聖姫絶唱セイントシンフォギア   作:BREAKERZ

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祝! 100話来ました!

これも応援してくれる皆様のお陰です! 心より感謝します!
これからも小宇宙<コスモ>を燃やして頑張ります! 『聖姫絶唱セイントシンフォギア』をよろしくお願いいたします!!

そして遂に、満を持してあの人が登場!


不器用な愛情

ーアスプロスsideー

 

「さて、キャロル。少しここを離れる」

 

「ガリィとミカの修復状態を見に行くのか?」

 

「ああ。それに他にも見つかった『面白い玩具』をチフォージュ・シャトーに置いてくる。ついでに、“余興”の為にもな・・・・」

 

アスプロスは一端『アナザーディメンション』でワープして、『深淵の竜宮』を離れた。

 

 

 

ー翼sideー

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」

 

マリアは歌を口ずさみながら翼と共にファラへと立ち向かう。

 

「はぁあっ!」

 

マリアは短剣を投げ、翼は斬りかかり、同時に攻撃を仕掛けるが、ファラは後方へと飛んで回避。

武器のソードブレイカーを振るって緑色の風の斬撃をファラは翼とマリアに放ち、二人はなんとかそれを回避した。

着地したマリアは即座に、籠手から短剣のアームドギアを引き抜いて、アームドギアの刀身を蛇腹剣のように変化させ、ファラにむかって振るった。

 

『EMPRESS†REBELLION』

 

が、それをファラはソードブレイカーから再び風の斬撃を放ってマリアのアームドギアをかき消し、風はマリアを大きく吹き飛ばす。

 

「なっ、うあああああああああっっ!!??」

 

「マリア! くっ、この身は剣! 切り拓くまで!!」

 

翼は剣のアームドギアを構えながらファラへと向かって剣を構えて駈ける。

 

「その身が剣で あるのなら、哲学が陵辱しましょう」

 

しかし、ファラの放った緑の突風によって翼は吹き飛ばされそうになり、なんとか踏み止まるものの、徐々に彼女の纏うギアが破損して行く。

 

「砕かれていく・・・・! 剣と鍛えたこの身も・・・・歌声も・・・・!)」

 

そして翼は、ファラの放った突風により吹き飛ばされてしまった。

 

「うわぁああああっ!!」

 

ボロボロになって倒れ込む翼。

 

「・・・・いつまで経っても世話の焼ける」

 

二人の戦いを見守っていたエルシドは、ため息混じりに、風鳴邸へと向かった。

 

 

 

ーレグルスsideー

 

その頃、S.O.N.G.本部の司令室では、監視カメラで『深淵の竜宮』の内部にいる。キャロルとレイアを発見し、キャロルの手に持っている、ノート帳のような物がズームアップされた。

 

「あれが・・・・」

 

「『ヤントラ・サルヴァスパ』です・・・・!」

 

「クリスちゃん達が現着!」

 

「アスプロスも戻ってきたか・・・・」

 

モニターに、シンフォギアを纏ったクリスと調と切歌、私服姿のデジェルとカルディアとマニゴルドが到着した。

キャロルの隣の空間に孔を作って、中からアスプロスも戻ってきた様子が映し出された。

 

 

ーキャロルsideー

 

「やっと見つけたぜ!」

 

「御用デス!」

 

「逃がさない・・・・!」

 

銃と大鎌とヨーヨーのアームドギアを構えるクリスと切歌と調。しかし、キャロルはフンと鼻で笑い、アルカ・ノイズの結晶体をばら蒔いて、アルカ・ノイズを召喚した。

 

「雑魚が雁首揃えてゾロゾロと沸いて出てきたな。まあ目的の物はあらかた手に入ったが、レイア」

 

「派手に始める」

 

レイアはコインを弾丸のように指で弾き飛ばし、クリス達は一斉に散開して回避した。

 

「イヤッホォオーーーーーーーーーーーーーーッ!!」

 

「フゥ」

 

ガンッ!!!

