ー自然闘衣<エレメントローブ>ー
錬金術師・キャロル・マールス・ディーンハイムが自動人形・オートスコアラーの強化の為に設計した、オートスコアラー専用の戦闘アーマー。
しかし、キャロルの知識を持っても、その設計は出来てはいたが、それを形作る技術が無かった。
構図は完成しても、実証する術が無い。キャロルは『自然闘衣<エレメントローブ>』を“机上の空論”として、計画から除外しようと考えたが、それを実証する男が現れた。
それが、双子座<ジェミニ>のアスプロス。
伝説の神話の闘士、『アテナの聖闘士』の最高峰、『黄金聖闘士』の中でも、頂点に立つ教皇の候補となる程の戦闘力は勿論、知恵と知識と知謀を持つ聖闘士の叡智が、『自然闘衣<エレメントローブ>』の試作品、『自然界の武装<エレメントアームズ>』を作り、そこから『自然闘衣<エレメントローブ>』を完成させた。
そして今、シンフォギア装者の前に、新たな装備を得たオートスコアラー達が立ち塞がった。
ーレグルスsideー
「・・・・・・・・・・・・」
レグルスは本部の司令室から戦況を見ていたが。
「弦十郎、俺も出る」
「あぁ」
「っ! レグルスさん! ダメです!」
司令室を出ようとしたレグルスを、エルフナインが止めた。
「エルフナイン?」
エルフナインが友里のコンソールを操作して、本部周辺を解析した。
「・・・・やっぱり!」
「どういう事だエルフナインくん?」
「本部周辺の空間に異常が検知されました。今この本部は、別の空間に閉じ込められています!」
エルフナインがモニタに本部周辺の映像を映すと、本部周辺には、『深淵の竜宮』も海水もなく、まるで異次元の空間のような風景が広がっていた。
「ここはまさか、異次元空間か?」
「そうですレグルスさん。今この本部は異次元空間に閉じ込められた状態です。こんな事ができるのは・・・・」
「アスプロスだな? ヤツが『アナザーディメンション』で本部を閉じ込めたのか」
レグルスは、それぞれの戦況をただ見ている事しかできない現状に歯痒そうにしていた。
ー翼VSファラ・マリアVSガリィsideー
「新たな力を得たとしても! 我々は負けんっ!」
翼はまだ持続時間が残っている天羽々斬イグナイトの長刀を構えて、緑色に輝く『風の自然闘衣』を纏ったファラに斬り込む。が・・・・。
「・・・・・・・・」
ファラは微動だにせず、その場に立っていただけだった。
「ハァッ!」
翼のアームドギアが袈裟斬りにファラに振り下ろされる。
が・・・・。
ボニュン・・・・。
「なっ!?」
ファラの頭上に振り下ろした剣が、まるでビニールボールかクッションでも叩いたような感触に、翼は驚愕した。
「ふふふ・・・・」
ファラがほくそ笑むように声を上げると、腰から展開された尾羽のようなパーツが淡く光るとーーー。
ドンッ!
「うわッ!!?」
翼は“目に見えない塊”に押し飛ばされ、後方に吹き飛ぶ。
「翼っ!」
「余所見してる余裕ある?」
「くっ!」
翼の元へ向かおうとしたマリアの正面に、青く輝く『水の自然闘衣』を纏ったガリィが立ち塞がった。
「邪魔をするな!」
マリアが籠手から大量の短刀を出現させると、ガリィに向かって放つ!
「イヤーン☆ ガリィちゃんまたやられちゃーう☆」
おどけた態度のガリィだが、その口元はニンマリとした笑みを浮かべ。
ピキーーーン!
