やがて我が身は剣となる。   作:烏羽 黒

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  今回の一言
 リューさんの道は決められた。

では、どうぞ


発見、それは正体

 剣士の朝は早い。

 習慣付いていた朝の四時起き。久しぶりにできた気がする。

 そのため今日はいつもはできない、朝のノンストップランニングをしようと思う。納刀状態だからね?

 勿論、気配を紛らわすことは忘れない。だって、朝から全力で走ってる人なんてただの変人じゃん。普通ばれないようにするでしょ。

 そして、一時間ジャストでホームに帰宅。鍛錬を始める。

 村では、朝は素振りのみをしていたが、オラリオ(ここ)に来てからは、架空戦闘も行うようになった。

 架空戦闘――――一度戦った相手を思い浮かべ、もう一度戦うこと。

 私の場合は、一対多数の架空戦闘を行うことが多い。 

 それ等を終え、大体六時半前後、ベルが起きる時間となる。

 一度、地下室へ戻り、料理を作って、食べる。

 因みに、今日は軽い物で、パンを切り、一口サイズにしたものを、揚げ、クラネル家特性ソースをちょっと浸けただけのもの。

 そして今日はベルから、一緒にダンジョン行こうと誘われた。なんでも、九階層まで行ってみたいそうだ。

 私はそれに応じ、ベルと共にダンジョンへ向かっていたが…

 

「おーいっ、待つニャそこの白髪頭と異常者。頼みがあるニャ」

 

 その()()()()()()()()()()()()()()言葉に私たちは足を止めた。

 白髪頭、それは確実にベルの事だろう。それは分かった。

 異常者?ハハッ、誰の事かな~ハハハッ。心当たりがあるから困るな~。

 なんて思いながら声のする方向に振り向く。

 

「あ、おはようございますニャ」

 

「「おはようございます」」

 

 って、異常者扱いされた人に、何を律儀に挨拶しているんだ私は!

 そして、手招きされたので素直に向かう。なんか本当の猫だな…猫人(キャットピープル)だからか。

 呼び止めたその人はベルに手を出すように言い、出し手に財布が一つ置かれた。

 

「おミャーにはこれをシルに届けてほしいニャ」

 

 …?どゆこと?なんでシルさんに財布?

 ベルも同じようなことを思っているのか、首を傾げていた。

 

「ニャかりゃー。おミャーはこの財布をおっちょこちょいのシルに渡すのニャ」

 

 いや、わからん。ベルが渡す理由は大体わかるが、なんで今?

 

「えっと…ごめんなさい、意味が分かりません…」

 

 そんなことをいったベルに猫人(キャットピープル)の人は心底不思議そうな顔をした。もしかして、伝わると思ってたの?

 

「アーニャ。それでは説明不足です。クラネルさんも困っています」

 

 堂々巡りが始まりそうだった所に、助け船が入った。リューさんだ。

 

「リューさん。私も居ますよ」

 

 言外(げんがい)に、ベルを名前で呼べと告げる。

 さて、ベルの反応はいかに

 

「そうでしたか。ではクラネルさん。説明させていただきます」

 

 あれ~?意味が伝わらなかったのかな?

 

「その財布はシルが忘れていった物です。そして、シルは今。怪物祭(モンスターフィリア)に行っています。今頃財布が無くて困っていると思うので、届けてほしい。と言うことです」

 

 うん。そっちは分かった。でも何でベルを名前で呼ばんの?反応見れないじゃん。

 

「わかりました。シオン、ダンジョン行けなくなるけど…いい?」

 

「いいですよ。ベルはシルさんを探しに行ってください。私はリューさんと少し。お話がありますので」

 

「話?まぁいいけど。じゃあね」

 

「はい。頑張ってください」

 

 そして、ベルは東のメインストリートへと走って行った。

 さて。

 

「リューさん。私言いましたよね?私とベルが二人でいる時は()()で呼んでくださいって。大事なことなので二回言いますよ。()()で呼んでくださいって」

 

「わかっています。ですから名前で呼びました」

 

 は?どゆこと?クラネルが名前……って

 

「…そう言うことですか…リューさん。言い方を変えます。今度私たちが二人でいる時はファミリーネームではない名前で呼んでください。いいですか。ファミリーネームはダメですよ」

 

「…念を押す必要ありますか」

 

「あります。ベルの反応が見れません。私はそれを()()楽しみにしているので次はお願いしますよ」

 

「…わかりました。善処します」

 

 善処ですか…まぁいいけど

 

「お願いします。それでは」

 

「はい。それでは」

 

 さて、私も行きますか。怪物祭(モンスターフィリア)

 

 

   * * *

 

 さて問題。私は今、何処を移動しているでしょうか?

