艦隊これくしょん 〜第0艦隊、参ります!〜 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
戦いを終え、ニミッツやアドミラル56達が鎮守府に帰投する。
「いやぁ、一捻りだった! よし、誰かビール持ってこい!」
左腕を水平にし、艦載機を着艦させるニミッツが言う。すかさずこんごうが突っ込んだ。
「アメリカ海軍では、艦内での飲酒は御法度だったはずですよね?」
「うぐっ、でも陸に上がればね!?」
「はぁ……」
「こんごうちゃん! 『こいつ面倒くせえ』という溜め息をつかないでよ! 私傷つくよ!?」
「いいじゃないですか、傷つくような物を持ってないんですから」
「ひっどーい!」
その横で、アドミラル56はF/A-27Cを着艦させていた。
「今度は、ちゃんと全機帰投か……」
アドミラル56が呟く。彼女の艦載機は、南極から帰投し、そして南極へ引き返した際に補充されている。南極でのジャムとの戦いで、F/A-27Cを6機も失った。さらにはイージス巡洋艦 CG-53 しんりょくが大破し、第1機動艦隊は5機のF/A-27Cとイージス巡洋艦あさぎを戦力にして南極へ向かった。
それが、気付けば二次大戦兵器が跋扈する世界で、正体不明の敵と交戦したのだ。溜め息が出ても仕方なかった。
「ふぅ……」
「ミラちゃんまで!?」
アドミラル56の溜め息を、ニミッツが勘違いした。そしてニミッツはしくしくと泣き始める。
「何でこんな不憫なのよ……イラクやアフガンを空爆したから? 私だって好きでした訳じゃないのよ分かってよ……」
「ニミッツさん」
こんごうが口を開く。
「ピョートルさんが、あなたは1980年から来たって言ってましたが、それが本当ならイラクやアフガニスタンを空爆した事は無いはずですよ」
「おっと失言」
ニミッツが舌をぺろっと出す。とりあえずこんごうはニミッツをぶん殴った。
「敵機動部隊を全滅しました」
艤装を外し、高速修理から出たニミッツを引き連れてアドミラル56とこんごうが、提督にそう報告した。提督は、筑摩の零式水上偵察機が撮影した写真を手に、何故か怒りに震えている。
「あの……どうしました?」
こんごうが恐る恐る尋ねると、提督は激昂した。
「『どうしました』じゃない! 無断での出撃及び交戦! しかも味方が1人小破! 下手をしていれば、君達は海の藻屑になっていたかもしれないんだ! しかも君達だけじゃない、下手に戦線を乱せば他の部隊も危険に晒していたかもしれないんだ!」
すると、怖じ気づく事なくニミッツが口を開いた。
「今回の無断出撃は、私の独断によるものです。私は、彼女達を脅して出撃させました。全て私に責任があります」
「ニミッツさん……!」
こんごう達が驚く。提督は、机を指でとんとんと叩き、口を開いた。
「それで、自分自身が小破か?」
「僚艦が被害を被るよりはマシです。自業自得で片付けられますから」
「どうして小破した?」
提督の質問に、思わずこんごうは肩を震わせる。何故なら、ニミッツを小破させたのは、他でもなくこんごうだったからだ。
「どうしてだ?」
「敵艦戦の機銃掃射を喰らいましてね、幸い飛び込んでくる直前に私の対空班が仕事してくれましたが」
ニミッツがそう答えた。提督が首を傾げる。
「未来からやってきた正規空母が、機銃掃射で小破?」
「割と私の装甲は紙屑で、まあ未来の軍艦の大半はそうですが」
ニミッツの受け答えに、提督は頭を掻いた。そして結論を出す。
「本来なら、営倉行きだ。だけど、君達は日本海軍に来てまだ間もない。よって、明後日の演習で、我が鎮守府の選抜部隊に勝利出来たら不問にする。二度とこんな事はするな」
提督の命令に対し、ニミッツ達は敬礼する。提督の「解散」という指示を受け、ニミッツ達は司令官室を出た。
「はふぅ……」
「ほっ……」
「ふへぇ……」
「はぁ……」
部屋を出て、ニミッツ達は溜め息をつく。そしてこんごうがニミッツを向いた。
「ニミッツさん、色々と申し訳ありませんでした」
そう言って、こんごうは頭を下げる。すると、ニミッツはこんごうの頭を撫でた。
「頭上げて、こんごうちゃん。あなたのパンチは、私の油断を直してくれたから、そのお礼よ」
「ニミッツさん……」
そして、ニミッツが手を叩く。
「さて、食い損ねた晩飯を食べに行こう!」
ニミッツの持ち前の明るさで、皆に元気が戻る。しかし、ひゅうがだけが暗かった。
ニミッツがそれに気付き、声を掛ける。
「ひゅうがちゃん?」
「私、何にも出来ませんでした……」
すると、ニミッツがひゅうがの肩を叩いた。
「そんな事無いって。陣形の後方で、対潜警戒してくれたでしょ? だから私達は気兼ねなく戦えた」
「でも……」
「あなたは『護衛艦』でしょ? 『攻撃』は、私達軍艦に任せなさい」
その言葉に、ひゅうがの顔が明るくなる。
「……はい!」
そして、食堂に入った。何人かがいるが、半分は晩酌している。
「あ、おかえりなさい」