「なっ!?」
マリアは驚愕した。いましがたガリィに放った短刀が全て、“凍りついてしまったからだ”。
「しまった、ガリィの能力はっ!」
「そう、私ガリィとこのエレメントアームズ改め『水の自然闘衣<エレメントローブ>』の能力は『氷結』。空気中の水分があればどんな物も凍てつかせる。空気の中に存在するものは全て水分の中にいるようなもの。荒ぶる海ですら凍てつかせられるわっ! そしてっ!!」
ガリィが両手を大きく振ると、片手の爪から水が噴出し、マリアに向かって水鉄砲のように飛んできた。
「なっ?!」
咄嗟に回避したマリアは、地面に一直線の伸びた傷を追うと、さらにその先にある風鳴邸の庭に置かれた岩が真っ二つに切り裂かれたのを見て驚愕した。
「なんなの!? なぜただの水鉄砲が岩が切り裂くのっ!?」
「あ~らら? 知らないの? 圧縮された水流はダイヤモンドですら切り裂く事ができる『ウォータージェット切断』を引き起こすのよ♪」
「『ウォータージェット切断』・・・・!?」
「氷だけではない、水も氷を自在に操ることこそ、『水の自然闘衣』の真骨頂よっ!!」
ガリイが掌をバッと突き出すと、空気中の水分が集まり、一瞬でマリアの身の丈くらいの水玉になると、瞬間凍結し、巨大な氷塊となって、マリアに向けて発射した。
「こんな氷の塊なんかでっ!!」
マリアが短剣アームドギアで氷塊を真っ二つに切り裂くと、氷塊の中から水が溢れ出てきてマリアの身体を包んだ。
「わぷっ!?」
ピキーーーンっ!!
「(っっ!!?)」
水に包まれた瞬間、マリアの身体は一瞬で氷結し、氷に包まれた。
「フフフフフフフフフフフフっ!!」
ガリイは左手の鮫の手甲から氷のハンマーを造りだし、マリアが包まれた氷を砕こうと、大きく持ち上げた。
「こ・れ・で♪ お終いよっ!!」
「っっ!?」
凍りついたマリアは動けない身体を動かそうと足掻くが、身体はピクリとも動かず、無情にガリイのハンマーが振り下ろされた。
バカンッ!!
が、マリアの身体に叩きつけられる瞬間、ハンマーが砕け散った。
「チッ」
ガリイが砕かれたハンマーを一瞥すると、ハンマーを砕いたモノを睨む、雪まみれた地面に突き刺さる黒い薔薇だった。
「魚座<ピスケス>。貴方とはこのハズレを始末してからなんですけどぉ~?」
「・・・・・・・・」
ガリイは凍りついたマリアを守るように立つ魚座<ピスケス>のアルバフィカが黒薔薇、『ピラニアンローズ』で氷付けのマリアを攻撃した。
「っ!」
アルバフィカはマリアの身体を包んだ氷だけを破壊して、マリアを解放した。
「ア、アルバフィカ・・・・」
「マリア。コイツは私が相手をする」
「ま、待って、まだ私は・・・・!」
「イグナイトの制限時間が迫っている。それに、ヤツはすでに私に標的を変更した」
マリアはアルバフィカの視線を追うと、ガリイは右手の手甲から、氷で形成された大剣、イヤ、鋸を取りだし構え、それを見て、アルバフィカも黒薔薇を構えた。
同じ頃、ファラの攻撃?によって吹き飛んだ翼は空中で回転して着地すると、『風の自然闘衣<エレメントローブ>』を纏ったファラが向かい立ち、フラメンコのポーズをとっていた。
「くっ! なんだ? 今の攻撃は!?」
「ウフフフ・・・・」
ほくそ笑みを浮かべるファラに、再び翼は長刀のアームドギアを構える。
「もはや、貴女は私に近づく事すらできない」
「何っ! ぐあっ!?」
ファラに向かおうとした翼に、また“見えない攻撃”が襲いかかった。
「(まただ。また何も無いところから、何かの塊がぶつかってきた!? 一体これはっ!?)」
「ウフフフ・・・・!」
ファラが余裕綽々の笑みを浮かべると、翼の身体に、さらに塊がぶつかった衝撃が襲いかかる。
「ぐあっ! ぐっ! あぁっ?! かはっ!!」
破れかぶれに長刀を振るった翼は再び謎の衝撃により吹き飛ぶが、奇妙な感触を感じた。
衝撃が襲うよりも一瞬早く、長刀が“何か”に刃が当たった。
「(この感触・・・・まさか!)」
翼は『フロンティア事変』で、レグルスのある攻撃を思い出していた。
「まさか、“空気の塊”を飛ばしていたのかっ!?」
「アラ? 気づいてしまいましたの?」
ファラの背面に展開された孔雀の尾羽のようなパーツが淡く発光すると、ファラの周辺の空気が渦を巻いたように揺らめいていた。
「私の『風の自然闘衣<エレメントローブ>』は風だけでなく空気圧すらも操る能力。空気は生物が生きる世界では必要不可欠の要素。さらに空気は生物が生きるあらゆる場所で存在します。その空気を一瞬で圧縮し、飛ばす事で空気圧の塊を飛ばす事ができるんですの」
「風を操り、『カマイタチ現象』を引き起こす事できる『エレメントアームズ』の完成品なれば、空気圧を操ることも造作ないか・・・・! うあっ!!」
翼のイグナイトが解除された。
マリアよりも先に抜剣していた分、制限時間を早く迎えたからだ。
「イグナイトモジュールは解除された。これで終わりですわね?」
「くぅっ・・・・!」
『自然闘衣<エレメントローブ>』を纏った今のオートスコアラーを相手に、イグナイトモジュール無しで戦うのは圧倒的に不利。
翼はヨロヨロと立ち上がり、アームドギアの刀を構える。
「これでおしまい、ですわね!」
ファラは大剣を振り上げ、翼に向けて降ろした。
「!」
刀を横に構えて防ごうとするが、ファラの固有能力・『ソードブレイカー』の前では無意味。翼は刀が破壊されると、斬撃の衝撃に備える。がーーー。
ガキンッ!!
