ー二課本部ー
マリア達のアジトに突入した日から2日が過ぎ、現在弦十郎と緒川は“斯波田賢仁 外務事務次官”と通信を行っていた。斯波田事務次官は通信越しで温蕎麦を啜っていた。
「では自らを“フィーネ”と名乗ったテロ組織は、米国政府に所属していた科学者達によって、構成されていると?」
「《正しくは、『米国連邦聖遺物研究機関“FIS”』の一部職員が、統率を離れ暴走した集団らしい》」
「“ソロモンの杖”と共に行方知れずとなり、そして再び現れたウェル博士も、“FIS”所属の研究者の一人」
「《コイツはあくまでも噂だが、“FIS”ってのは日本政府の情報開示以前より、存在しているとの事だ》」
「つまり、米国の通棒していた彼女が、フィーネが由来となる研究機関と言う訳ですか・・・?」
緒川の質問に事務次官は答える。
「《出自がそんなだからな、連中が組織に“フィーネ”の名を冠する道理もあるのかもしれん。(ズルズルズルズルと蕎麦を啜る)テロ組織には、似つかわしくないこれまでの行動も(モグモグモグモグごっくん!)存外、周到に仕組まれてるのかも知れないな》」
「・・・・・・」
「《所で、黄金の闘士達はどうした?久しぶりにあの堅物小僧<エルシド>の仏頂面でも拝んでやろうかと思ったのにな》」
斯波田事務次官は以前から聖闘士達とも顔見知りであり、特に仏頂面のエルシドを結構気にいっていた。事務次官の言葉に苦笑い浮かべる弦十郎と緒川。
「彼らは今、奏者達の学校で行われている“学祭の見学”に行ってます」
「保護者役でもあるデジェルさんは特に楽しみにしていましたから・・・」
「《“学祭の見学”?水瓶座の小僧と獅子座の坊主は兎も角、あの堅物小僧が良く了承したな?》」
「以前の翼さんのライブを見逃してしまいましたからね、翼さんがちゃんと学園生活を送れているかの調査も兼ねて」
「《なるほどな、だが“本当の狙い”は違うだろう弦十郎?》」
「・・・!」
事務次官の言葉に一瞬言葉を詰まらせる弦十郎は観念したかのように語る。
「彼に、レグルス君に“普通の生活”を知って欲しいと思ったからです・・・」
「レグルス君に、ですか・・・」
「レグルス君は五歳の頃まで父親である獅子座のイリアスと共に、自然の中で生活していた。だが、その父親は冥王軍の闘士に殺され、レグルス君は父の形見の獅子座の黄金聖衣と共に五年過ごしていた。その間黄金聖衣を狙う野盗、自分の命を狙う野性動物達との弱肉強食の戦いをし、“子供としての時間”を戦いの中で過ごした。シジフォスに連れられ聖域<サンクチュアリ>に行ってからも聖闘士になるべく修行の日々を送り、聖闘士となってからも“戦いの世界”で生きてきた。“少年としての青春”を犠牲してな・・・」
「そして、彼は冥王軍との聖戦で“仇”と戦いその命を散らせ、我々の世界に来てまた、“戦いの世界”にその身を置いている・・・」
「《だから、坊主に“普通の生活”を見せて、奏者達のような“当たり前の日常”に入れてやりたいと思って、学祭に行かせたと?》」
「自己満足と言うのは重々承知です。ですが、彼には、レグルス君には知って欲しいんです。“戦い以外の世界”もあると言う事を・・・!」
レグルスのような年若い少年が戦いの世界にいる。それは余りにも悲しい生き方。本来なら、響達のように学校に行って、レグルスの性格なら友達に囲まれ、友達と馬鹿やって、女の子と恋をして、色々な経験をして大人になっていく、そんなありふれた“日常”を知らないレグルスに弦十郎はやりきれないと言わんばかりに拳を握った・・・・・・。