 

一瞬でアスプロスに突撃してきたカルディアの蹴りを、アスプロスは片腕で防いだ。

 

「よおアスプロス! 相手をしてもらうぜ!!」

 

「カルディアか。良いだろう。格の違いを教えてやる!」

 

デジェルとマニゴルドが見据え、カルディアとアスプロスが交戦を開始した。

 

「(さて、ガリィとミカが来るまでの良い暇潰しになるかな?)」

 

キャロルはほくそ笑みながら、『深淵の竜宮』の通路を駆けていった。

 

 

 

ー翼sideー

 

「くっ・・・・! 夢に破れ、それでも縋った誇りで戦ってみたものの・・・・くぅっ・・・・! どこまで無力なのだ、私は・・・・!!」

 

「翼っ!」

 

「翼さんっ!」 

 

マリアと緒川が叫び声を上げたその時!

 

「翼っ!!」

 

「あっ・・・・お父様・・・・? エルシド! なぜ連れてきた!?」 

 

そこへ翼の元へと八紘と八紘を連れてきたエルシドが現れ。

 

「避難させようと思ったが、どうしても翼のところに行くって聞かなくてな。なんでも、言いたいことがあるそうだ。・・・・八紘殿」

 

エルシドの言葉に八紘は無言で頷くと彼は翼に向かって言葉をかける。

 

「歌え翼!!」

 

「っ・・・・。ですが私では・・・・『風鳴の道具』にも、『剣』にも・・・・!」

 

それに対し、翼は顔を俯かせ、顔を歪める。しかし、そんな翼に八紘は・・・・。

 

「ならなくて良い!!」

 

「お父様・・・・?」

 

「夢を見続けることを恐れるな!!」

 

「・・・・私の、夢・・・・?」 

 

その八紘の言葉に、翼は静かに呟き、マリアが叫ぶ。

 

「そうだ! 翼の部屋、10年間そのままにしていたのではない。散らかっていても塵1つ無かった。お前との思い出を無くさないよう、そのまま保たれていたのがあの部屋だ! 娘を疎んだ父親がすることではない! いい加減に気づけ馬鹿娘!!」

 

マリアは翼に向かってそう叫びながら、翼の元へと駆け寄る。エルシドは顔だけを彼女に向け、静かに頷き呟く。

 

「『風鳴の道具』、『風鳴の剣』、それはお前が勝手に言っているだけだ。お前の父上である八紘殿は・・・・お前が道具になることを望んでなどいなかった。むしろ、『業深い風鳴の宿命』からお前を遠ざける為に、わざと冷たくしていたのだ。」

 

エルシドの言葉を聞き、翼は目尻に涙を浮かべる。 

 

「まさか、お父様は私が夢をわずかでも追いかけられるよう、風鳴の家より遠ざけてきた・・・・?」

 

翼は目を向けると、八紘は照れ臭そうにソッポを向いた。

 

「八紘殿も、お前と同じか、お前以上に不器用だからな。こんなやり方でしか、お前を守る事ができなかったのだ」

 

「それが、お父様の望みならば・・・。私はもう一度夢を見てもいいのですか・・・・?」

 

涙を流しながら八紘にそう問いかける翼。

 

「(コクン)」

 

「翼。やり抜き貫こうとする意思と覚悟があれば、夢は叶う事ができる」

 

それに八紘は静かに頷き、エルシドの言葉に、翼は再び立ち上がる。

 

「やり抜き貫こうとする思いと覚悟があれば・・・・夢は、叶う・・・・」

 

エルシドに言われた言葉を、翼は自分の内に響かせるように口にすると、エルシドと八紘は静かに頷き、翼は胸部に装着されたクリスタルに手をかける。

 

「ならば聴いてくださいお父様! エルシド!! イグナイトモジュール、抜剣!!」

 

