ホワイト・エンゲージ   作:リファ

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第20話

ファリニスの足を治療を終えてからほどなくして 場所を移そう というルゼフィアの提案に賛同して俺たちはカフェを後にした。

ファリニスの足の傷はまだ閉じてない、治療したばかりで無理をさせたくないが、大丈夫ですよ!という彼女の強がりの含んだ言葉を尊重してゆっくりとしたペースで道を歩いていく。

 

 

 

 

「ここいらの公園でもいい?」

 

 

 

 

ルゼフィアの指さした方向には、少々小さいがベンチの設置されている休むには十分なスペースのある公園だった。

足をかばいながら俺の後ろをヒョコヒョコとついてくるファリニスを気遣いながら、俺たち3人は全員公園のベンチに腰掛けた。

 

 

 

 

「しっかし…あんたたちも、こんな時代に旅なんてよくやるね」

 

 

 

 

左端で足を組みながら、ルゼフィアは気さくに話しかける。

長いスカートをベンチに挟んで、裾を地面に付かないように…なにげない場所にも気配りができているし、粗い性格だとも思ったけど、意外と細かいところもあるようだ。

 

 

 

 

「旅っていうか、研究の為のフィールドワーク…って言ってもそんなに変わらないか」

 

 

 

 

「かわりますよー!バックパッカーの方々とは目的も全然違いますから!」

 

 

 

 

ベンチでゆっくりと座って談笑する、時間にして20分ほどだっただろうか?主にルゼフィアからはこの町の話を、俺たちからは俺とファリニスが出会った時のことを話していた。

思念集合体やらポケモンという種族の存在、という話は伏せて…だが

 

 

 

 

「じゃあ、ルメタルシティは発展途上の街なんですね」

 

 

 

 

「そういうこと、元から建築関係だの土木だのって仕事は多いみたいだけど…ま、あたしはそういうのは苦手でね」

 

 

 

 

バウンティハンターで賞金首を捕まえる仕事のほうが俺にはキツそうだけどな…という言葉を飲み込んで、おれは話を聞く態勢に戻す。

 

 

 

 

「発展途上の街って警備も大変らしくてね~…あたしはよくわかんないけどさ、なんか賞金首もこういう忙しい街に入りたがるとかなんとか」

 

 

 

 

「そういうもんなのか…」

 

 

 

 

「それはそうと、なんか飲みたいもんある?」

 

 

 

公園のすぐそばには、自動販売機があったようだ、自分の小銭入れをポケットから無造作に出して中身を確認。

…見ただけでなんとなくわかる、重量感があるというかなんというか。

 

 

 

 

「おれはなんでもいいかなぁ…ファリニスは?」

 

 

 

 

「え、あ、えっと…サイコソーダで」

 

 

 

 

俺が話しかけた時、ファリニスは口元に手を当てて考え事をしている仕草をしていた。

なにか引っかかることでもあったのだろうか?とルゼフィアが公園入口の自動販売機まで行くために席を外した時に、こっそりと聞いてみた。

 

 

 

 

「…なにか気になることでもあったのか?」

 

 

 

 

「ん…いえ、そんなに、大したことじゃないんですけれど…」

 

 

 

 

 

 

 

「賞金首を狙って稼いでる、バウンティハンターのいる町にわざわざ狙われる危険性の孕んだこの街にやって来るっていうのも変じゃないですか‥?」

 

 

 

 

「あ…でも、ルゼフィアの言うように警備がザルってことじゃないのか?それを狙って…」

 

 

 

 

「どうなんでしょう、もしも私が狙われる身ならこういったバウンティハンターの本拠地のなさそうな道端で生活でもしてそうですが…」

 

 

 

 

 

たしかにファリニスの言うとおりなのかもしれない

俺たちがルメタルシティまできた道のりでも、鬱蒼と茂った森の中にテント張って生活だって出来そうなものだ、森の中に食料でもあれば…だけれど

 

 

 

 

「街の中にいないと生活ができないんじゃないか?賞金首も一度狙われれば、職に就くのだって難しいだろうし」

 

 

 

 

「賞金首になるほどの人が、普通の職につこうとするものなのでしょうか…偏見かもしれませんけど…うーん…」

 

 

 

 

まあ、偏見かもしれない

でもファリニスの意見に俺は大した否定もできなかった、なんとなく彼女の疑問があたっているような気がした。

 

 

 

 

「ルメタルシティに何かあるってことか・・?」

 

 

 

 

「かもしれません、そしてなにより」

 

 

 

 

ファリニスはカバンからゴソゴソとひとつの瓶を取り出す、それはカフェの中で見せてくれた思念集合体のかけらだった。

手のひらに垂直に置いて、俺の目線に合わせて瓶を静止させる。

 

 

…!

