艦隊これくしょん 〜第0艦隊、参ります!〜 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
翌日、艤装準備室にて――
「いくら何でも、戦艦相手にこれだけではね〜」
「私、お役に立てる気がしません……」
アドミラル・クズネツォフとひゅうががそう口にした。ミズーリは16インチ三連装砲やMK41 VLS、飛行甲板を身に付けながら応える。
「大丈夫だ、現代艦の方が強い事を証明してやる」
そして3人は、艤装準備室を出た。
「また演習?」
「新入りさん達の戦力評価を兼ねて、だとか」
「だったらモスクワとかあたごとか入っているでしょ? この組み合わせ、絶対日向の興味ね」
「でも、ちょうどいい演習ですよ。大規模作戦を前に、皆の鬱憤晴らしになりますから」
「無駄な弾薬や燃料を使われるのよ。それでいいの?」
大淀と加賀が話す。その視線の先には、演習海域を映したレーダースコープがあった。
そして3人は、演習海域に立っていた。雲が少し多いが、晴れている。ひゅうがにとっては2度目の演習海域だ。
「ここが、死ななければダメージも無かった事になる不思議な海域……」
ミズーリが呟く。その横で、アドミラル・クズネツォフが早期警戒ヘリ・Ka-31 ヘリックスDを飛ばした。
「さてと、まずは航空優勢確保ですかね」
アドミラル・クズネツォフが呟き、ミズーリが頷く。そして2人は飛行甲板を水平にした。アドミラル・クズネツォフのジェットブラストディフレクターが立ち上がり、空対空ミサイルを装備したSu-33 シーフランカーが発艦する。ミズーリの飛行甲板からも、空対空ミサイルを装備したF-35B ライトニングⅡが飛び立った。
「今回の旗艦、あなたに任せていいですか?」
「ああ、構わない」
アドミラル・クズネツォフの提案に、ミズーリは頷いた。2人の飛行甲板では、妖精達がMiG-29K シーファルクラムとAV-8B+ ハリアーⅡに空対艦ミサイルを装着させている。
やがて、アドミラル・クズネツォフが飛ばしたKa-31 ヘリックスDのレーダーに反応が出た。
「逆探に反応! やはり空中からか」
日向が叫ぶ。伊勢は空を見るが、何も見えない。そして指示を出した。
「一応直衛隊を上げておこう。日向と私が飛ばすから、扶桑と山城は爆装待機!」
そして、伊勢と日向が瑞雲を飛ばす。火薬カタパルトから射出された水上爆撃機は上昇、敵機迎撃に向かう。
4人の対空電探に反応、全ての主砲に三式対空弾を装填する。
Su-33 シーフランカーの遥か前方を、F-35B ライトニングⅡが飛ぶ。ウェポンベイには4発のAIM-120 アムラーム中距離空対空ミサイルと2発のAIM-9 サイドワインダー短距離空対空ミサイルが内蔵されている。
やがて、F-35B ライトニングⅡの赤外線索敵装置が瑞雲飛行隊を捉えた。F-35B ライトニングⅡの飛行隊長は指示を出し、BVR(目視距離外)戦闘を始める。
12機のF-35B ライトニングⅡのウェポンベイが開き、40機の瑞雲飛行隊目掛けて48発のAIM-120 アムラーム中距離空対空ミサイルが発射された。
当然、瑞雲にはAIM-120 アムラーム中距離空対空ミサイルのかわしようが無い。無惨にも40機の瑞雲飛行隊は全滅した。
「やばいよ日向! 直衛隊との通信途絶!」
伊勢の言葉は、勿論日向には信じられないものだった。
「馬鹿な、まだ接触していないのに」
「こちらの射程外から攻撃出来るのね……」
「不幸ですわ……」
そして、ミズーリとアドミラル・クズネツォフから攻撃隊が発艦する。Kh-35空対艦ミサイルを2発抱いたMiG-29K シーファルクラムが8機、AGM-84 ハープーン空対艦ミサイルを2発装備したAV-8B+ ハリアーⅡが12機、AGM-114 ヘルファイア対戦車ミサイルを16発装備したAH-64D アパッチロングボウが4機だ。
「これで足りるかな?」
「さあな。もしこれで足りなければ、SSM(艦対艦ミサイル)を全弾ぶっ放して逃げる」
「その40cmの巨砲で戦わないんですか?」
「14インチ(35.6cm)を大量にぶら下げた4人を相手に、16インチが6門では力不足だ」
「私がキエフ先輩だったら砲撃の手伝い出来たけど……」
「航空戦力が足りなくなる」
「それもそうですね〜」
扶桑、山城から爆装した瑞雲が全機発艦する。逆探や、相手の戦闘機が来た方向から、予想される方向へ瑞雲達は爆弾を抱えて飛ぶ。
しかしそこへ、何かが低空飛行でやってきた。
「まずい! 戦隊、右舷・対空戦闘! 撃ち方始め!」
伊勢が叫び、4人は14発の三式対空弾を発射した。
MiG-29K シーファルクラムとAV-8B+ ハリアーⅡの編隊は、艦上攻撃機の如く低空飛行、一斉に空対艦ミサイルをリリースする。
三式対空弾は時限信管で破裂、大量の破片をばらまく。しかし40発の空対艦ミサイルは破片の雨をくぐり抜け、4人へ向かう。12.7cm高角砲や25mm対空機銃、12cm噴進砲の弾幕をいとも簡単にすり抜け、アクティブレーダーホーミングでロックオン、ひねり上がるようにポップアップし、4人に飛び込んだ。
