動きを表すのって難しい……
では、どうぞ
眷属、それは家族の証。
「ここがギルドですか」
私たちは今、白い柱で作られた
「さぁ行きましょうか、ベル」
でも、いつまでも驚いているわけにはいかない。私にも目的があるのだ。
歩みを進めギルドに入ると、外ほどではないが、多くの人で混み合っていた。
「ベル、少し失礼」
返事を待たず、ベルの手を掴み、引き寄せる。そして、人の合間を縫って『受付嬢』と言われる見目麗しい女性達がいる場所に向かう。幸い、人が並んでいないところがあり、そこに止まる。
そして、ベルを離し一息。人混みはやはり慣れない。
「あの、冒け……」
「ちょっとシオン! いきなり引っ張らないでよ! びっくりしたじゃん!」
「いいえ。一言ちゃんと言いました」
「あのー、ご用件は……」
私が受付嬢に話しかけようとしたらベルに大声で遮られ、反射的に言い返すと受付嬢が困った声を出していた。
「すみません。冒険者……」
流石に公の場、物事はなるべく早急に終わらせるべきだろう。だが、ちょっと面白いことを思いついた。思わず続きを述べる口を止める。視線は一点に固定、目の前の受付嬢にだ。
「ベル、今のうちに女性に慣れておきましょう。ベルは村であまり女性と関わることが少なかったですよね? ですから、少しでも多く女性に関わって慣れましょう。まずは会話からです」
「えぇっなんでぇっ⁉ シオンがやってくれないの⁉」
「援護はします。頑張りなさい」
「で、でもさ、な、なんというかぁ……」
「ほら、受付嬢の方も困っています。早くしてください」
渋りに渋るベルを見て、このままだと長引くと簡単に予想が付く。長ったらしく待つのも嫌だし、良心をくすぐる催促をかけた。
「うぅ~わかったよ…」
「あの、そろそろ、ご要件を…」
あっけなくそれで承諾するベル。諦めたように項垂れると、待つのに懲りたのか受付嬢が申し訳なさそうに笑みを引きつらせて聞いて来た。
「あ、はい。初めまして。僕はベル・クラネルと言います。ここで冒険者登録ができると聞いて来たんですが……」
意外と普通に対面できているのに驚きかけたが、目が合ってない。なるほどそれならまず納得だ。
『冒険者登録』これはユリシアさんから教えてもらったことだ。なんでも、魔石の換金など、様々なことが便利になるらしい。
そう、私たちは、ユリシアさんからたくさんのことを教えてもらった。今現在ベルが知ってるオラリオの知識の大体はユリシアさんから教えてもらった知識だ―――私はがお祖父さんから事前にいろいろ聞いていたから、大体とは言えないが。
「はい。冒険者登録ですね。それと、申し遅れました。私は、ギルド受付嬢兼冒険者アドバイザーのエイナ・チュールと申します。以後お見知りおきを」
承諾ついでに礼儀正しく礼をして、簡単に自己紹介を混ぜる彼女に、ベルはした自己紹介を私がしていないことを思い出し、念のためにとしておく。
「あ、因みに私はシオン・クラネル。ベルの
「はい、こちらこ……えぇぇ⁉ 男性の方だったのですか⁉」
何故か盛大に叫ばれ衆目を集めるが、気にしないで置いた方が吉か。
「はい、そうですが。女性と勘違いしてました?」
「え、えぇ。とても綺麗な方だなと……」
「それはありがとうございます。あなたもとても綺麗ですよ」
「あ、ありがとうございます」
社交辞令的に返しに若干頬を赤らめると言う純粋さ。こういうことを言われるのは慣れてそうなのに、一体どうしてだろうか。
「シオン、なんか手慣れてるね」
「手慣れる?何がですか?」
「自覚無いんだ……」
考えは謎めいたベルの発言に中断され、戻ってくることはない。
呆れが垣間見えるのは気のせいでは無い様で少し気になってしまう。
「さぁ、早く登録を済ませましょう」
だが今はこちらが先だ。早々に澄ませて早いところ活動を始めたい。
「あ、冒険者登録でしたね。でしたら、この書類に名前とファミリアの記入をお願いします」
「あ、あの……まだ僕たちどこのファミリアにも所属してないんですけど……」
「そうなんですか……でしたら、登録なさらないことをお勧めしますが……」
