艦隊これくしょん 〜第0艦隊、参ります!〜 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
「船団護衛に付き合わせてごめんなさいね」
「いえいえ。皆さんのお役に立てれて光栄です」
ひゅうががSH-60K シーホークを発艦させながら応える。
今、彼女達は船団護衛に出ていた。4隻のタンカーが輪形陣を作り、それを5人の駆逐艦――村雨、時雨、夕立、春雨、五月雨――、そしてひゅうがが囲んでいた。
「対潜戦闘の出来る空母は便利っぽい!」
夕立の一言に、ひゅうがが傷付く。
「……私は空母じゃない、ヘリ搭載護衛艦、そう、DDHよ、CVじゃない……」
「何か機雷踏んだっぽい!?」
「機雷を踏むって……?」
どんよりオーラを生み出すひゅうがの肩を、時雨が叩く。
「気にしないで。夕立はちょっと物言いが遠慮無いからさ」
「……私は空母じゃない、護衛艦……」
南雲機動艦隊がこの鎮守府に来て、1週間が経った。
「何あれ……?」
「さぁ……」
瑞鶴と飛龍がひそひそと話す。食堂の端の席で、ピョートルが響を膝に乗せていた。同じ銀髪のため、傍目から親子に見えてしまう。
「同じロシア属性ね」
「おそロシア」
きりさめとありあけがさも当然と言った。
「響が食べられちゃう!」
「なのです!」
「いや、それは無いっしょ」
暁達の心配に、鈴谷が冷静に言う。
ここしばらく、深海棲艦の動きは沈静化していた。
「腹減った……」
「ひもじい……」
「Yes, we can……」
「その人の時代は終わったよ……」
「オバマは永遠なり……」
「駄目だこの人……」
無人島にて、6人が砂浜に倒れていた。金髪ツインテールがうわごとを言う中、何かの電波をキャッチした。
「お、ESM(電子戦支援システム)に反応だよ」
「だから……? その辺のタンカー襲おうよ……」
「おいヤポンスキー……」
「通信だね。『こちら802護衛戦隊。貴部隊を目視で確認せたり』」
「『こちら802護衛戦隊。貴部隊を目視で確認せたり』。アメリカの護衛戦隊です!」
「やった、任務完了よ!」
春雨の報告に、村雨が喜ぶ。ひゅうがが飛ばしたSH-60K シーホークが対水上レーダーで捕捉、IFFを確認する。
「IFF確認。間違いありません!」
村雨が頷き、周囲を警戒する。対空電探に反応があったが、空中哨戒のF6F ヘルキャット艦上戦闘機と対潜哨戒のTBM アヴェンジャー艦上攻撃機だった。
やがて、アメリカの護衛戦隊に近付く。そこそこ立派な体つき、くすんだ短めの金髪が激務を語る、アメリカの護衛空母ガムビアベイを中心とする船団護衛戦隊だった。
「第802護衛戦隊旗艦のガムビアベイです。船団護衛、お疲れ様でした」
「日本海軍 第2駆逐隊です。後は任せましたよ」
「任されました!」
ガムビアベイ達と村雨達が敬礼を交わし、お互い離れていく。
「あとは鎮守府に帰って報告するだけ。けど、対潜・対空警戒は継続よ」
『了解!』
村雨の指示で、戦隊は警戒態勢を継続する。
「そういえば、ひゅうがさんってだいぶ変わった艦上機を搭載してますよね」
春雨が言い、ひゅうがが反応する。
「ヘリコプターですよ」
「へりこぷたー? オートジャイロとは違うんですか?」
「オートジャイロは、回転翼によって揚力を補助しますが、ヘリコプターは回転翼を回して揚力を得るため、空中でホバリング、宙に浮かぶ事が出来るんです」
『ほぇ〜』
「ちなみに、何機積んでいるのかな?」
「全部で11機です。対潜哨戒用のSH-60K、機雷掃海・輸送用のMCH-101、対地攻撃用のAH-64D、観測・偵察用のOH-1を」
「なるほど」
その頃、ニミッツとアドミラル56は――
「This is Admiral, Eagle01, start of landing approch.」
〔Roger, Eagle01.〕
