ってのは本当だったのか!ですか!?」

「…ん? 事実だが?」

「んな…ッ!」

 

 ヘルメッポが驚く、数拍遅れてコビーも理解すれば叫んだ。

 

「ええええ〜〜〜ッ!?」

「……話を戻す。あの娘はキミ達にどう名乗ったのか知らないが海軍本部の大将女狐だ。実際、彼女が本部に居ないお陰で仕事が溜まっている」

「んな、か、かかか、か海軍大将!?」

「彼女が、女狐……ッ!?」

 

 おかしい、彼女は確か元雑用と言ったのに、それに海賊となってしまったんだ。

 

「コビーは滞った仕事の片付けも手伝ってもらいヘルメッポにはビシバシ虐める様にと連絡が入った」

 

 隣で絶叫するヘルメッポを無視してコビーは思考を巡らす。不自然な点はいくつもあった。

 自分と同じような性格なのに臆せず海軍基地に入って、敵に回す余裕。自分が女狐と言った瞬間の動揺。何より支部、海兵に命令をするあの姿。

 

 考えれば考えるだけおかしな人なのにその考えを打ち消すのはあの不思議な喋り方と警戒心を薄れさす笑顔だ──流石は大将、海軍の最大戦力と言われるだけある。

 

 

 コビーの思考は本来のリィンの姿とはズレているのだがリィンをよく知る人物相手に言わない限り誤解が解かれる事は無いだろう。

 

「光栄過ぎる……」

「慣れない書類に潰されるかもしれないが……それと同時にこの船での仕事も訓練もしてもらう。寝る暇はほとんど無いと思え」

「はいっ!」

 

 より一層女狐に対する尊敬が増した。自分より年下の少女が英雄と言われる中将を身内とは言えど使えるのだから。

 

「(守る正義…僕が1番好きな正義……。リィンさん見ててください、僕は絶対頑張ってあなたの隣を歩ける様になります!ルフィさん、あなたを捕まえるのはこの僕です!)」

 

 女狐にスカウトされたという事実は自信の無いコビーにとって自慢であり誇れる部分となった。

 

 

 

 

 

 数日後書類に潰される2人の雑用を見たとか見てないとか。

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

「あ…」

 

 最初沈黙を破ったのはルフィ。

 元々私とゾロさんの雰囲気的に喋りたいけど黙っていたルフィだったから予想した通りとも言える。

 

「あそこにある小舟、人がぐったりして倒れてる!た、大変だ!」

 

 ただ内容には普通にびっくりしたけど。

 

 その言葉にゾロさんも私も進行方向を睨む様に見ると確かに一つの小舟が見える。

 ん……?

 

「おいリィン、あそこに付けろ」

「えー…、その判断まことですか?」

「人が倒れてるんだぞ!?」

 

 ルフィも横で早く早くと催促をするので仕方なく海を操る方向を変える。

 

 

 

 

 助ける必要無いと思うけどな。

 

 私は目がいい方だから見えるんだが、小舟の上にあるのは宝箱と思わしき箱のみで後は女の人。

 

 まず水やら食糧やらを乗せておく為のスペースとかが無い。港から釣りに出て沖に流されたって可能性もすぐに捨てた。竿も網も何も無い。

 

 

 舟で旅をするのにはあまりにも不自然だし、()()()()為の舟としか思えない。

 

 例えば、弱ってるフリをして。

 

「おいお前!大丈夫か!?」

「あ……。人、良かった…遭難して困っていたんです」

 

 報酬として宝箱で注目させて。

 

「宝なら、いくらでも差し上げます……ですから1杯の水でもいいんです……」

 

 注目している内に相手の舟を盗む、みたいな。

 

「宝とかどうでもいい!リー!どうしよう、水〜〜っ!」

「え、あ、え…?」

「はいはい……分かるしますた」

 

 水を簡易に入れておける皮袋を取り出してルフィに渡すと遭難した女の人に押し付ける様に渡した。

 

「あ、ありがとう………」

 

 女の人は動揺しているのか差し出された水を飲みながら周囲を観察するように見だした。

 

「たぶん」

「……?」

 