結局何も出来なかったSu-33 シーフランカーがアドミラル・クズネツォフに帰ってくる。ミートボール(着艦誘導信号機)視認、ランディングギアとアレスター(着艦フック)を下ろし、フラップを下げる。そして、アレスターがアレスティングワイヤーを捕らえ、機体は急停止した。
F-35B ライトニングⅡも、エンジンノズルを下に向け、姿勢制御ファンドアを開いてホバリング、ミズーリの飛行甲板に垂直着艦する。
「さて、我が攻撃隊ではやはり力不足だったな」
「戦艦相手に、40発はやっぱり足りませんよね〜」
「最初の予定通り、SSMをぶっ放して逃げる。そして攻撃隊による波状攻撃だ」
「わーエグーい(棒読み)」
ミズーリとアドミラル・クズネツォフは、RGM-109B トマホーク艦対艦巡航ミサイルやRGM-84 ハープーン艦対艦ミサイル、P-700艦対艦巡航ミサイルを合計50発発射、反航戦から同航戦に切り替えるべく面舵を取る。
MiG-29K シーファルクラムとAV-8B+ ハリアーⅡが放った40発の空対艦ミサイルは、何故か全て扶桑と山城に集まった。
「痛いわね……」
「不幸だわ」
大破した扶桑と山城を前に、小破の伊勢と日向は何も言えない。
一方で、同航戦となり逃げるミズーリ、アドミラル・クズネツォフ、ひゅうがへと爆装した瑞雲が接近する。
「しまったCAP(戦闘空中哨戒)機を出してなかった」
「ピーンチ」
「わひゃああ!?」
パニクるひゅうがを差し置いて、ミズーリはSM-2ER中距離艦対空ミサイルを発射する。しかし、イージスシステムは一度に15発のミサイルしか誘導出来ない。
「加勢します!」
「頼む! クズネツォフとひゅうがは取り舵! 回避運動!」
ミズーリは右へ、アドミラル・クズネツォフとひゅうがは左へ旋回する。
「右・対空戦闘! RAM発射!」
ミズーリから続々とRIM-116 RAMが発射される。しかし、瑞雲達は損害構わず急降下、250kg爆弾を投下する。
「くっ!」
20mmCIWSが唸り、大量の徹甲弾をばらまく。それでも、数発の爆弾を喰らってしまった。
「ミズーリさん!」
「ひゅうがさん、よそ見しない!」
アドミラル・クズネツォフがキンジャール短距離艦対空ミサイル、そして9M311短距離艦対空ミサイルで応戦する。ひゅうがもRIM-162 発展型シー・スパロー短距離艦対空ミサイルを発射する。
「クズネツォフの圧倒的弾幕を見せてやります!」
ミサイルが使えないほど接近され、アドミラル・クズネツォフは短SAM・30mm複合CIWS コールチク 8基と30mmCIWS AK-630 6基で圧倒的弾幕を張る。
旧日本海軍(特に艦爆隊)では、敵の対空砲火を「アイスキャンディー」と呼んだという。それは、対空砲から発射された曳光弾がそう見えたからだが、当時のを「アイスキャンディー」と呼ぶのなら、アドミラル・クズネツォフのそれは「光のトンネル」であった。
現代艦の中で最も多く対空砲を搭載しているアドミラル・クズネツォフの弾幕は、言うなれば弾丸の壁である。勿論、瑞雲達は、ひゅうがを狙ったものも含めて徹底的に破壊される。西側の軍艦なんて目じゃねえぜ。
「よーし、一掃完了!」
そう言うアドミラル・クズネツォフに、パラパラと瑞雲の破片が降り注ぐ。
「これが、おそロシア……」
ひゅうががうわごとのようにそう言った。
両方の第1次攻撃が終了し、日が暮れ始める。
「夜戦だね」
「大破2人、航空機全滅。砲戦で何とかするしかないか」
4人は周囲を警戒する。既に暗くなり、あとは32号対水上電探だけが頼りだ。
ミズーリから、AGM-84 ハープーン空対艦ミサイルを装備したAV-8B+ ハリアーⅡが発艦する。そして、500ポンド誘導爆弾をウェポンベイに収めたF-35B ライトニングⅡも飛び立つ。
先行する2機のMiG-29K シーファルクラムはKh-31P対レーダーミサイルを2発ずつ装備、後続のMiG-29K シーファルクラムはKh-35空対艦ミサイルを2発ずつ、Su-33 シーフランカーは4発の500kg爆弾を抱えている。
「こっちは対艦ミサイルを撃ち切っているから、攻撃隊がやられれば40cm砲6門のみ……」
「そのために、攻撃隊全機発進だろ?」
「確かにです」
その横で、ひゅうがもAH-64D アパッチロングボウとSH-60K シーホークを飛ばす。先程活躍出来なかったAH-64D アパッチロングボウには16発のAGM-114 ヘルファイア対戦車ミサイル、SH-60K シーホークには12式魚雷が搭載され、敵戦隊へ向かう。
超音速巡航で飛ぶF-35B ライトニングⅡの赤外線索敵装置が、伊勢達航空戦隊を捉える。12機はポップアップ、伊勢達目掛け急降下する。
ウェポンベイが開き、24発の500ポンド誘導爆弾が投下された。
「きゃあ!」
「痛い! 不幸だわ!」
また何かの因縁か、F-35B ライトニングⅡが投下した24発の爆弾は、扶桑と山城に命中、轟沈判定が出た。
「奇襲!?」
「馬鹿な! 電探には何も――」
そこで、日向の14号対空電探に、高速で飛翔する物体が映った。
そしてそれは、日向と伊勢の対空電探を破壊する。
6機のMiG-29K シーファルクラムと12機のAV-8B+ ハリアーⅡが、36発の空対艦ミサイルを一斉射、低空飛行のまま離脱する。
そして、16機のSu-33 シーフランカーは8機ずつの編隊に分かれ、ダメージを受けた伊勢と日向へ急降下、爆弾を投下した。