ー数十分前・アスプロスsideー
『深淵の竜宮』で目当ての物を回収したアスプロスは、一度『アナザーディメンション』でアジトである、『チフォージュ・シャトー』に移動すると、ちょうど棺の形をした修復装置の中から出てきたガリィに話しかける。
「ガリィ、ちょうど良い時に修復を終えたな」
「ええ、アスプロス様のおかげですよ」
マリアとの交戦から、しばらく修理中だったガリィは、スカートの端をつまんで小さく笑みを浮かべ、優雅にお辞儀しすると、まだ修復中のミカに目を向ける。
「あらら~、ミカちゃんはまだ修理中ですかぁ?」
「早く出して欲しいゾ!」
含み笑いをするガリィに対し、ミカは憮然としながら修復を催促する。
「まあそう吠えるなミカ。お前のボディの修復も間もなく終わる。・・・・が、その前に、やっておく事があるのでな」
アスプロスがそう言うと、『アナザーディメンション』で、『穴』を四つほど開けると、そこから、『無機質な青銅色をした動物のオブジェ』が四つほど下りてきた。
「ンフッ!」
「オオッ!」
それを見てガリィとミカは、待ってました! と言わんばかりの笑みを浮かべ、アスプロスは『深淵の竜宮』で見つけた代物と、響達がナスターシャ教授の遺体が乗ったシャトルを救出する際、破壊した山岳で見つけた代物を取り出した。
「『深淵の竜宮』で見つけた、『オリハルコン』。S.O.N.G.の装者達がシャトル救出の時に破壊した山岳から見つけた『銀星砂<スターダストサンド>』。これですべてが整った。・・・・さぁ完成だ!!」
アスプロスが、オブジェの上に錬成陣を展開させ、『オリハルコン』と『銀星砂<スターダストサンド>』を交互に錬成陣に通過させると、錬成陣から光の粒子がオブジェに降り注ぎ、四つのオブジェがそれぞれ、『赤』、『青』、『緑』、『黄』の光を放ったーーーーーー。
ー響sideー
響は目の前に突然現れた人物に、胸の内を明かした。
射手座<サジタリウス>のシジフォス。
黄金聖闘士の中心人物であり、レグルスの叔父。
前ガングニール装者天羽奏と恋仲であり、翼や弦十郎達S.O.N.G.メンバーからも厚い信頼を寄せられた人格者。
彼は乙女座<ヴァルゴ>のアスミタと共に現れ、響のベッドの近くに置かれたパイプ椅子に座ったシジフォスが、響に話しかけた。
「立花響くん。君はどうやら、何かを思い悩んでいるな? 良かったら、俺に話してくれないか。君の事を少しでも知りたいんだ」
「・・・・・・・・」
落ち着き、それでいて優しく、どこか安心感を与える力強さの言葉に、響はつらつらと話し出した。
自分と家族を捨て、すっかり落ちぶれた父の姿。今更家族に戻りたいと都合の良いことを話す父に対して、響は父を信じられなくなり、さらにレグルスとも険悪な関係になってしまった事。
レグルスに関しては、戦えなくなった自分の代わりに戦ってくれたマリアに対する態度が悪かったと、頭では理解しているが、なぜか心がレグルスに対して意地を張っていた。
響も、自分は父に『壊れてしまったモノは元には戻らない』という諦めの感情を抱いた事を告げる。
「そうか、自分の父上を・・・・」
シジフォスは、顔をわずかに伏せながら、響の話を真摯に聞き入れた。
「私、お父さんが信じられないんです・・・・家族を見捨たくせに、メチャクチャにしたくせに、何も悪気が無いお父さんの態度が、本当に許せないんです・・・・!」
「・・・・・・・・・・・・」
シジフォスは、無言のまま、響に頭を下げた。
「シジフォスさん?」
「すまなかった、立花響君・・・・」
「えっ?」
「3年前のライブ襲撃事件の詳細は、アスミタから聞いた。あの事件は了子、イヤ、破滅の巫女フィーネが引き起こした事件であり、君たち立花家の人達が世間からの迫害から守る事もせず、君たち家族をメチャクチャにしたのは、フィーネの正体に気づかず、君たちを守れなかった我々二課の怠慢でもあった。・・・・本当にすまない」
「そんな、シジフォスさんや師匠達も、了子さんも悪くありません! 悪いのは・・・・」
「君の父上にも、悪いところはない」
「っ・・・・!」
「イヤ、家族に手を上げて、家族を守ろうともせず逃げ出した事には確かに責任はある。しかし、彼もまた被害者の1人とも言える。何も悪い事をしていないにも関わらず、周りに迫害を受け、精神的に追い詰められていたのだ」
「でも、お父さんは見捨てたんです。お母さんを、おばあちゃんを、私を・・・・!」
父・洸もまた被害者。
本来憎まれるべきは、事件の発端である櫻井了子<フィーネ>と、何も知らないくせに立花家に迫害を行った無知な市民達。
しかし響は了子と市民を怨む事はせず、その感情を、家族の絆を壊した父・洸にその矛先を向けていた。
「確かに。それは事実だろう。だが、父上はやり直したいと、償いたいと思っているのではないかい?」
「・・・・・・・・“壊れてしまったモノは、元には戻りません”」
「ーーーーーー!」