 アイテムボックスから世界規模で配達する私に良く海軍で支給される保存食を女の人に渡しながら呟くように話しかけた。

 

「ルフィはお人好し故に、あなたの思うした通りは不可能」

「…え?」

 

 最初は訳が分からないという顔をして首を捻って私を見ていたが視線を外さない私を見て顔を(しか)めた。

 

「………はァ…どうやらそう見たいね」

 

 髪をくしゃりとかきあげて先程の衰弱ぶりから一変、睨みつける様に私達を見た。

 

「お?気分はどうだ?」

 

 ルフィは雰囲気の違いに気付かずニコニコと笑って女の人に話しかけた。

 ゾロさんは何かおかしいと思ったのかどうか分からないが眉間にシワがよっている。

 

「最悪よ、折角考えたのに上手くいかない……。何よあんた達、普通宝があるって聞いたらそっちを優先させるでしょ!?」

「ん?どういう事だ?」

「……あんたバカなの…?」

 

 女の人って怖いなー…。

 

「読めた、要はお前は弱ったフリをして襲おうと思った悪党なんだな?」

 

 ゾロさんが言う言葉に女の人はキッと睨みつける、どうやら図星らしい。

 

「…刀……。あんた達もしかして戦える?」

 

 突拍子も無い言葉に一同同意の言葉を口に出しながらも意味がわからないのか私を見た。いや、私見られても……。

 

「じゃあ協力しなさいよ、私の計画をぶっ壊したんだから当たり前よね?」

「従う義理は無き」

 

 さり気なくゾロさんやルフィの前に移動すると女の人は子供相手だからと舐めているのか鼻で笑った。

 油断バンザイ。ありがとう。

 

「何?当たり前でしょ?」

「まず質問、その協力というのは何ですか?」

 

「…。……この先の島に『道化のバギー』って言う海賊がいるの、そいつ宝を溜め込んでるし偉大なる航路(グランドライン)の海図を持ってるらしいの」

「海図を?」

「そ…、私はそれを手に入れたいから陽動役が欲しかったのよ。戦えるなら陽動役してくれない?報酬は勿論用意するわ、手に入れた宝5:5でどう?」

「却下。まずそもそも陽動役というのは言い方を変えるなれば囮、盗みを働くより圧倒的に危険な目に合う確率が高きです。せめて7:3、こちらが7をいただくが最良と思うです」

 

 お金になる話なら協力しないと、船旅はどうしてもお金がかかってくる。

 

「待って!?私が盗むのよ!?そしてこの話を持ち出したのも私!」

「関係なしです!その海賊がどの様なる危険度か知りませぬがもしもの事態が起こりうるは陽動役です!これは譲る不可能です!」

「く…! じゃあそっちが6でこっちは4でどう!?」

 

「……譲る不可能、そもそも盗む事なれば私でも可能。それを譲るしたは私です」

 

 交渉に必要なのはハッタリと度胸。

 私ははっきり言うと女の人は唸り始めた、がしばらくすると諦めたのか「それでいい」と小さく呟いて保存食を食べた。

 私勝利。

 

 

「と、言う事ですがルフィは手を組むて良きと思う?」

「ん〜?リーが言うなら大丈夫だろ!俺頭悪いからな〜、リーに任せるよ」

「ありがとう!」

 

 ルフィが丸め込……聞き分けのいい人で良かったと心から思った。

 

「あ、リー!なんで飯があるんだ!?一つも残って無かっただろ!?なーなー!」

「私個人用。死ぬは嫌故!」

 

 保存食、これから沢山買ってアイテムボックスにしまっておこう。

 

「ねェ……」

 

 女の人は俯いたまま呟く。はて、誰に話しかけているのやら。

 

「これ…私凄く食べた事ある……」

 

 手に持っているのは海軍保存食。安い素材で量産出来るから結構配られるんだよね〜…これを食べた事があるって事は海軍と関わりがあるのか?

