慧香サイド
「さてと、剥ぎ取りしようぜ。剥ぎ取った素材がないとクエストを達成した証明にならないからな」
アンディさんが滝つぼの方から戻ってきて磔にしたままだったドスファンゴの剥ぎ取りを始めてます。
その顔にはさっきまであった苛立ちはないように見えました。
「アンディさん・・・・・・その、さっきはありがとうございました。
・・・・・・・・・アンディさんは、殺しに躊躇はないのですか?」
「そりゃ、竜型の時にハンターに襲われたりした時は撃退するけど、縄張り争いや密猟者との戦いでは殺さなきゃ殺される。
それに密猟者は殺した方が世間の為だしな」
そのあとは特に何も言わず黙々と剥ぎ取りをしているアンディさんに続いてアグナさんも剥ぎ取りを始めました。
確かにハンターでなく狩られる竜族にとっては正当防衛なのかも知れません。
・・・・・・私も剥ぎ取りをしましょうか。
~~~ワールドマップ移動中~~~
「クエストお疲れ様でした!またいらっしゃってくださーい!」
「ざっと1500zくらいか・・・・・・サb」
「サボテンの花なら買い込んだからいらねぇぞ」
「・・・・・・・・・・・・ならいい」
という訳でユクモ村に帰ってきました。
クエストカウンターで契約金と報酬をもらって、集会浴場を出ました。
アグナさんはさっき受け取ったお金と素材を確認し、それぞれに500zずつ配ってくれました。
「これが初めての慧香のハンターとしての稼ぎだ。
大事に使ってくれ」
「分かりました!それじゃアグナさん、アンディさんもユクモ温泉たまご食べませんか?」
このユクモ温泉の湯で仕上がった温泉たまごはそんじょそこらのものとはわけが違うと父さんが言ってました。
たしか、村の入口の近くに売ってあったはず・・・・・・・・・
物思いにふけていた私はその時、背後から近づいてくる一人の女性に気づきませんでした。
「そうりゃーーーーーーー!!!!!(モニュモニュ)」
「フヒャア!!!!!」
い、いいいい今、む、むむむむ胸を!!
「うお!?アグナ、どうした!?」
「・・・・・・・・・・・・見知らぬ女が慧香の胸を揉みしだいた」
「揉みしだいたなんて言わないでください!
な、何なんですかあなたは!?」
慌ててその手を振りほどいて振り返るとそこには赤色の髪を生やした黒目の女性━━━━いや、少女が立っていた。
背丈は私よりも少し低くて、この地方でよく現れる私が襲われたジンオウガの素材を多く使用した『ジンオウシリーズ』を着込んで腰に片手剣を吊るしていた。
「フムフム・・・・・・大きさ、感度、弾力共にAAAですね。
そして仄かに乙女のラブパワーも感じられます。
なかなかの良物件ですね~~」
「ラ、ラブ━━━って何なんですか!!!」
流石に階段の中央で口論するのは迷惑なので階段を降りきったところまで降ります。
その女性も私たちの後をトコトコとついてきました。
「こりゃあ失敬失敬。私はローレと言って、見ての通りハンターを営んでおる者です。
御三方にはこのユクモ村に滞在するハンター一同からお礼を申したく、声をかけさせていただきました」
一見フランクな見た目とは裏腹に、案外礼儀正しい人なのかも知れません。
・・・・・・・・・胸揉まれましたけど!!!
「へぇ、そんでお礼ってのは具体的にはどんな?」
「はい、今夜の夕方にユクモ村の下手にある『詩吟屋』という旅館の広間で宴会をしますのでその主役として参加願いたいのです。
もちろん、ごちそうも沢山あります」
「そうか!だったら断る必要もねぇな!
