艦隊これくしょん 〜第0艦隊、参ります!〜 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
Operation.1 現在地不明
靄の掛かった海を、7人の少女が進んでいた。と言っても、泳いでいる訳では無い。海の上を「滑っている」のだ。
「相変わらず、ここは何処よ!」
黒髪縦ロールという、意味不明な髪型の少女が叫ぶ。それをなだめるように、金髪ショートボブの少女が口を開いた。
「まあまあ。8度目のセリフよ?」
「一々数えるなーっ!」
2人の言い争いを尻目に、茶髪ポニーテールの少女が、クロスボウを手にした蒼髪の少女に向かって口を開く。
「ホークアイは飛ばせないの?」
「うん……。強力なECMのせいでデータリンクも着艦誘導装置も上手く動かなくて……」
「確かに、この状況で飛ばすのは危険ね」
やがて、靄が晴れた。
「そろそろ会敵予想海域ですね。扶桑さん、水偵を」
「分かりました。偵察機、発進!」
和服の少女から、零式水上偵察機が発進した。
「何、あれ……」
茶髪ポニーテールの少女が呆気に取られる。目の前には、とても人間とは思えない化け物の群れ。いや、一部は人間らしき姿をしている。
「未知との遭遇?」
「未来への架け橋?」
「古いわ!」
金髪ショートと紫ロングの少女が順々に言い、黒髪縦ロールがつっこむ。
「古いって、お姉様、酷いと思いません?」
「トマホークとハープーンで沈めちゃう?」
「上等だ! シースパローで全部撃ち落としてやる!」
「でも、砲撃戦でその3インチの豆鉄砲が通用するかしら?」
「おまけに1門、5インチを2つ持っている私達に勝てるとは……」
「うっさいアメ公! MK26なんかの時代遅れ装備に負けるものか!」
「あ? たかがジャップのデストロイヤー(駆逐艦)が、クルーザー(巡洋艦)2隻に勝てるとお思いで?」
「つけあがるのも甚だしいですわ」
3人の喧嘩を、茶髪ツインテールの少女の叫び声が止めた。
「砲弾接近!」
「敵艦隊、発砲!」
「取り舵一杯! 回避して!」
「いや、こっちに向かってないっぽい……」
7人の少女が驚く。
「この御時世、砲撃から始まるなんてね!」
「自動迎撃始めっ!」
茶髪ポニーテールの少女が叫び、彼女の両肩に載った白い突起物――ファランクス CIWS ブロック1B・20mm六砲身高性能対空機関砲――が唸り、毎秒75発という脅威的速度で20mm高速徹甲弾を放つ。
「近接防御! 前甲板VLS、41番開口! CIC指示の近付く目標、ESSM、salvo! お姉様をやらせはしない!」
紫ロングの両腕外側に付いた大量の「箱」の内の1つの蓋が開き、短距離艦対空誘導噴進弾――発展型シー・スパロー――が4発発射された。
さらに、黒縦ロールと金髪ショートが、手にした拳銃らしき物――それぞれ、76mm単装速射砲「OTTメラーラ コンパクト」と127mm単装速射砲「ユナイテッド・ディフェンス MK45 mod2」――が砲弾を撃ちまくり、飛んできた砲弾を撃ち落とす。
そして、蒼髪ロングの少女が、4本の矢をクロスボウにつがえ、引き金を引いた。直後、クロスボウから大量の湯気が吹き出し、4本の矢は空に放たれて蒼色の飛行機に変化した。双発、傾斜式双垂直尾翼、水平尾翼は無く、コクピット脇に可変先尾翼(カナード)を有し、主翼には日の丸が描かれている。
艦載ステルス戦闘機・F/A-27Cの4機編隊は超音速・超低空飛行で敵艦隊に接近、そして胴体下のウェポンベイを開いて93式空対艦誘導噴進弾「ASM-2」を放った。
放たれた8発の対艦ミサイルは、敵艦隊に次々着弾、そして続々と転覆していく。
戦果確認のため、彼女達はゆっくり近付く。すると、長い黒髪の女(らしき何か)が仰向けで海面に浮かんでいる。まだ息がある。
「see you.」
茶髪ポニーテールの少女が、右手の127mm単装速射砲「OTTメラーラ コンバット」の方向を、女(らしき何か)の顔に向け、そして引き金を引いた。
真鍮製の薬莢が海面に落ち、沈んでいく。
「戦艦ル級を一撃で!?」
「何かヤバいっぽい……」
また異なる少女達は、零式水上偵察機からの情報に驚いていた。
やがて、7人の少女が見えた。
「おや、また何かいますよ」
眼鏡を掛けた黒髪シニョンの少女が言う。見れば、和服や洋服とごちゃ混ぜ状態の少女達がいる。
「鬼が出るか、蛇が出るか」
茶髪ポニーテールが呟く。もう、お互いの顔が分かる程近付いている。
「私達は日本海軍 第11航空戦隊です。あなた達は?」
弓を手にした、黒髪ポニーテールの和服女性がそう口にした。茶髪ポニーテールがそれに応える。
「日本海軍 第1機動艦隊の防空駆逐艦こんごうです。旗艦の方と話がしたいのですが」
すると、第11航空戦隊の少女達がどよめいた。
(金剛!?)