 大通り?

 裏路地?

 いえいえ違います。

 正解は、屋根の上です! 

 大丈夫。気配を紛らせてるから、誰も私に気づいてない。

 何故かって?

 人が多いからだよ!

 普段のオラリオ以上なんだよ!おかしいでしょ!ただ歩いてるだけで疲れそうだわ!

 主に精神的に!

 と、そんな理由で屋根を跳び回ってる私です。

 まぁ移動楽だしね。欲しい物見つけたら、降りて買えばいいし。

 そんな大道芸―――誰も気づいてないけど―――紛いの方法で移動していた時だ。

 ビリッ。と体内に電気が走るような感覚を覚える。この感覚は…

 原因を探すために辺りを見渡すと、見つけた。

 それはある店の中。そこの二階に、神ロキと共にいた。当の本人はキョロキョロと(せわ)しなく首を動かしている。

 そして、私の方を見て、首の動きを止めた。どうやらあちらも気づいたらしい。

 それが誰かって?アイズだよ。

 小さく手を振ってみる。するとあちらも返してくれた。自然と笑みが零れてしまう。

 あっそうだ。

 魔力を使わなくても動かせる風を動かし、自分の口元から、アイズの耳元へ風を動かしながら告げる。

 

「今度会いに行きますね」

 

 そういった時、アイズはとても驚いていた。その反応で声が届いたことを確認する。

 私との距離は6Mも離れているのに、()()で聞こえるのだ。驚くのは当然だ。

 因みに、これはちょっとした技術だ。風で音を運ぶ。ただし強弱の操作を間違えると音が届かなかったり消えてしまったりとちょっと難しい。

 そして、アイズは首を縦に振った。恐らく『良い』と言うことだろう。

 良かった~と内心思った。

 いろいろ決めないといけないことがあるから断られたらどうしようかと思ったわ。

 アリア捜索の打ち合わせ日とか。

 まぁ、それはさておき、確認が取れた私はその場を去った。

 

 

 

――――――そして約二十分後。

 跳び回っていた私はとある人達を見つけた。

 その人達は、円形闘技場(アンフィテアトルム)裏口。そこから入っていった。

 それだけでは不思議に思わないだろう。それが【ガネーシャ・ファミリア】の人やギルドの職員なら。

 だが、明らかにその人達は違った。不審に思い。気配を追う。

 気配からして、入ってすぐの所に二人。そこに向かう一つの気配。そして、その後ろに一人。気配を()()()ついて行っている。

 気配を探知しているのに気配を消している人を見つけるのは変だろうが、別にそうではない。

 私の気配探知は、捉えたい場所すべての気配を探知する。気配を消している人を見つけられるのは、その人が居る場所の気配だけがぽっかり無くなっているからで、その人の()()()見つけていない。だが、存在は確認できる。

 探知を続けていると。向かっていた人が入ってすぐの所に立って居た二人に近寄る。

 そして何秒か留まり、去った。瞬間、()()()()()()()()()()()()()

 わからなかった。理解できなかった。

 ただ単純に、何をしたかが。

 その二人は、なにもされてないはずだ…なのにどうして…

 そんなことを考えている内にもさらに奥へと向かって行く。

 さすがにそんな遠くまでは探知できないので、私も後を追うように中へ入る。

 入ってすぐ、崩れ落ちた二人を見つけた。息はある。だが、体に力が入ってないし仮面から見える目の焦点が定まってない。

 益々わからん。何をしたんだ…

 原因を探るために、さっきの二人を追う。

 そして、視界内に入れた。直線距離約12M。

 その人は物陰に身を潜めある場所を見ていた。そこには数人の【ガネーシャ・ファミリア】の人が倒れている。

 数十秒経った。すると、一人のギルド職員が、倒れている人たちに向った。それと同時に、物陰からその人が出る。背後に近づき耳元に顔を近づける。

 

