「海賊が来たぞ〜〜〜ッ!」
その村には1人の青年が居た。
「皆逃げろ〜〜!海賊だ〜!海賊が、来たぞ〜〜!」
騒ぐ言葉を聞けば一大事だと慌てて逃げ出すが村の人はその声を聞いて微笑ましく思うだけだった。
「またやってるよ…ウソップの奴」
「お、こんな時間か…!さて、仕事にするかな」
「毎日毎日良くやるなぁ」
そこまで広く無い村、青年──ウソップは広場まで行くとわーはっはっはっ!と笑い出した。
「うそだーー!」
──ゴンッ!
「ふげっ!」
「ウソップ……、毎日毎日ほら吹きやがって………!」
「今日という今日は許さねェぞ…!」
村の中でも血気盛んな男達はフライパンやら手頃な武器を手に取りウソップと対峙する。そんな様子をみてウソップは──脱兎の如く逃げ出した。
「だ〜れが捕まるかよ〜!さらば!」
「「「待てやゴルァぁ!」」」
「キャ〜プテ〜ン!」
ウソップが木の上で優越感に浸っていると彼の子分とも言える子供たちがやって来た。
「よォ!お前ら!」
「おはようございます!キャプテンウソップ!ウソップ海賊団参上しました!」
ピーマン、にんじん。
彼らは偽物の剣を掲げて挨拶をする。
すると数分遅れて海岸の方からもう1人の子分、たまねぎがやって来た。叫びながら。
「大変だ────ッ!か、かかか!海賊が来たァァァ!キャプテェェェン!」
「「「嘘だろ」」」
「ううう、嘘じゃ無いですって!あの旗見たことがあります!バギー一味の舟ですって!」
「さ〜て俺様はおやつを食べないと死んでしまう病だから家に戻ると──」
ウソップがワッハッハと笑いながら帰途につきかけてると子分達にガシッと服を掴まれた。心から逃げ出したい気持ちに駆られる。
「たった4人ですよ!?」
「キャプテン!キャプテンの腕の見せどころです!」
「キャプテン!」
4人、多いのか少ないのか。ウソップ1人で倒せる相手では無いが子分の前で情けない姿を晒すのも沽券に関わるので渋々海岸に向かって行くのであった。
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「よーっこいせ」
「リィンジジくさいわよ」
「ナミさん………私未だ14の若人です」
船の操作など少したりとも分からない私は適当に波を動かしてればいいだろうと判断したけどナミさんが却下した。
曰く『(自然発生じゃない波だと)天候が読めないから緊急時以外使用禁止』だそうだ。個人的に海の上に居たくない、酔いそう。今の所(政府の科学班が毒に耐性のある私の人体実験のお礼)酔い止めが効いてるから平気だしまだ個数はあるから大丈夫だけど泣きそう。
「ナミの言う通り進んだら本当に島が見えたな!」
「久しぶりの島だ…酒を補充しよう」
「あ!肉も!」
食糧の事しか考えてないのかこのアホ共は。
町長さんの村(名前忘れた)の人が善意で食糧を積んでてくれてたからアイテムボックスに入れた保存食以外は少し残ってる。頑張って守りましたとも。
料理出来ないから調理方法に困りましたけどね!料理人じたいも、船自体も!
ルフィや私はもちろんゾロさんも料理に至っては出来なくてナミさんは法外な値段を吹っ掛け、なおかつキッチンなんて物は無いから火も使えない。干し肉があって良かった!
「ところで」
舟を固定したナミさんが手を払いながら私たちを一瞥すると村へと続く坂道を見た。正確に言うと坂道の脇にある森。
「あそこに見える四つの頭、何かしら」
ビクゥ、と肩を揺らしたのが把握出来る。ガサガサと木々が揺れる音がしたと思ったら1人の男が立ち上がった。
誰だあの長鼻モジャ毛。
「俺はこの村に君臨する大海賊団を率いるキャプテン・ウソップ!人々は俺を──」
「──ここに海賊団は存在しないです」
「なぬぃ!?バレた!?」
あ、当たった。
「バレたって言ってるから嘘じゃない…何あれ」
「おのれ策士め…!」
「にっしっしっ!お前バカでマヌケなんだな!」
「うるせえ麦わらこの野郎ッ!」
涙を流しながら地面を叩く彼をみて思わず同情する。
「俺、ルフィ!海賊王になる男だ!」
「……。俺はウソップ!勇敢なる海の男で俺には8000万人の部下がいる」
「ええええ!?!?すんげぇええ!?」
「ダウト」
「やかましい金髪!」
流石にそんな嘘には騙されないぞ。
ありがとう『嘘つきは誰だゲーム』を開催してくれた七武海のみんな!表情の僅かな変化で嘘かどうか決めるってもはや人間やめてるよ!
