艦隊これくしょん 〜第0艦隊、参ります!〜 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
東京都 千代田区、首相官邸――
「総理! 大変です!」
JNSC(日本国安全保障会議)室に、若い事務官が入ってきた。
「どうした!? まさか、中国に動きか!?」
初老の男性――自由保証党党首、安田 晋介首相――が尋ねる。が、事務官は首を振った。
「海上自衛隊 第6護衛隊群が、戦艦と併走中と報告を!」
「戦艦だと!? ロシアのか!?」
「あれは自称重巡です! 今、モニターに出ます!」
そう言うと、部屋の巨大ディスプレイの画面が切り替わった。
「見てください、長門型に伊勢型、あと扶桑型と思われる戦艦、更にはアメリカのニミッツ級原子力空母にエンタープライズ級原子力空母、タイコンデロガ級イージス巡洋艦、そしてロシアのキーロフ級原子力重巡洋艦にスラヴァ級重巡洋艦、クズネツォフ級空母にひゅうが型護衛艦、こんごう型護衛艦、あたご型護衛艦、あきづき型護衛艦、むらさめ型護衛艦にたかなみ型護衛艦、アイオワ級戦艦っぽい何かと艦種不明の空母が、第6護衛隊群を守るように航行しています! 更に、海上保安庁の巡視船〈あまみ〉が、大和型と思わしき艦影を――」
「我々は幽霊に魅せられているのか? 第6護衛隊群と直通で繋がるか?」
「ダイレクトライン、準備完了です!」
そして、安田首相は受話器を取った。
「第6護衛隊群か? 首相官邸だ」
〔こちら第6護衛隊群旗艦〈ふそう〉、艦長の石場です。現在我々は所属不明の大型艦に――〕
「報告は聞いている。何か、異常は無いのか?」
〔向こうの大型艦を監視して分かったのですが、甲板に見える乗組員が、どう見ても少女――いや、言葉は悪いのですが、幼女にしか見えないのです〕
「何!? 具体的に幾つに見える!?」
〔子供のいる部下数人と確認した所、5〜6歳程と〕
安田首相は言葉を失う。謎の大型艦が尖閣諸島周辺に大量に現れ、しかも海上自衛隊の艦隊をエスコートしている。ただでさえ理解が追い付いていないのに、更に衝撃的な情報がやってきたのだ。
「総理、航空自衛隊の第501偵察飛行隊が、現在那覇と新田原に展開中です。那覇の分遣隊であれば、1時間で情報を収集する事が可能です」
小野里防衛大臣が提言する。安田首相は頷き、許可を出した。
「許可する。小野里大臣、可能な限り詳細な情報を。但し、あの所属不明艦隊――X艦隊と呼ぶか――は味方とは限らない。収集には最大限警戒を行うように」
「了解しました。501SQに緊急指令!」
そして、安田首相は再び受話器を耳に当てた。
「以後、所属不明艦隊をX艦隊と呼称する。そのX艦隊に、他の異変は無いのか?」
〔例のニミッツ級ですが、とっくに退役した筈のF-14、更にまだ配備されていないF-35の姿もあります〕
「F-14とF-35だと?」
〔ええ、トム=クルーズとアーノルド=シュワルツェネッガーがそれぞれに乗った〕
「俺もその映画は見た。いやそうじゃない。その他は?」
〔扶桑型とアイオワ級と思われる戦艦ですがね、航空戦艦になっています〕
「航空戦艦?」
〔簡単に言ってしまえば、『飛行機を大量に積めるようにした戦艦』です。二次大戦時に、日本が扶桑型と伊勢型で計画していましたが、実行されたのは伊勢型のみ。冷戦期には、アメリカがアイオワ級を航空戦艦にする計画を立てましたが、予算不足でトマホーク巡航ミサイルとハープーン対艦ミサイルのみの搭載になりました。つまり、今我々の目の前にいる扶桑型とアイオワ級は、本来存在しないものなのです。――それを言ってしまえば、そもそも戦艦自体存在しないものですがね〕
「……分かった。そのX艦隊はまだ味方とは限らない。最大限注意してくれ」
〈ふそう〉艦長の石場1等海尉は、受話器を置いた。
「気を付けろと言われたって、副砲だけで吹っ飛ぶというのに」