こっちも飯代が浮くし利害が一致するしな。
アグナ、今夜の予定は決まったぞ!」
━━━本当にアンディさんは食べ物の話に弱いですね。
アグナサイド
『あ、ちなみに詩吟屋の目印は木彫りの荷台を引くガーグァです。
目立つのでまず間違えないと思います。それでは!』
そう言ってあのローレっていうハンターは風のように走って階段を降りていった。
階段を踏み外さずに降りていく姿からかなりの実力者であろう。
「・・・・・・まだ昼過ぎだし、一度宿に帰ってから再度出直すか」
「そうだな。それじゃアグナ、先に宿に行くぜ」
「アグナさん、お先に失礼します」
二人と宿屋の前で別れて再び一人で集会浴場に向かう。
クエストカウンターには向かわず、ユクモ村の名物である温泉に入りに来たのだ。
中に入ってみるとちょうど昼過ぎなので誰もいない。
「貸切状態だな、まぁ静かに越したことはないが」
脱衣所で服をまとめ、インナーとタオルを用意して湯船へと向かう。
暖簾をくぐると温泉特有の濃く、匂いがほのかに香る湯けむりと集会浴場の縁から眺めることの出来る渓流の風景が待ちかまえていた。
そのまま湯船へと入り、ゆっくりと肩まで湯に浸かるように腰を下ろす。
「ふぅ。流石は名高いユクモの湯、そこらの湧き水とはひと味違うな」
曲がりなりにも海竜種である俺は水などの液体に対して少し敏感で、水か湯かでなくその成分を感じ取ることが出来る。
そんな俺からしてもこの温泉が見事の一言に尽きる。
俺がここに来た理由の一つはゆっくりと湯に浸かりたかったと言うことでそれはまず達成した。
そしてこの集会浴場に来た二つ目の理由は、
「おー、ここにおったか」
「老師に呼ばれたとなれば来ないわけには行かないでしょう。
せっかく、人避けまでしてもらってはなおさらですしね」
「こりゃバレてしもうたか」
湯船に漂う煙がフッと薄くなり、一人の男が現れた。
俺が老師と言ったが実際はまだ人で言うところの40代後半くらいなのだが、引き締まった筋肉と白い髭がどうしても『師匠』、『老師』といった印象を与えてくる。
俺がここに来た理由の二つ目がクエスト帰りの時に湯船に使っていた老師と目が合ったからだ。
そしてこの人は俺の恩師でもある、すなわち人では無い。
「お久し振りですね、アマツ老師。ライガなら元気にしてますよ」
そう、この人はあの古龍種に名を連ねる龍の一体。
嵐龍アマツマガツチ、その人(?)である。
ライガは孤島に住み着く前にこの渓流で縄張りを張ってたらしく、アマツ老師の留守中に老師の縄張りの霊峰に忍び込んで大目玉をくらい渓流を追い出されたとのことらしい。
「して、アグナよ。おぬしはあの金色の狩人をどう見た。
各地を回ってきたおぬしの慧眼、腐ってはないだろう」
「そうですね・・・・・・あのハンターのような者を何人も屠ってきた俺としてはまだまだ『弱い』という範疇に入るかと」
さっきのクエストで襲撃してきたハンターは確かに優れた武器を多く所有していた。
しかし所有するのと使いこなすとでは全てが違う、あのハンターはまさにそれだった。
あの男の放ったような攻撃を何度も経験してきた俺にとってはただ撃つだけでは話にならない。
「・・・・・・あのハンターの死体を調べた時、やはり神の力の作用があった痕跡を見つけました。
本人の証言から見てやはり━━━」
「そうさな、十中八九あの『転生者』という部類であろう」
『転生者』━━━それはこの世界とは別の世界、平行世界とても言うべき場所で死んだ者が世界から切り離される時、別の世界にその記憶や特殊な能力を有して別の個体として蘇るという神々の遊びの一種である。
神々は気まぐれで人を転生させ、その一生を見て一喜一憂するという、こちらの世界の住民としては傍迷惑はことこの上ないことをしてくる。
古龍種の頂点に座す祖龍ミラルーツを始めとした古龍種や特異個体と部類される竜族で転生者を始末してその数を減らしている。
しかし始末すると言っても、すべてでは無い。
この世界に対して有益な転生者は生かし、悪影響にしかならない転生者を殺すという、いわば自然の自浄作用を行っている。