 

「ねェ、これ何?」

「何……、海軍の保存食です」

「海軍…………?」

 

 じっ…と保存食を見ながら呟く。

 

 うーん、反応的に海軍自体には関係無いのかな?それなら助かる様な……。

 

「私元海軍雑用です故に、支給品を持ち合わせていたです」

「そ、…うなの……。じゃあ()()()なの?」

「元、ですが……大体?」

 

 今も女海兵です、とは言えない。

 

「分かった。私はナミ、海賊専門の泥棒よ。好きな物はお金とミカン、嫌いな物は海賊…! よろしく」

「俺はルフィ!海賊王になる男だ、よろしくな!」

「………あんたには聞いてな──海賊?」

 

 自己紹介をしてくれたナミさんの嫌いな物を言っちゃダメでしょうがルフィこの野郎……!アホでしょ!?1回限りの共闘なんだからトラブル無しで乗り切りたいのに!

 

「…どういう事よ」

「俺たち海賊だぞ?」

「ええ!?だってこの子元海兵だって…!」

 

 なるほど、どうやら私が『元海兵』という事で民間人の船とか賞金稼ぎとかの船と間違えられたわけか…。まァ、普通考えてみれば海軍と正反対の海賊とは思わないよね。

 

「ま、まァ手を組むした後ですし、問題無きですよ!」

「問題大ありよ!…えっと」

「リィン、です。こっちの緑の芝生はゾリさん」

「ゾロ!」

 

 間違えた。

 

「リィン…あなた海賊がどんな奴らか分かってるの!?」

「一般常識並には」

「人の大事な物を平気で奪っていく様な海賊よ!私の大事な、…お母さんだって奪っていく…!」

 

「そっか〜、それで海賊嫌いなのか、そりゃ仕方ねェ」

 

 軽い調子で言ったルフィにナミさんは睨みつける。

 

「そうよ、だから私は海賊が大嫌いッ!海賊王を目指してる様なバカもね…!」

 

 人の好き嫌いは人それぞれだけど『海賊王の子供』やどうしようも無い理不尽な生まれについて責めるのなら怒るよ。

 好きで海賊の子供に生まれたわけじゃ無いんだから…。私も、エースも。

 だーって!そのせいで私は面倒くさい地位に…っ!バ海賊に目をつけられる事に…!

 

「私だって……私だって海賊大嫌い…っ!まことに大嫌いぃぃぃい!あのバ海賊共…ッ!あ奴らのせいで、私は、私の平穏な人生が…!」

 

 まじで本気で海賊をこの世界から消し去ってやろうか。厄介な海賊と海賊をぶつけ合って消耗した所をまとめてぶっ潰してやろうかちくしょう。

 

「…あ、あんたも海賊嫌いなの…?」

「あ、口に出すた…」

 

 まずいな、海賊のルフィ相手にこの台詞はまずい。例え気付かなかったとしても意外に鋭そうなゾロさんに『海賊嫌いが海賊船に入る理由』を捏造されては困る。

 

「やっぱりリーは海賊嫌いか?」

「ほ、へ?」

「だって、……子供の頃に、俺を庇ったせいで……」

 

 ………ありましたなそんな事。

 

 確か美味しそうな名前の海賊に捕まって不思議語通じなくて困ってたらエースとルフィが飛び込んで来てフェヒ爺がマヌケしてる内にルフィ庇って背中ぶった斬られたやつ。だったはず。あれ、サボどこ行った。シャンクスさんだったっけ?

 もうその程度の怖さなんて両手で数え切れないくらい味わったから忘れかけてたな(主にミホさんのせいで)

 

 こりゃ参った、ルフィはまだ覚えてるのか。

 

「「?」」

 

「マー、良いです。ナミさん、ここは一つ面倒な故にその海賊の宝奪うまで私達が海賊とは忘れ手を組むしませぬか?」

「………。いいわ、あんた達のトップは誰?」

「船長はルフィぞです」

「おう!俺だぞ!」

「……」

 

 『こいつなのかよ』みたいな目をしないで。……同意出来るけど。

 

「〝仲間〟だなんて勘違いは起こさないでよ。私は自分の目的の為にあんた達を利用するんだから」

「細かい事はどうでもいい!ナミ、よろしくな!」

「あんたが船長だから建前はあんたとだけど私が協力するのは元女海兵の方だから、勘違いしないでよね」

 

 ………女海兵、と何かあるのか?