カウンターにいた間宮がそう言った。ニミッツが笑って返す。
「ただいまです。ほら、皆も挨拶」
なので、こんごうが口を開いた。
「ただいま……?」
「どうして疑問形なの」
ニミッツが額を押さえながら言う。次にきりしまが挨拶した。
「ただいま。お腹減ったので、何か軽いものをお願いできます?」
すると、間宮が手を叩いた。
「焼おにぎりがちょっと残ってるわ。冷めちゃったけど、食べる?」
「いただきます!」
その光景を見て、ニミッツがこんごうとアドミラル56の背中を叩く。
「ほら、2人とも」
「無理ですよ。妹ほど人懐っこくないので」
「私は……人見知りなので」
「私もです……」
人見知りを公言したアドミラル56とひゅうがに対し、ニミッツが額を押さえ、「これだから日本の軍艦は……」と言った。
「おーい!!」
すると、誰かがニミッツ達を呼んだ。振り返ると、すっかり出来上がっている航空母艦・隼鷹が呼んでいた。彼女の周りには、同じく出来上がった千歳や那智、足柄、高雄、愛宕、陸奥がいる。テーブルの上には大量の瓶。
「…………」
こんごうとひゅうが、アドミラル56は何も言えない。きりしまは5人分の焼おにぎりを受け取り、ニミッツは間宮にビールを頼む。
「そういえば、ピョートルさんとぐんじょうさん達は?」
きりしまから焼おにぎりを受け取りながら、こんごうが辺りを見回す。
すると、焼酎片手に陸奥が言った。
「ピョートルちゃんはウイスキーで酔いつぶれて、ぐんじょうちゃんとあさぎちゃんは呑めないからって寝て、きりさめちゃんとありあけちゃんはとっくにおねむよ」
「ピョートルさん……」
こんごうがうなだれる。すると、足柄がこんごうの肩に腕を絡ませた。
「今夜は新人歓迎会よ! 朝まで帰さないわ!」
「私、呑んだこと無いんですが」
「……今回の新人は、やけにノリが悪いわね……まぁ、呑んでしまえばそれまでよ!」
そう言って、足柄はハイボールをこんごうに呑ませた。
「むぐっ!? ちょっ、足柄さん!」
「ほらほら、もーっとあるわよ?」
そんな足柄に、那智がストップを掛ける。
「足柄、嫌がってるだろう?」
「でも、分かり合うにはアルコールが一番よ」
見れば、いつの間にか席に座ったニミッツが、ジョッキでビールを一気飲みしている。そして隼鷹や千歳と打ち解けていた。
それを見て、こんごうが呟く。
「排水量9万tの空母が……」
その呟きに、足柄が反応する。
「え、ニミッツちゃんは、9万t……?」
「ええ、ニミッツ級空母は9〜10万tですよ」
足柄は、ニミッツと高雄、愛宕の胸周りを見比べる。胸囲は、高雄とほぼ一緒か、ニミッツの方が少し大きく見える。
足柄はグラスをこんごうに持たせ、ニミッツの胸を後ろから鷲掴みにする。
「うひゃぁ!」
ニミッツが驚く。そして足柄を振り返って見る。
「やりましたねぇ〜、足柄さぁん!」
そして、酔ったニミッツは足柄に襲い掛かった。
「ちょっと! ニミッツちゃん、そこは――」
しばらくお待ちください。
ぐっすり眠った足柄を、少し離れた席で寝かせ、縛り上げたニミッツを食堂の屋根に飾り、そして呑み会を再開した。
「にしても、皆して立派ねぇ……」
千歳がそう言う。千歳の視線は、こんごう・きりしま・ひゅうが・アドミラル56の胸に注がれている。
「これでも、装甲は紙屑だよ。ありんこ程弱いよ〜」
日本酒を呑まされ、真っ赤になったきりしまが言う。真っ赤になっても、羅列ははっきりしている。
「排水量は?」
「えへへ〜、乙女にそれ聞きますぅ? 7250tでぇ〜す」
そう言って、きりしまが倒れた。妹に排水量を暴露され、こんごうは頬を真っ赤にしながら拳を振り上げる。
「待った待った!」
愛宕と陸奥がこんごうを止める。そして、こんごうが吐き捨てる。
「今度一緒に出撃したら、90式(SSM-1B艦対艦ミサイル)で沈めてやる」
「ちょっと怖いよ!?」
「あらあら〜、怖いお姉さんね〜」
すると、那智が言った。
「7250t……もう軽巡洋艦じゃないか?」
「私は立派なイージス防空駆逐艦です! DDG(ミサイル搭載駆逐艦)です!」
こんごうが言い切る。そしてぐいっと焼酎を飲み、ひゅうがを見る。
「ひゅうが、あなたは?」
「ふぇっ!? 私ですか!? 1万……」
そこでひゅうががテーブルに突っ伏す。「もう殺して……どうせ私は憲法違反の軽空母よ……」と呟きながら。
なので、今まで一言も発していないアドミラル56に、皆の興味が集まる。
「皆して何ですか!?」
アドミラル56が、視線を察して胸を隠した。しかし、逆にそれが巨乳アピールになってしまう。
「ニミッツちゃんよりでかいの〜。何万tだい?」
隼鷹が、ビール瓶を抱えて言う。アドミラル56は、すっかり赤面して答えない。なのでこんごうが代わりに答えた。
「満載12万3000t」
「じゅうに……?」
「まさかの、6桁……?」
高雄と愛宕、陸奥、千歳、隼鷹の顔から血の気が引く。
「ば……化け物だぁー!」
その夜、鎮守府で騒動が起きた。