艦隊これくしょん 〜第0艦隊、参ります!〜 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
こんごうが目覚める。見覚えの無い部屋に、テーブルが大量に並んでいる。そして自分自身はテーブルに伏せて寝ていた。
テーブルの上には、大量の瓶やグラス、とっくりが散らかっている。そして、やたらと酒臭かった。
こんごうは、鈍痛のする頭を振り、昨夜の事を思い出す。
(そうだ、昨夜は『新入り歓迎会』で呑まされたんだった)
テーブルに、色々と倒れている。高雄はビール瓶を抱き締めて「てぇとくぅ……」と呟いている。
「起きました?」
話しかけられ、振り返ると見知らぬ女性がカウンターにいる。
「あなたは……?」
「伊良湖と言います。ここの厨房を任されています」
「間宮さんは?」
「間宮さんはここの責任者って事になっているんですけど、実際には私と鳳翔さんとで順番に」
「なるほど。でも、鳳翔さんは第11航空戦隊の旗艦では?」
「ええ」
「……大変ですね」
こんごうが立ち上がり、そしてテーブルの上を片付け始める。
「いいですよ、そんな」
「いえ、せめてこれぐらいはしないと」
そう言って、こんごうは空き瓶やグラスをどかす。すると、伊良湖が空き瓶を片す。
「私がこれをやるので、こんごうさんは皆さんを起こしてもらえますか?」
「分かりました」
こんごうは返事をし、寝ている皆を起こす。
まずは妹のきりしまを起こす。
「起きろ寝坊助! この2本テール!」
こんごうがきりしまの右脛を蹴る。ガツンという音と共に、きりしまが跳ね起きた。
「痛ったーい!」
きりしまが右足を押さえながらぴょんぴょん跳ね回り、こんごうに文句を言う。
「寝ている妹の泣き所蹴るなんて! 鬼! 地獄姉! 暴力ださポニーテール! はるなさんの20mmを喰らってしまえ!」
なので、こんごうはきりしまの左脛を蹴った。
「あぎゃぁぁ!」
両足を押さえるきりしまが、琉球言葉らしき悲鳴を上げ、床をのた打ちまわる。
「そんな元気あるんだったら、さっさと起きろ2本テール」
「酷い……DVだ……」
するとそこへ、ニミッツがやってきた。
「おはよぉ、こんごうちゃん」
「ニミッツさん」
「朝起きたら、屋根で縛られてたんだけど、昨夜何があったの?」
「さぁ?」
こんごうはさらっとニミッツの質問を流し、他のメンバーを起こす。
ある島に、6人の少女がいた。服も艤装もバラバラだった。
「ったく、何でデータリンクやGPSが使えねぇんだよ。ひゅうがさんとはぐれちまうし、しかもアメ公と露助が一緒だしよ」
長い金髪の少女が悪態をつく。それには、赤髪サイドボニーの少女が反応した。
「こっちだって同感だ。ヤポンスキーと一緒にいたくない」
「じゃあ出てけよ」
「お前がな」
長い金髪の少女が、咄嗟に右手の127mm単装速射砲MK45 mod4を赤髪サイドボニーの少女に突き付ける。赤髪サイドボニーの少女も、130mm連装速射砲AK-130を長い金髪の少女に向ける。
「やんのか?」
「先に武力行使したら、憲法違反じゃないの?」
「『緊急時の正当防衛』だ、文句あっかコラ!」
まさに、一触即発の事態だった。
食堂で寝ていた皆を起こし、朝食を済ませたこんごう達10人は執務室に呼ばれていた。
「さて、昨日の無断出撃の件だ。昨日言った通り、普通なら謹慎だ。だけど、ある条件を出したよね?」
提督が、そう言った。こんごうが答える。
「『選抜部隊に勝利出来れば、チャラにする』と」
「だいたいそんな感じだ。その選抜部隊との演習は明日だ。よって、今日は挨拶廻りを兼ねた『待機』をしてもらう。返事は?」
提督の問い掛けに、アドミラル56・こんごう・きりしま・ぐんじょう・あさぎ・きりさめ・ありあけ・ひゅうが・ニミッツ・ピョートルは敬礼した。
『了解』
『Yes, sir.』
「Да.」
そして、彼女達は案内役の翔鶴に連れられて談話室へと入った。
「こちらにいるのが、明日の演習で相手をする選抜部隊の皆さんです」
翔鶴がそう言う。そこには、かなりの人数がいた。
①空母 加賀、赤城、瑞鶴、祥鳳、瑞鳳、蒼龍、飛龍
②戦艦 大和、金剛、長門、日向、アイオワ、ビスマルク
③重巡洋艦 那智、足柄、高雄、摩耶
④軽巡洋艦 天龍、神通、川内
⑤駆逐艦 暁、雷、電、響、雪風、天津風、時津風、初風、村雨、夕立、時雨、島風
⑥潜水艦 伊8、伊19、伊58、伊168
