2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第74話 鑑賞と干渉は似てるけど違う

 

「よ、お前ら!」

 

 海水の染み込んだ縄で縛られた私はナミさんに連れられバギーという海賊のもとに行くと檻に入れられたルフィと再会しました。

 

「どうしてこんな所にいるんだ?」

「それはこちらのセリフぞぉぉぉー!?」

 

 何がどうなったか誰でもいいから説明して欲しい。

 

「…いいリィン、ただ黙って怯えてなさい(ボソッ)」

 

「………そこの女、何の用だァ?」

 

 奥のテントらしき物の中から現れた男がナミさんを睨む。

 オレンジの帽子から生える青い髪、赤い唇、おでこに骨マーク

 そしてピエロの様な赤く丸い鼻。

 

「えっと、この子やそこにいる麦わら帽子の男がバギー船長の首を狙っていまして──」

「赤っ鼻〜〜〜〜〜ッ!?」

 

 見覚えのある身体的特徴に思わず叫んでしまった。

 

「な…ッ!」

 

 ガビーン、口を開けて居たバギーさん。

 まずい……最高にまずい、しくった。

 

「アホか小娘ェ!船長は自前の鼻に触れる事が1番…!」

「誰が〝自慢の赤っ鼻〟だと……?」

「ぐ…ぇ!バ、バギー船長…くる、苦し…」

 

 プルプル震えていたバギーが口を滑らしたバギーさんが手首を分裂させて部下の首を絞めた。

 え、分裂!?なんで分裂出来るの!?

 

「何あれ…!」

 

 よし、今の内に逃げるか。

 

「ぴぎゃ!」

 

 思わずもたついた足にひっかかって転んだ。手も使えないこんなに震えていたらアイテムボックスも開けないし能力も使えない。どうしよう。

 

「おいそこの金髪ゥ…、今さっき俺様の事をなんと言った〜?」

「あ、あははー…若年性認知症故に記憶が混濁中ですて……」

 

 アイテムボックスさえ開ければ!何とかなるのに!

 

「バギー玉を用意しろッ!」

「「「「はいっ!」」」」

 

 嫌なセリフと奥からガラガラと荷台を転がす様な音が聞こえてきた。

 

「ナミさん…全力で逃げるですよ。もしくは縄を外すして…!」

「……嫌よ、私には宝が必要なの…!」

「っくぅ!」

 

「バギー玉セット完了しました!」

 

 視線をバギーさんに戻すと横には大砲。

 あ、これ死ぬ。

 

「デカっ鼻〜〜〜〜!」

「カチーン…!おい…麦わらァ…!今の状況分かってんのかァ゛?」

「知るか!いいか!お前は俺が絶対倒す!」

 

「まとめて派手に死ねぇぇえ!」

「私はひっそり静かに死ぬたい〜〜!!」

 

 逃げようとせず恐怖で固まってるナミさんの体を全力で蹴り、私もその場に急いで伏せると丁度真上を砲弾が通過した。

 

──ドォン! バキバキ…!

 

 私達の後ろにあった建物が建物では無くなっている。

 ひいいいっ!コレ死ぬ!絶対死ぬぅぅう!

 

 ルフィが居なくならなければ、ゾロさんがどこかに行かなければ、ナミさんが焦って勝手な行動取らなければこんな事にはならなかったのに!

 

「リー!俺を逃がせ!」

 

 ルフィは無茶な注文をしてくるし、ナミさんは砲弾の威力に呆気に取られてるし、ゾロさんは相変わらずどこにいるか分からないし!バギーさんは激おこ状態(自業自得)だし!

 

「泣きたい」

 

 次の玉をセットしだすバギーさん。

 

「しぶといなテメェら!」

「ちょっと待ってください!何もそこまでしなくても!」

 

「じゃあ選べ女。お前は俺様の味方をしてこの2人を殺すか、こいつらの味方をして共に殺されるか」

 

 ヒュッ、とナミさんが息を吸った。

 自分の手を汚すか自分が死ぬかどちらかの選択。私なら確実に前者を選ぶからそろそろ本格的に命が危ない。

 

 それにこの赤っ鼻のバギーさんは単体でも間違いなく強い、きっと砲弾なんか目じゃないくらい…。正直こんな大物が東の海(イーストブルー)にいるとは思わなかったけどきっと息をひそめてたんだ。

 

 アイテムボックスからアレさえ出せれば…!