ちなみに結果は私がビリでした…、ちくしょう。
そもそも七武海の皆さんが無表情かつ観察眼がありすぎるのがいけないと思う。これは私のレベルが低いんじゃなくて周囲のレベルが高すぎる。おかしい、たかが10やそこらの小娘が七武海というエリート軍団に敵うとでも思ってんのか脳内異端児野郎共は。同じ土俵に立つこと自体おかしいだろ普通。
なんだ、そんなに私を虐めたいか?そんなに私を虐めたいのか?ん?お?喧嘩なら買ってやるぞ?海軍が。
あ、だめ、イライラしてきたあの動物共。
まず何で今の七武海って動物だらけなんだよ。仕組んでんのか?
鰐、鳥、鷹、蛇、鮫、熊、あと1人なんだよ。彼とは会ったことないんですよなんだっけ月光モリア?ゲッコー?モリアさんってだれだよ!あれ?鮫って動物!?哺乳類だったかな?ンン??もういいや!
「…──…───ィン!リィン!」
「は…!ルフィ何事!?」
「ずーっと話しかけてんのに反応しねェから寝てるのかと思った!起きててよかった!」
「うん、起きるしてた。で、何事!?」
「特になんもねェ!」
「うん!死ね!」
心配してくれたのは分かるが何かあったのかヒヤヒヤした。なんと言っても君はトラブルメーカーだからね!
私?私はちなみにシリアスブレイカー。
「おう小娘!俺が飯を奢ってやるよ!」
「素敵結婚すて」
「断る!」
「この子の異常なまでの食に対する信念はなんなの………」
ボヤくナミさんは無視します。
「あ〜、えっと。名前……」
「あ、リィンですぞ、緑の芝生がゾロさんでオレンジのナイススタイルがナミさんです」
「ナイススタイルって所で顔が歪んだ気がするんだが気の所為か?」
気の所為。
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「ヘェ〜、船と仲間探しね…」
「そうなんだよ〜
「リィンのせいにしない!普通考えて分かるはずよ?」
あー、飯うま。お肉美味しい……。
「大体、あんた達は能力も思考も常識外れなのよ」
「そうか?」
「まぁまぁ…、この村にある大きな家があるんだがその家の持ち主くらいしか船は持ってないだろうな…」
「よし、じゃあ貰いに行こう!」
ん、この魚もなかなかに美味でござる。
「その家の人ってどんな人なの?」
「その家主は数年前に両親を亡くしてだな……、本人も病弱でなかなか布団から出られないんだ」
「……」
「やめやめ、船は他で調達しましょう」
「でもなぁ…」
おお?このスープ私好み!ラッキー。
「そんなお前らに朗報だ!今ならこの俺、キャプテン・ウソップを船長に」
「「「ごめんなさい」」」
「早いなオイ!」
ルフィがいるから食糧問題は大きいだろうな…。さっさと料理出来る人と船が欲しい。
「──お前はいつまで食べてんだよ!」
「…?……」
「おいリィン!おまえだ!今自分ッて分かった癖に何事もなかったかのように食事を再開するな!」
チッ…、もう少し食事に集中したかったがウソップさんがバンバンと机を叩くので仕方なく中断する。
「奢る、とぞ言うされた以上言質は取得済み。よって遠慮するは無礼と判断したので食すのみです」
「そのおかしな喋り方やめてくれませんか理解するのに1拍必要なんですけど」
「むしろ初対面で私の不思議語を1拍で理解可能な人間はごく微量」
今は言葉考えずに自分の慣れた言い方してるから余計に理解しにくいと思うよー?センゴクさん達に話す時は少し考えないといけないから神経減る。
考えずに話しかけてさっさと理解出来るのは長い間私と一緒に居たスモさんや雑用の人や七武海達だもん、それに比べたら1拍程度で理解する人はホントにレアだよ。
「俺でも時々わかんねェもんな!」
「せめて分からしてくれ船長」
お前は私の兄だろうが。
私の語彙力最低の時に1.2年一緒に居たんだから。
「あ、やべ…こんな時間。ちょっと俺行ってくる」
「何しに行くんだ?」
「病で伏せったお嬢様に嘘を吐きに。俺は嘘つきだからな…!」
そう一言言うとウソップさんは店の外へ出た。
嘘を吐きに行くって凄い理由だな。何か交渉しにでも行くんだろうか、この平穏な村で。
「あいつ面白ェな!」
「あの店員さん、ウソップさんというのはどのような方ですか?」
「ウソップ、ですか?……あいつは子供の時に母親を亡くして、以来ずっと『海賊が来たぞー』って言いふらしてんですよ」
「何故海賊…?」
「……父親が海賊で、母親が死ぬ少し前に海に出たっきり帰ってこないんです」
死んだか。
「ふーん…あいつ海賊の息子なのか……」
どこか思うところがあるのか小さく呟いた。エースの事もあるもんな…成長してるようでお姉さん涙が溢れてきそうだよ。
……妹だけど。
「なァ、ウソップの父ちゃんってどんな奴だったんだ?」