(全く見た目が異なりますね)
(特徴的な訛りも無いっぽい)
こんごうと名乗った茶髪ポニーテールは首を傾げる。
「あの、皆さんどうしたんですか?」
そして、第11航空戦隊の面々は、第1機動艦隊のメンバーを見る。
全員が黒いセーラー服を着ていて、襟は赤、そして見たことの無い艤装を身に付けている。
「1人ずつ、名乗ってもらえますか?」
先ほどの和服女性がそう言った。第1機動艦隊のメンバーは顔を見合わせ、1人ずつ名乗る。
「えっと、第1機動艦隊の旗艦を務めています、ヒラリー=クリントン級原子力航空母艦 12番艦のアドミラル56(イソロク)です」
蒼髪ロングで、クロスボウを手にした少女が敬礼する。その両肩と右手の甲に白い突起物――20mmCIWS(シウス) ブロック1B――が乗っかり、左腕には正体不明の箱――MK41 VLS(ミサイル垂直発射システム)――が16個付いている。そして左腕いっぱいは飛行甲板となっており、たった今艦載機達が着艦している。後、至る所に正体不明のプレート――アクティブステルスセンサー――が付いている。
「改めて、第1機動艦隊所属、こんごう型駆逐艦 1番艦、DDG-173 こんごうです」
茶髪ポニーテールが敬礼する。彼女の頭には、魔法使いのようなとんがり帽子――SPY-1D対空レーダーを装備した前艦橋――があり、両肩には20mCIWS、そして両腕の外側には例の箱――MK41 VLS――が付いている。両腰には4本の筒を束ねた何か――四連装90式艦対艦誘導弾(SSM-1B)発射筒――が2基、両方の足首に68式三連装短魚雷発射管が付いており、右手で127mm単装速射砲「OTTメラーラ コンバット」を握り、左手の甲にはフルフラットの後甲板――ヘリ甲板――がある。
「その妹の、こんごう型 2番艦、DDG-174 きりしまだよ!」
こんごうと同じ艤装を身に纏った茶髪ツインテールの少女が、元気に敬礼し、ピースサインを作った。
「タイコンデロガ級イージス巡洋艦 5番艦、CG-51 ぐんじょうと申します」
金髪ショートの少女が敬礼する。腰から伸びる艤装には、よく分からない物体――MK26二連装ミサイルランチャー――が両方にある。そして両肩に20mmCIWSと四連装RGM-84 ハープーン艦対艦誘導弾発射筒が乗っかり、こんごうと同様に足首に短魚雷発射管、左手の甲にヘリ甲板、そして両手には2門の127mm単装速射砲「ユナイテッド・ディフェンス MK45 mod2」がある。
「同じく、タイコンデロガ級巡洋艦 6番艦、CG-52 あさぎよ。お姉様を侮辱したらトマホークをぶち込みますわ」
紫ロングの少女がそう名乗る。ぐんじょうにはあったMK26二連装ミサイルランチャーの代わりに、大量の箱――MK41 VLS――がある。それ以外はぐんじょうと一緒だ。
「むらさめ型汎用駆逐艦 4番艦、DD-104 きりさめと言うわ」
黒髪縦ロールが敬礼する。両腕にMK48 VLSとヘリ格納庫、両肩に四連装90式艦対艦誘導弾(SSM-1B)発射筒と20mmCIWS、足首に短魚雷発射管、右手には76mm単装速射砲「OTTメラーラ コンパクト」がある。
「むらさめ型 9番艦、DD-109 ありあけ、対空・対潜・対艦・対海賊、何でも出来ます、対地以外」
眼鏡を掛けた黒髪シニョンがそう言った。やはり、艤装はきりさめと一緒である。
「あなた達は、日本海軍、ですよね?」
黒髪ポニーテールの和服女性――鳳翔型正規空母 1番艦 鳳翔――が尋ねた。それに、こんごうが答える。
「はい、日本国海軍です」
「帝国海軍ではなくて?」
「帝国って、何十年前よ……」
きりさめが口を挟んだ。一方で、ぐんじょうとあさぎが顔を見合わせる。