 

「おいテメェら…うちの船の連中に何してやがる」

 

 ザッ、と現れたのは頼りになりすぎる緑の芝生頭。

 

「ゾロさん……!結婚して!」

「頭イカれたか…?あ、悪ィ、元からイカれてたな」

「本当に酷い扱い!」

 

 余裕のある姿に希望が湧いてくる。

 よく来てくれたシールドもといゾロさん!

 

 いざって時は私の生け贄になってください。

 

「ゾロ〜〜!お前も来たのか!」

「なんでテメェはそんな所にいるんだよ!?」

 

「くぉらぁぁあ!テメェら俺様を空気にして話を続けんなァ!」

 

 心に余裕が出てきたのか私はアイテムボックスを使えるようになった。まずナイフを取り出して縄を切って。

 

──ブチッ

 

「よし」

 

 バラバラと外れる縄を見てゾロさんとナミさんがギョッとする。変な事はしてないぞ?

 

「ルフィ!今すぐ檻から抜けるです!」

「でも俺捕まっちまってよ〜!」

「貴様はゴムだろ」

「ん?おお!そっか!ゾロー!引っ張ってくれ〜!」

 

 私が指摘するとゾロさんも察した様でルフィの元に向かった。

 檻に入れられたとしてもゴムだから変形は自由。檻の僅かな人間も通れない隙間から逃げ出せれるんだよ。

 

「なにをする気だ!?それを黙って俺様が見逃すとでも思っているのかァ!?」

 

──バチィンッ!

 

「時間稼ぎする故に早く逃げるしてです」

「大丈夫なのか…?」

 

 アイテムボックスから取り出した()を振るう。コレだよ。コレさえあれば何とかなる、かもしれない。

 

「正直対抗策が()()しか有りませぬが」

「鞭?」

 

「んな!そ、そそそ、そ、()()はまさか!?」

 

 ガクガクと震えだしたバギーさんを見て確信する。

 これなら逃げれる自信がある!

 

 

 

 

 バギーさんは間違いなく海賊王の船員(クルー)だ!

 

 

 

 

「ど、どこでその悪魔の鞭を手に入れた…!」

「……フッ」

 

 とりあえず素性を素直にナミさんやバギーさんに話す気はないのでドヤ顔をしておく。

 

 実はこの鞭は私の過保護なお父様にいただきまして、曰く『この鞭を見せれば海賊王の船員とか言われてるアホどもは協力なりなんなりしてくれるよ』だそうだ。隣で頭を抱えるフェヒ爺がとても印象的でした。

 この鞭で現役時代に調教したのかな……。

 

 勿論ありがたく使わせていただきます。

 

「お前…何者だ…!」

 

 ゴクリと息を飲み込んで聞いてくる姿が妙に滑稽(こっけい)だが私は震える手で鞭を持って言う。

 

「………娘、ですが何か?」

「んなにぃぃぃいい!?」

 

「お、抜けた抜けた」

「お前は本当にトラブルばっか起こすな!」

「もう!とにかく逃げるわよ!?」

 

 ハッタリ…では無いが流石に海賊王の船員(クルー)相手に対峙し続ける程私の胃の壁は厚くない。背後で呑気な声が聞こえたので時間稼ぎはさっさと終了。

 

 ゾロさんがルフィを連れて飛び降りるので私は冷や汗かいてるバギーさんを無視してナミさんの手を引く。

 

「箒乗るしてです」

「え、ちょ…!」

「早く」

 

 飛び降りるのに躊躇したのか戸惑いながらも私が乗った箒の後ろに跨った。

 

「それではご機嫌よー」

 

 ゾロさんに追いかける様に飛ぶとギャー!とナミさんが叫び声をあげた。耳が痛いです。

 

「お、お主ら大丈夫だったか!?」

「おう爺さん、ちょっと匿ってくれ」

 

 ゾロさんが話しかけたお爺さんが慌てて移動する。

 

 

 

 

 本当に誰か説明してください。

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 バギーは1人この状況に怯えていた。

 

「なんであの鞭が…!」

 

 アレにはトラウマしか無い。機嫌を損ねた時、修行だとか言っていた時、戦闘の最中。自分の乗る船の副船長であるレイリーに何度も痛い目を見さされた。

 

「娘だとォ…!?クソッ、副船長の娘っつー事は母親は確実に姐さんか…!」

 

