「海賊王が処刑された町ローグタウン」
「別名始まりと終わりの町」
「……行くでしょ?ルフィ」
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「俺が留守番か?」
「そーです」
町に行く準備をしながらそれぞれの役割を指示していく。本来こういう仕事はルフィだと思うのだけど、交渉兼参謀役に近い役割の私が代わりにしないといけない雰囲気。地味に困る。
本業も副業もしたいからなるべく必要ポジションは避けてたのに…、まァ目的である『私やルフィの安全確保』としてはやりやすいから迷いどころだけど。
「ここは支部が存在するです、だから海賊船がプカプカ浮く事自体非常に拙いのですよ」
「でもここ
「そこですよウソップさん。実はここ数ヶ月支部長が変更すたから海賊の出航率が0%に落ちるしてるのです」
「……俺はもうお前がどんな情報も持ってても驚かない自信があるぞ」
「つまり、
ウソップさんが荷物をまとめ、ナミさんも身支度をしながら私の言葉に追加させていく。
脅威を認識してくれるのは有難いけど一言言いたい。スモさん働きすぎじゃない?何がキミをそこまでさせてるの?
「米ももう切れるな…野菜と肉は絶対必要か…。ところでお金はどうするんだ?」
「一味共有資産からお願いすます」
「それって俺の武器にも使えるか?」
ゾロさんがマストに背をもたれて口にする。あー…そうか、ゾロさんはミホさんにボコボコにされて白い刀以外使えなく…というかバラバラにされたんだったな。ボコボコでバラバラとか踏んだり蹴ったり過ぎ。
うーん…武器は結構バカにならないし…。こんなんだったらクリーク海賊団から二本ふんだくるんだった。
「そうですね…、私が所持してる物でも構いませぬか?」
「……お前の?」
「無駄に多いのです。それに私自身、刀は使用不可能です故に」
真剣って重いから1分でギブアップ。
「剣士の魂を他人に預けるなよ」
「私は剣士じゃ無きですのでそれは通用しませぬ、要はアレです、ししょーが弟子にプレゼントすると思えば宜しきですよ」
「お前を師匠にした覚えは無い!」
叫んで傷が傷んだのか一瞬表情が強ばった。はしゃぐからこうなるんだよ全くもう。
「要りませぬか?1本はかの有名な剣帝の愛刀ですよ?」
「………剣帝の?」
キラ、と目が輝いた。
これは多分剣帝の持ち物と言うよりどうしてお前がそんな物を持っているのか、って感じの方だな、あわよくば倒してやろうと?いいぞドンドンやれ。
「三代鬼徹君です、妖刀故に使いにくいとは思うですが切れ味抜群の反抗期真っ盛りの子供ですよ」
「お前の言い方聞いたら刀が泣くぞ」
気の所為、アイテムボックスの中で何か悲鳴みたいにカタカタなってるのは気の所為。剣刀が意思を持ってるとか絶対有り得ない事なのです!幽霊とか魂とか死ねコノヤロー!
「はいどーぞ」
パン、と手を叩けば瞬時に出てくる鬼徹と同じくらいの長さと太さの無銘の刀、ゾロさんは一瞬驚いた顔をしたが、どこかから取り出すという事はもう知ってるの様で、すぐ表情を戻して2本を受け取った。
「感謝する、やっぱり3本無いと落ち着かねェからな」
手に合わせているのか新しい玩具を手に入れた子供の様に鬼徹を握るゾロさん。
私の心の中は やったー
「俺処刑台行くからな」
「ロジャーさんの?分かりますたよ」
「リーは?俺と一緒か?」
「ちょっと寄るところあるです」
「よるとこ?」
スモさんの所。とは言えないから別の理由をでっち上げる。
ついて行くとか言われない様にしないとな。
「ここは海賊王スポット。いくら支部あろうともマニアやファンの間では有名な場所です。処刑当日には今現在、様々な海で名をあげるしてる海賊が沢山来てますた」
「そうなのか?」
「そうぞ、だからファン専用の店があっても不思議では無い!だからそこで私は売りつけるぞ…ある有名な人物の土下座写真を…」
「リー!人の嫌がる事はするなよ!」
「無理です」
正確に言うとレイさんに土下座してるフェヒ爺inぼったくりBARの写真。
「それに
今まで私は必要としなかったから、個人の物なんて持って無いし、買わないとならない。
「じゃあリィン!私と…お姉ちゃんと一緒に服を買いに」
「さらば!」
着飾るのはそこまで嫌いじゃないがナミさんに恐怖を抱くので箒に乗ってさっさと逃げ出した私は悪くないと思う。
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裏路地に入ると周囲を確認してマントを被る。黒いマント=賞金首の堕天使になるから町では被らないが裏路地で姿を見られるくらいなら被っておいた方が良いだろう。
今の内にスモさんとコンタクトを取るか連絡を入れなければ……。
──ザッ…
「…!」
背後で足音が聞こえ思わず硬直する。足元が砂利だからこそ助かった、が。
…………どうしよう。逃げれるか?
