艦隊これくしょん 〜第0艦隊、参ります!〜 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
第0艦隊と選抜組が出発した日、笹子提督は国会議事堂 第3会議室に来ていた。
国防審議委員会「では、第36回 空軍創設会議を行います。前回、近接航空支援における指示系統について話し合い、平行線を辿りましたが、何か新しい意見は?」
陸軍将校「近接航空支援機の指揮だけではなく、それを護衛する戦闘機は一体どうするんだ? 支援要請であれば、同じ陸軍同士ならやりやすい上、襲撃機と戦闘機は同じ指揮系統でないと混乱する。わざわざ空軍を作る必要は無いのではないか? 単に、海軍側が局地戦闘機の運用費を誰かに押し付けたいようにしか見えないが」
大蔵省事務官「大蔵省としては、陸軍に賛成である。新たな組織を編成すれば、その人事異動や組織改変、軍規改正、新たな訓練を必要とする。今戦争中の真っ只中に、そんな悠長な事をやっていられるのか?」
海軍航空参謀「深海棲艦の動きは、最近落ち着いてきており、護衛船団が襲撃された事は今月に入ってから皆無だ。深海棲艦が新たな手を打ってくる前に、組織のスリム化を行うべきと進言する」
海軍省事務官「だが、もし空軍を設立するのなら、海軍側も陸上攻撃機の支援を受けられないぞ? 対地攻撃と対艦攻撃はノウハウが違うと、口酸っぱく言ったのは誰であったか?」
笹子提督「今や、横須賀鎮守府の有する空母航空戦力だけでも充分深海棲艦に太刀打ち出来る。まず第一、陸軍と海軍とで指揮系統や無線が異なるのが問題だ」
陸軍将校「深海棲艦に諜報される危険があるため、別々の無線を使っているという事が分からないのか、若僧」
笹子提督「いざ戦場で救援要請を出す際に、無線が異なるのは大問題だ。陸海空軍で共通の無線を用いれば、近接航空支援を要請するのは容易い。必要とあれば、近接航空支援要請専門部隊や担当士官の教育を行えばいい。海軍だ陸軍だと言っている時代は終わった」
大蔵省事務官「だが、空軍を作ってみた所で、一体誰が指揮を取り、誰が責任を取る? 新たに空軍省を作れと?」
笹子提督「いや、そうではない。陸軍省、海軍省を統合する国防担当省庁を作る。陸軍省と海軍省が別々にあっては予算がその分余計に掛かる上、作戦立案の段階で協調出来なければ、戦争に勝てない。アメリカ相手に戦争すると言っておきながら、ユーラシア大陸に手を伸ばすような二の舞になりたいのか?」
海軍航空参謀「笹子提督の言う通りだ。我々の現在の敵は、中華でもアメリカでもない、対話の出来ぬ深海棲艦である。今までの常識が通用しない相手だ。それを相手に、旧来の体制を重んじて負ければ、末代まで笑われる事になる。まぁ、末代がいればの話だが」
大蔵省事務官「なるほど、兵部省を復活させろと?」
笹子提督「何もそのまんまである必要は無い。例えば、国防総省とか」
陸軍将校「待て、まずは空軍についてだ。そもそも規格が全て違うと言うのに、いきなり統一なんて――」
笹子提督「では、そう言い訳して負けるのか?」
陸軍将校「深海棲艦のおかげで予算を増やされたからと言って調子に乗るなよ、船頭が」
笹子提督「私は厚木航空隊出身で、船に乗ったのは片手の指で足りる程だ。空軍創設は、これからの戦いを勝ち残るための必要な策だと私は確信している」
海軍省事務官「戦艦や重巡で殴り合えばいい話だろう」
海軍航空参謀「そんな大艦巨砲主義は終わった。航空戦と水中戦が全てを決めると言っても過言ではない」
海軍省事務官「何のために貴様の所に我が海軍の保有艦艇や海外艦を多く配属していると思っているんだ!?」
笹子提督「既に、深海棲艦との戦いは大規模な艦隊戦は行われる事は無くなっている。航空機による攻撃が主体であり、戦艦は空母を守る洋上砲台だ。そして、護衛船団を襲撃する敵潜水艦や駆逐艦を倒す為に、重巡や軽巡、駆逐艦が存在する。横須賀鎮守府 作戦科の部隊編成は、とっくにこの形式になっている」
大蔵省事務官「……我々の頭の中の戦争は、遠くになりけり、か。分かった、一度検討してみよう。空軍創設に伴う予算概要を算出してくれ」
陸軍将校「待ってくれ。統合するというのなら、色々と問題が出てくる。我々が使用している12.7mm弾と、海軍の12.7mm弾では規格が異なる。これをどちらに統一するかで、必要な予算が大きく変わってくる」
笹子提督「両方の可能性で出す必要がある。その手間を省きたいのであれば、先に評価試験を行う必要があるな」
国防審議委員会「では、結論として、空軍創設に向けて、概算要求を試算するというでよろしいですか?」