ーリディアン音楽院ー
そしてその頃、件のレグルスとデジェルとエルシドはリディアンの屋台を見て回っていた。
「へ~、これが学祭か・・・結構賑やかだな!」
「クリスや立花君達のクラスに行く前に少し見て回るか」
「・・・・・・」
「どうしたエルシド?」
「嫌、何か視線を感じてな・・・」
少し辺りをキョロキョロするエルシド。
「気のせいじゃない?お!焼きそばがある!」
屋台に行ってそこの女子生徒と少し話をして焼きそばを貰って戻ってきたレグルス。
「レグルス、そろそろ行くぞ」
「おう、待ってくれよ!」
校舎の方に向かったレグルス達を見送った女子生徒達はキャアキャア言いながら集まり。
「ねえ、今のイケメンさん達って誰かな?!」
「凄い美形ばかりだったね!私茶髪の子が良いな~、同い年っぽいし、明るくて良い感じだし♪」
「私は緑の長髪のお兄さんかな、高貴な雰囲気漂うクールな知的お兄さまって感じ♪」
「私は黒髪のお兄さんかな?」
「えぇ~、ちょっと怖そうだよ」
「そこが良いんじゃない、軟派な男じゃなくてこれぞ硬派な侍って雰囲気が♪」
レグルスは、少年の純朴さと青年の精悍さが見事にマッチした陽系な明るい美少年。
デジェルは、高貴な雰囲気と知性と冷静さが漂う美男子。
エルシドは、武士然とした硬派な雰囲気漂う精悍な偉丈夫。
普段女子校故に、異性と接点の無い女子達の注目の的になるのは当然と言える(これに反応しない女子は恋愛に興味がないお子様か、男に興味がない変態だけである)。するとまた別の女子生徒がまた男性が来たと聞いて目を向けると。
“悪な雰囲気漂うちょっと火傷したい女子に好かれそうな青年”と“ワイルドな雰囲気漂う男性”がサングラスを掛け、眼鏡を掛けた“金髪と黒髪の女の子達”を連れてやって来た。
そしてその頃、立花響は物思いに耽っていた。レグルスに言われた言葉を思い出していた。
『例え否定されようが、俺はこの“信念”を貫き守り通す!』
「(“信念”はあるけど、私にはダメだ・・・レグルス君のように周りの声に捕らわれずに自分の“想い”を貫き守り通すことが出来ないよ・・・)」
どうしても“周りの声”に気を取られる、“周りの声”に心を乱される。そんな自分の“弱さ”が響の心に巣くっていた。
「ひ~びき♪」
「未来、どうしたの?」
すると未来が響に声をかけてきた。
「どうしたの?じゃないわよ、もうすぐ板場さん達のステージが始まる時間よ。レグルス君達ともさっき会ってね、ステージに向かったよ」
「うわっ!もうそんな時間だっけ!?」
未来は響の手を取り。
「行こ♪きっと楽しいよ♪」
「うん、ありがとう未来!」
一緒に走り出す響と未来をコッソリと眺めていた四人の男女が学祭に紛れていた。
ー講堂ー
リディアンの講堂では、『秋桜祭』と大きく書かれた看板があるステージでは、音楽院らしく『合唱コンクール』の『勝ち抜きステージ』が催され弓美と詩織と創世がそれぞれ派手なコスプレをしてやって来た。
詩織はマスクを付けて露出の多い紫色の猫耳バニーの格好をし、弓美はまるでテレビに出るヒーローのようなコスプレをし、創世はカマキリの怪人のようなコスプレを恥ずかしそうに着ていた。
「さーて!次なるは一年生トリオの挑戦者達!優勝すれば、生徒会権限の範疇で一つだけ望みが叶うのですが、彼女達は果たして何を望むのか!?」
司会者の女の子の声に続くように弓美がマイクを持って躍り出る。
「勿論!アニソン同好会の設立です!あたしの野望も伝説も!全てはそこから始まります!」
おおおぉぉぉぉぉぉ!