 金髪の小娘に手を出すと自分は間違いなく死ぬかもしれない。

 

 リィン本人が流石にそこまでは無いだろうと思っていても1度ならず何度もレイリー副船長の逆鱗に触れたロジャー船長の成れの果てを思い出して冗談じゃ無いと身震いをした。

 

「(そもそもなんで俺の事を知ってやがるゥ!?海軍の奴らも気付いて無いってのに…!)」

 

 どうするどうすると焦りまくっていた所に部下が話しかけた。

 

「船長」

「………なんだ」

 

 キリッと表情を引き締め直す。部下の前で情けない姿を見せるのはプライドに関わるのだろう。

 

「あの緑髪の男、覚えがあります」

「なんだと…?」

「確かあいつは魔獣と呼ばれる男『海賊狩りのゾロ』です」

「…ロロノア・ゾロか。つー事は俺様の首を狙いに来た賞金稼ぎ共か!?」

 

 もはや逃げ道が無くなった。

 賞金稼ぎは追いかけてくる。そしてそれを止めるためには殺すなり戦闘不能にするなりしなければならないがレイリーの娘、リィンに手を出すともっと恐ろしい敵が現れてしまう…。でもインペルダウンも勘弁。

 

「あの麦わら…」

 

 よくよく見ればあの麦わらも見覚えのある。自分と兄弟分である赤い髪を思い出した。

 

「(シャンクスも関わりあるのか?副船長繋がりだと間違いないかもしれねェな……!)」

 

 油断してると痛い目を見るのはこちらだ。あの檻から出る方法は分からないが麦わらの男も又厄介な敵だろう。

 

 待っても死、反撃しても死。

 

 バギーは心の底から思った。

 

 

  絶 体 絶 命

 

 

 

 ==========

 

 

 

 先ほどのお爺さんに案内され一つの家に着いた。

 

「まず状況から確認しましょう」

 

 バン!と机を叩いてナミさんが睨みつける。

 

「ルフィ、あんた鳥に食べられてどうなったって言うの!?」

「確か……落とされてんまそうな匂いがしたから行ったんだよ」

「まずそこからツッコミたいけど話が進まない気がするから無視するわ、それでどうして捕まる事になったの?」

「良く分かんねェんだよな〜…いきなり怒り出してよ〜」

 

 アッハッハと笑いながら説明する姿に軽く殺意を覚えるのは私だけじゃないと信じてる。無意味だけど殴りたい。

 

「『ぶっ倒しに来た』って言っただけなんだけどな…」

「目覚めよ私の武装色ぅぅう!」

「うわっ!い、いきなり殴ろうとすんなよ!」

 

 チッ、外したか。手は、黒くなってないから結局意味無いな。

 ルフィを殴る為にも武装色を身につけなければ。

 

「ゾロ、斬りなさい」

 

 ナミさんは私と同じ精神的ダメージを受けている様で安心した。

 

「ゾロさんは一体何を?」

「あ?お前らが勝手に迷子になったんだろうが。俺は真っ直ぐ進んでたろ」

「真っ直ぐ………?」

 

 私達だって真っ直ぐ進んでたし、目の前に人影なんて無かった。

 

「…まさかあんた…こんな短距離で迷子に…?」

 

 ナミさんが恐る恐る聞くとゾロさんは「は?」と首を傾げた。

 くっ、無自覚方向音痴か!?

 

「途中でこの爺さんに会ったんだよ」

「いかにも、わしはこの港町の町長ブードル!話は聞いた!お主らはバギーを倒してくれるそうじゃな!」

 

 さっき会った武装したお爺さんを向くと険しい顔で言った。

 

「……なんでそんな事になってるの?」

「普通『宝を奪う為に暴れに来ました』って言えるか?」

「はぁ……これでバギーと戦わないといけなくなっちゃったじゃない…」

 

 何!?

 

「ま、待つしてです!アレはダメです!」

「どうして?リィンがあんなに優勢だったじゃない!」

「アレは私の武器が特別な鞭ですた故……」

 

 私は鞭を使う事なんてできないし!本当に逃げないとまずいんだよぉぉ!伝説の海賊の仲間だよぉぉぉ!?

 

「うぉぉぉおぅぅ……」

 

「バギーの懸賞金は1500万ベリー…ここ周辺じゃ確かに群を抜いて強いが…」

 

 ほぉぉらぁあ!4桁ぁぁぁ!もう無理嫌だお家帰るぅぅぅ!

