ホワイト・エンゲージ   作:リファ

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第21話

思念集合体の話をひとしきりルゼフィアに話したあと、ルゼフィアの部屋に招くという言葉に過敏に反応してしまい大声を上げてしまった。

 

 

 

 

「ど、どうしたんですか?急に大声出して…」

 

 

 

 

「へ、あ、いや別に…」

 

 

 

 

よくわからない、という顔でファリニスは俺の顔を覗き込む…あわてて俺は平静さを取り繕った。

しかしルゼフィアを見てみると…顎に手を当ててなにやらニヤついている。

 

 

 

 

「ははーん…ウブだねぇ」

 

 

 

「う、うるせっ!」

 

 

 

 

ルゼフィアにはわかるのか、まあ…俺は昔から女性の友達とか、ましてや彼女なんてのもいたことがない。

つまり当然ながら女性の部屋に招かれるということが人生初ということだ、ついこの出来事に俺は過剰な反応をしてしまった。

 

 

 

 

「???」

 

 

 

 

ファリニスには悟られてないだけましか…と、俺は彼女の未だに理解してないような顔を見て安心するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おつかれさま、ここがあたしの家だよ」

 

 

 

 

公園から20分ほど歩いた先に、ルゼフィアの住む場所があった。

駅周りの喧騒した雰囲気の場所から離れており周りは静か、彼女の住む住宅街の中は駅とはうってかわって閑静なものだった。

 

そしてなによりも、俺たちが驚いたのは…

 

 

 

 

 

「で…でかいな」

 

 

 

 

「ですね…」

 

 

 

 

 

 

 

ファリニスを背中に背負ったまま、俺は頭を上にあげてその建物を確認した。

住宅街には2,3階建てのマンションやら一軒家などが多く並んでいるその中に似つかわしくないような高い建物…いちいちベランダの数を数えていくのが億劫になるほどに、高くそびえ立っていた。

俺たちが圧倒されている間にルゼフィアがサラサラっと入口の方でポストを確認している、そして鍵をちらつかせながら俺たちの方に戻ってくる。

 

 

 

 

「おまたせ~、じゃああたしについてきて!」

 

 

 

 

と言ってルゼフィアはさっさと入口にまた戻っていく、俺はファリニスを背負ったまま彼女のあとをついていく。

二重に設置されていた自動ドアを通り、その奥にある既に待機していたエレベーターへと入る。

エレベーターはすぐに動き出し、ゆったりとした動きで上へと上がって行き…15秒もしないうちに、目的の階へとついたようだ。

 

 

 

 

「わぁ…高いですね」

 

 

 

 

エレベーターを抜けた先に、高所からならではの景色が広がっている…ルメタルシティの住宅街を一望でき、その爽快感を俺とファリニスが味わった。

夕方になって赤く染まった空を見てから、俺は再びルゼフィアの後を付いていく。

 

 

 

 

「ルゼフィアって…お金持ち?」

 

 

 

 

 

「ぐっふっふ…ドヤ?」

 

 

 

 

 

「腹立つなその顔」

 

 

 

 

そんなことを言いつつ、ルゼフィアは自分の部屋の前で鍵を差し込んでくるりと回す。

カチャンと耳心地のいい音と共に鍵が外れ、ドアノブを回すと扉はスーっと静かにひらく。

 

 

 

 

 

「さ、汚いけど入って入って!」

 

 

 

 

 

「お、お邪魔するぞ」

 

 

 

 

若干緊張する、20分間歩いているうちに幾分か落ち着いたけどやはりいざ入るときには緊張する。

 

 

 

 

(汚いって言ってたな、なら俺の部屋とそんなに変わらん変わらん)

 

 

 

 

 

と頭の中で俺の部屋を連想しつつ…通路を静かに進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「汚…いのか?」

 

 

 

 

 

部屋についた第一声だった、驚きながらも俺は着いてからすぐにファリニスを近くのベッドに座らせる。

ベッドがあるからここは寝室か…と、すこし辺りを見渡してみる、クローゼットやらタンスやらテレビやら、家具も家電も綺麗なものが置いてある、机にすこし資料のようなものがあるだけで、ほかに目につくところはない。

 

 

 

どこが汚いんだ?と、俺は頭の中で疑問に思った。

 

 

 

 

 

「あちゃぁ…まいったな」

 

 

 

 

 

そんな声がすぐに聞こえてきた、今俺たちがいる寝室とはろうかを挟んで向かい側にあるこれまた広い部屋からだ。

ファリニスを部屋に残して、俺はルゼフィアのした声の部屋に行ってみることにした。

 

 

 

 

 

「なんかあったのか?」

 

 

 

 

 

「いや、本気で冷蔵庫の中が空っぽだったの忘れててさ~…今日の晩御飯、買ってこないと…」

 

 

 

 

開けている冷蔵庫を見てみると、少しの食材を残して確かに空っぽだった。

ふぅ~、と長いため息をついてからルゼフィアは台所そばのテーブルに置いてあった財布を手に取ると、その中身から紙幣を2,3枚取り出して俺に渡した。

 

 

 

 

「お、くれるのか?」

 

 

 

 

「なわけないでしょ、近くにコンビニあるからそこで弁当買ってきて」

 

 

 

 

「あぁね…ん?ルゼフィア、たしかお前カフェで」

 

 

 

 

 

 

(今晩のメシ代にも困ってんだよ!)

