コノミ諸島ココヤシ村。
ルフィとゾロさんは分け前である三割分の宝をナミさんの指示に従って運び、その後ろを私とウソップさん、ヨサクジョニー賞金稼ぎコンビが付いて行く。
「ナミさん…ここが故郷ですかね?」
「さァ…でも多分そうなんじゃねェのか?」
何故かピリピリとした空気に耐えられずウソップさんに話しかけるが彼は思ったより楽観視している。
「みかん畑…お腹空いたです」
「美味そうだな」
「はァ〜…ウソップさんつまらぬです」
「喧嘩売ってんのか?」
「ハッハッハッハッー」
どうにもテンションが上がらない。つまらない。お腹空いた。
「リィンの姐さん」
「ぶフッ!…ゲホッゴホッ、ッ姐さん!?」
「はい、姐さんです。姐さんはその、見るからに幼いですけど親御さんは海賊になること認めてくれたんですか?」
賞金稼ぎコンビ片割れ(どっちがどっちか分からない)が聞いてくるけど『姐さん』ってどうにかならなかったんでしょうかね。
どう考えても私年下なんですが。
「親、です?ふぅーむ」
「確かに気になる所ではあるよな。お前の過去」
「私に興味あるのですかウソップさん…気をつけてです、ロリコン」
「お前ほんとにシバキ倒してやろうか?お?流石にウソップ海賊団の3人と同じくらいのガキンチョに負ける気は無いぞ?んん?」
「私14ですが」
ウソップ海賊団の炒飯3人組って私より年下だったはず。
「ん何ィ!?チビ過ぎるだろ!あと貧にゅ…」
──ドゴッ
「うわ…ウソップの兄貴の鳩尾に、えぐい…」
「息してますか?」
「お、っ、う…なん、とか………な…」
私の地雷でタップダンスを踊るな。潰すぞ。
「えーっと、話逸れるましたが親ですたっけ?」
視線を賞金稼ぎコンビに向けるとビクッと肩を震わせながら頷いた。失礼な。
「そもそも私の両親海賊ですたからね…反対も何も無きと思います」
「お前の親も?」
あらウソップさん復活の早いこと。
………もっと強く攻撃するべきだったか。
「…落ち着け」
ウソップさんは何かを感じ取ったのか数歩下がって防御ポーズをした。チッ、勘のいいやつめ。
「多分……ここにいる人間の誰かはご存知ですよ」
「え…まさか有名人だとか言わないよな?」
「さァ」
「やーめーろーよーッ!そのなんか含みのありそうな薄ら笑いッ!」
「ハハハー!」
「アンタら少しは空気読みなさいよ!」
先頭を行くナミさんに怒られた。
解せぬ。
「───ナミ?」
みかん畑から声が聞こえてそちらを向くと紫色の髪の女の人が見えた。
「……、ノジコ」
「ナミさん知り合いです?」
「…っ………。お宝、運んでくれてありがと」
その言葉を合図に運搬係の2人は肩から宝を地面に降ろした。
「気にすんな!仲間だろ!」
「仲間…?ふざけないで?」
──私は仲間になった覚えはない
地を這うような声が全員の意識を冷やす。
「あんた達との協力関係はこれでおしまい……。正直もうそろそろうんざりしてたのよね──生緩い空気」
嘲笑う様な表情で、ナミさんはペラペラと言葉を紡いだ。
つまりナミさんはここで船を降りるって事?え、私達の中でメリー号操作できる人間居ないよ?ここ大事。
「…なんだかよく分かんないけどあんた達帰った方がいい」
ノジコと呼ばれた人がみかん籠を下ろして腰に手を当てた。うわー、スタイルいいなー!羨ましい。姉妹かな?美人姉妹ってか?はぁ、神様…私顔の認識苦手だけど周りの評価を見るに容姿はイケると思うんですがこのスタイルだけはどうにかならなかったんですかね!ペッタンコスタイル!ふざけんな!
「この島はアーロン一味の縄張りでもあるんだ、被害に遭わない内に消えな」
──────アーロン?