「………女狐?」
「え……」
どうして私をその名で呼ぶのか、疑問が浮かんだ。私の名を知ってる人間は限られる。
振り返ると緑がかったマントの隙間から金色の髪が零れていた。
「…、サボ!さん?」
「………チッ、こんな所で海軍大将に会うとは俺も大分悪運に好かれてるらしい」
嫌そうに顔を歪めて近寄って来た。ほほう、嫌われてるのは分かっていたが絡まれるくらいには関係向上していたか………──
「久しぶりだな、
「お久しぶりです。ところでなんの情報が必要なのですか?……参謀総長さん」
──……なんては思って居ない。
記憶喪失のサボは自分に必要の無い事に興味を持たない要件人間。嫌われている私にわざわざ絡むほど参謀総長という仕事が暇では無いだろう。
「クソ、情報は回ってたか。やっぱり参謀総長になった事は知られていたみたいだな」
「1年ほど前ですよね。というか初めて会うした時から察してますた」
実はドラゴンさんが顔写真を撮っていいと言った時『近々参謀総長という人間が出来そうだし云々』と言う様に自分を隠す必要の無い事を言っていた。
新戦力であったサボが(記憶喪失の兄妹とか関係無しに)私の側に居た事は、私の監視を含め参謀総長を任すと決めたサボへのテスト代わりだったのかもしれない。
それを伝えると、サボは隠す気が全く無い舌打ちをした。
「たった少しのやり取りでそこまで至るか…最高戦力の名は伊達じゃないか」
いいえ伊達です。5歳くらいの時上からの命令で無理矢理なりました。
「私は知るしてるですからね、ドラゴンさんがトップである実力もサボさんの性格の1部も。そこに至るのは当然です」
「……」
「それに情報を選別出来ねば守りの大将として示されぬです」
「…その守りの対象は一体なんだろうな。どう考えてもお前の立場で考えると、俺たち革命軍と繋がりを持つのは不利になるだろう」
「私は自分の決めた物を守るのみです」
しばらく睨み合うとサボの張り詰めた空気が少し緩んだ。……気がするだけかもしれないが。
「アラバスタの情報を分けて欲しい」
「…………アラバスタのォ?」
「あァ…少し、気になってな」
恐らくだが革命軍は動いてると思う。ただ確実性を求める革命軍らしい。きっと多方面から情報を集めるんだろう。
「私は基礎的な情報しか持ちて無きぞ?」
「構わない、見返りは……。そうだな……」
「では情報で。この町にある情報屋の居場所と攻略法」
「……手を打とう」
随分と向こうに不利だが自分に利益があるのなら気にすまい。
アラバスタ王国は上下関係が随分温い国であり王家の人物も少ない。私が持ってる全ての情報は受け渡した。
「……七武海クロコダイル、か。やはりコイツを中心に調べていく方がいいか…」
「クロさんは現実主義者ですから敵に回ると厄介ですね、まァ覇気は昔のトラウマにより使用不可能ですが」
そういうとサボはこっちがビックリするくらい目を見開いた。
え、何、何に驚いた?
「お前クロコダイルと知り合いか!?」
「そっち!?」
覇気が使えないとかそんなのをガン無視して知り合いという観点に驚くか?