「んー?お調子者…つったら良いんですかね。『海賊旗が俺を呼んでるー』って病気で伏せ気味の奥さんほっぽって海に出るんですから薄情者でも合ってますか」
たどたどしい言葉遣いで説明をしてくれた店員さんにお礼を言うと私とルフィはゾロさん達の元に戻る。
「アホそう」
「言うと思ってたけど言わないで」
海賊旗は呼びません。そんな非科学的な事があってたまるか。
「あいつの父ちゃんも面白ぇのな…!」
小さーくつぶやくルフィに嫌な予感が止められません。なんというか、私の食費と言うか甘い物費が減りそうでこの島での胃痛の種が増えそうで
あれ、私って見聞色使えるんじゃね?ってこの時ばかりは思いました。
「にっしっしっ、きーめた」
傍から見たら無邪気に笑う姿なのに私には悪魔の笑みにしか見えなかった。
どうか気の所為であってくれ。
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その後現れたウソップ海賊団の子供たちと(何故かウソップさんが食べられた事になり)
やけに上機嫌なルフィに 無 理 矢 理 連れられて(首しまるかと思った)
この村1番の屋敷にやって来た。
こんな平和な村故か警備兵も少ないみたいだし豪邸とは思えないな。
「ごめんください船くださーい」
「「やめんか!」」
ガチャガチャ門を乗り越えて中に入るルフィを見ながらふと考える。
ウソップさんの父親が海賊といっても海賊自体に嫌悪感が少ないのはきっと『日頃のウソップさんが吐く嘘』と『本物の海賊を見たことが無い』からだろう。
地形としてもどうやら高い崖の中に坂道、しかも島で2つだけ。中は質素な村。
海賊が攻めるのに躊躇う要素が多い。
ハイリスクローリターンだもんな。
「って不法侵入!」
「「遅いわ!」」
ツッコミしたらツッコミで返された。ツッコミしてる暇ないと思う。あの歩く犯罪者を誰か止めて。
「っ!え、お前ら何でここに…!」
木に持たれて女の子と逢引してる野郎を発見しました。
ひき肉になれ!
「海賊の話聞きに来た!お前の父ちゃんって海賊なんだろ?やっぱりスゲェのか?」
いい笑顔で片手をあげながら話しかけるルフィをみてウソップさんはポカンと口を開けた。
「お、おおう!俺の親父は凄いんだ!撃った弾は百発百中!アリの眉間にだってぶち込めんだ!」
「「ん?」」
待てよ、ものすごく聞いたことあるセリフだ。
「アリの眉間?」
「……嘘じゃねェからな!」
「真実?」
「あァ!絶対にだ!」
嘘だと願っていたが初っ端からこんなに嘘がバレやすい人が私の目をかいくぐって嘘を吐けるはずが無い。つまりそれは本物と言うことで……、思い出せ私のチンケな脳みそ!今思い出さないと後悔するぞ!
「えっと…皆さんは?」
「こいつら海賊、船が欲しくって、ね。あとこっちのウソップ。理由は…ちょっと理解できないわ」
「ウソップさんのお友達なんですね…!ふふっ、楽しそうな人達」
どっかで聞いたことある、んだ。多分!
私とルフィが聞いたことある共通の人間なんて限られてる。コルボ山…、フェヒ爺?いやいやあの人はそんな事言った記憶無いし……。やっぱりフーシャ村?でもあそこは平凡で平穏で。
「…あなた方誰ですか!?お嬢様から離れなさい!」
「「う〜ん……」」
「クラハドール!」
「げ…執事!」
「ウソップ君…あなたですか。何が目的ですか?地位?財産?やはり金ですかね、あなたの父親はどうやら海賊らしいですから!野蛮な血が流れてる事でしょう!」
「なん…だと……!ッ、親父の事を馬鹿にするな!」
「やめてクラハドール!」
海賊でルフィと共通の知り合いで息子がいる……。
出てきた。
「「ヤソップ!」」
どうやら思い出したのはルフィと同時の様でお互いの手を叩いた。やったね!
「へ…?どうして俺の親父の名前…」
「………、なるほど。執事さんが侮辱した海賊とやらはどうやら
わざと強調して言えば全員が驚いた顔をする。
「よ、四皇の……幹部……?」
「リー、ヤソップってそんなに有名なのか?」
この世界情勢に疎いバカを除いて。
「ヤソップさんは少なくとも同じく四皇の白ひげさんの船に乗り込む事もしばしば。……あァ、彼らは確か王族とも関わりぞ存在しますたか」
「お、王族!?」
魚人島だけど。ちょっとだけ。
執事さんが仰天した顔になる。流石に田舎でも四皇の脅威と王族のレベルは理解出来るか。でもさ、どうして殺気をガンガン私にぶつけて来るのかな。
これでも殺気を当てられるのには慣れてるんだ。やっぱり自分に都合の悪い事を言われて怒ってるのかな?
見下してた人間が実はかなりの実力者の子供だったんだ。親と子を混同するマヌケには効くだろ。
「ルフィ、私船に戻る」
「ん?おう?」
でも流石に
──数時間後──
私は見事フラグ回収してしまった様だ。
恋愛フラグは折るもの。災厄フラグは回収するもの。