艦隊これくしょん 〜第0艦隊、参ります!〜 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
艦隊が、ようやく母港・横須賀鎮守府に帰還した。直ちに弾薬返納と修理が開始される。
「損害少ないのは明石さんへ! あとはドック空きを待って!」
修理や改修を担当する兵器科の女性士官が指示を出す。
「ここ、普通の人間もいたんですね」
「Oh、こんごうは知らなかったデスカ?」
「ええ」
こんごうと金剛が話す。今、ドックは修理時間の長い戦艦や正規空母にバケツをぶっかけて高速ローテーション状態だった。兵器科要員や修理妖精泣かせのローテーションである。
「お風呂とドックは違うんですか?」
「Hum、ドーオンイーギゴよ、コンゴー」
アイオワが首を突っ込んできた。そのπがこんごうの左肩に思いっきり当たっているのは内緒。
「同音異義語? 類義語じゃないんですか? あとコンゴーはやめてください。某オーバーテクノロジー戦艦ではありませんから。私はれっきとした駆逐艦です」
「How many order is!」
「英語でとぼけないでくださいよ」
兵器科を疲労困憊させた鬼ローテーションがようやく終わり、日が暮れた。
第1・第2仮眠室の間仕切りを取っ払い、鎮守府中のちゃぶ台や座布団を運び込み、連合艦隊の全員が並ぶ。
「んじゃ、作戦の成功と全員の生還に、乾杯!」
提督の音頭で、宴が始まった。
まずは、毎度恒例(?)の、赤城・長門・アイオワ・ビスマルクによるビールの一気飲み対決からだ。
「赤城さん、一航戦としての誇りが掛かっているから」
「そうだよ! 空母として戦艦になんか――」
「瑞鶴、黙ってなさい」
「酷い!」
「長門、日本の誇りを見せてやりなさいよ!」
「頼みますよ長門さん!」
「Iowa、アメリカの新鋭高速戦艦の実力を見せてあげて!」
「ビスマルク姉様頑張って!」
どんどんと、ちゃぶ台の上に並んだビールジョッキが空になっていく。ひゅうが達護衛艦は、信じられないという顔で見るしかなかった。
「す、すごい……」
「さすが海外」
「日本人が真似したら急性アルコール中毒不可避だな」
「だったら赤城さんと長門さんは何なんですかね?」
「……鉄の肝臓?」
ひそひそ話す4人の隣に、ウォトカを手にしたピョートルが座った。
「ロシアでは、あのくらい当たり前だ」
「おそロシア……」
さらにアドミラルクズネツォフも座る。
「ロシアは寒いから、呑まなきゃやってらんないのよ〜」
「聞いた話だと、ロシアは若い男が足りてないとか……」
さざなみが言うと、アドミラルクズネツォフはうんうんと頷いた。
「だって、みーんな急性アルコール中毒で死んでいくんだもーん♪(注・勿論他にも理由はありますが、アルコール関係が1位なのは間違い無いらしいです)」
アドミラルクズネツォフの明るいテンポのブラックな内容に、一同言葉を失う。
「だからこそ、我が祖国は南へ向かい、日本と刃を交えた……懐かしい記憶さ」
ピョートルの向かいに、銀髪の女性が座る。やはり手にはウォトカ。
「失礼、あなたは?」
「未来からやってきたソヴィエト艦なら、知ってると思ったが……Гангут(ガングート)だ」
「ガングート……」
その名を聞いたピョートルとアドミラルクズネツォフは立ち上がり、敬礼した。
「先程はご無礼を。キーロフ級重原子力ミサイル巡洋艦 4番艦・ユーリアンドロポフ改め、アドミラルウシャコフ級重原子力ミサイル巡洋艦 4番艦・ピョートルヴェリーキイであります」
「レオニードブレジネフ級航空巡洋艦 1番艦・レオニードブレジネフ改め、クズネツォフ級航空巡洋艦 1番艦・アドミラルクズネツォフであります」
酔っ払っていても、直立不動の敬礼が出来るロシア軍すげー、と護衛艦達は思っていた。
「まあまあ座れ。同じ祖国だ、ブレーコウ(無礼講)で行こう」
ガングートがそう言い、ピョートルとアドミラルクズネツォフは座る。
そして、ガングートは護衛艦達を見た。
「ニッポンの未来艦か。名前は聞いているが、改めて自己紹介してくれるか?」
ひゅうがが口を開いた。
「日本国海上自衛隊所属、ひゅうが型ヘリコプター搭載護衛艦 1番艦、DDH-181 ひゅうがです」
「同じく、あきづき型防空特化汎用護衛艦 4番艦、DD-118 ふゆづきです」
「あたご型ミサイル搭載イージス護衛艦 1番艦、DDG-177 あたごだ」
「たかなみ型汎用護衛艦 4番艦、DD-113 さざなみです」
4人は座ったまま、ひゅうがとふゆづきは敬礼して自己紹介した。
「ひゅうが、ふゆづき、あたご、さざなみだな。よろしく頼む」
そして、4人は順々に握手した。
一気飲み対決は、長門、アイオワの順に倒れ、赤城とビスマルクの一騎打ちだった。
「赤城さんファイトー!」
「負けないでビスマルク姉様!」
応援もヒートアップする。既にカウントは40を超えていた。
「うわぁ……」
きりしまが言葉を失う。
すると突然肩を叩かれた。振り返ると、顔が真っ赤な霧島がいた。
「あぁ……何でしょう?」
「ちょっと座りなさい」
霧島が座布団を指差した。きりしまは渋々従う。
そして気付いた。周りにいたのは、金剛型高速戦艦ばかりだという事を。
「あの、一体――」
「同じ名前だからよ」
そう言って、霧島はおちょこの中の日本酒をくいっと呑んだ。
「Oh、霧島が珍しく酔ってるデース」
金剛が言う。その膝にはこんごうが乗っていた。
「お姉ちゃん……」
「きりしま、何も言わないで。鹵獲されただけだから」
その隣では、既に比叡が酔いつぶれていた。
「金剛お姉様ぁ……」
「比叡姉様、風邪引きますよ」
榛名が比叡に毛布を掛ける。それを見ていたきりしまが口を開く。
「何というか、結構お気楽というか抜けているというか、そんな感じですよね」
すると、榛名が答えた。
「今の提督になってから、というよりも改革が起きてからです、こんな感じになったのは」
「「改革?」」
こんごうときりしまが首を傾げる。
するとそこへ、木曾がやってきた。
「改革というより、革命だな。四・一八事件を知らないのか?」
「いえ、全く」
「せいぜい二・二六は……」
「そうか……」
木曾や榛名、金剛は暗い顔をする。
ビール一気飲み対決は、最後の一押しでビスマルクの勝利に終わった。バタンと赤城がちゃぶ台に倒れる。
「やったー! さすがビスマルク姉様!」
「オイゲン、あまり揺らさないで……欲しいわ……」
ぶっ倒れた赤城を、加賀や翔鶴が解放する中、那智と隼鷹が酌み交わしていた。
「あの対決、参加しなくて良かったのか?」
「私はビールよりウィスキー派だからな。隼鷹はビールもいける口なのか?」
「まぁね。あたしゃ清酒が一番だけど、元客船だ、何でも呑まなきゃ商売が務まらないのさ」
2人はウィスキーを呑む。
横須賀鎮守府の夜は、始まったばかりだった。