2度目の人生はワンピースで   作:恋音

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第88話 アホに振り回されるのは常識人

「今日は()()()と一緒じゃないんだな」

「……邪魔です、退いてください」

「分かってねェなー、こっちは怨みを果たしに来たってのに」

 

 真昼間の人通りのある往来で1人の女に絡む男2人をゾロが見かけた。

 

「(…仕方ねぇな)」

 

 助っ人に、と思い腰の刀に手をかけるが女は予想外にも一瞬にして男達を斬ってみせた。

 

 

「(へぇ…なかなかやるな)」

 

「わ、と、と、お!」

 

 ガシャン、と音を立てて刀と共に女は転げて驚いたがゾロは足元に転がってきたメガネを拾い女に向かって差し出す。

 

「ほらよ」

「あ、ありがとうございます!」

 

 カッコイイぞ姉ちゃんー!やるじゃねぇか!と言った歓声をバックに聞きながらゾロは雷に打たれた衝撃を体験した。

 

「…?どうしました?」

 

 見上げる女に重なる。

 死んだ幼なじみと瓜二つだったのだ。

 

「あー!」

 

 すると女はいきなりゾロの腰に目をやった。

 

「これ、和道一文字と三代鬼徹ですよね!」

「は?」

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ私はこちらですので」

 

 用があるのは処刑台の広場の近くの道の隅に鎮座する人気のなさそうなさびれたラーメン屋。

 

「飯なら俺が作るのに」

「ご飯期待してるですよ、サンジさんの。幼少期不健康な食事事情ですたので幸せです。私は店長さん自身に用が存在するので」

 

 昼時も近いからお腹は空くけど偽物の食事処で食べるくらいならサンジ様の料理がたべたい。ただ申し訳ない気持ちになるけど。

 

「分かった」

 

 サンジ様に別れを告げて店に入ると中は外観と合っていて違和感なくラーメン屋だった。

 

「ほぉ、お客さんか。珍しい…いらっしゃい」

「こんにちは!五つの塩ラーメンを一つお願いすます」

「五つの塩ね、あいよ。こちらにお掛け下さい」

 

 合言葉『五つの塩ラーメン』

 ちょっとかっこ悪いけどよくよく考えて見れば北西南東の海と偉大なる航路(グランドライン)を合わせれば五つ。

 ……世界政府に相対すると思っても過言じゃないだろう。

 

「店長のバンだ」

「……リィンです」

 

 どう名乗ろうか迷ったが無難に名前だけでも良いだろう。

 

「へぇ」

 

 バンさんは私を見てニヤリと笑い黒い髪に白いタオルを頭に巻いた。

 

「さて、と。ご要件は」

 

 注文はしたのに、と不思議な感覚になるが今のバンさんはラーメン屋の店長じゃない。情報屋の顔だ。

 

 サボに教えられた情報屋、得られる物を得られるだろ。随分実力もあるみたいだ、筋肉質め。

 

「情報を売りに」

 

 一言言うとバンさんは一瞬ポカンとなると大笑いをしだした。

 

「ギャハハハッ!ま、まさか情報屋に情報を売りに来やがるとは…!フ、ハハハッ!……気に入ったぜ、嬢ちゃん」

 

 先程のピリピリした警戒心が一気に四散して陽気な雰囲気に変わった。

 あ〜ら、こっちが素なのね。

 

「やだなー、これでも世界相手に根を張り巡るさせる幸せの小鳥ですのにー!」

「……!ふぅ〜ん…その歳で随分やるな。悪魔の実か?」

「とりあえず歳は止まってなきと言うですか」

 

 悪魔の実の能力者でも実によって成長が止まったりするもんねー…、ドフィさん所のホビホビちゃんみたいに。

 

「今日は面白い客が連続で来るもんだ」

「…あァ革命軍ですか」

「ヘェ〜、知ってんのか」

 

 バンさんはそれで?と視線で訴えて来た。

 

「こちらで情報の価値を決めよう」

「その革命軍のトップについての情報」

「……なるほどなァ」

 

 つまらない腹の探り合いは話が進まないだけだからさっさと進めちまおう。

 

「ドラゴンさんの親は英雄」

「んなぁ!?あのボケカスか!?」

「……………ジジイ何しやがった」

 

 思わず世界中の胃痛の種を怨めしく思う。

 

「そ〜かそれで革命軍か…ドラゴンも大変だな………」

 

 良かったね革命軍。何か知らんが同情を集めてバンさんは親身になってくれるよ。あと勝手に情報売ってごめんね、私、自分の為なら口はいくらでも軽く出来るんだ。仁義?知らんな。

 