 

「ありがとうござります…?」

「それと、1回限りだか──」

 

 するとふとナミさんは空を見上げた。

 

「…くる……。ルフィ、今すぐ船を動かして!こんなの珍しすぎる…!嵐が到達する前にここから動くの!」

 

 何かを呟いた後ナミさんはルフィを見て指示を飛ばした。嵐!?東の海(イーストブルー)で唐突の嵐は結構珍しいよ!?

 てかこんな腹が立つくらいに太陽サンサンなのに……。

 

「船なら私が、どの方角?」

「南に移動して」

「はいです!」

 

 嵐怖い、と言うか自然災害怖い。何度被害に遭った事か…!

 うおーら!動け波こんちくしょう!

 

「きゃ…っ!」

「うわっ、とと、大丈夫か?」

「ど、どういう事よ!この海流不自然!」

「あ、私が無理やり動くさせてるです」

「あんた何者よ!」

 

 バランスを崩したナミさんをルフィが支えるけどそれを無視して海を凝視する。

 

「おい!後ろ見ろ!本当に嵐だ!」

 

 どこからか現れた黒雲が大雨を振りまく。雨風凌げる船じゃないから冗談じゃない!

 

「規模が大きくなくて良かったわ………」

 

 嵐が現れたって事はナミさんは天候を預言したって事だよね?能力者?

 

「お前……スッゲェな!仲間になれよ!俺達の船の航海士!」

「お断りよ!」

「断る!」

「ンもう!いい加減にしなさいよ!私は海賊が嫌いだって言ってんの!」

 

 差し出された手をバンと払い除け私達の小舟に座り頬をついた。

 ………………この人使える。

 

「私も賛成です。ナミさん、一つのみ進言致すです。──この船に航海術の存在は皆無」

「あんた達本当に海賊ゥ…?」

「一応」

 

 真顔で返すとため息をつかれた。

 

「あのさ、少なくとも偉大なる航路(グランドライン)を旅する気があるんなら…と言うかそもそもどんな海でも航海術は必要なのよ?絶対に!」

「……」

「なんで顔背けたか弱い乙女さんよ」

「ゾロさん海へゴー」

「死ねってか」

 

 絶対喧嘩売ってるでしょ。買わないぞ、無駄な買い物はしないぞ。

 

 ちなみに航海術無くても偉大なる航路(グランドライン)渡れる。

 

「迷子になるしろ」

「誰がなるか!」

 

 するとルフィが腕をグルングルン回し始めた。視線の先には鳥。

 

「ルフィ?」

「腹減ったからあれ捕まえてくる。ゴムゴムの〜〜……ロケットぉぉー!」

「な!腕が伸びた!?」

 

 ナミさんが驚きゾロさんが見上げるとルフィは鳥に到達した様で。

 

「あ」

「「「え」」」

 

 食われた。

 

「あ゛ぁぁぁああああ!」

「「何してんだアホぉお!」」

 

 両親であるカナエさんレイさん見てますか……どうやらアレが私の兄らしいです。

 

 私はこっそりため息をついた。

 

 

 

 ==========

 

 

 

 とても静かな町並み。

 人の気配を感じさせない。

 

 この島がなんという名前なのか知らないが奇跡的にルフィが鳥に連れ去られた方向とナミさんとの共闘の目的である『道化のバギー』が居座る島方向が一緒だった為、船長抜きで作戦が開始された。

 

「ルフィ、いるといいがな」

「流石に島が見えたらどうにでもするでしょ…鳥が方角を変えなければね」

 

 ゾロさんがキョロキョロ辺りを見回しながら先頭を行く。

 ナミさんは嫌なフラグを建てるよねェ…。お願いします、どうかルフィが面倒事を起こさない内に見つかって下さい。

 

 神様は私にもう少し優しい世界を作って欲しい。なんでルフィと再会してからこんなに心臓が破裂するくらいな出来事に遭遇するんだろう。

 