「…どういう事ですか、ナミさんノジコさん」
「………リィンには少しも関係無い。消えて」
「なれば泣きそうな顔は引っ込めるしてです」
「…!」
指摘すればナミさんは慌てて私達から視線を逸らした。とりあえず私にも関係あるから黙っててくれますかボイン姉さん。
するとノジコさんは困った子を見るように腰を屈めて私と視線を合わせた。
そもそも関係あるか無いかは私が決めることだ。
「あのねお嬢ちゃん…この海には魚人って言う怖い種族がいるの。この島はもう何年も前から──」
「──ノジコやめて!」
聞かせたくない、そんな感じの叫び声。
「ホゥ……………?」
私が気になった事。
「聞いたことがあります」
賞金稼ぎコンビ片割れAが独り言の様に呟いた。
「
「シチブカイ?」
そんな事も知らないのか船長。
「まァ簡単に言えば政府公認の7人の海賊です。とにかく奴らは強い」
うんうんと思わず頷いてしまう。あいつらは強い、怖い、鬱陶しい。
「その中にジンベエってのが居て。彼が七武海に入る代わりにアーロンを
確かに9年前ジンさん加入と引き換えにアーロンの釈放をしましたよ。
黄猿であるリノさんと私が本部から派遣されて実際その光景は目の当たりにした。
そしてだな、私は言っちゃったんだよなー…。『問題行動起こせばぶっ飛ばしに行く(意訳)』って。
現大将のリノさんと監獄署長の前で、私が。
責任問題、ですかね……。
「ホントにッ…何故釈放するされたアーロン……ッ、あの、クソ魚人野郎……!」
「よくわかんねェけど、そのアーロンって奴ぶっ飛ばせばいいのか?」
ルフィがあっけらかんと言うとナミさんは一気に青ざめた。
「ホントに関わるのやめてよ!後少しなの…!後少しで」
後少しで私の堪忍袋の緒が切れる。
だってアーロンは私の兄を馬鹿にしたんだよ?過去で。
当時の私が許せるわけ無いよねー…。いや、今更そんな事気にはしてないけど。…問題は
過去に戻って発言してしまった自分を助走つけてぶん殴りたい。
「──とにかく、そういう事だからさっさとここから去りなさ」
「殺す」
まずそもそも存在しなければ良かったんだ。うん、ジンさんの面汚しも兼ねて支配してやりますってか?お?流石にキレるぞ?んん?
海軍大将女狐って言うのは他の大将に比べて他種族との関わりが強い設定ですから?一応現地に居合わせてしまった場合?対処しなくちゃならないんですよね?
「リ、リィン?」
「………は?何ですか?」
「話、聞いてた?」
先ほどの空気は一体どこへ行ったのやら、恐る恐るナミさんが聞いてきた。
フッ、話?そんなモン
「元から聞いて無き」
「聞きなさいよ。あのね、魚人って言うのは…」
多分キミ達より魚人は知ってるから。
「理由経緯がどうであれ、行動すればそれは一緒。つまり、アーロンをぶっ飛ばしに行く理由が『仇討』や『魚人が嫌い』や『正義』、または『お腹空いた』であれども、結果として変わらぬです」
「お前の本音絶対『腹減った』だろ。お前の戦う理由それでいいのかオイ」
例えばの話だけど。
『お菓子が美味しいから』という理由でも『種族格差を無くそう』という理由でも行き着く先はどちらも『魚人島を保護』
前者が理由として掲げていても思い込みが強い世の中は後者で取られることが多い。
つまり理由から結果へはほぼ一方通行だけど、結果から理由を推測する場合には沢山の可能性が生まれるのだ。
だから正直理由はどうでもいいんだ、結果から推測される理由があれば。
どんなに下らぬ動機も、ご立派な動機も、やってしまえばみな同じこと。
「アーロンぶっ飛ばせば、ナミが悲しまなくて済む。よなッ!」
ルフィがニッ、と笑いながら私の言葉を簡単にまとめる。私の理由が『お腹空いた』や『発言に対しての責任問題』だろうとルフィの理由は耳障りがいい。
「俺は仲間の為に戦う」
理屈で動く私と違ってルフィは感情で動くからカッコイイんだねー…。うちの兄ちゃんマジ天使。可愛い。
ルフィは自分の帽子をナミさんに被せると腕をグングン回しながら道を進んだ。
「おぉ…マジで理由が違うのに結果が同じになった…」