「後、ほかに、は……子供?」

「ホー、アイツ子供いるのか」

「モンキー・D・ルフィです」

「…………………ヘェ」

 

 バンさんの目が怪しげに細められた。

 

「おたくの船長か」

「…やはりご存知ですたか」

 

 名前で聞いて反応した辺り気付いてるとは思ったがその通りだったか。

 

「じゃあ俺の望む情報をくれりゃお嬢ちゃんの望む全てに対応しよう。金額も言い値で買う」

「……随分と欲する情報ですね」

「まーな…お前の船長が海賊王関連で関わる情報を全て喋れ」

 

 殺気に似た威圧感と共に言葉が発せられた。

 

「なるほど、その結果に至るたのは帽子ですか」

「当たりか…」

 

 ポツリと零れた言葉は、敢えて聞こえていない振りをする。

 

「シャンクスさんですよ、見習いだったというシャンクスさんから受け取るました。それと剣帝にお世話になった」

「他は?」

「…………信頼出来ぬので無理です」

 

 流石にエースの事は言えない。隠された存在だから。

 もしも『海賊王関連の子供』の情報を言うなら、政府にもバレてる私の存在を伝えた方がリスクが少ない。

 

「そうかよ……」

 

 うーん…バンさんの対応にどっか既視感を覚える。……あァ、私の父親冥王レイさんか。

 

「一か八か。ルフィには兄妹が居るですよ」

「兄妹だァ?」

「革命軍の幹部と」

「……他にもいるんだな」

 

 興味が無いのか、軽く流される様に呟かれる。

 

「海賊王の子供と冥王の子供」

 

「っはぁぁぁぁぁあ!?」

「しー!しー!」

 

 慌てたがバンさんは一瞬で正気を取り戻した。怖い、この人の感情の浮き沈みが子供並で怖い!

 

「くそ…、やっぱり火拳か…!あーー、ちくしょう。こっちに寄った時一目見とくんだった…」

 

 海賊王に子供がいるという事でポートガスまで辿り着くか…。大体察してたって所だろう。

 ……なるほどこの人海賊王ファンか。

 

「にしても冥王の子供って?」

「知らぬですか?ここ2年ほどで存在が確定されますたよ。冥王本人にも海軍上層部にも」

「マジかよ……戦神か」

 

 ドカッ、と座り込んでバンさんは頭を押さえた。分かる、頭痛くなるよね、この組み合わせ。

 

「革命軍の幹部も大物とか言わないよな?」

「先程会ったであろう癖に」

「………参謀総長か…ッ!なんだそれ…!」

 

「そういえば…先程()()()はどのような事を聞いたのですか?」

 

「ん?アラバスタの事と海軍の女狐の情報を……───待てよ、今何つった?」

 

 顧客情報を簡単に漏らすバンさん楽勝。精神的にやられてる状況だからこそ聞かれても気付かなかったんだろう。

 それに追加してトドメを刺す。

 

「私、の兄?」

 

 『革命軍の幹部と兄妹の冥王の子供』と『革命軍の幹部を兄に持つ』が一致したのか、サーッと顔を青くするバンさん。ちなみに私はもちろんドヤ顔。

 

「お、お前かぁぁああ!」

「ハーッハッハー! さぁて、そちらの求む情報は提示すたですよ、私が欲する物を叶えて貰いますか」

「おう、だけどちょっと待て事態が追いつかん。そうか、ありがちな名前だが『リィン』か……嫌な予感って当たるんだな。ちょっと頼む待ってくれ」

「無理です嫌ですこれから海軍にも用があるですから時間無きです。私が求むは貴方の持つ永久指針(エターナルポース)1式と記録指針(ログポース)ください」

「……まさか永久指針(エターナルポース)は俺が持ってる全種か?」

「全種」

「一つしか無くても?」

「全種」

 

 間髪入れずに望みを言えばバンさんはガクリと肩を落としつつも袋に指針を入れ始めた。

 

 

 

 

 

「それではご馳走様でした」

 

 『とてもいい貰い物をありがとう』という意味を込めて言うとその意味を正しく理解したのかバンさんは顔をひきつらせた。

 

「おう、まいどあり…」

 

 流石にちょっと可哀想なので写真を置いて行こう。

 

 

──カラン…

 

 外に出ると空気を思いっきり吸い込んだ。

 

『ギャーッハッハッハッハ!おま、これ…く…!ハハハハッ!』

 

 『剣帝、冥王に土下座するinぼったくりBAR』の写真を見てるであろうバンさんの笑い声を聞きながら。うん、自分良くやった。

 

「おかえりリィンちゃん」

「!?」

 

 正面を向くと反対の柱でサンジ様がもたれていた。

 ま、マジか……まだ居たの?王族待たせたとか辛い。先に行っててくれた方がありがたいのに。

 