 

「リー?どこ行くんだ?」

「帰るぅぅぅ…!ダダンのお家に帰るするぞぉぉ…お腹痛いよぅぅう!」

「気持ちとっっっっっっても分かるけどお宝の為に今戦力を失うには惜しいから落ち着いて!」

 

 腰をナミさんに掴まれて阻止される。私を帰してください!

 

「ルフィ!ゾロ!あんた達どれ位の賞金首倒した!?」

 

「「記憶にございません」」

 

「役立たず!!リィンは最高どれくらい!?」

「私が賞金首を倒す可能でも!?」

 

 一応最高は元七武海のグラッジさんだけどある意味1億越えてるエースには勝利しました!

 

「って、そうでなく!バギーさんの懸賞金はアテにするダメです!」

「ど、どうしてよ!あんた何か知ってるの!?」

 

「っ、バギーさんは海賊王の船員(クルー)です!」

 

「「「!?」」」

 

 ルフィを除いた全員が驚愕(きょうがく)の表情に変わる。分かりましたかこの重大な事実!

 

「なァリー、どういう事だ?」

 

 ガシッと肩を掴んで部屋の隅に移動させる。分かってた、分かってたよ1回の説明で理解出来ない事くらい!

 

「…シャンクスさんと肩を並べて戦うした人です」

「シャンクスと?」

「エースのお父さん…海賊王と一緒に旅すた人ぞ」

「マジか!」

「マジぞ」

「シャンクスの話聞けるかな〜〜」

「呑気か!」

 

 頭痛くなってきた。

 

「面白ェ…海賊になって早々伝説の海賊の奴と戦えるたァ…腕試しにはもってこいだ」

 

 後ろで芝生頭がイカれた事言ってるし、なんでそうなるの!?危険性を理解したなら諦めようよ!

 

「そういえばどうしてリィンがそんな事知ってるの?バギーって名前聞かないし懸賞金が低いから政府には見つかって無いって事でしょ?」

「まァ…知り合いが…………。ルフィもバギーさんと兄弟分のシャンクスさんと知り合いですし」

 

「シャンクスって四皇!?何それ凄い人と知り合いじゃない!」

「ん?シャンクスってそんなに凄いのか?」

 

「凄いショタコンと有名です」

「そんな噂聞いた事無いから」

 

 私のシャンクスさんショタコン説(偽装)を広める作戦を邪魔しないでいただきたい。

 

 ルフィに四皇や七武海やらを教えるのは骨が折れる所か骨が腐る。風化する。

 フェヒ爺教えてくれてなかったのかな…。役立たずめ。

 

「難しい事は考えずとりあえずバギーをぶっ飛ばせばいいんだな!」

「「良くない/き!」」

 

 バチッとナミさんと目が合った。分かってくれるかナミさん。

 

「この港町は…、わしの宝をどこの馬の骨とも分からん奴に譲るつもりは微塵も無い!バギーが危険な人物なのは理解したがそれでもわしは行く!これ以上他所のモンに迷惑はかけられん!」

「無茶よ!」

「無茶も承知!絶対に負けられんのだ!」

 

 ドン!と胸を叩いて意気込むプードルさん。言っておきますが懸賞金なしと懸賞金ありでは差がかなりあると思いますが。

あれ、ブードル?犬?どっちだったかな…。ま、町長さんでいいや。

 

「しししっ!おっさんはこの町が〝宝〟なんだな!」

「…! もちろんだ!」

「待ってろ。ちょっとぶっ飛ばせばして宝奪い返して来るからよ!」

「本当か!?」

「あァ!」

 

 こいつ…!勝手に話進めて…!

 

「リー」

「…?」

「〝船長命令〟だ。バギーぶっ飛ばすぞ」

 

「〜〜〜っ!わかるますたよこんちくしょう!私の力最大限利用してサポートするぞり〜ッ!」

 

 海賊になった以上船長命令は絶対なんですね!?ルフィのくせに!ルフィのくせにぃぃい!