「ナミさん…宝がどこらにあるか予測可能ですか?」

「へ?んー…、そうね。大概手元に置いておくのが定石だけどバギーは大量に持っていると思うわ、きっとどこかの小屋にあると思う」

「町の人、避難している様ですからきっと安全ですね…宝」

「そう、そうなのよ。だからきっと見張りが付いた小屋を探せば……!」

 

 こういう時見聞色の覇気があれば楽なんだけどな。

 

「そう言えばルフィが鳥に連れ去られた時どうやってあんな所までぶっ飛んで行ったわけ?」

「ゴム、です」

「ゴムが武器なの?変わってるのね…」

「それとは少々違う気がするですが…間違いは無き様な……」

 

「あれ…?ゾロは?」

「へ?」

 

 さっきまで周囲を確認していたゾロさんが消えた。何かを見つけた、とか?もしくは攫われたとか…。

 隣のナミさんを見れば考え事をしているのか口元に手を置いてブツブツ言っている。そしてようやく口を開いた。

 

「……あんたは強いの?」

「私?まさか!最弱ですぞ!」

「ふーん……」

 

 強いと誤解されて危険な目に合うか尻尾巻いて逃げられるかの割合を言えば9:1です。

 

 本当に弱いんだよ!?大将クラスだと間違いなく秒殺の自信があるしそもそも将校に敵うかどうかすら不安です。私が強いのは権力とツテ、相手の特徴だとか戦闘スタイルだとかを知ってるか知らないかで勝敗が変わってくるし。

 

 流石に懸賞金が無しの雑魚海賊には負けないけど。

 

 

 

 

 

「なら、作戦変更ね」

 

 どこかから縄を取り出したナミさんがあっという間に私を簀巻きにした。

 くさ!縄臭っ!海水の染み込んだ臭いがする!磯臭いいいい!これ絶対そこら辺に置いてある縄ですよね!?

 

「ナ、ナミさん!ナミさんこれ何ぞです!?」

「いいから黙って運ばれてなさいよ。ん、思ったより軽いから私でもいけるわね」

 

 ズルズルと引き摺られてどこかに運び出される。ねえこれどこに行くの!?そして臭い!

 臭いが気になって集中出来ないからアイテムボックス開けないし最悪。

 

「作戦変更とは何ぞりりーーー!」

「変な言葉喋らないでうるさい!」

「生まれて14年喋り方は通常にならぬですた!」

 

 とりあえず引き()られる度にバランスが取れなくてコケそうです。

 

 

 

「あそこの酒場にバギーがいるはず」

 

 小さく零した言葉を聞き漏らさない様に黙る。

 ナミさんの進行方向には確かに酒場がある。

 

「あんたはただ黙って縛られてて、悪いようにはしないから」

 

 そんな事言われて信用する人間がいるとでも?作戦の一つくらい伝えてくれてもいいと思うんですけど。

 

「嫌、と言うなれば」

「私はこのままあんたを見捨てる」

「酷い」

「…流石に見殺しにする様な事はしないわ、あんた弱いんだったら1人で陽動役なんて務めれないでしょ」

 

 なるほど、仮にも船長のルフィと武器を持つゾロさんは最低限戦えたとしても自分から弱いと言い武器も持たない私の戦力は宛にしないって事か。

 戦力にならないって素敵だけどこの状態は何かと辛いです。

 

 

「作戦内容はぁぁぁあ…」

「子供には教えたくない」

「口が軽く見る様ってか!正解!」

「そこは否定しなさいよ!」

 

 ドスドスと怒りながら歩くナミさんに繋がれた私は付いていくしか出来ない、臭い。

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

「よ、お前ら!」

 

 辿り着いた酒場には檻に入れられたルフィが居た。

 なんで!?

 

 




口頭説明をせずにとりあえず見せれば早い、っていう面倒くさがりな性格が悲劇を起こしました。
ゾロは半分くらい記憶を消します。「……………覚えがないな…チッ」みたいな。

船で進むスピードが原作より速くなった為、ナミと鉢合わせたのはバギー一味より麦わらの一味の方が先でした。よって成り行きで戦うってよりは計画的に戦う、という感じになりましたが計画ブレイカー(ルフィと運命)があるのでどうでしょうね!

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