俯いた響が、諦めの感情を吐露すると、シジフォスの後方にいたアスミタが、盲目の瞼を一瞬不快そうに歪め、全身から僅かに怒気が溢れそうになるが、シジフォスが片手を上げて制した。
「確かにそうかもしれない。一度壊れてしまったものを元に戻すのは容易な事ではない。だが、それで諦めて良いのかい?」
「えっ・・・・」
「聞いたところによると、君は最初の頃は、翼とは不仲であり、他の装者のみんなとは敵対していた。だが、君が彼女達の手を繋ぎ、“壊れていた彼女達の心を繋ぎ合わせた”のではないのか?」
「あ・・・・」
「私たち聖闘士は、家族なんて“最初からいないも同然”だった。だから君の苦しみを理解できないかもしれない。だが、壊れてしまったものを繋ぎ合わせる事ができるんだ。君が奏から受け継いだ“想い”ならば、それができる。“諦めてしまっては、誰かと繋がる事はできない”」
「でも・・・・でも・・・・!」
響は俯きながら、毛布を握っていた手をきつく締める。
“諦めてしまっては、誰かと繋がる事はできない”。
この言葉の意味は理解できる。今まで翼やクリス、マリアに切歌に調、黄金聖闘士のみんなや、弦十郎達S.O.N.G.の人達や学友のみんな、そして未来とレグルス。
みんなと繋がる事ができたのは、響自身が諦めなかったからだ。
だが、それでも、父・洸へのわだかまりを消すことはできなかった。
「・・・・立花響君。君は父上を許せないかい?」
「・・・・はい」
シジフォスの言葉に逡巡した響は、小さく頷いた。
「響君、君は本当に優しい少女だ、許せない事なんて無い筈だ。それはきっと、君が“許さないだけ”だ。“許したくないだけなのだ”。君は本当は、“父上を許そうとしている”」
「私が、“お父さんを許そうとしている”?」
「父親からの着信を拒否しないのも、その心情が無意識に出ているからではないかな?」
「・・・・・・・・・・・・」
シジフォスの指摘され、響は携帯に表示された、父・洸からの着信履歴に目をやった。
許せないと思っている。信じられないとも思っている。だが、心の何処かが、父・洸との繋がりを失いたくないとも思っている。
そのジレンマが、響が父・洸を完全に拒絶できない理由になっていた。
「響君、君が“本当に優しい子”で良かった」
「えっ・・・・?」
首を傾げる響の頭を、シジフォスがソッと優しく手を置き、優しく笑みを浮かべて語る。
「君はこれまで、奏から継いだ槍で多くの人達を助け、時に道を誤った装者達の手を繋ぐ架け橋になってくれた。奏のシンフォギアを受け継いだのが、君のような人で、本当に良かった」
「ーーー!」
「父上の事を許したくないのも分かる。だが、君ならばできる筈だ」
「私なら・・・・?」
「壊れた家族の絆を、君ならば繋げるができる筈だ。君が翼達と手を繋いだように」
「・・・・・」
頭を撫でるシジフォスの手の暖かさに、響は心地良さを感じていた。
ークリスsideー
「嘘だ、嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だぁ・・・・! 僕はまた悪い夢を見ているぅ・・・! また悪夢を見ているに決まっているぅぅ・・・・! 僕以外に、僕の作ったLiNKERより、優れたLiNKERを作れる人間なんていないんだぁ・・・・! こんなの現実じゃない、現実な訳がないんだぁぁぁぁ・・・・!!」
調と切歌とクリスは、『デジェル製のLiNKERの成分表』を見てから、両膝を付いて、無機質な白髪の頭を両手で抱えるように持って、蚊の鳴くような声で言葉をブツブツと呟きながら、現実逃避をするドクターウェルを、憐憫な気持ちで見ていた。
「ここまで来ると憐れデスね」
「でもドクターが作ったLiNKERよりも、デジェルさんの作ったLiNKERの方が優れているのは事実だから」
「デスな。もしも『デジェルさん特製LiNKER』が無かったら、アタシと調、アイツを庇わなければならなかったかもしれないデェス」
「考えただけでもゾッとするね」
切歌の言った“もしもの可能性”を想像して、切歌と調は、まるで素手で黒いGを掴んだ方がまだマシ、と言わんばかりに顔をしかめた。
「・・・・・・・・・・・・」
クリスは、最後に残った『生科学者としての自尊心』まで粉砕され、すっかり意気消沈となり、茫然自失となったウェルを取り敢えず無視して、聖闘士とキャロル一派の戦闘を見やった。
ーマニゴルドVSミカー
「キャハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」
「オゥラァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」
ミカが振り回す圧縮カーボンの攻撃を、紙一重で回避し、マニゴルドは拳でミカを攻撃するが、ミカもカーボンで防いで反撃し、マニゴルドは回避して反撃し、ミカも防いで反撃と、攻防を繰り広げていた。
ーデジェルVSレイラー
「っ!」
ババババババババババババババババ・・・・!