 

「弱点聞きて来るです!」

「ど、どこに!?」

「私のお父さんぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 町には4つの人影。

 

「じゃあ私は予定通り宝を狙うわ」

「場所は?」

「完璧っ」

「リー、ゾロ、行くぞ」

「私はサポートをするぞ?戦闘は苦手故」

「分かってるって」

 

 ルフィを先頭にゾロさんと私が続き、ナミさんが別に向かう。

 

「ルフィ!」

「なんだナミ」

 

「あんた達は普通の海賊と違った。この戦いが無事に終わったらまた手を組みましょう!」

 

 死亡フラグを建設しながら。

 

「おう!」

 

 

 うう、胃が痛い。

 海賊履歴が一般的な海賊と違う…。海軍支部落とした次は賞金首、しかも海賊王の船員とかどんだけぶっ飛んでるのよ、あれか、あんたも災厄吸収能力が付いてるのかよちくしょう。

 

 吸収っていうかむしろ生み出してるな。

 

 

 今の内に作戦のおさらいをしておこう。バギーさんの情報は出来る限り集めた。シャンクスさんより圧倒的に弱い事も分かったし悪魔の実の能力──バラバラの実──というのも理解した。ただレイさんの弱いはアテにならない。あれ(冥王)より弱い人間ってどれだけいると思ってるんだ。

 とりあえずルフィが主体でバギーさんを攻撃して私がサポートに徹する。ゾロさんは雑魚退治。シンプルだけど私とバギーさんの相性は最高に悪いはずだから多分これでいけると思う。

 

 酒場は周囲に隔てる物陰が少ないから奇襲も無理だし何よりルフィが却下した。このクソガキめ。

 

 町長さんはシュシュという犬が酒場の近くに居て不安だからそこにいるらしい。なるべく近付けない様にしないと。

 

「…………はァ」

 

 ため息が思わず漏れる。

 大体こういうのは海軍に頼ればいいでしょうにどうして町の人はそんな常識的な事を考えなかったんだろうか…。これに関しては私が提案するとまだ海軍と繋がってる事が知られてしまうから諦めたけど…。まだ近くにガープ中将がいるのにさ。

 

「いた…」

 

 ルフィが小さく呟いた。

 

「来ると思ってたぜ麦わらァ」

「よォバギー、お前をぶっ飛ばしに来た!しっしっしっ。覚悟しろよ!」

 

 酒場の上から眺めるバギーさんと両隣に人影。ちょっと私隠れて見ていてもいいですかね。

 

「モージ!絶対殺さない様にあの小娘を捕らえろ!」

「は!…え、殺さない様に?」

「殺してしまったら俺らの命が全員ないと思え……」

 

 後半が聞こえなかったが変な耳を付けた人が()()()()()()()()酒場から降りてきた。

 つまり、なんですか。私がアレを相手しろと?ライオンを?百獣の王と言われる獣を?

 

「ルフィ!」

 

 助けて!

 

「おう!まかせた!」

 

 違う。

 

「ゾロさ「安心しろ、お前の獲物は誰も取らねェよ…!」…」

 

お願いだからさ!助けてください!

 

 

 

「船長」

「どうしたカバジ」

「ロロノア・ゾロは私が取ってもいいでしょうか…同じ剣士として──相手をしたい」

 

 猛獣の隣にいた人物が一輪車で手すりに乗っかった。

 

「良いだろう───麦わらァ!お前の相手はこの俺様だ!」

「上等だ!シャンクスの知り合いだろうが俺は負けねェからな!」

「ばァァァか言え!この俺様がお前になんか負けるわけねェだろうが!」

 

「お嬢ちゃん怪我したくなかったら大人しく降参しな」

「降参」

「早いわ!こういうのは売り言葉に買い言葉だろ!」

 

「ロロノア 有名な賞金稼ぎがバギー船長の首を狙うとはいい度胸だな」

「賞金稼ぎだァ?俺たちは──海賊だ!」

 

 

 1体1が3つ。予定と狂った戦いが始まった。

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

   ──ゾロVSカバジ──

 

 最初に動いたのはカバジだった。

 

「はァッ!」

 

 大袈裟に刀を振り上げればゾロは反応する。

 

「〝火事おやじ〟!」

「っ!」

 

 フェイク。カバジは口から火を吹き出した。

 曲芸のカバジ、それは数多の攻撃法を用いて曲芸師の様に剣技を振るう剣士だ。自称バギーの右腕であり沈着冷静な態度でゾロを観察する。

 

「(めんどくせェ…!)」

 

 炎に焼かれてしまっては肌がつり剣技に微妙なラグが発生してしまう為、すかさず距離をとった。

 