とりあえずウソップさんシャラップ。
「え、ちょ…!なんで!」
ナミさんがこの船を離れるという結果に到たった理由は本人にしかわからないけど、ご丁寧にお店で食糧買い込むよりアーロンの根城で食糧ちょろまかした方が絶対節約。うん、確定。
どーせ
「私はあんた達に死んで欲しく無いのに…ッ!」
狼狽えた声が聞こえた気がした。
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ココヤシ村を守る駐在に『ゲンゾウ』という男がいる。
全身に縫合の跡が残り、帽子には風車を刺した、見るからに怪しい風貌だ。しかし彼は孤児であるナミやノジコを幼い頃から見守っていた、言わば父親がわりだ。
アーロンに支配され、その上ナミが『一味に入り海図を描く代わりに1億ベリーで村を買い取る』という契約をした事をノジコの口から聞き出し、自分の無力さに嘆いてからもうすぐ10年経つ。
そんな親バカな彼は混乱していた。
それはアーロンが現れた時以上に混乱していた。
「何だこれは」
村の海岸沿いにそびえ立つアーロンパークの前でゲンゾウは頭を痛めた。
目の前で起こる事が現実かちょっと…大分…かなり分からない。理解出来ない。と言うか認めたら負けた気がする。
「ゲン、さん…」
どうやらアーロンパークの門の前にいる娘の2人も自分同様混乱してるようだ。
ナミがアーロンパークを向くとそれにつられて視線を動かす。
視線の先には不思議な光景が生まれていた。
笑顔で魚人を縛っていく少女。
袋に入れた大荷物を置き酒を呑む男。
その男の影に隠れて怯えている男。
そしてアーロンの歯で遊んでいる男。
「…………何だこれは」
全てを理解した上で再び言葉を絞り出した。
「あー…、ゲンさんがそういうのも分かる。悪いのは化け物を凌駕する化け物な奴らが悪い」
「ナミ、すまん。説明を頼む」
「えっと…」
自分が理解する様にナミは説き出す。
ルフィ率いる4人がアーロンパークに到着した時、やる気満々のルフィがアーロンに喧嘩を売った。
『アーロンってのはどいつだ』
『……俺だが』
『お前をぶっ飛ばしに来た!あと怒られるのが嫌だから!』
「ちょっと待て」
始まったばかりの会話を途切れさせゲンゾウはストップを告げる。
「怒られるとはなんだ」
「それは、あのちっこい可愛い女の子のせいよ」
「……あの少女の?」
思わず見てしまう。──魚人を縄で縛っていく笑顔の少女を。
「……。」
確かに怒られるのはちょっと怖いかもしれない、という言葉はこっそり飲み込んだ。
娘であるナミの困惑の視線の中に、慈愛というか慈しみというか。……触れてはいけない何かが混じってる気がする。
「(そうか…やはりナミに村の重みは耐えられなかったか…。すまない)」
余程辛かったのだろう、プレッシャーになりストレスで少し頭が可哀想になったのだろうと現実逃…思い込み、ほろりと涙が零れた。
「あの子は可愛いの」
「……そうか」
「そして強いの」
「……そうか、それでどうして怒ら」
「とっても可愛いの」
「………」
「ゲンさん…あたしが説明するよ」
「頼む」
切実な願いに、思わずノジコの頬が引き攣る。
「『お腹空いたからさっさと片付けろ、さもなければ説教+夕飯抜き』だって」
「私にはもうあの少女が分からない…ッ!」
思わず顔を両手で覆った。
我が娘を毒牙にかけ、船長と言われた男を言いくるめ、魚人を恐れず絶対関節痛いだろう縛り方をする少女が、実は人間じゃないと言われても違和感が無い様な気がしてきた。
……むしろそちらの方が正解な気がする。
「つ、続きを話すよ」
戦闘が始まりまず最初に動いたのはゾロと言われる剣士だ。魚人の中で剣士であるタコの魚人のはっちゃんだった。ちなみに『ハチ』と呼ばれるが一応『はっちゃん』が本名らしい。
「ちなみに瞬殺だった……」
「魚人だぞ!?」
「その後緑頭は雑魚退治に勤しんだわ」
「……我々が恐れていた魚人とは、一体」
こうも簡単に片付けられると、逆になんか悔しい。
ノジコはゲンゾウの様子を見て同意出来るのか肩に手を置いた。