翼はクリスタルを取り外して空中へと投げるとそれが杭のような形となり、それは彼女の胸部に突き刺さり、彼女の纏う天羽々斬は黒く染まり「イグナイトモジュール 天羽々斬」となった。

 

「ハッ!」

 

長刀へと変化したアームドギアを構える翼。

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」

 

「味見させていただきます」

 

歌を口ずさみながら翼はファラへと向かって駈け出し、翼はジャンプして長刀のアームドギアをファラへと振りか下ろすが、ファラはそれを真上に飛んで回避し、翼のアームドギアは塀を少し破壊した。

それを追いかけるように翼も跳び、アームドギアを横一閃に振るうが、ファラはそれすら回避して、地面に着地した。

 

『蒼ノ一閃』 

 

その瞬間、翼は大型化させたアームドギアを振るい、巨大な青いエネルギー刃を放つが、ファラはそれをソードブレイカーで薙ぎ払う。

そのまま翼は急降下してさらにアームドギアを大きくし、ファラに向かって振るったが、ファラはソードブレイカーでそれを防ぐ。

 

 

ークリスsideー

 

「つあああああああああっ!!」

 

クリスの腰アーマーから放たれた小型ミサイルがキャロルに迫るが、キャロルは適当な隔壁の前で障壁を張って小型ミサイルをずらす。

 

「オゥラッ!!」

 

カルディアが鞭のようにしならせながら振るう拳をアスプロスを片手で苦も無くいなしていく。

 

「ほぉ、少しは腕を上げたかカルディア? いい拳だ」

 

「へっ! だったら俺の拳に夢中にさせてやるぜっ!!」

 

「だが俺には届かんっ!」

 

アスプロスの拳から放たれる拳圧にカルディアは吹き飛ぶ。

 

「ふっ!」

 

大鎌のアームドギアをレイアに向けて振るう切歌だが、レイアはそれを回避してコインで反撃する。

 

「っ!」

 

調は、デジェルとマニゴルドと共にアルカ・ノイズを相手取り、『非常Σ式 禁月輪』でアルカ・ノイズを次々と切り裂き、さらにキャロルに向かって『α式 百輪廻』を放つが、障壁を防がれる。

 

「(ドクン)っ!」

 

ここでキャロルの肉体の拒絶反応が起こり、障壁が消えてしまった一瞬、手に持っていた『ヤントラ・サルヴァスパ』が鋸で弾かれ、切られてしまった。

 

「おいあれ壊して良かったのか?」

 

「オラ知らね」

 

アスプロスに弾き飛ばされたカルディアがマニゴルドの近くに着地し、『ヤントラ・サルヴァスパ』を破壊した事に難色を示し、マニゴルドも同意した。

 

「それよりもマニゴルド、カルディア」

 

「分かってるよ・・・・」

 

「ウザイのが来るぜ・・・・」

 

デジェルとマニゴルドとカルディアは、ウンザリしたような、辟易としたような渋面を作った。

 

「『ヤントラ・サルヴァスパ』が!? くぅっ!」

 

そしてキャロルはまた障壁を張るが、その大きさは手のひらサイズだった。

 

「その隙は見逃さねぇーーー!!」

 

そしてそれを見逃さないと、ガトリングガンと腰部ミサイル射出器の展開に背部に大型ミサイルを左右に各2基、計4基を連装する射出器を形成し、ミサイルが放たれた。

 

『MEGA DETH QUARTET』

 

クリスが放ち、それをレイアがコインを撃ち込んでミサイルをなんとか防ごうとする。

 

「地味に窮地!!」

 

それでも、全てのミサイルを相殺することはできず、撃ち漏らしたミサイルがキャロルへと迫る。

 

「マスター!!」

 

が、キャロルの後方にキャロルの等身大の孔が現れ、そこから、ニュッと伸びた手がキャロルの首根っこを掴み、キャロルの身体は孔の中へ入った。

 