 

 

よく見ると、微弱ながらも小刻みに揺れていた。

瓶自体に振動が伝わって小さいながらもなにかに反応するように、小さく激しく

 

 

 

 

「思念集合体が…ファリニス、まさか」

 

 

 

 

「おそらくは、いえ…ほぼ間違いなく」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「思念集合体ってなに?」

 

 

 

 

 

 

「「!!」」

 

 

 

 

 

話に夢中になって気がつかなかった、ファリニスの背後にはいつの間にかルゼフィアがサイコソーダを3つ持って立っていた。

いつからいたのかわからない、つい思念集合体と会話に集中しすぎていた。

 

 

 

 

「なになに?あたしも混ぜてよ!」

 

 

 

 

にこやかな表情で話に加わろうとするルゼフィアはふたたびベンチの端に座って、持っていたサイコソーダのうちの二つをベンチの端において残りの一つの蓋を開ける。

プシュッという爽快な音を聞かないうちに、ルゼフィアは一気にジュースをあおった。

 

 

 

 

 

「…話しても大丈夫か?」

 

 

 

 

「ホントはあまり他言できない内容なんですけど…この場合は、仕方ないですね」

 

 

 

 

「おっ?なになに秘密の内容ってやつ?あたしそーいうの大好きだぞ!」

 

 

 

 

そう言ってルゼフィアが残り2本のサイコソーダを俺たちに渡す、そして自分のサイコソーダを勢いよく飲み干してから、俺たち二人と向き合う。

ファリニスがコホンと言ってから、思念集合体の話やファリニスの祖父の話を始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーん…なるほどねぇ」

 

 

 

 

クルクルと右手で飲み干したサイコソーダの空瓶を上に投げてはキャッチ、また上に投げてはキャッチとしながらファリニスの話にうんうんと頷く。

空瓶を一度も落とすことなくそれを続ける彼女の器用さが伺える…それともう一つ、俺とファリニスは思っていたことがあった。

 

 

 

「意外に、驚いたりしないんだな…」

 

 

 

 

思念というものが頭の中にある、乖離した思念が地に帰らずに集まって化物になる。

非現実的な話だ、俺の時は実物が目の前で暴れてたり死にかけたりしたこともあってまだ信憑性もあったけど、彼女は驚きも動揺もせずにジャグリングするかのように瓶を回し続けている。

 

 

 

 

「いやぁ、事実は小説よりも奇なりなんて言葉があるくらいだしさぁ、あたしの知らないことが世の中にはたくさんあるってわかってるからね」

 

 

 

 

そこまで言い切って、ルゼフィアは回していた空瓶を受け止めてブンとそれを投げる。

投げた先にあったゴミ箱に綺麗な放物線を描いてから、空瓶は見事にゴミ箱の中へと吸い込まれるように入った。

 

 

 

「あたしのわかんないことをあたしが考えたって、答えなんて出るわけないからね!その思念なんちゃらの話は信じるよ!」

 

 

 

 

「ありがとうございます、ルゼフィア……さん」

 

 

 

 

呼び捨てで言いかけたファリニスがあわてて付け加えるが、ルゼフィアがチッチッと指を左右に振っている。

 

 

 

 

「あたしらは一宿一飯を共にするから、呼び捨てでいいよ!代わりにあたしもあんたたちのこと呼び捨て、それでいい?」

 

 

 

 

カフェの時とは違い、彼女はもう怒っていない。

普通の状態の彼女は気さくで明るい、柔軟な考えを持った立派な女性だった。

 

 

 

 

「俺は全然構わないよ、ファリニスもそれでいいか?」

 

 

 

 

「…はい!よろしくお願いします、ルゼフィア」

 

 

 

 

敬語も抜きだよー、というルゼフィアの言葉が公園内に木霊した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って、一宿一飯?」

 

 

 

 

 

「ああ、二人共あたしの家に招待しようかなと思ってね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…えぇっ!?」

 

 

 

 

 

 

俺自身の驚く声も、公園内に木霊した。

 

 

 

 

 

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