「帝国……パールハーバーはもう終わったわ……」
「MrオバマとMrアベ、懐かしいですわ……」
第11航空戦隊は、どうするか困った。
「そんな! 榛名ァァ!」
「……お姉様、榛名は……だいじょう――」
「Noデース! 榛名、目を開けてくだサーイ!」
全く離れた海域では、黒髪ロングの和服少女が全身ボロボロで横たわり、茶髪ロングの和服少女が抱きかかえていた。
「金剛さん! 前!」
青いスーツの、茶髪ロングの女性が叫ぶ。見れば、敵の主砲がこちらを向いている。
彼女は死を覚悟し、瀕死の妹を抱き締める。
しかし、そこへミサイルが飛んできて、敵が吹き飛んだ。
「!?」
「ル級が!?」
振り返ると、見た事の無い3人の少女が海に浮かんでいた。
「そ、そんな! 勝手な武力行使は憲法違反ですぅ!」
「何で私が日本の憲法に縛られなきゃならないの」
「そもそも私は海賊対処しに――」
「いいでしょうが。人助けよ」
「でも、助けた相手が善人とは限ら――」
「あのバケモノとお話する勇気、ある?」
「うっ」
3人は、そんな口喧嘩を繰り広げている。
「ひゅうがちゃん、索敵のために艦載機飛ばした方がいいわよ」
「ニミッツさん! 私は真面目な話を――」
「先輩として言っておくわ。戦場に、ルールなんてありはしないわ」
「その通りだ。戦場なんて、『先に殺した者勝ち』だからな」
「それじゃあ、シビリアンコントロールは!? 正当防衛攻撃は!?」
「そんなの理想論だ。戦争に、綺麗事なんて存在しない」
「さすがシリア問題。トルコに撃墜されたのってSu-24? Su-34?」
「な!? 戦闘機は知らないわよ! それに、アメリカだってメキシコとの間に壁作ったり、中東からの入国禁止とかしてるでしょ!?」
「……それは何十年後かしらー」
「くっ、少なからず知ってる癖に」
文句を言われながら、金髪ポニーテールの少女が、アドミラル56と同じクロスボウを構えて引き金を引いた。
大量の蒸気が吹き出し、2本の矢が空へ放たれる。そして矢は、2機のターボプロップ索敵機・グラマン E-2C ホークアイに変化し、機体上部のレドームをくるくる回して索敵を開始する。
「一体、誰……?」
青いスーツの女性、足柄が呟く。そして彼女達の頭上をE-2C ホークアイが飛んでいく。
3人を見据え、足柄は20.3cm砲を向ける。
「あなた達、名前は?」
「ひぃぃ! 何か敵対心向けられてますけど!?」
「たかが20cmでしょう!? それくらいでびびるな!」
「現代艦の装甲は紙屑なんですよ! 20cmでも相当な被害が! 国民の血税で出来た体が!」
「軍艦は戦うためにあるんでしょうが!」
「私は護衛艦です!」
「同じでしょ!? DDH(ヘリコプター搭載護衛艦)なんて艦種記号、直訳すれば『ヘリコプター搭載駆逐艦』じゃない! 姿形は軽空母だけど!」
「空母ではありません!」
「ま、ピョートルちゃんは戦艦だから気にしなくていいものね。私とひゅうがちゃんはか弱い乙女だから」
「戦艦じゃない! 『原子力重巡洋艦』だ!」
「基準排水量2万t」
「ぐっ……!? てか、あんたも空母の癖に9万tあるだろうが!」
「そりゃあ原子力ですし? 艦載機いっぱいだし? 可愛い子分(随伴駆逐艦)達のご飯(燃料)積んでるし? 重くなるのも仕方ない!」
「開き直りやがった!」
そんな口喧嘩を、6人――足柄、那智、金剛、榛名、千歳、千代田――はぽかんとして見ていた。
やってみた。後悔はない。
改めて雪風を見返すと、7隻の軍艦が出ていて、DDG、CG、FFG、CVの文字が雪風のディスプレイにあるんです。FFGはむらさめ型では、と勝手に妄想しました。
しかし、TYPE2が突っ込んだDD-1025が何故かタイコンデロガ級なんですよ・・・