「アスプロスかっ!?」

 

デジェルがアスプロスを睨むと、いつの間にかアスプロスがキャロルをお姫様抱っこしていた。

 

「アスプロス!」

 

キャロルはアスプロスの顔を見ると首に両手の回して抱きついた。

そして、クリスの放ったミサイルは、キャロルがいた地点の隔壁に命中した。

 

 

 

ー翼sideー

 

クリス達がキャロル達と交戦をしているのと時を同じくして。

翼は跳び上がって空中から大量の青いエネルギー剣を具現化し、上空から落下させ広範囲を攻撃した。

 

『千ノ落涙』

 

しかし、新たに取り出したソードブレイカーでファラは風を放ち、翼の技はその風にかき消されてしまう。

 

「幾ら出力を増したところで、その存在が剣である以上、私には毛ほどの傷も負わせることは叶わない・・・・。戦う相手を戻したのが仇になりましたね。ずっと山羊座の黄金聖闘士に任せておけば私を倒すことができたかもしれないのに」

 

そう言い放ちながらファラはソードブレイカーをもう一本を取り出して、ソードブレイカーを突き出しながら素早い動きで翼に突撃した。

 

【夢を見続けることを恐れるな!!】

 

【やり抜き貫こうとする意思と覚悟があれば、夢は叶う】

 

翼は八紘とエルシドの言葉を思い出し、その顔には一切の惑いが無くなっていた。

 

「それはどうかな? 今の私は・・・・剣にあらず!!」

 

翼は逆立ちと同時に横回転し、展開した脚部のブレードで敵を切り裂く技を繰り出した!

 

『逆羅刹』

 

ファラの突進を弾き飛ばし、ファラのソードブレイカーの刃を完全に破壊し、それにファラは驚愕の表情を浮かべる。

 

「あり得ない!? 哲学の牙がなぜ!!?」

 

「貴様はこれを剣と呼ぶのか・・・・? ・・・・否!! これは、夢に向かって羽ばたく翼!!」

 

両手に携えた刀のアームドギアと脚部のブレードから炎を発しながら、彼女は空中へと飛び立つ。

 

「貴様の哲学に! 翼は折れぬと心得よおおおおおおおおおおおおっっ!!」

 

『羅刹 零ノ型』

 

空中で高速回転しながら相手に突進し、敵を焼き斬る必殺剣をファラに炸裂させた!

 

「あははははは!!!」

 

ソードブレイカーごと笑うファラの身体は真っ二つに斬り裂かれようとしたその瞬間ーーーーーー。

 

ガキンッ!!

 

ファラの身体が氷の障壁によって守られ、翼の刃が氷に阻まれた。

 

「なにっ!!?」

 

「氷の、壁・・・・!」

 

「まさか・・・・」

 

「ようやく来ましたか、ガリィ」

 

翼と緒川が驚き、マリアがその氷の壁を見て察し、ファラは大きく飛び、風鳴邸の屋根に着地すると、その隣には。

 

「お久しぶり♪ ハズレ装者共!」

 

青を基調としたゴスロリ風の容姿をし、両手には亀裂まみれの青い籠手、『水のエレメントアームズ』を装備し、バレエのような挙動で立っているのは、以前マリアに倒される瞬間、アスプロスによって回収された、ガリィ・トゥーマーンが口を大きくニヤケさせていた。

 

「修復は完了したのかしら?」

 

「もちろん。ただ、ミカちゃんは身体が真っ二つになっていたからまだ少し時間がかかるけど、ね!」

 

ガリィは『水のエレメントアームズ』を翼達に向けると、巨大な雹を生み出し、次々と翼とマリア、八紘と緒川とエルシドに向けて放った!

 

「『乱斬』!!」

 

空かさずエルシドが散弾式の斬撃を放ち、雹を破壊した!

