「待ってください!私たちはっ…」
「待った、あんたもみたところコイツの仲間かなんかでしょ?これはあたしと…こいつの間だけの、当人同士でしか解決できないことさ」
当人と言って、俺の額に当てていた銃口をグリグリと押し付けてくる…微量ながらも、火薬のような匂いがする。
こいつの銃はモデルガンなんかじゃない、間違いなく本物の…使用されて間もない、本物の銃だ。
「当人って‥私たちは、この街には来たばかりですよ!?」
「ハッ!笑わせる…正直に言えばいいもんを…ねえ」
だめだ!ファリニスの話も俺の話も聞いてはくれそうにない、完全に俺たちとは関係のない話のはずだけど、目の前のコイツは完全に俺を関係者だと誤認してしまっている。
このままだと引き金を引かれるのも時間の問題か…冷静に考えろ、このままじゃ俺の頭に風穴があいて、旅の始まりで人生が終わる。
ならもう、選択肢は
「ひとつ!」
俺はファリニスに気を取られたままの奴のスキをついて、頭を下げてから素早く銃身を掴みにかかった。
不意打ちで行った行動のため引き金を引かれる前に銃身を強く掴むことができた、目の前の奴が混乱しているうちにと俺は強く握った銃身の銃口をそのまま上に持ち上げて天井に向かせた。
パァンッと軽い発砲音の直後、天井のインテリアの一部である洒落た電灯のガラスがパリンと割れてテーブルに降り注ぐ、俺たちの体にはなんとかガラスを飛んでこず安全だった。
「キャァッ!?」
「こいつっ!」
掴まれたままだった銃身に手をかけ、彼女は力いっぱいに俺の手を振りほどく!
女性とは思えないほどの力が伝わってきた、銃身を力いっぱい掴んでいたはずだか奴の力には敵わず、無念にもその手の離してしまった。
オレンジ髪のそいつが、銃を手元に戻し後退してから…改めてこちらに銃口を向けた、距離は2mといった具合か
「あんたの言ってること、さっぱりだ!この街に来たのも初めてだし、あんたと顔を合わせたのだってこれが初めてだ!」
知ってる限りの事実を話す、これしか俺にはできないことだ…コイツに伝わるとは思えないけど、正直こんな言い訳にしか聞こえないことしか言えない。
ファリニスは黙ったまま、俺の背中に来ている…隠れているわけじゃなく、万が一何かしらに備えているような…そんな空気を感じた。
「ここまでしておいて、まだシラを切るつもり!反撃してきたってことは、あたしだって黙っちゃいられないよ!」
銃のマガジンを抜き、再装填、弾切れを起こすことのようなアクシデントは期待できなさそうだ。
銃口を三度向けられて、俺は…
とっさに大きく腕を広げて、ファリニスの壁になる
「俺はまったく関係ないけど、撃って気が済むなら撃てばいい!ただ…ファリニスを傷つけるのだけはやめろ!」
「セ‥セグレトさん!?それは…!」
ファリニスの言葉を制して、俺は自分の言葉を続ける。
「あんたもいったよな、<これは当人同士の問題>って…なら、あんたの言う当人が俺なら、ファリニスは関係ないはずだ!」
「…!!」
銃を構えたまま、そいつはハッとした表情を見せる。
俺は動じない、動けば‥また、ここで逃げたら俺は、俺の心が死ぬからだ
逃げるわけには行かない!
命を助けてくれたファリニスを、いつだって俺が助ける!
「そこまでです、お二方」
「!」
俺でもない奴でもない、ファリニスでもない声が聞こえた。
それは少し前に聞いたような声、俺の左隣から聞こえた…ん?
まてよ?俺の左隣は…壁だ、壁から声?んなわけない…
じゃあ、壁の向こうから?
壁の向こう側は…キッチン、厨房だ
「特にルゼフィア…何をしてるんです?」
カウンターの奥から、カフェオーナーがさっきと変わらない表情でゆっくりと出てきた…その表情で眼差しは俺たちではなく、ルゼフィアと呼ばれたオレンジ髪の彼女に向けられている。
そんなオーナーの姿を見て、銃をサッと素早く下げて焦ったような顔を見せ始めた。
「えっと、お、おおおオーナー!いやこれはその…」
「店のライトをひとつ壊して…お客様に迷惑もかけて、どういうつもりだと聞いてるんです」
ビリビリ…と、なにかいやな感覚が伝わって来るのがわかる…。
「セ…セグレトさん…」
「ああ…なんとなくわかる」
只者じゃない…いままで威勢の良かった彼女が、あんなに萎縮してしまっているし…なにより空気がガラリと変わった。
あのオーナーがカウンター側から出てきて言葉を発してからだ、張り詰めるよりも、鋭く尖った…居心地の特に悪い感覚だ。
「割れたガラスを片付けなさい、話はそれからです」
「は…はいぃっ!」
あわててルゼフィアはカウンター側に向かっていき、ガタンゴトンと激しい音を立てながら箒とちりとりを慌ただしく持ってきた。
そして、テーブルクロスを引いて床に落としてから、ササッとほうきとちりとりを使って掃除し始める。
「しっかりとやりなさい…ああ、お客様の方はお怪我は?」
「へ?あ、ああ‥いや、なんともないですよ」
もうちょっとでピアス穴よりもでっかい穴が頭に空きそうだったけどね、とか思ったけどそれを想像すると嫌な気分になるので、まあ…口に出すことはなかった。
飛び散ったガラス掃除をせっせとしているルゼフィアをよそに、俺たちはオーナーに案内されるがままに、カウンター奥のスタッフルームへと案内されていった…。