「く・・・・!」
翼とファラの間に入った人物の攻撃が、ファラの大剣を防いだ。
ファラはその人物を見ると、後ろに跳んで間合いを作った。
「山羊座<カプリコーン>」
そう、その人物は、ファラの『ソードブレイカー』が通じない手刀を持つ武人。山羊座<カプリコーン>のエルシドだった。
「エルシド・・・・!」
「翼、交代だ。ここからは俺が戦う」
「待ってくれ! まだ私はっ!」
「彼我戦力を見誤るな。イグナイトを解除された状態で戦える相手ではない事は、対峙したお前自身が理解しているだろう」
「っ・・・・!」
エルシドの言葉に翼は黙る。翼自身も分かっていた、イグナイト無しで戦える相手ではない事を。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
エルシドとファラは手刀と大剣を構えながらお互いを鋭く見据えーーー。
「「っっ!」」
ギンッ!!
一瞬で肉薄した二人の剣がぶつかった。
ーレイアVSデジェル・クリスsideー
「フッ!」
ババババババババババババババッ!!
「「っ!」」
黄色に輝く『土の自然闘衣<エレメントローブ>』を纏うレイアが宝石の弾丸を、まるで機関銃のように次々と連射し、デジェルとクリスはそれを回避すると、『深淵の竜宮』の床に綺羅びやかな宝石がめり込んだ。
「んのやろっ! 調子乗りやがってっ!! ♪~♪~♪~♪~♪!!」
クリスは歌を口ずさみながら、イチイバルの装備を展開して、ミサイルを撃ち込もうとしたがーーー。
「待てクリスっ!」
寸前でデジェルがクリスを止めた。
「何だよデジェル兄ぃ!」
「こんな海底施設でミサイルなんて爆撃の武器を使えば、施設諸とも我々も水没してしまうぞ!」
「っ!」
デジェルに言われて、クリスもはっ! となり、ミサイルを収めて、2丁拳銃のアームドギアの戻した。
「派手に撃ち抜く・・・・!」
レイアの放った宝石の弾丸の雨の中に、“黒光りする石”が混じっていた。
「うあっ!」
クリスの足に、“黒光りする石”が当たり、クリスのバランスを崩した。
「っ!」
レイアは崩れるクリスに向けて、宝石と黒い石を放った。
「っ!!?」
回避しようとしたクリスの足が動かなかった。
「クリス!?」
弾丸のクリスの間に入ったデジェルは、『ダイヤモンドダスト』を放って、弾丸の雨を凍てつかせ勢いが無くなった弾丸は床に落ちていった。
「クリス、どうしたんだ?」
「わ、分からない! 足が動けないんだよ!」
「何っ!?」
デジェルはレイアに『ダイヤモンドダスト』を放ち、レイアを後退させると、クリスの動かなくなった足に触れると、バチっ!と火花が散った。
「っ。これは、クリスの足に“磁力”が・・・・?!」
「磁力って、アタシの足が磁石になったってことかよっ! どうしてっ!?」
「ハッ。レイアの『土のエレメントアームズ』は、大地から生まれる鉱物を精製する事ができる・・・・まさかっ!?」
「派手にその通り」
離れた間合いのレイアが淡々と口を開いた。
「大地から生まれる鉱物は、派手な宝石だけではない。磁力を帯びた鉱物、“磁鉄鉱”を生み出す。先ほど私が放った宝石の弾丸に混じった“磁鉄鉱”が、イチイバルの装者の足に当たった」
「っ! まさかあの黒い石が・・・・!」
「そう。私の『土の自然闘衣<エレメントローブ>』から生み出された磁鉄鉱は、触れた相手に磁力を与える。そしてこの施設は鋼鉄でできている。今貴女の足は磁石となって、床に張り付いてしまったのだ」
「「なっ!?」」
「これで、派手に終わらせるっ!」
レイアは宝石と磁鉄鉱の弾丸を放ち、デジェルは氷に障壁を張って防いだ。