「ドフラミンゴに目をつけられクロコダイルとも知り合い…お前どうかしてるぞ」
「あー……否定不可能」
そう言えば一般的な認識では七武海は仲悪いんだったかな。だからドフラミンゴと繋がる=クロコダイルとも繋がるって流れにいかなかったわけか。……実際仲悪いどころか定期的に連絡を取り合うくらい仲良いんですけどね!
「くまさんから何も聞いて無きです?」
「は?どうしてお前がくまを知ってるんだ?」
「え…だって七武海定例会議では…」
「……俺たちが聞いてる話だとくまとやり取りしてる海軍側の奴は
「さらば!」
「まて」
即座に逃げようとしたが流石は革命軍幹部、腕を掴まれドンッと壁に追いやられた。あ、これ壁ドンってやつだ。リィン知ってる。
勘違いするなかれこの世の乙女達よ…壁に追いやられて顔が近いって普通に恐怖だ。腕が触れてドキドキ?ギリギリ言ってるだけの間違いだろ?
壁ドンとは逃亡手段を封じ、脅迫するだけの簡単な方法に過ぎない。
「はいかyesで答えろ女狐」
「サボさんそれ確実に質問では無き」
「
ここで素直に答えたら
だからといって、ここで嘘ついたら実力行使な気がする!
「……」
やばい、まずい、どうしよう。緊急性が伝わる三段拍子でお伝えしました。
「知ってるか女狐…人間の頭蓋骨くらい卵みてェに握り潰せるんだぜ?」
「分かるした、イエス、はいです、だから大人しく私の頭から手を離すしてくださいです」
………人間やっぱり素直が1番だよね!
「最初から言えばいいものを…報告はさせてもらうぞ」
「どーぞ、元より革命軍には協力すてるので協力者が増えるわけでは御座いませぬが」
「お前はどうして革命軍に肩入れする?海軍大将ともあろう人間が」
「気まぐれ☆」
「…………」
「ごめんなさいですだからその右手は納めるして下され!」
そんなに私が嫌いかちくしょう!
「ところで革命軍はどうしてこちらに?」
「あ?俺が知るか」
「何故知らぬぞ参謀総長!」
「……ドラゴンさんの独断だ」
渋々呟いた言葉に私は少し納得してしまった。流石モンキー一家、その周りを振り回す姿勢は素晴らしい。
「多分…だが。お前の船長の事だろ」
「…………せん、ちょ、う」
思わずギクッとなる。ルフィの父親=ドラゴンさんで、ルフィの兄妹=リィンだという方程式を忘れてないのは流石ですが、ルフィが船長=リィンはだーれだ。
「お前堕天使だろ?」
「あぁぁぁぁあ!堕天使殺す!絶対ぶち殺す!」
サボ達革命軍の中で女狐(又は子供の)リィン=堕天使リィンは成立してるようです。
堕天使お前ほんとにまじでふざけんなよ!?狭間で待ってろいずれ使者を送り込んでやる!!
私は行かんがな!
「お前その通り名になんの怨みがある…」
「魚人島より更に深きに渡る怨み!」
「付き合いきれねェ……」
そう言って呆れたサボは私に情報を渡して去っていった。
お兄ちゃん…昔の優しさカムバック。
切実に記憶を取り戻してほしい。
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「あれ?リィンちゃん?」
通りに出ると黄色の頭のぐる眉さんに声をかけられた。あ、この人サンジ様か。
「どうされましたサンジさん」
「いや、普通に可愛い姿を見かけたから声かけたんだ…用事は?」
「これから」
しまった…スモさん完璧忘れてた。
失敗だと思いながら撒けますようにと歩くが、サンジ様は確実に横をキープする。
「荷物持ちますよ」
「流石にプリンセスに持たせれないよ…渡すなら野郎共だ」
どうやら私の行くところまで付いてくるっぽいな。仕方ない、情報屋から先に回るか。
少し黒くなってきた空が行先を曇らしていた。
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「腹が減ったな…少しくらいなら船離れても大丈夫だろ」
今、迷子の魔獣が放たれた。
ローグタウンにドラゴンさんいるならサボもいるだろって事で楽しく(?)おしゃべりです。
ロロノア君は今日も楽しく思考も口調も行先も迷子。