「荷物持つよ」

「……疑問に思わぬのですか?」

「んー?食べるための店で取り出してきた物?」

「まァそうですね」

「疑問には思うけど『最高の結果』を求めるリィンちゃんが俺たちの不利になることはしないと思ってるから」

 

 荷物を持たせる事は絶対にしたくないので無理矢理話題を変える。変えたはいいがサンジ様の答えに唸りそうになったが、とりあえず押さえた。うーん…勘違いしてる様ですけど私が望む『最高の結果』は自分の安全なので仲間優先じゃないんですよね、それに私仲間(仮)(スパイ)だし。

 

「さてと、もうそろそろルフィ回収しとくか」

「処刑台この近くですたよね…賞金首の自覚あるのですかねアレ」

「無いだろ」

「……」

 

 否定できずに思わず口を閉じてしまった。

 

 

 

 

 ==========

 

 

 

 

 

「もぉおおお!嫌だぁぁぁあ!」

 

 思わず頭を抱え込む。

 

「お、落ち着いてリィン!」

 

 広場でたまたま偶然合流したナミさんウソップさんつまり我ら一味のクルー。…何故ゾロさんまでいるのかは置いておき。

 

「あァァァァア!ルフィ何故、何故処刑されかけですか!?何故目立つのですぞ!?ここ誰の管轄かご存知でぇぇ──っっっ!?」

 

 な、ぜ、か、バギーさんに処刑されかけているルフィがいる。

 周りは気付かれない程度かもしれないが海兵に囲まれてるっぽいし、なんかアルビノだかアルヒダだか分からんがナイスバディの女の人も同盟組んでるみたいだし。もうマジで!本気で!やめてください!

 

「きいてリィン!もう少しで嵐が来る。結構大きいから私とウソップとゾロは船に戻るわね」

「それで私達がルフィを回収しろと!?」

「任せたわ!」

 

 いざって時は私を盾にするナミさんの心意気が潔すぎて泣きそう。まァ適材適所なのかも知れないけどさ!

 

「俺も残る、戦力はあった方がいいだ」

「「黙ってろ怪我人!」」

「な…っ!」

 

 ゾロさんがウソップさんとナミさんの同時反撃に表情を歪める。

 

「じゃあ言っとくがこいつらだけでアレをどうにか出来ると思ってんのか!」

「あぁもう分かりますたから!ナミさんウソップさん先に戻るして下さい!」

 

 ゾロさんはイザとなったら囮に使おう。

 

 私が言うとウソップさん達は慌てて船に戻って走った。

 ゴロゴロと雷鳴が響く。ピリピリと空気が張り詰める。叫び声が所々で生み出される。

 

「──ふざけるするなバギーさんよォ」

 

 私の声は思ったより低かった。

 

 

 バンバンバンバン拳銃打ち鳴らしてスモさんとの再会も楽しめずにさぁ。あーもう計画をごちゃごちゃしてくれるじゃないか…!

 

「う、おぉ?」

「リィンちゃん?」

 

 私に怨まれれば冥王からの報復が待ってると分かってでの采配か……?ほほういい度胸だな。

 

「バギーさん…いやバギー…!」

 

 バリバリと空気が震える。

 

 私は処刑台に向かってゆっくり歩き出した。お前如きの為に飛んでやる気は無い…!

 

「……赤っ鼻────っっっ!」

 

 大声で叫べば全員の注目を集めた。

 

「なァ…ッ!おまえ…お前名前なんだ!」

「そこからかよ!そこからかよ!」

 

 大事な事なので二回言いました。

 

「覚悟はお済みで………?」

「……何するつもりだ」

「降下し、」

 

 とりあえずそこから降りてこいと言うつもりだった。

 

───バリィィィイイイッ!

 

「………ろ?」

 

 言い切る前に雷がバギーとルフィの所に落ちてこなければ。

 

「「何やってんだァァァ!」」

 

 驚いてちょっとチビりかけたけど勘違いしないでほしい。私まだ何もやって無い。

 

「なははっ、生きてた」

「あ、そうかゴムか」

「リーサンキューな!」

「うん、何もして無き」

 

 よっ、と駆け出して来たルフィがお礼を言うけど私何もしてない。

 

「謙遜するなよリィンちゃん」

「私雷は詳しく無きで…」

「良くやった」

「ゾロさん信じて私何もしてな…」

「待てや麦わらぁぁぁ!」

「ひいいっ!生きるしてた!?」

 

 バギー執拗い!アレだ、黒くて口に出すのも躊躇われる台所に生息する奴らみたい!その生命力は褒めるよ!