F/A-27Cがランディングギアとアレスターを降ろし、フラップを下げる。アドミラル56は左腕を水平に保つ。F/A-27Cはエンジン出力を落とし、エルロンを使って高度を下げる。
そして、F/A-27Cのアレスターが3番アレスティングワイヤーを捕らえる。着艦制動装置がアレスティングワイヤーを巻き、F/A-27Cを止める。F/A-27Cはアレスターを上げ、エレベーターへ移動、格納庫に仕舞われる。
今、彼女達は艦載機の発着艦訓練を行っていた。周りには事故の時のためにMH-60S シーホークやMH-53E シードラゴンが飛び、ぐんじょうとあさぎが周囲を警戒する。
「ごめんね、こんな訓練に付き合わせちゃって」
ニミッツが言う。すると、ぐんじょうが返した。
「いえ、構いませんわ。私達の戦力のためですもの」
「ふふっ、ありがとう」
ニミッツが微笑む。
「これは一体……?」
「仲直りの印デース!」
こんごうがたじろぐ。何せ、いきなりお茶会に呼ばれ、来てみたら金剛と大和と長門と陸奥と伊勢と日向がいるのだ。
「何故戦艦ばかり……」
「『Battleship Tea Party』、略してBTPだ」
こんごうの呟きに、長門が自信満々に言う。何だか略語が指示薬みたいだが。
「本来は戦艦だけだが、お前は特別だ。何せ金剛と1対1で殴り合ったからな」
「…………」
こんごうは押し黙る。排水量3万t越えしかいない中に、いきなり7250t(基準。満載だと9000は行く)である。その威圧感でこんごうは精神的に痛みつけられる。
「どうした? 何も遠慮する事は無いぞ?」
「いえ、その……」
長門が詰め寄る。こんごうはゆっくり後ずさるが、長門は近付く。
「こらこら。こんごうちゃんが怯えてるでしょ?」
陸奥が長門の頭をはたく。
「陸奥! 私はただ親睦を深めようと――」
「それで新任の駆逐艦を何人びびらせたと思っているのよ。ごめんねこんごうちゃん、長門は駆逐艦が大好きなの」
「……あー、ロリコ――」
「犯罪者じゃない! 私は犯罪者じゃないからな!」
「長門、ちょっと黙ろうか」
陸奥によって長門が強制退場させられる。
「何だったんだ……?」
こんごうが呟く。すると、日向が言った。
「気にするな。あいつはいつもああだ。ところで――」
こんごうが気付いた時には、肩を日向にがっしり掴まれていた。
「あのひゅうがは一体何なんだ? 私と同じ名前で、何だか空母みたいだが」
「ごめんなさい、たぶん違う世界です」
『違う世界?』
皆が首を傾げる。
「ええ。私達第1機動艦隊とひゅうがさん、ニミッツさん、ピョートルさんは違う世界からやってきたと思われます」
第2駆逐隊とひゅうがは鎮守府へ向かう。すると――
「待ってください! 右舷、ESMに反応!」
ひゅうがが叫ぶ。
「通信です!」
「聞こえました!」
春雨も叫ぶ。そして2人は目を閉じ、聞く事に集中する。
「これは……モールス信号です。『SOS』を繰り返しています」
村雨は判断した。
「戦隊、面舵! 全周囲警戒!」
『了解!』
「なぁ……」
「何だヤポンスキー……」
「助け、来ると思うか……?」
「来ても燃料をくれるとは限らない」
『あぁぁぁ……』
やがて、第2駆逐隊は無人島を捉えた。
「あの島です」
ひゅうがが指差す。村雨は頷き、12.7cm砲を構える。ひゅうがが警戒のために、OH-1 ニンジャとAH-64D アパッチロングボウを飛ばす。
「SPY-1に感あり……」
「私のFCS-3Aにも映ったよ……」
「待って。IFFに反応。友軍?」
「よっしゃ私の出番だね!」
「ロシアが出てきてどうする。ここは私のF-35Bの出番だ!」
さっきまで倒れていた金髪ツインテールが起き上がり、左腕の飛行甲板を水平にした。
そして、2機のF-35B ライトニングⅡが発艦した。
AH-64D アパッチロングボウのロングボウ対地レーダーに何かが映る。
「IFF照合。何てこった、友軍機だ」
アパッチ・ガナー妖精が言う。アパッチ・パイロット妖精は頷き、警戒する。
そしてすれ違った。