 

「ん~。さすがにこんなボロボロの『エレメントアームズ』じゃ、この程度か」

 

レグルスとの戦いで破損した『水のエレメントアームズ』をため息混じりに見て、ガリィは懐から、緑色のプレートアーマー、『風のエレメントアームズ』をファラに渡した。

 

「ありがとうガリィ」

 

「壊れる寸前の籠手に、最後のお仕事をさせてあげましょうか」

 

「ふふふ。そうね」

 

ガリィが『水のエレメントアームズ』を、ファラが『風のエレメントアームズ』をそれぞれ起動させると、風鳴邸内の気温が一気に下がった。

 

「こ、これは・・・・!」

 

「気温が下がっていっている・・・・!」

 

「あれが『エレメントアームズ』と呼ばれる、オートスコアラー専用の装備か」

 

マリアと翼が気温の低下に驚き、八紘は『エレメントアーム』を睨む。

ハア、と翼が息を吐くと、吐いた息が凍り付いた。

 

「なっ!? 吐いた吐息が一瞬で凍てついただと!?」

 

「っ!? 全員! 俺の後ろにまわれ!!」

 

エルシドは八紘を後ろにし、翼とマリアと緒川も、エルシドの後ろに回り、エルシドは小宇宙<コスモ>を高める。

ガリィとファラは笑みを浮かべる。

 

「氷と風と合わせ技・・・・」

 

「名付けるならそう・・・・」

 

「「『氷河期<アイスエイジ>』!!!」」

 

ビュゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!

 

エルシドは壁となり、氷雪の竜巻が、風鳴邸を飲み込んだ!

 

 

ークリスsideー

 

「あ、アイツは・・・・!」

 

「やはりここにいたか・・・・」

 

クリスの放ったミサイルを片手で受け止める人物が現れ、粘着質の高い気持ち悪い声を上げる。

 

「エヘヘヘヘヘ・・・・。久方ぶりの聖遺物! この味は甘くとろけて癖になるぅ~~!」

 

「ハァ・・・・アイツかよ・・・・」

 

「ホントにしつこい・・・・」 

 

「なっ、嘘・・・・」

 

「嘘、デスよ・・・・」

 

クリスはその人物を見て驚きの表情を浮かべ、クリス以上に切歌と調が驚きの声を上げるが、すぐに気持ちを切り替えて、その人物を睨み。

デジェルとカルディアとマニゴルドは五月蝿いヤツが来たと言わんばかりにめんどくさそうな様子だった。

その人物は自分の無機質なまでの白髪を勢いよくかき上げーーー。

 

「嘘なものか! 僕こそが真実の人ぉっ!! ドクタァァァァァァァァァァァァァ・・・・・・・・ウェブベバァァァァァァァァァッ!!!!???」

 

「え???」

 

耳障りに叫び声を上げようとした人物の顔面に、拳大の大きさの隔壁の欠片と、調のヨーヨーのアームドギアが深くめり込んで、後ろにおもいっきり倒れ、クリスは間の抜けた表情を浮かべた。

 

「ア、アガ・・・・! アガゲガ・・・・!」

 

予想外だった痛みに、惨めに這いつくばる人物に向かって、欠片を投げたフォームの切歌が、大鎌のアームドギアを持ち直して構え、刃を三枚刃にして地面に少し擦らせると火花が散らせ、調はヨーヨーのアームドギアを下の地面に叩きつけて手元に戻し、地面に叩きつけては手元に戻しを繰り返しながら、地面を陥没させる。

 

「お、お前ら・・・・?!」

 

後輩二人の行動に唖然となったクリスは、自分の前に出る後輩二人の横顔を見て、息を飲む。

調の目が、切歌の目が、冷徹な光を放ち、しかし口元は優しく笑みを浮かべ、その笑みを見たクリスは、背中にゾッとした冷や汗が流れる。

なぜなら、今の調と切歌が、カルディアとマニゴルドの姿が重なって見えたからだ。

 