ーミカVSマニゴルド・カルディア・切歌・調sideー
「キャハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」
「どぅわっ!」
「うおっとっ!?」
「デデデ~スッ!!」
「キャっ・・・・!!」
赤く輝く『火の自然闘衣<エレメントローブ>』を纏ったミカは、全身から火炎弾を生み出し、マニゴルド達に放った。
マニゴルドとカルディアはギリギリ回避し、切歌と調もワタワタしながら回避していた。
「あっ!」
回避し損ねた切歌に火炎弾が迫る。
「チィッ!」
マニゴルドが切歌を庇って、背中を火炎弾がかすった。
「マニゴルドっ!?」
「大丈夫だ・・・・ん? 何だ背中が熱い・・・・んげっ!?」
マニゴルドの衣服の背中が火炎弾をかすって火が燃えていた。
「ワチチチチチチチチチチチチチチチチッ!!」
「わわわわわわわわわわわわわわわわわッ!!」
慌てて背中の火を消そうと腕を回して背中を叩くマニゴルドと同じく背中を叩いて火を消そうとする切歌。二人で叩いて火が鎮火すると、二人はホッとしたがーーー。
次の瞬間、マニゴルドと切歌の身体を炎の鞭が巻き付いた。
「なんだっ!?」
「デスっ?!」
「マニゴルド!」
「切ちゃん!」
マニゴルドと切歌に一瞬気がそれたカルディアと調の身体にも、炎の鞭が巻き付いた。
「しまった!」
「あぁっ!」
「タリホーーーーーーーッ!!」
ミカが腕を回すと、四人に巻き付いた鞭がうねり、四人を床や壁に叩きつけた。
「かはっ!」
「がぁっ!」
「あうっ!」
「ぐっ!」
叩きつけられた衝撃で四人が悲鳴を上げた。
「まだまだダゾっっ!!!」
ミカは炎の鞭を操り、マニゴルド達を床や壁に叩きつけまくった。
ーアスプロスsideー
「フム。『自然闘衣<エレメントローブ>』の性能は上々だな」
「くぅっ!」
アスプロスが『自然闘衣<エレメントローブ>』の性能に満足そうに頷くが、キャロルが苦痛の声を洩らし、苦しそうに胸を押さえた。
「キャロル・・・・ここまでか」
アスプロスは瞑目して、レイアとミカにテレパシーを送る。
レイアとミカは並ぶように立つと、アスプロスのテレパシーが届いた。
「フゥ、今回はここまでこようだ。ミカ、置き土産を置いておけ」
「ムゥ、少し物足りないけどナっ!!」
ミカはアルカ・ノイズの結晶を投げ捨てると、魔法陣が展開され、アルカ・ノイズが出現し、聖闘士と装者に襲いかかった。
『っ!!』
磁力で動けないクリス。床や壁に叩きつけられたダメージで動けない切歌と調に守りながら、聖闘士達が応戦した。
「ついでだゾ!!」
ミカは『火の自然闘衣<エレメントローブ>』で炎の壁を作り、アスプロスとキャロルの元に戻る。
「目的はそれなりに果たした。戻るぞ二人とも」
「了解」
「はいヨ!」
アスプロスは異空間の穴、『アナザーディメンション』を開いた
「待ってくださいっ!!!」
「「「「ん?」」」」
『アナザーディメンション』でこの場を去ろうとするアスプロスの足を誰かが掴んだ。
下を見るとそこには、床を這いつくばり、無機質な白髪がポロポロと抜け落ちて、髪の毛がほとんど無くなり、顔は皺まみれになり、頬は痩せこけ、一瞬誰だと思ってしまうほどに老け込んだドクターウェルが、ネフェリムを移植していない右手で足を掴んでいた。
「お願いします!! 僕を連れて行って下さいっ!!!」
掴んでいた手を離すと、ウェルは頭を床に何度も叩きつけて懇願した。日本で言うところの“土下座”である。
「何?」
「なぜ俺達がお前を連れていかねばならんのだ?」