「動かないで」

 

 その人がそう言うとギルドの職員は動かなくなった。

 

「鍵はどこ?」

 

「ぇ……」

 

 その声に力は籠っていなかった。とても弱々しいものだ。

 

「檻の鍵は、どこ?」 

 

 檻の、鍵?なんの……まさか!いやでも、何のために。

 そう考えてるうちに、ギルドの職員は檻の鍵を渡していた。

 何故渡す!そう言ってやりたかったが、その人が立った途端に、バタリッ、と崩れ落ちた。

 するとその人は奥へと向かう。そこにはモンスターの気配。

 さすがにまずい。そう思ってからの行動は早かった。

 気配を紛らせながら接近。距離8Mを保つ。

 武装して気配を消している人、猪人(ボアズ)からその人が離れるのを待つ。

 数十秒後。モンスターが捕らわれているであろう場所の通路に入るところで、離れた。

 だが、そこに行く入り口には猪人(ボアズ)が留まる。その人に隙は無い。

 一か八か…やってみるか…

 

 風を動かす、気にならない、その程度の風。

 その風を猪人(ボアズ)の頬を撫でるように動かす。

 さっきからここには微弱ながら風が吹いている。だが、私の動かした風はそれよりほんの少し弱くした。この変化は人間では気づけない変化。でもそれは意識的なことの話。無意識は別となる。

 無意識の隙。それは人ではどうにもならないこと。それを突く。

 即座に動く、気配は紛らせ、足音を消し、心音も最小限に。呼吸も止め、できる限り音を消す。入り口に立つ猪人(ボアズ)の横、そこを通り過ぎる。

 そして、奥へ。振り返っても、私のことに猪人(ボアズ)は気づいていない。

 急ぐ、間に合うか、間に合わないか。その境目。抜刀

 その人が出していた鍵を、斬る。

 キンッ。と金属同士が()()()()()()()()()()

 それを認識するのと同時に後ろへ跳ぶ。次の瞬間、私の居た場所に斬撃が走る。

  

「あら、オッタル。誰も通さないように言ったはずだけど?」

 

 オッタル⁉都市最強Lv.7の【猛者(おうじゃ)】かよ!ちょっとやばいな…

 

「申し訳ございませんフレイヤ様。刀の音が聞こえるまで、気づけませんでした」

 

 フレイヤ。確か都市最大派閥の片翼に【フレイヤ・ファミリア】なんてのがあったな。

【猛者】もそこの所属だったか。

 

「オッタルが…ふ~ん。やっぱり面白いわね、あなた」

 

 やっぱり?つまり前から目をつけられていた?

 

「どうなされますか?フレイヤ様」

 

「そうね……」

 

 神フレイヤと思われる人物が私を見てきた。その瞬間()()()()()()()()()()()()()

 

「…なるほど、あのときの視線の人ですか」

 

「視線?私が見ていることに気づいてたのね、すごいわ。…それより、聞きたいことがあるのよ」

 

「ほぅ。いいですよ。あなたの持っている檻の鍵を今すぐ破壊するなら」

 

「あら、それは無理な相談ね。でも言わせてもらうわ」

 

 この人…人の話を聞かないタイプ?めんどくさいな…

 

「あなた、()()?」

 

 ()()か。まだまだだな。フィンさんの方がいい質問をする。

 

「わたしはね、魂の()を見ることができるのよ。それは、唯の一つの例外が無かった。でもね、あなたの魂の色が、()()()()()()

 

 魂の色が見える、か。面白い能力だ。でも私の魂は見えない、か…こりゃまた。

 

「もう一度聞くわ、あなたは何者?」

 

 その質問には答えない。単に答えるに値しない質問だからだ。 

 

「…答えないのね。じゃあ少し、話したくなるようにさせてもらうわ。オッタル」

 

「はっ!」

 

 名前を呼ばれた【猛者】はその場から、()()()

 

 

 

 




 原作との違い。
 リューさんの説明!
 フレイヤとオッタルが一緒にいる!
 以上!
 
 オッタルの一人称って、俺?それとも私?

  結果
 感想により『我』にさせていただきます。

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