やがて我が身は剣となる。   作:烏羽 黒

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  今回の一言
 短くなっちゃった。

では、どうぞ。


幸運、それは小さな出会い

 お祖父さんと最後の会話を交わした次の日。言っていた通りお祖父さんは崖に落ちたそうだ。実際に私は見ていない。現場に居たらいつもと違った行動をしている私を、ベルが怪しむかもしれない。という理由だ。

 その日の夜、ベルは一晩中(言葉のまま)私に抱き着いて泣き続けた。それに私は付き合い、(なぐさ)めていた。

 そして、『自分が死んだらベルに伝えてくれ』と、言われていたこと伝える。お祖父さんが言いそうなことを勝手に追加して。

 簡単に内容を言うと

 

「覚悟があるなら、【世界の中心(オラリオ)】に行け」

 

 というものだ。勿論ベルはそれに従い、その日のうちに【世界の中心】に向かう準備を整えた。

 私はベルに『何を求めにベルは行くのですか?』と聞いたら、『可愛い女の子との出会いを!』と元気よく即答された。

 曰く、お祖父さんから【迷宮(ダンジョン)】で女の子を助けたら仲良くなれるかもしれんぞ。とか、男ならハーレムを目指さなきゃな!。などと言われていたらしい。私はそんなことを言われたことが無かったかが、私の気持ちを一番知っているお祖父さんは、言う必要が無いと思っていたのだろう。

 そして、現在は村から出る御者の人たちと交渉をしている。今まで、二度交渉し、全部断られた。現在は三度目の正直と言わんばかりに交渉しているところだ。

 

「お願いします!」

 

「う~ん、そうだ。条件を飲んでくれるならいいよ」

 

「本当ですか⁉ では、その条件とは」

 

 思わず大声を出してしまったが、まだ油断はできない。気を引き締め直して慎重に問う。

 

「条件は三つ。一つ目は二人で千ヴァリス払うこと。二つ目はモンスターに途中で襲われたら、全身全霊を持って撃退すること、そして三つ目がお前のさんの髪を切ること」

 

「よかったぁ、そのくらいなら……え? 髪を切る?」

 

 一つ目や二つ目の条件なら、意味も理解でき、実行も可能だ。だが、三つ目の条件の意味が分からない。

 

「お前さんのその髪、長すぎて車輪に引っかかるかもしれないからね。危険はなるべく無くしたいんだよ」

 

「そういうことなら……」

 

 私はあまり気にしてなかったが、実際、髪の毛はずっと伸ばし続けたせいか、身長が高い方である私が背伸びしても地面に髪の毛が着く、と言うくらい長かった。

 

「じゃあ来な。私が切ってやる」

 

「はい?」

 

「私は孫がいるんだけどね、そいつらの髪の毛をよく切ってやってるから慣れてんのよ」

 

「そうですか、ではよろしくお願いします」

 

 刀で適当に切ろうと思っていたが、やってくれるならそれに従っておこう。別段、髪型にはこだわりは無いが、変にはされないことを願っておくが。

 そう思いながら私は御者のお婆さんについて行った。

 

 

   * * *

 

 結論から言うと、本当に任せてよかった。

 髪は綺麗に整えられ、髪型は偶然か、子供の時に見たアイズ・ヴァレンシュタインさんと同じような髪型にされていた。

 髪を切り終わり、その後、ベルの所に御者台に乗せてもらえることを伝えに行くとベルに驚かれ『お兄ちゃんって見た目で男ってわからないよね…』と言われたが、正直意味が分からない。

 そして今は、ベルと共に御者台に乗っていた。御者台の乗り心地は良くも悪くもない、と言ったところらしいが、道が酷かったようで、途中でベルが二度ほど吐いていた。

 ユリシアさん――――御者のお婆さんの名前――――によれば、【世界の中心】までの所要日数は(おおむ)ね一ヵ月だそう。

 

 

 