悪びれるように引け腰でそう聞くベルは、少し悩んだ様子を見せた彼女の様子に何故か焦りながらも、聞こうと言う姿勢は保っている。
だがそこではなく、私は別の所が引っかかった。
「どうしてでしょうか? 上層くらいなら【
―――――上層、それは【
上層程度なら簡単に潜れるだろうと思っていた。なにせ、お祖父さん曰く地上のモンスター100体分がだいたい上層のモンスターの強さと言っていたのだから、想像に難くない。つまりは雑魚だ。
「許可できません」
「あはは、それはシオンだからだよ」
「そうでしょうか?」
何故か頑なに思える声で突っぱねられ、ベルにまで苦笑を返される始末。疑問を覚えてしまうのは仕方のないことだが、聞く前に続く声。
「シオンさんの実力を私は知りませんが、いくら強さに自信があっても【迷宮】を甘く見ないでください。私はそれでここに姿を見せなくなった冒険者を何人も見てますから……」
そう語る彼女は何処か辛そうに思えた。
実際にそうなのだろう。受付嬢はギルドの顔らしい。そしてギルドの中で最も多く冒険者と関わる役職であり、冒険者をよく知ることになる役職だ。
つまりは、だれが死ぬかも知れて、誰が生きているかも一番知っている。一番判らせられ、嫌々言っても
優しい心の持ち主だと目に見えて判る彼女は、こういったことに心底弱そうで、多分ずっと引きずってしまう
「わかりました。ベル、仕方がありません。どこかのファミリアに所属してからまた来ましょう。女性に辛い思いをさせることは良くないです」
『女性に辛い思いをさせるな』お祖父さんからの教えだ。お祖父さんの言うことは大体が正しいので従っておく方が良い。
「うん……そうだね。それじゃあ、エイナさん。また今度来ますね」
「はい。お待ちしております」
そして、私たちはギルドを後にした。
* * *
結果から言おう、ダメダメだ。なんでこう上手く事が進まないのやら。
私たちはギルドを後にして様々なファミリアの元へと向かった。
そして、今は裏路地にて座り込んでいる。
「「はぁ~」」
私が溜め息をつくと同時にベルも溜め息をついた。その行動に二人で顔を見合わせ、苦笑い。今はそんなことしかできない状況であった。
「ごめん、シオン。シオンだけならどこのファミリアにも入れたのに……」
そう。私は今まで言ったファミリアすべてから入団の許可を得ていた。
体格は身長以外ただ痩せているようにしか見えないだろう。実際は鍛えているお陰で結構なことになっているのだが。だから判断基準は判りやすい。
武器だ。
私はそれを持っていたから良くて、見た目だけで駄目と判断されたのは、武器を持ち合わせていないベルだ。
「気にしないでください。私はベルと同じファミリアに入りたいですから」
だが、全て断ってきた。その訳は、全てのファミリアがベルの入団を許可しなかったから。
それに。見た目だけで人を判断する程度の所など、こちらからお断りである。実際全部断って来た。
「ですが、どうしましょうか。このままでは路頭に迷いますよ」
「そうだね……まだ諦めていられないよね!」
ベルが気合を入れなおしたかのように立ち上がる。だが、私は立ち上がっただけではなく、腰に帯びていた刀に手を掛け、ある一方向に視線を向けていた。
「どうしたのシオン?」
「誰だ」
警戒しながら、向いている方向、影の中から聞こえる足音の主に問う。普通に足音が近づくだけなら私も警戒したりはしない。だが、そこから漂う
足音が近づき、影の中からその主が姿を現した。
その正体は、身長は子供と同程度で不釣り合いなまでに大きいものを持ったツインテールの女の子だった。
それを見て一瞬警戒が緩んだが、再度警戒する。
「初めましてだね。早速で悪いんだけど」
良く響く綺麗な声を発しその
「ボクのファミリアに入ってくれ!」
そのお願いに対する私たちの返事など、言うまでも無いだろう。
まぁ土下座についてですが、表すのが下手ですみません。
それと、ヘスティアとタケミカズチはこの頃にはもう下界で会っていた。と言うことで。