「ナイスですわ、これっぽっちもぶれてませんもの」
「ああぁ~なんかもうどうにでもなれ・・・!」
観客からの歓声に手を降って答える弓美に、ずれた称賛のコメントを言う詩織と、ほぼヤケクソ状態の創世がぼやく。
「アハハハハハハ、響の友達って面白い奴らだなぁ♪」
「この時代の少女達はバイタリティーに溢れているな・・・」
「これが祭りの魔力と言う物か・・・!」
「レグルス君、デジェルさん、エルシドさん」
二階席に座っていたレグルスの隣に響と未来がやって来て座る。
「おう響、招待ありがとう、楽しんでるよ♪」
「そっか、良かった~」
「まだこれからみたいだね」
「うん」
するとステージでは、コスプレした弓美達がアニソンを熱唱していた。
「「「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪!!!」」」
結構ノリノリに歌っていたがーーーーー
カーーーーーーーーン・・・・・・
判定の鐘は一回で虚しく響いた。
「えぇ!まだフルコーラス歌った無い・・・二番の歌詞が泣けるのにーーー!!なんでーーーーーー!!!」
アハハハハハハハハハ・・・・・・!
悔しがる弓美に会場は笑いに包まれた。崩れ落ちる弓美を詩織と創世が慰めていた。
「「アハハハハハハハハハ!」」
「ハハハ・・・」
「・・・・・・」
それを見ていたレグルスと響も笑い、デジェルとエルシドは苦笑いや呆れた笑みを浮かべていた。だが、未来は笑う響を見ていた。
「(やっぱり、響にはいつも笑っていて欲しい、だってそれが一番響らしいもの)」
未来は響の笑顔を微笑ましく見つめていた。
ー屋台コーナーー
そしてここは屋外の屋台コーナーでは、悪風な男マニゴルドとワイルドな男カルディア(二人ともサングラスを装着)と金髪の女の子切歌、黒髪の女の子調(二人とも眼鏡を装着)がたこ焼きを持って歩いていた。
「モグモグ、おーおー学生のたこ焼きも中々いけんな♪」
「確かにな、やっぱ女の子が作った料理ってのは美味いモンだぜ♪」
「楽しいデスな♪何を食べても美味しいデスよ♪」
「ジーーーーーーーーーーーー」
暢気に学祭を満喫している三人を調はジト目で睨んでいた。
「・・・何ですか調・・・?」
「あん・・・?」
「おっ・・・?」
切歌は気まずそうに調を向き、マニゴルドとカルディアま首を傾げた。そのまま一同は人気の無い所に移動する。
「私達の任務は、学祭を全力で満喫する事じゃないよ、切ちゃん。マニゴルドとカルディアもちゃんとして・・・!」
「うう、わかってるデス!これもまた捜査の一環なのデス!」
「捜査・・・?」
「人間誰しも、美味しいモノに引き寄せられるモノデス!学院内の『うまいもんMAP』を完成させる事が、捜査対象の絞り込みには有効なのデス!」
「・・・むーーーー!」
学祭のパンフレットの『うまいもんMAP』を広げてニッコリ笑顔で答える切歌に調はジト目のむくれ顔で睨みながら顔を近づける。
「まあまあ、そうむくれんなよ調。良く考えてみな、お前らみたいな中学生位のガキが学祭を満喫しないで彷徨いてんのは逆に目立つだろうがよ」
「こういう祭りでは、周りの雰囲気に溶け込むのが一番怪しくないやり方なんだよ。切歌の言うとおり一通り屋台で飯を喰って学祭を満喫してた方が目立たねぇよ」
「デスデス、その通りデス!」
「そんな事言って、本当はカルディア達も学祭を楽しみたいだけじゃないの・・・?」
切歌を弁護するカルディアとマニゴルドに、これまたジト目でツッコム調。
「「♪~♪~♪~♪~♪~♪」」
そっぽを向いて口笛を吹いて誤魔化そうとするマニゴルドとカルディア。
「・・・心配しないでも大丈夫です。この身に課せられた“使命”は1秒だって忘れてないデス!」