「でもあの長鼻の男の子は最初変顔してたんだ…魚人のチュウ相手に」
「なんでだ!?」
ツッコミどころが満載過ぎてどこから捌けばいいのか全くわからなかった。
「意図は分かんないけど…結果は魚人が大激怒」
「だろうな」
「驚いた長っ鼻くんは転んで」
「怖いだろうな」
「その頭が偶然チュウの…弱点にごつーん、って…すっごい痛そうに悶えてた」
遠い目をして語るノジコ。弱点、ということはやはりあそこだろうか。それは絶対痛い。
「転機と見たのかハンマーで滅多打ちしてたわ」
「随分鬼の所業だな!?」
思ったより辛い対応に同情心が芽生え始める。積年の恨みも塵の如く飛び去ってしまいそうだ。
「その変顔を見てしまった女の子はツボに入ったみたいでね」
「……魚人がキレる変顔がツボに入るのか」
「その隙にクロオビに殴られちまってさ」
「なんと!?」
アーロンに正面切って喧嘩を売られた事。はっちゃんが瞬殺された事。そして変顔という始まりにも関わらずチュウが負けた事。全ての出来事が連続して起こり、忠誠心の強い格闘家のクロオビは我慢の限界だったらしい。
そして一番近くにいた少女を殴るというのだからそれはまさに鬼の所業。
ゲンゾウは少女がうすら怖いなどと思ってしまった事を少し反省した。
いくら何でも少女は少女。自分より一回りも二回りも幼い少女が人間より何倍もの力を持つ魚人相手に魚人空手などという攻撃を喰らえば流石にただでは済まないだろうと…──
ふと気付く。
「(じゃあ何故今ピンピンして魚人を縛っているんだ?)」
おかしい、これは自分の常識がおかしいのか?
「…………咄嗟に腕で防いだっぽいんだけど」
ノジコの続く言葉にゲンゾウは思考を変える。やはり普通の少女では無いか。
咄嗟にガード出来る反射神経には目をつぶり。
「そ、それでどうなった」
ノジコは語る。
『防いだか……よく反応したと褒めておこう』
『いだい…いだだだだだ…ッ!』
『だがモロに喰らえば腕は使い物にならない。そこにいる剣士と殺り合いたいのでな、さっさと潰させて貰おう〝魚人空手──』
『なれば無視して行くしろよ!』
──ゴッ!
『ぶフッ…!』
腕が使え無い少女は咄嗟に頭突きを御見舞したらしい。
「まて」
ゲンゾウは何度目かのストップをかける。
「ん?」
「え?待ってくれ、頭突き?今頭突きと言ったか?魚人空手の使い手相手に頭突きで勝利を収めたとでも言うのか?」
「あれは本当に驚いた…」
「驚いたで済むノジコも大概だな!そんな所は親に似んでもいい!」
しみじみと語る娘はどこか彼女の親であるベルメールを彷彿させる。みかんを育てれば誰しもがこうなるのだろうか、と思う。……もしそうならみかんの名産地であるこの島は終わりだ。
「ま、その後はこの通り。剣士くんは雑魚退治した後、アーロンパークの中入っていって食糧らしき物が入った袋と酒を持ってくるし。長っ鼻くんは見た目通り鼻高々としてたけど、我に返って怯え出すし。女の子は暴れないように渡しやすい様にって縛っていくし………渡すって引導かね」
「(常識的には『海軍』だと思うが『引導』の可能性が否定出来ないから黙っておこう)」
もはや普通の少女であるという思考はバッサリと切り捨てた。
この4人は異常過ぎて理解するのに困る。
「あとはアーロンを残す所なんだけど…」
未だに歯で遊んでいる男を見て、不安からかため息が漏れる。
「ルフィは、バギーを相手に出来るくらい強いけど…やっぱり
今まで黙っていたナミが視線をアーロン達から逸らさずに呟いた。
「ちょっと、アーロン達が可哀想になるくらい一方的だから信じてみようと思う。彼女が──リィンが信じるルフィを」
まず基準が少女なのか、という言葉はグッと飲み込んだ。
ココヤシ村の将来は明るい(確信)
戦闘簡略化制作。
ゾロ「とりあえず食糧手に入れてやったぜ」
ウソップ「く、ウソップ七不思議フェイス(変顔)で笑わせようと思ったのに失敗…その代わりハンマーでめちゃくちゃ殴った、怖い」
リィン「ウソップさんのせいで笑った…防いだ手がビリビリするから頭突きを御見舞してやったぜベイベー」
ゲンゾウ「なんだあいつら」