 一週間が過ぎた。 

 始めは、長い! と思っていたがそうでもなかった。移動中は睡眠と会話と食事、時々戦闘。という具合だったし、夜、移動していないときは他の人たちは寝ていたが、私は素振りや走り込み、時々戦闘と言う具合だった。

 暇と言うことは無く、むしろ得になったくらいだ。情報も手に入り、実戦もできた。

 実戦で使ったのは、お祖父さんから託された刀。業物ではないが、三年ほど使い続けている。素振りもこの刀を使い、今では相棒のような()()だ。

 

 

 二週間目。 

 最近はモンスターが姿を見せなくなった。少し残念。

 でも収穫があった。ユリシアさん曰く、モンスターが落とした『魔石』と言う物は【世界の中心】にもある『ギルド』と言う場所でお金に換えられるらしい。物珍しかったので拾っていたが、どうやら役に立つようだ。

 

 三週間目。

 ベルに私のことを名前で呼ばせるようにした。「お兄ちゃん!」と元気よく呼んでくれるのは嬉しいが『迷宮(ダンジョン)』で一緒に戦う際には名前の方が短くて呼びやすいだろうという理由に納得してくれた。

 そして、四週間目

 ついに【世界の中心】に着いた。

 

「やっと着きましたね。待ちわびました」

 

「そうだね! たのしみだな~」

 

「そうですね。楽しみですね」

 

「次の方、どうぞ」

 

 門衛にそう言われ、ユリシアさんが門の前に向かっていく。

 

「はい、通行証だよ。あと、後ろに子供が二人乗ってる。冒険者志望だそうよ」

 

「わかりました、では冒険者志望のお二方、こちらへ」

 

 そう言われ、制服を着た人たちが立っている場所へ促された。私たちは最後にユリシアさんへお礼を言い、促された先へと向かうと、上半身の服を脱ぐように言われた。ベルと私が服を脱ごうとすると、何故か私だけ個室へ案内された。おかしなことでもしたのだろうか?

 そして脱ぎ終わると、何か不思議なもので背中を照らされた。どうやら【神の恩恵(ファルナ)】の有無を調べる【魔道具(マジックアイテム)】らしい。

 直ぐに調べ終わり解放されると、外にはベルが待っていた。私に気づきやってくる。

 

「ねぇ、なんでシオンだけ別の場所なの?」

 

「私が聞きたいです」

 

 そんな会話をしながら門を抜けると私たちは唖然とした。

 まず。人が多い。

 村では年に数回お祭りが行われ、人が一挙に集まるが、そんなのが(かす)むくらいの人の量だ。

 そして、様々な種族が居る。

 視界に入っている者だけでもヒューマンは勿論のこと、エルフに犬人(シアンスロープ)猫人(キャットピープル)小人族(パルーム)狼人(ウェアウルフ)やハーフエルフまでいた。

 何より、外からも見えた白亜の巨塔、外壁越しにも見えたので、かなり高いと思っていたが、外壁で隠れていた部分も見えるとさらに高く感じた。

 

「ねぇねぇシオン」

 

 と、ベルが早くも回復し、私の服の裾を引いていた。

 

「【世界の中心(オラリオ)】ってすごいね!」

 

「当たり前でしょう。世界の中心ですよ。さぁ、早いところギルドに行きましょう」

 

「うん!」

 

 ようやくその日から、私たちの【世界の中心】での生活が始まった。

 

 

 




  オリキャラ紹介!
この後書きでは、新たに出て来たオリキャラの紹介をしたいと思います!
今回のオリキャラは
御者のお婆さんこと、ユリシアさん!
この名前になった訳は、
御者→リゼロ→ユリウス→白鯨→テレシアと脳内でなり。
ユリウスのユリ、テレシアのシアを合わせてユリシア。
つまり、思いつきです。理由は無い。

それでは、これからもよろしくお願いします。

3/23.ちょっと修正させていただきました。
7/5 加筆修正(暇つぶし)

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