ファリニスが思念集合体を攻撃した…しかし、その痕跡は2つ。
(一目で分かる…これは2つとも、紛れもなく私が<ねんりき>で作った痕跡………
じゃあ、この思念集合体は……わたしがセグレトさんの部屋で攻撃した…!?)
迂闊にも、ファリニスは見落としていた
相手の形状が変化したこと…不意打ちされたことにより、冷静さを欠いていたのだ。
相手は並みの手段で倒せる相手ではない、それが思念集合体である。
(となると、残りの1体は…っ!?)
その時、ファリニスは体に違和感を感じる
場所は腹部…じんわりと温かく、そして冷たい…静かにその感触が伝わってきた。
そこに目を落とすだけで、すぐにその違和感の正体は判明する
鋭い刃物のようなものに、腹部を貫かれていた
「っ…く…?!」
背後には既にもう一体の思念集合体がいた、先程倒した別の思念集合体と同じく腕を刃物に変えている
今度は、全く避けられず…ファリニスの腹部からは先程とは比べ物にならないほどに出血している。
ゆっくりと刃物のような腕を引き抜き、ファリニスは力なくその場にたおれこんだ。
(う……くぁ…っ…これは、まずい…)
腹部を刺されたこと、そして既に彼女の体は疲弊しきっており…この不意打ちがとどめになってしまった。
急所は外れたものの…彼女には立ち上がっていられる余裕さえもなかったのだ。
「…くぅっ…!」
最後の力を振り絞り、先程まで溜めていた<ねんりき>発動させようと出来るだけのスピードで振り向き左腕を目の前に突き上げた。
しかし、痛みのせいか…うまく集中できずに…集まった光は霧散するように消えていく。
(そんな…っ)
目の前には、小雨で少し流れたもののまだ血のついた刃物のような腕が見える。
それをゆっくりと頭上に掲げて、力の入る様子が見えた。
(とどめ…を、さすつもり…ね)
それを回避することはできない、ファリニスの傷は大きく屈んだ状態のままでいるために、その上半身を起こして移動するまでの力は残されていなかった。
(…おじいちゃん、やっぱり…私)
「誰かを助けるなんて…できない、のかな…」
「うおおおおおあああっ!!!」
それは何者かの怒声だった
思念集合体でもなく、ファリニスでもなく
第三者…いや、ここにきて一番関係のある人物といってもいいだろう
「せ…セグレトさん!?」
ガアンッと、セグレトは両手でしっかりと握ったままの鉄パイプを思念集合体に向かって思いきり横凪ぎで振った。
座ったままのファリニスには当たらず、刃物のような腕を振り上げていた思念集合体には、クリーンヒット。
しかし、思念集合体の体は鉄パイプの攻撃を受けなかった。
いや、正確には受けた…ドロッとした形状になってセグレトの鉄パイプを受けきっていたのだ。
「うそだろっ!?」
「なんで…なんで来たんですかっ!あなたが……狙われているのは、セグレトさんなんですよ!?」
セグレトは鉄パイプを離さない
思念集合体がセグレトを見る、そして振り上げていた刃物のような腕を、今度はセグレトの上で振り上げはじめる
(ヤツはもう、手段を選ばないつもりだな…俺を殺すつもりで…)
「上等だあっ!!」
セグレトは鉄パイプをさらに強く握りしめ、思念集合体の腕ごと思いきり薙ぎ払った