「流石に簡単に焼かれちゃくれねェか」

「ハッ、弱ェな」

 

 白い刀…既に亡くなってしまった幼馴染みから受け継いだ大業物 和道一文字。それを咥え両手に残りの刀を持った。

 三刀流の名は伊達じゃない。

 

「曲技!〝山登ろー〟!」

「は!?」

 

 カバジは相手の剣技を見てみたい気持ちも合ったが船長に早々にケリをつけろと何度も言われている為、大技を使う事に決める。

 

 一輪車で壁を登り始めた。そこは山じゃない、壁だ。

 

 

「〝納涼打ち上げ花火〟!」

 

 その勢いで建物の2倍もの高さに跳躍して狙いを定めた。

 確かに当たればかなりのダメージを負うことになるが空中では身動きは取れない、避けるのは容易に出来る。

 

「高けりゃいいってもんじゃ…っ!」

 

 ゾロはその場から離れようとするも足に違和感を感じ動けない。

 

「殺れ、カバジ」

「はい船長…ッ!」

 

 バギーの飛んできた腕がゾロを固定していた。

 

「この野郎!俺と勝負だろ!ゾロの戦いに手を出すな!」

 

「(マズイ…!)」

 

「〝一輪刺──」

「うぎゃぁぁ!」

 

──ドンッ!バキッ! ガラガラ…

 

 突然悲鳴と共に飛んできた金色の塊がゾロの体に勢いよくぶつかり、建物を突き抜けて反対の通りに飛ばされた。

 幸か不幸か、カバジの刀に触れる事も無く拘束が一瞬で解かれた。

 

「う…いででで……」

「痛いのはこっちだ!いい具合にクッションにつかいやがって!」

「あ、ごめんぞりゾロさん。ちなみにその筋肉の硬さでクッションとはおこがましき!クッションに謝罪するしろ!」

「お前はクッションに何のこだわりがあるんだ!」

 

 リィンが自分の背中を擦りながらゾロの上を退くとその姿にギョッとした。

 

「お前頭から血が…!」

「あ…さっき蹴るされた時…」

 

 比較的少量ではあるがゾロからすると子供相手、手を貸そうか迷った。

 

「見つけたぜロロノア、やっぱりこの程度じゃ死なねェよな」

「小娘!さっさとリッチーの餌食になれ!」

 

 お互いが対峙している相手が現れ、気持ちを切り替えた。ゾロは早く倒してリィンを手助けに行く事に。リィンは……その場からさっさと逃げ出した。

 

「待たんかぁぁあ!」

「誰が待つぞするかばぁぁあかぁぁぁあ!」

 

 あの調子なら暫く持ちそうだ。

 

「ケリを付ける、テメェのつまらねェ曲技に付き合ってる暇は──無い!」

 

 刀を構え直し両腕を交差させる。

 

「〝鬼──」

 

 そのまま突進して左右と上の逃げ道を塞ぐように斜め十字に斬りつけた。

 

「──斬り〟!」

「カハ…ッ!」

 

 一撃、カバジは血を流しながら果てた。

 

「お前に怨みは無いんだがな、こんな所で立ち止まってる訳にはいかねェ」

 

 鞘に納めればリィンが駆けて行った()の方向へと向かう。

 

「(助けにでも行くか……)」

 

 もう1度言う、逆だ。

 

 

   ────ゾロ勝利

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

 

 

   ──リィンVSモージ──

 

 

「さて、どうしてやろうか」

 

 猛獣使いのモージはライオンに怯えるリィンを見て味気ないと思いながらも獲物を追い詰める事に楽しみを感じていた。

 

「あー!あんな所にお肉ぞー!」

「誰が釣られるか!」

「ガウゥ?」

「釣られるなリッチー!」

 

 ライオン、リッチーが釣られた瞬間リィンは急いで箒を取り出した。

 

「リッチー!踏み潰せ!」

「ガルルルルッ!」

 

「やっぱり無理ぃい!」

 

 ここで背を見せれば一瞬にしてライオンの餌食、涙で視界を奪われても同様。リィンは必死に自分より倍ほどあるリッチーと震える足で対峙した。

 

 振り下ろされる前足を見て間合いの内側に転がり込んだ。リッチーの股を抜け、背後に咄嗟に回り何か対抗策を考える。

 