レイラがコインをデジェルに向けて乱射するが。
「・・・・」
ピキィィィィィィィィンっ!
しかし、デジェルが指を振ると、発射されたコインは全て氷に包まれ失速し地面に落ちた。
「私のコインが凍てついている。やはり貴方の凍技は派手で美しい。私の相手を派手にしてもらうよ」
「私はあまり派手なのは好きではない。君の趣味にこれ以上付き合うつもりはない」
さらにコインを弾き飛ばすレイアに、デジェルは冷静に凍技を駆使して相手取っていた。
ーカルディアVSアスプロス&キャロルー
「シャァッ!!」
「フン・・・・」
カルディアが、右手人差し指の長く伸ばした赤い爪を突き出して真紅の衝撃波を放つが、キャロルをお姫様抱っこで抱えているにも関わらず、軽やかな身のこなしで回避していた。
「カルディア。少しは腕を上げたようだが、変な所で甘いヤツだ。キャロルを気にして攻撃のキレが甘いぞ」
「言ってくれるじゃねえか!!」
カルディアがアスプロスに向けて衝撃波を放ち、アスプロスはそれを回避する。
ークリスsideー
「チッ。これじゃ援護も必要ねえな・・・・」
「まあマニゴルドもカルディアも、タイマン邪魔されるのを一番嫌がる性格デスからね」
「デジェルさんも大丈夫みたいだね」
装者組は援護の必要がない戦況を黙って見ていたが、ミカとレイアがアスプロスの元に集まった。
ーアスプロスsideー
「アスプロス。完成したのか?」
アスプロスの腕の中にいたキャロルが、ようやく身体の調子が戻ったのか、アスプロスから降りる。
「ああ、そろそろお披露目と行こう。・・・・ミカ、持ってきたか?」
「ヒヒヒヒヒヒヒヒ。バッチリダゾ!!」
ミカは口をニンマリと口角を上げると、懐から、『赤の結晶体』と、『黄色の結晶体』を取りだし、『黄色の結晶体』をレイアに投げ渡した。
「フッ。ようやく・・・・!」
レイアもまた、薄く笑みを浮かべる。
ーマリアsideー
時を同じく、雪にまみれた風鳴邸の庭園で、ガリィとファラと交戦している翼とマリア。
「ハァアアッ!!」
「クッ!」
「ヤァアアッ!!」
「チィッ!」
イグナイトを抜剣させたマリアと、まだ活動時間内の翼が、ガリィとファラを攻め立てた。
「フッ!」
ファラが風を巻き起こして雪煙を上げて二人の視界を遮り、後方に跳んで距離を空けた。
「流石に手強くなったわね」
「向こうだけパワーアップするのはズルいと思わないファラ?」
ガリィは懐から、『青い結晶体』と『緑の結晶体』を取りだし、『緑の結晶体』をファラに渡した。
「アラ、完成したのね」
「ウフフ。それじゃあ、あの装者達に見せてあげましょう」
「ぬ?」
「なんだ、あの結晶は?」
二人が持つ結晶体をエルシドとアルバフィカが訝しそうに睨む。
『深淵の竜宮』と風鳴邸にいるオートスコアラー達が結晶体を足元に叩きつけると結晶体が砕け、そこからそれぞれのパーソナルカラーの魔法陣が展開され、そこから、オブジェが現れた。
『赤いサーベルタイガー』の形をしたオブジェ。
『黄色いオオカミ』の形をしたオブジェ。
『青い鮫』の形をしたオブジェ。
『緑色の孔雀』の形をしたオブジェ。
そして、オートスコアラー達がオブジェに向かって叫ぶ!
「「「「さぁ、起動せよ! 我らが鎧、『自然闘衣<エレメントローブ>』!!!」」」」
4つのオブジェが分割されると、それぞれのパーツがオートスコアラー達の身体に装着された。
さながら聖闘士が纏う『完全聖遺物 星座の聖衣』のように!
ミカは縦ロールがおろされ、その身を赤い鎧を纏い、まるで獲物に飛びかかろうとする猛獣のようなポーズを取る。
レイアは黄色い鎧を纏い、首元に獣の毛髪のようなものが生え、遠吠えをするオオカミのようなポーズを取る。
ガリィは青い鎧を纏い、頭と腕と足にヒレのような刃を装備し、両手に鮫の手甲を付け、鮫の歯のようなギザギザが付いた両の手のひらを突き出す構えを取る。
レイアは緑色の鎧を纏い、尾てい部分に孔雀の羽のパーツを展開させ、大剣を持って、両手を翼を広げるような構えを取る。
ーエルフナインsideー
「エルフナイン、あれってまさか?」
レグルスの問いかけに、驚愕した様相のエルフナインがポツリと、呟いた。
「か、完成したんです・・・・エレメントアームズの完成形、オートスコアラー専用の鎧、『自然闘衣<エレメントローブ>』が・・・・!」
これからオリジナル展開させるので、執筆が遅れるかもしれませんが、何とか執筆していきます。