目を伏せがちに答えた切歌はキリッとした顔になり。ウェル博士からの指示(本当は博士の指示なんて超が付くほど従いたくないけど)を思い出す。
* * *
ー飛行艇内ー
「アジトを抑えられ、“ネフェリム”を成長させるに必要な“餌”である“聖遺物の欠片”もまた、二課の手に落ちてしまったのは事実ですが、本国の研究機関より持ち出したその数も残り僅か、遠からず補給しなくてはなりませんでした」
どこか他人事のようなウェル博士の態度にマリア達もマニゴルド達も不快な気分になる。
「分かっているのなら、“対策”もまた考えていると?」
「“対策”等と大袈裟に考えていませんよ。今時“聖遺物の欠片”なんて、その辺にゴロゴロ転がってますからね」
ウェル博士は調と切歌の胸元にペンダントのようにぶら下げた“赤い水晶”に目を向ける。
「まさか!このペンダントを食べさせるの?!」
「おいおい、んな事したらこっちの戦力ダウンだぞ」
驚く調と二人を庇うように、カルディアが調達の前に立った。
「とんでもない、こちらの貴重な戦力であるギアをみすみす失うわけにはいかないでしょう」
「だったら私は、奴等の持っているシンフォギアを・・・」
「それはダメデス!」
「!?」
「絶対にダメ・・・!マリアが力を使うたび、“フィーネの魂”がより強く目覚めてしまう・・・それはマリアの魂を“塗り潰してしまうこと”、そんなのは絶対にダメ・・・!」
「・・・!二人共・・・」
切歌と調の言葉にマリアは申し訳無さそうに黙る。
「だとしたらどうします?」
「あたし達がやるデス!マリアを守るのは、あたし達の“戦い”デス!」
決意を込めて調と切歌が立ち上がった。それを見てアルバフィカはーーーー。
「マニゴルド、カルディア」
「わーてるよ、勿論俺らも行くぜ・・・!」
「むこうの奏者共とやり合う事になんなら、デジェル達が邪魔しないように俺らがフォローする」
「「あーーーーー」」(グルングルン)
マニゴルドは切歌の、カルディアは調の頭に手を乗せてグルングルンと撫で回しながら言う。
「おやおや、“黄金の闘士”が出るとは、これは期待できそうですね・・・!」
いけしゃあしゃあとほざくウェル博士を不快に見たマリアは、アルバフィカにアイコンタクトを送る。
「(アルバフィカ・・・・・・)」
「(コクン・・・)」
悟られないようにアルバフィカはマリアに向けて頷く。
* * *
と威勢良く言って“任務”に出たのは良かったが・・・。目当ての奏者達が見つからず途方に暮れていた(先程見つけた響も途中で見失った)。
「とは言った物の、どうしたものかデス・・・」
「目当ての奏者はいねぇしなぁ・・・」
ヤンキー座りなるマニゴルドとカルディア、木に寄りかかる切歌、考え込む調。
しかし幸か不幸か、4人の近くを“風鳴翼”が通り過ぎた。
調は自分達に気付かず通り過ぎる翼を指差し。
「切ちゃん、マニゴルド、カルディア、鴨ネギ・・・!」
「あっ・・・!」
「嘘・・・!」
「何この偶然・・・!」
思わず翼に向かって走り出す調を三人で調を引っ張り隠れる。
「待て待て!この暴走娘!(ヒソヒソ)」
「慌てんなっての!(ヒソヒソ)」
「“作戦”も“心の準備”も出来てないのに、鴨もネギも無いデスよ!(ヒソヒソ)」
そして隠れながら翼を尾行する4バカカルテット。
「ん?」
「「「「っ!?」」」」
振り向いた翼に慌てて隠れる。
「・・・?」
首を傾げる翼を隠れ見ながら切歌が呟く。
「こっそりギアのペンダントだけ奪うなんて土台無理な話デス・・・(ヒソヒソ)」
「だったらいっそ力付くで・・・!(ヒソヒソ)」
「やめんか!こんなとこ<学院>で暴れたら後々メンドイ!(ヒソヒソ)」
「チャンスを待て!チャンスを!(ヒソヒソ)」
ギアのペンダントを握る調をマニゴルドとカルディアが抑える。
「・・・・・・」
不審な気配を感じる翼は後ろを警戒しながら歩き出すと目の前の教室から“雪音クリス”が飛び出してきた。