「(こんな奴居るなんて知らない…!あの時酒場にはいなかったのに…!)」

 

「リッチー!後ろ足で蹴りつけろ!」

「ガルルルル!」

「っ!?」

 

 ギョッとした時には目の前に鋭利な爪と肉球が迫っていた。

 ろくに避ける事も出来ず当たる覚悟をした。

 

「(う、後ろに飛んでダメージを軽減……!)」

 

 ただ少し動きが遅く、まともに当たってしまい吹き飛ばされてしまった。

 

「うぎゃぁぁ!」

「ッグぇっ!」

 

 何かを巻き込んで。

 

──ドンッ!バキッ! ガラガラ…

 

 建物にぶち当たり一瞬呼吸が止まる。肌に木が擦れて痛みが走った。

 

「う…いででで……」

「痛いのはこっちだ!いい具合にクッションにつかいやがって!」

「あ、ごめんぞりゾロさん。ちなみにその筋肉の硬さでクッションとはおこがましき!クッションに謝罪するしろ!」

「お前はクッションに何のこだわりがあるんだ!」

 

 背中へのダメージが少ない理由はこれか、と納得してゾロから降りた。

 血を指摘されたが気にする間もなく追撃はやって来る。

 

「見つけたぜロロノア、やっぱりこの程度じゃ死なねェよな」

「小娘!さっさとリッチーの餌食になれ!」

 

 2対2であったとしても変わらない。それくらいなら1人を集中して倒す。

 そう決めた瞬間リィンは走り出していた。全力で。

 

「待たんかぁぁあ!」

 

 待つと言われて待つ人は居ない。

 

 

「ゼェ…ゼェ…」

 

 吹き飛ばされた拍子に箒を落としてしまった様で飛ぶイメージが取れない。モージは未だ余裕の表情でリィンをニタニタと追いかけた。

 

「(タチが悪い……!)」

 

「小娘!」

「…!?町長さん!?(マズイ、この人が居る方向に逃げてしまったか!)」

 

 焦るほど思考回路は狭くなる。

 突然出くわしてしまった町長を庇いながらの戦闘はかなりキツイ。守りの大将と言えど守る対象は自分なのだ。

 

「一瞬で、終わるする」

 

 現れたモージとリッチーを睨みつけ、後ろに居るブードルと犬を庇い一瞬で決着をつける方法。

 

「(これしか無い……!)」

 

 アイテムボックスから次々と大量の色んな武器を取り出した。

 刀、剣、銃、槍、鈍器、様々な物を。

 

「な!」

「舞え…!」

 

 突然動き出した武器がモージやリッチーの周囲でピタッと止まる。

 

「(イメージ、イメージ。集中。前世でこんなアニメを見た気がする、大丈夫!これなら大丈夫!)」

 

 最近一瞬だけだが思い出す前世の記憶の技をイメージして無機物を動かす。想像出来るのならこちらの物だ。

 

「動くすれば、攻撃する」

「は、はい……!」

 

 しかし攻撃しないと言ったが背中を狙われる可能性がある為、モージとリッチーの両者を鈍器で叩きつける様に動かした。

 

──バリンっ!ドゴォッ!

 

 容赦ない攻撃が降り注ぐ。命を直接的に奪う武器を攻撃手段として使う事は自分が無意識の内に恐怖し使えないと理解しているので最初から即死性の無い攻撃ばかりだ。

 

 

 ピクピク動いてはいるがどうやら意識は飛んでいる様で、リィンはヘナヘナと力が抜け座り込んだ。

 

「(後ろ盾も無い状態での戦闘…やっぱり経験しておいた方が良かったかも知れないですセンゴクさん…)」

 

 ペロッと流れた血を舐めて心配するように鳴く犬にクスリと笑いながら精神的疲労を感じた。泣きたい。

 

 

 

   ────リィン勝利

 




秘密アイテム『レイリー副船長愛用調教用悪魔の鞭(安物)』
ナミは箒で飛んだ(ゆっくり下降した?)リィンの姿と檻から抜け出した体の歪み具合を見て悪魔の実の能力者だと悟りました。よって戦闘強制参加です。

残る所ルフィVSバギー

評価等よろしくお願いします。そして最近見る度に感想が増えている(しかも批評無し)のでとても嬉しいです。そして見慣れた名前の方の扱いが雑かつ言葉を選ばなく……わ、悪気は無いんですよ?

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