「お久しぶり・・・・」

 

「こんなところで再会するとは思わなかったデスよ・・・・」

 

二人は無様に這いつくばるその人物を冷酷に睨んでその名を呼ぶ。

 

「「ドクターウェルッ!!!!」」

 

その人物は、『フロンティア事変』の主犯。

マリアと調と切歌の育ての親とも言えるナスターシャ教授を宇宙に追放した悪党。

聖遺物を玩具にし利用して、無辜の命を無駄に犠牲にした快楽殺人者。

『冥闘士アタバク』の冥衣を利用していたが、結局アタバクの掌で踊らされ黄金聖闘士に惨敗した敗残者。

『英雄を気取る外道』。

『悪神の掌で踊り狂った道化』。

『妄想に酔いしれた愚物』。

 

「こ、このガキ共ォオオオオオオッッ!!」

 

その名も、『ジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクス』。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー響sideー

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

夜の病室で、響は携帯の着信履歴に表示された父・洸の名前を静かに見つめていた。

 

『まったく、自分を捨てた父親を完全に拒絶できず、さりとて歩み寄る事すらできない、どこまでも半端者だな』

 

「っ!?」

 

突然病室に響いた声に響は、ビクッ、となるが、響の病室に、一瞬光りが輝くと、響の病室に、暗がりに隠れているが、二人の人物が立っていた。

その内の1人が、暗がりからその姿を露にする。

 

「あ、あなたは・・・・アスミタさん・・・・!?」

 

「・・・・・・・」

 

『乙女座<ヴァルゴ>のアスミタ』が、盲目の目元をわずかに不愉快に歪める。

 

「久しいなガングニール。相も変わらず分かりやすい無駄な空元気を振り撒いて、周りを心配させているようだな?」

 

「うぅっ・・・・・・・・・・・」

 

響は正直アスミタが苦手だった。アスミタは現れる度に自分の失敗を手酷く糾弾し、その度に響は自分のやっている事が間違いだ、と、いつも言われているみたいで、アスミタに苦手意識があったのだ。

 

「なんだそのいじけた目は? いつもよりも情けないな」

 

「っ・・・・・・・・・・・」

 

「フン・・・・・」

 

「えっ?」

 

アスミタから目をそらす響に、アスミタは何も言わずに後ろに下がった。響は以外だったのか、首を傾げる。

 

「説教でもされると思ったか? 自惚れるな。今の君には“説教する価値”すらない」

 

「っ・・・・・・・・・・・」

 

響はアスミタの言葉に下唇を噛む。

 

「君の相手は、彼がする」

 

アスミタの近くにいた人物も、暗がりからその姿を見せた。響はその人物を見ると、驚愕した。

 

「あ、貴方はっ!!?」

 

その人物は、響に優しい微笑みを浮かべて、唇を開いた。

 

「はじめまして、立花響君。俺はシジフォス。レグルスの叔父、射手座の黄金聖闘士、『射手座<サジタリアス>のシジフォス』だ」

 

今、悩み迷う撃槍の前に、『至高の英雄』が現れた!

 

 




100話に来て、ようやく登場できました。ドクターかと思ったら残念! 射手座<サジタリアス>のシジフォスでした!

次回、調と切歌がドクターの相手をします。原作ではドクターを庇いますが、この世界のきりしらコンビは、保父さん二人から仕込まれましたから、結構容赦無くしようと思います。
つか、ドクターって・・・・キャロルサイドでも、居場所無いですね。

戦力:アルカ・ノイズは勿論。オートスコアラーは全員健在(さらにパワーアップを予定)。最強クラスの双子座がいます。

頭脳:アスプロスの前では雑魚。だって神すら欺く男ですから。

ネフェリム使っても、シンフォギアはともかく聖闘士達にはまるで通用しない。

あれ? 必要無いですね。

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