「「うわっ!」」
ぶつかり尻餅を付くクリス。
「いっつ~」
「またしても雪音か、何をそんなに慌てて・・・」
「追われてるんだ、さっきから“連中”の包囲が少しずつ狭められて・・・!」
「雪音も気付いていたか・・・!先刻より、こちらを監視してるような視線を私も感じていたところだ・・・!」
翼の言葉を柱の影から聞いていた4バカは・・・。
「気付かれていたデスか・・・!」
「嫌、違うみたいだぞ・・・」
「あれ見てみ・・・」
チョンチョンのカルディアが指差す方を見ると。三人の女子生徒が四人が隠れている柱を横切り走ってきた。
「見つけた、雪音さん!」
「「「「・・・?」」」」
「うわっ・・・」
「?」
げんなりするクリスと首を傾げる翼(と隠れている4バカ)。やって来た女子生徒達はクリスを取り囲み。
「お願い、登壇まで時間が無いの!」
「恋人のお兄さんも来てるし、ここは良いとこ見せてさ!」
「そうそう、惚れ直して貰おうよ!」
「嫌、だからあたしは・・・それに惚れ直して貰うって・・・・・・/////////」
「・・・?」
赤くなるクリスを見て翼は首を傾げた。
ーリディアン音楽院 講堂ー
「さて!次なる挑戦者の登場です!」
スポットライトを浴びた司会者が次の挑戦者を紹介した。
ワー!ワー!ピュ~♪ピュ~♪
ステージの脇にいた少女はクラスメートに背中を押され壇上に現れた。
「わっ!えっ!とっと!」
背中を押され爪付きそうになりながらちゃんと立った少女にスポットライトが当てられた。
「っ!?」
「えっ?!」
「何・・・!?」
デジェルは現れた少女に驚き、レグルスとエルシドも驚く。勿論響と未来も。
「響!あれって!?」
「うっそ~!」
エルシドの隣の席に翼が座った。
「雪音だ。私立リディアン音楽院、二回生の雪音クリスだ」
恥ずかしそうなるクリスに構わず音楽が奏でられる。
「/////////」
ザワザワザワザワ
音楽が鳴ってるのにいっこうに歌わないにザワザワと騒然になる。
「ク、クリスちゃん・・・」
「「・・・・・・」」
心配そうに見つめる響達。
「フム・・・デジェル、景気付けてやれ(ヒソヒソ)」
「ン?」
「デジェルの声なら届くと思うよ(ヒソヒソ)」
「・・・・・・」
エルシドとレグルスにほだされデジェルは立ち上がり。
「クリスっ!!!」
「っ!?(お、お兄ちゃん・・・?)」
「「「デ、デジェル(さん)・・・??」」」
講堂全体に響くデジェルの声にクリスは顔をあげる。響達も、普段沈着冷静で知性溢れる理性的なデジェルの突然の行動に面食らう。レグルスは静かに「カカカ」と笑っていたが。
するとデジェルのいる客席にスポットライトが当てられる(エルシドは翼に光が当たらないように影になる)。
ザワザワザワザワザワザワ・・・・・・。
スポットライトに当てられた緑色の長髪の“美麗な男性”に観客達は騒然となる。
だが、そんなのお構い無しにデジェルはまっすぐクリスを見つめていた。
「(見ているぞ、頑張れクリス・・・・!)」
「(お兄ちゃん・・・・・・)」
クリスもデジェルをまっすぐ見つめると不安な想いが段々薄れていった、ふと隣の幕に隠れているクラスメート達を見る。
「頑張って・・・!」
「ファイト・・・!」
「お兄さんに良いとこ見せるチャンスだよ・・・!」
クラスメート達からの声援で“勇気”が出たクリスはマイクを持って歌い出す。
「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」
クリスの歌声に会場の観客達も響達からも歓声が上がる。そして歌い続ける内に知らず知らず自然とクリスの顔は笑顔に染まっていた。
「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」