 

「よし、逃げるぞお前ら!」

 

 ルフィの一言で3人は走り出した。私?もちろん船まで全力で走る=男3人に付いて行く体力無いから飛んでる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ロロノア・ゾロ!」

 

 雨の中佇む1人の女剣士がゾロさんの名を呼んだ。

 

「あなたが海賊狩りだったのですね…!」

「パクリ女…お前海兵だったのか!」

「な…!誰がパクリ女ですか!」

 

 すると女の人は刀を抜いてゾロに向かって走り出した。

 

「銘刀和道一文字及び三代鬼徹、回収致します」

 

 ………どうでもいいけど鬼徹って銘刀だったのね。そこまでレアじゃないと思ってたのに!

 

「おいマリモお前怪我人だろ!」

「怪我人だろうが売られた喧嘩は買うのが主義だ!」

「ンの喧嘩馬鹿…!」

 

 サンジ様が思わず呟く。そうか普段のゾロさんなら任せてもいいけどあれだけの大怪我、普通動けない。つーか動いたら悪化する。

 

「わ、私が残るです!2人とも早く!」

 

 ゾロさん1人で置いて行ったらきっと迷子。いや、絶対迷子になるな、こいつ。

 

「貴方も海賊の仲間ですか…」

「否定」

「否定すんなこのアホ!」

 

 チッ、ゾロさんを売って生き延びようという手は使えないか。というかこの先にスモさんがいる気しかしないから正直ちょっと怖い。あからさまな海賊視点で色々やった後だから頭に1発きそう。……全てはバギーのせいだ。今度会ったら絶対9分の8殺してやる。

 

「っく!」

 

 打ち合ってるゾロさんの胸から血が溢れる。

 2日3日程度で完璧に塞がるわけ無いよね。

 

 それでもゾロさんは力任せに刀を弾くと女の人の顔の横に刀を突き刺した。

 

「……なぜ殺さない…ッ!」

「………」

「私が女だからですか!いつもそうです、私だって一人の剣士…、男の人にそんな気持ち分かりませんよね!女だからと戦力に扱われないこの悔しさが!」

 

 ごめん女である私にも分かんない。

 

「お前のすべてが気に食わん!」

「はぁ!?」

「しまいにゃアイツと同じ事ばっかり言いやがって…!」

 

「 ラ ブ 、 コ メ 、 反 、対 ! 」

 

 ゾロさんの後ろ襟を掴んで思いっきり引っ張った。

 こっちは雨で寒いんじゃい、長々とラブコメのフラグを建設すんなちくしょう。

 

「海兵さん名前は?」

「……………たしぎ、です」

「………わァ…」

 

 思わず遠い目になる。

 この人スモさんの懐刀じゃん…。

 

「女だから。その気持ちはギリギリ分かるます。骨格からすて筋力も何もかも違う故、様々な所で不利です。しかしながら、最高戦力には女の人がいるですよね?」

「…っ!」

「女だからと自分を貶す貴方を必要とする人は上司はいますよね?」

 

 昔はヒナさんがたしぎさん欲しいっ言ってたしスモさんも反抗してやらんって言ってたし。

 自分の価値を過小評価し過ぎじゃない?

 

「さて、ゾロさん行くですよ」

 

 そのまま箒に服を引っ掛けて飛んでやった。ぎゃあぎゃあ騒いでたけど私は聞こえん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その場に行くと正直かなり混乱した。

 

 ルフィを踏みつけるスモさん。そんな彼を蹴り飛ばそうとしたはいいが片足掴まれるサンジ様。そんなスモさんの後ろにいる緑がかったマントの刺青マン。

 

 ………おい何海兵の前に出てきてんだ革命軍のトップ。そしてルフィの父親のドラゴンさん。

 

「……チッ、ドラゴンに引き続き…。次はテメェか、お前、堕天使だな?」

「く、ううぅっ!否定したき!堕天使は嫌だぁぁぁあ!」

 

 初対面のフリをしてくれてるのか、そんな事をガン無視して思わず膝をついて肩を落とした私を責めないでほしい。何が好きでこんな名前!

 

「いい加減にしろぞくそ野郎共!」

 

 

 

 

 心からの叫び声を発した。

 人の夢って儚いんだな……………。




ローグタウンに隠れて1人くらい記録指針売ってる人いるだろって事で『バン』さん登場です。…ちなみにオリキャラではございませんが、特に深く関わる事は無いので気付かなければそれでいいと思っています。

ちなみに雷が落ちた瞬間は周囲に『雷を操った…だと…!? 世界の災害をも操る奴なのか…!?』ってザワザワされてます。後に誤解を正しく広めますがとりあえず追記というか形で。

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