「ぼ、僕はこのままではまた奴らに捕縛されます! 僕は本来こんな薄汚い物置小屋にいる存在ではありませんっ! 僕は! 『真の英雄』たるこの僕はっ!!」
すでに首の皮1枚で繋がっていた命は、脱走によって切れており、ここでまたS.O.N.G.に捕まれれば死罪は免れない。
しかしドクターウェルにとってはそんな事は粗末な事であった。ここで捕縛される事は“黄金聖闘士に敗北した事が決定する事”であった。
本人は絶対に認めないが、『フロンティア事変』で黄金聖闘士達に完全敗北し、そして自分にとって最後に残された『生科学者としての矜持』すらもあっさり上回られた。
ここで捕縛されれば今度こそ、“黄金聖闘士達に完全に完膚無く敗北したことを決定付けられる”事を意味する。
それはウェルにとって、終生の屈辱に値する事であった。
「ぼ、僕にはこのネフェリムの細胞を移植した腕がありますっ! あなた方のお役に立てますっ! どうかっ! どうかぁっ!!」
ウェルは床に何度も頭を叩きつけて懇願した。
「お願いいたしますっ! お願いいたしますっ!! 僕を連れ出してくださいっ! 僕はっ! 『真の英雄』である筈のこの僕はっ! こんな! こんなところで! 終わって良い筈が無いんですっ!!」
もはや『自尊心』も『存在意義』も『矜持』も、全て神話の闘士達に踏みにじられたウェルにとって、『黄金聖闘士抹殺』だけが、崩壊しかけている精神をギリギリで保たせているのだ。
「・・・・どうするアスプロス?」
正直、キャロルはこの男に戦略的にも知能的にも、まるで宛にしていない。
所詮冥闘士の掌で躍り狂っていただけの道化。
聖遺物を操作するネフェリムの細胞以外はなんの戦力にもならないと思っている。
レイアとミカは、ウェルにまるで興味が無いと言わんばかりに無感情に見下ろす。
「・・・・・・・・・・・・」
アスプロスは土下座するウェルを見下ろすとーーー。
「良いだろう。『ヤントラ・サルヴェスパ』の代用品くらいの役には立つだろう」
「っ!・・・・へへへヘヘヘヘ! はいっ! 僕のこのネフェリムの力ならば! きっとあなた方のお役に立てますよっ!!」
顔を上げたウェルはすり寄るようにアスプロスの足にすがり付いた。
アスプロスはすがり付くウェルを足を動かして引き剥がすと、“ウェルを指差す”。
「しかし、身の程知らずな真似をするなよ。器の程度を見誤ると、自分自身の身を滅ぼす事になるからな」
「ウエヘヘヘへ。もちろんですとも♪」
アスプロスがキャロルを再び抱き抱えると、ウェルに背を向ける。ウェルはアスプロスの背中に向かってダランと舌を伸ばす。
「(ヒヒヒヒヒヒヒ! こぉのロートル金メッキとお飾りの小娘めがっ! 今のうちにふん反り返っていればいいさっ! いずれこの『真の英雄』であるこの僕の威光に惨めを晒すのだからなっ!!)」
ウェルの本心は、キャロル一派に協力する気などさらさら無かった。
ウェルの目的は、黄金聖闘士と対等に渡り合える武装、『自然闘衣<エレメントローブ>』だった。
今度は自分専用の闘衣を作れば、今度こそあの『異分子』共を、『異物』共を排除できると考えていたからだ。
ウェルは炎の壁の向こうでアルカ・ノイズを掃討している黄金聖闘士達を見据えて睨む。
「(待っているが良い『金メッキのロートル』共っ! 今度こそ見せてやるっ! この世界の『真の英雄』っ! ドクターウェルの偉大さをなっ!!!)」
ウェルは歪みきった笑みを浮かべながら、『アナザーディメンション』を潜るアスプロス達の後を付いていった。
『自然闘衣<エレメントローブ>』の力はまだまだこんなものではありません。そしてドクターは原作と違って、かなり酷い最後を迎える予定です。