 

 

 

 

 

 

「って感じのこと言ってなかったか?」

 

 

 

 

 

 

自動販売機の時も、今この時も財布の中身は重々に入っているように見える、というか中身がチラっと見えた。

とてもじゃないがお金に困ってるようには見えないほどの量なのが、ひと目でもわかった。

 

 

 

 

「ああ、あれ?ちょっとした脅し文句みたいなもんだよ!さっすがにそんなに無計画な女じゃないって!」

 

 

 

 

と言って、財布をポンと机の上の戻したルゼフィアはグイグイと俺の体を押して玄関まで強引に連れて行く。

押されながらも預かった紙幣を落とさないよう気をつけながら、俺は玄関まで押されていった。

 

 

 

 

「セグレトさん、どこかにいくんですか?」

 

 

 

 

ひょこひょこと玄関の方まで顔を出しに来たファリニスが、俺とルゼフィアを交互に見てから聞いた。

手に握っている紙幣をチラつかせながらちょっとそこのコンビニまで、と答えると頷いて納得した。

 

 

 

 

「セグレトさんでも、わかる場所にあるの?」

 

 

 

 

「そうそう、家から出たらもう看板が見えるからね~」

 

 

 

 

「そういや来る途中に見かけた気がするな…わかった、何買ってきたらいい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして俺は二人の注文を聞いて、さっさとコンビニへと向かってった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンビニまでの距離はルゼフィアの言うとおりさほど遠くはなかった、部屋に来る途中で看板を見かけたこともあって俺はまっすぐコンビニの方へと歩いていき、店内でいろいろと商品を見て回る。

ルゼフィアとファリニスに頼まれた弁当を買って、俺も菓子パンを一つ二つとカゴの中に入れて会計をする。

 

 

 

 

「1340円になります」

 

 

 

 

 

「じゃあ・・・2000円からで」

 

 

 

 

ポケットから裸のままの紙幣を二枚取り出して、レジのカウンターにスッと置く。

淀みなく店員が会計をして、お釣りを受け取ったあとに袋の中に入った商品を持って俺はコンビニから出た。

 

 

 

ピチャ…

 

 

 

 

 

「…ん?」

 

 

 

 

 

なにかが、聞こえた

 

 

 

 

それは水の音のような、でもただの水ではないような…すこし粘ついたような音だ。

一瞬だったので空耳か?と俺は少しだけ辺りを見渡してみる。

 

 

 

 

ピチャ…

 

 

 

 

 

「!」

 

 

 

 

 

今度ははっきり聞こえた、周りに走る車の音が少しだけ止んでいて方向もわかる。

ルゼフィアの部屋に行った時よりも時間が経っていてあたりが次第に暗くなっているが、音を頼りにその方向に目をやる。

 

 

 

 

 

「なにもない…か?」

 

 

 

 

 

ピチャ…

 

 

いや確かに聞こえる…雨音とはまた違う、不吉な予感のする音だ。

心臓がバクバクと音を体中に響かせる…その感覚は、いつかの思念集合体と戦った時のような命の危険を味わった時の感覚と少し似ている。

 

 

 

 

 

(ファリニスを呼ぶか?いや、でも…)

 

 

 

 

脳裏に足を怪我したファリニスの姿が思い出される、玄関口では軽く歩けるようにはなっていたみたいだが…それでも心配だ。

わざわざ怪我をしている彼女を強引に連れて来ても、いいのだろうか?

 

 

 

 

(音の正体を突き止めよう…それから、呼ぶか決めればいい)

 

 

 

 

 

 

 

俺は音のする方へと、歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃のルゼフィアの部屋

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、なにそれ?」

 

 

 

 

 

「レポートだよ、私が思念集合体との遭遇して起こった出来事も細かくこれに書いておきたくて…」

 

 

 

 

 

「ふぅん…マメだなぁ、あたしそういうの苦手でさ」

 

 

 

 

 

カリカリカリカリ…(レポートを書く音)

 

 

 

 

 

 

 

「思ったんだけど、ファリニスってなんでセグレトには敬語なの?」

 

 

 

 

 

「えっ?どうしてって…」

 

 

 

 

 

「あたしには敬語使わずに喋れてるし、セグレトだってファリニスには敬語使わないし、ファリニスも普通にため口で話しちゃえば?」

 

 

 

 

 

 

「えぇっと…なんていうか、その…」

 

 

 

 

もじもじとするファリニス

 

 

 

 

 

「男の人の前だと、なんだか緊張しちゃって…」

 

 

 

 

 

 

 

(このこ可愛いな…)

 

 

 

 

ひとり、モジモジするファリニスを見て心の中でニマニマしてるルゼフィアだった。

 

 

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