簡単にまとめるとこんな感じ。
「無理ゲーだこれ!」
「Oh my god……」
「無茶よ」
きりしま、ニミッツ、ピョートルがぼやく。いくら何でも、戦力が違いすぎる。
ふと、こんごうがアドミラル56に話し掛けてみると、
「イソロクさ――」
「……夫です大丈夫です大丈夫です大丈夫です大丈……」
壊れていた。
その頃――
「帰ってきた」
銀髪ポニーテールの少女が、右腕の飛行甲板を水平にする。アングルドデッキと呼ばれる着艦エリア目掛け、双発・双垂直尾翼の艦上戦闘機Su-33 シーフランカーのアレスターがアレスティングワイヤー(着艦制動索)に引っ掛かって制止した。すぐに主翼と水平尾翼を上に折り畳み、エレベーターへ向かう。
すると、金髪ロングの少女が彼女につかみかかった。
「あんた! 食料(燃料)が欠乏してんのに何で艦載機飛ばしてんだ!? あたしらを飢え死にさせる気か!?」
「だって、空中哨戒に出しとかないと、襲撃に気付けないじゃないですか〜」
「あたしとミズーリさんのSPY-1使う方が経済的だ! ただでさえ食料が欠乏してんのに、艦載機を飛ばすとは余裕だな!?」
「じゃあ、Ka-31の方がいい?」
「馬鹿! 早期警戒ヘリなんて飛ばしてどうする!?」
すると、金髪ロングをピンク髪天然パーマの少女が止めた。
「まあまあ。私が代わりにAV-8とF-35を飛ばせばいいんだろ?」
「余計に燃料喰うわ!」
自己紹介を済ませたアドミラル56達(希望によって、南雲機動艦隊と呼ばれるようになった)は、明日の演習のために、第2仮眠室にて艤装の確認を行っていた。
「すごいですよねぇ、実弾で演習出来るんですから」
ひゅうがが、左腕に装着するMK41 VLSにキャニスター(ミサイル梱包パック)を差し込みながら言った。
「実戦を簡単に経験出来ますからね。今まではコンピューター上での演習しか出来なかったのに」
こんごうが、いざという時に使うと言う9mm拳銃 2型(SIG P226のライセンス生産品)と89式5.56mm小銃の弾倉に弾を込めながら応えた。
この第2仮眠室は、主に演習終わりの休憩や遠征組の仮眠で使われる。時たま酒豪達が勝手に使う事もあるが。ざっと30人で宴会を行えるほど広い畳張りの部屋だ。
部屋の中で、既にF-14D スーパートムキャット、F/A-18F スーパーホーネット、F/A-27Cが模擬空戦をしている。その下で、これから死闘に向かうような面持ちで装備を弄るニミッツとピョートルの姿があった。
「ナチ野郎め、ぶっ殺してやる」
「ゲルマン民族め、『人間以下』と呼んだ事を後悔させてやる。スターリンの名に掛けて……!」
ピョートルが、RPG-7対戦車ロケット発射器を仕舞う。
「結構な気合いの入りようね」
「まあ、お国柄かな……?」
ヘリ格納庫に97式魚雷を積み込むきりさめと、20mmCIWSに20mm高速徹甲弾を込めるきりしまが言った。
一方、談話室――
「では、明日のための会議です」
「何で加賀さんが仕切ってるの」
「不満でも? 『5』航戦」
黒板の前に立った加賀が、瑞鶴を黙らせた。瑞鶴はそっぽを向いて舌打ちをする。
「さて、今まで――と言ってもたった2日足らずですが――の調べから、恐らく彼女達は弱いと思われます」
加賀が言い切る。すると、長門が手を上げた。
「根拠は?」
「千歳さんが、きりしまが『装甲は無い』と言っているのを聞いています。それに、昨日ニミッツが戦闘機の機銃だけで小破したと」
「駆逐艦より弱いっぽい!?」
夕立が立ち上がった。加賀は素早く夕立を睨み付け、席に座らせる。
「不明なのは、ピョートル・ペリーキ――」
「ヴェリーキイ。『ピョートル大帝』という意味」
加賀の言い間違いに、響が訂正を加えた。加賀は咳払いし、続ける。
「ピョートルの装甲は一切分かりませんが、彼女の容姿から――」
「彼女、『巡洋戦艦ではなく重巡洋艦だ』って言ってたわ」
足柄が口を挟む。那智と金剛が頷く。それには、加賀が衝撃を受ける。
「という事は、装甲は全員無い……?」
「つまり、手応えは無いという事か。残念だ」
日向と長門が落ち込む。強い相手を期待していたらしい。
「でも、ル級を一撃必殺したっぽい!」
夕立がそう言うと、瑞鶴が言い返した。
「確かアドミラル56の艦上機でしょ?」
ここで、加賀が手を叩いた。
「なので、これから作戦を言います。一度しか言いませんよ」