艦隊これくしょん 〜第0艦隊、参ります!〜 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
Operation.31 笹子提督の過去
その日、日本は大きな地震に襲われた。
【――繰り返します、静岡県 東部にて震度7の地震が発生しました! 東京のスタジオでも、かなりの大きさの揺れを感じました! 静岡県 東部にて震度7の地震が発生しました! 今後も強い揺れが予想されます!】
もちろん、茨城県も揺れた。
《滑走路の安全が確認出来次第、501飛行隊は発進せよ。繰り返す、滑走路の安全が確認出来次第、501飛行隊は発進せよ》
直ちに格納庫へ、整備員やパイロットが走る。格納庫に止められた、航空自衛隊の戦術戦闘偵察機・RF-4EJ改 ファントムⅡへ、パイロットと戦術偵察士が乗り込み、整備員が彼らの耐Gスーツを機体と接続、シートベルトやパラシュートが正しく装着されているか確認する。そして、梯子を外し、機体から離れた。
主翼に2本の増槽とECMポッド、スナイパーポッドと自衛用AIM-9 サイドワインダー短距離空対空ミサイル、胴体下に戦術偵察ポッドを装備したRF-4EJ改 ファントムⅡに、コンプレッサー車から高圧空気が、電源車から電源が送られてくる。パイロットと戦術偵察士はコクピットの外へ両手を出すと、整備員達が機体装備の確認を行う。
確認終了後、航空誘導員が「エンジンを始動せよ」とサインを送った。エンジン始動、GE/IHI J79ターボジェットエンジンが唸りを上げる。電源車からの電源で機体のセルフチェックを行う。乗員保護装置、フライトレコーダ、戦術偵察ポッド、ECMポッド、チャフ/フレアディスペンサー、エンジンコントロールコンピュータ、戦術航空管制システム、無線式航法支援装置、ジャイロコンパスetc。
機体左側の武器担当整備員が両腕で丸を描く。「装備は発射不能」という意味だ。主翼下の左右1発ずつのAIM-9 サイドワインダー短距離空対空ミサイルの安全ピンは外れていない。が、機首下の20mm M61バルカン砲には400発は入っている。自衛用なのかと疑うが仕方無い。マスターアームスイッチがオフになっているか確認する。
そして、大きく変わったそれ――3基のMFD(多用途ディスプレイ)――をいじる。1つは電子戦モード、もう1つは広域マップに、最後はスナイパーポッドの映像を映す。
今まで使っていたRF-4EJ ファントムⅡは、大幅な近代化改修を受けた。そもそもは、後継になるはずだったF-15DJ イーグルの偵察型の開発中止だった。その後、アメリカの無人偵察機・RQ-4 グローバルホークを選定したが、調達価格高騰で断念した。しかし、戦術偵察機は必要であるという事で、戦術偵察機代わりに運用出来るF-35A ライトニングⅡが揃うまでの繋ぎとして、既存機を改修する事になったのだ。
「こちらフドウ03、百里タワー、タキシング許可を請う」
〔百里タワー、了解。ランウェイ21L手前、スポット1で待て〕
「フドウ03、コピー」
RF-4EJ改 ファントムⅡはエプロンへ出、タキシーウェイを進む。そして、滑走路直前で止まった。
「フドウ03より百里タワー、滑走路進入許可を請う」
〔百里タワー、了解。滑走路進入し待機せよ〕
RF-4EJ改 ファントムⅡは滑走路に入る。トゥブレーキ作動、停止する。そして、フラップやエルロン、スポイラー、水平尾翼、ラダーの動きを確認する。
全系統異常無し。
「百里タワー、こちらフドウ03。離陸許可を請う」
〔百里タワー、了解。離陸せよ〕
トゥブレーキ解除、同時にスロットルレバーを押し、アフターバーナーを点火させる。
そして、RF-4EJ改 ファントムⅡは飛び上がった。
〔フドウ03、こちらトレボー(横田基地 中央航空指令部)。ミッションエリア上空に積乱雲あり。高度に注意せよ。繰り返す、ミッションエリア上空に積乱雲あり。高度に注意せよ〕
「フドウ03、コピー」
RF-4EJ改 ファントムⅡが高度を落とす。スナイパーポッド起動、録画を開始する。
「よりにもよって、雨の日に地震かよ」
後席の戦術偵察士・榊原1等空尉が呟く。
「撮影を始める。笹子、機体を傾けるなよ」
「分かってますよ」
前席のパイロット・笹子3等空尉は応え、ヘッドアップディスプレイを見る。「W」とホライゾンラインが一直線に重なるよう、慎重に操縦桿を操作する。
その時、RF-4EJ改 ファントムⅡは雷に打たれた。