それは、“絆”と、一人ではない事を知った一人の少女の“感謝の歌”。クリスはリディアンに編入した思い出が浮かんだ。
『初めて入った教室』
『自分と友達になろうとしてくれたクラスメート』
『人見知り故に中々馴染めない自分』
『音楽の授業で歌う自分を見つめるクラスメート達』
『「友達は出来たのかい?」といつも自分を心配してくれる想い人』
それらの思い出がクリスの脳裏に甦る。
* * *
そして、先程の翼とクラスメート達との会話を思い出す。
「一体どうしたのだ?」
「『勝ち抜きステージ』で雪音さんに歌って欲しいんです!」
「だからなんであたしが・・・!」
「だって雪音さん、凄く楽しそうに歌ってたから!」
「え?・・・」
顔を染めるクリスに翼はフっと笑う。
* * *
歌い続けるクリスは響を、翼を、未来を、クラスメート達を、レグルスを、エルシドを、そして誰よりも自分の傍にいてくれる“心から愛する人”を思い浮かべ。
「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」
クリスの目線はデジェルの方に向いていた。
「・・・・・・」
デジェルは何も言わず、ただ“大切な人”の歌声を聴き逃さずに聞いていた。そして、それは観客席に潜んでいた切歌と調、マニゴルドとカルディアにも。
「・・・・・・/////////」
「・・・・・・/////////」
切歌と調はクリスの歌声に見惚れ、聞き惚れていた。
「(デジェルの野郎、“良い女”を見つけたな・・・)」
「(“セラフィナ様”よりも、“大切な人”が出来たようだな・・・)」
マニゴルドとカルディアは上の客席でクリスを見つめるデジェルに賞賛の気持ちを送った。
「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」
『雪音は“歌”、嫌いなのか・・・?』
『・・・あたしは・・・////////』
「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」
自分の“帰る場所”を見つけたクリスはその“想い”を全部歌に乗せて皆に伝えた。そして歌い終わると。
ワアアアアアアアァァァァァァァァァ!!!
観客から拍手喝采を受けながら、クリスは思う。
「(楽しいな・・・お兄ちゃん・・・あたし、こんなに楽しく歌を歌えるんだよ・・・!)」
クリスに感動し、拍手を送る響達とレグルス達、そして思わず拍手をする切歌と調、マニゴルドとカルディアも拍手を送った。
「(そっか・・・ここはきっと・・・あたしが、“居ても良いところ”なんだ・・・!そうでしょう?お兄ちゃん・・・)」
クリスはデジェルに目を向ける。デジェルは少し涙ぐみながらクリスを見つめ。
「(ああ、ここはクリス、君が“居て良い場所”、君の“居場所”だ・・・!)」
クリスへの拍手喝采は講堂を埋め尽くさんばかりに、いつまでも続いた。
そしてーーーー。
「『勝ち抜きステージ』、チャンピオン誕生!」
「//////////・・・?!」
スポットライトが当てられたクリスは照れ臭そうになる。
「さあ次なる挑戦者は!?飛び入りも大歓迎ですよ!!」
司会者の言葉に続くように観客席から一人の女の子が手を上げる。
「やるデス!」
スポットライトを当てられた少女達は立ち上がる、その隣にいる男性達はニヤリと笑みを浮かべる。
「っ!?アイツら・・・!」
クリスの目線の先に切歌と調が不敵な態度で宣言する。
「チャンピオンに・・・!」
「挑戦デス!」
再び邂逅した少女達の戦いが始まる。
「「(さっきまでイチイバル(クリス)の歌声に聞き惚れていた癖にようやるわ・・・)」」
マニゴルドとカルディアは心の中でツッコンだ。
何か「♪~♪~♪」しか書いていない気が・・・。