聖姫絶唱セイントシンフォギア   作:BREAKERZ

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その力、“シンフォギア”

 

響は自分と親友である『小日向未来』が住む女子寮に戻ると。疲れが一気に出たのかリビングで倒れた。顔を上げるとニュースで翼がイギリスの大手レコード会社から海外展開の打診があると聞かされた。

 

二段ベッドの上の段で未来と二人で添い寝する響。未来に今日起こった事を話そうとするが。

 

「あのね、未来・・・ううん、何でもない」

 

了子から秘匿にするように言われていた事を思いだし何でもないと言う響。それに未来は。

 

「私は何でもなくない。響の帰りが遅いから本当に心配したんだよ」

 

心からの言葉に響は申し訳無さとありがたさが混ざった笑顔になり未来を後ろから抱き締めながら思う。この日溜まりのような暖かい場所こそ『自分の帰ってくる場所』なんだと確信した。だが眠りに落ちる前に思った事があった。レグルスの事を。

 

「(レグルス君にはあるのかな?“帰りを待つ人”と“帰る場所”が?)」

 

そう考えながら響は眠りの世界に落ちていった。

 

響は知らない。彼には。レグルスには。“この世界”に己の“帰る場所”が無いことを。

 

 

ー翼sideー

 

風鳴翼はシャワーを浴びながら考えていた。響の事を考えていた。いや響ではない。響が纏った“ガングニール”とガングニールの以前の奏者であり己の親友で片翼と言っても過言ではない存在。“天羽奏”の事を。

 

『二人一緒なら何も怖くないな』

 

奏の言葉が嬉しかった。そしてそんな自分達の成長を見守っていた“シジフォス”とエルシドも翼には欠けが得ない存在だった。シジフォス達は極力戦いには参加しなかった。自分達が介入すれば翼達の成長の妨げになると考えたからだ。シジフォス達が介入する時は奏と翼のアイドルユニット『ツヴァイ・ウィング』のライブ中にノイズが現れた時だけ。他には奏や翼との訓練の時だけだった。奏と二人で強くなっていく事に翼は喜んでいた。厳しいエルシドと優しいシジフォスの訓練は正直キツかったが強くなっていく実感がそこにはあった。いつまでもこんな日々が続くと信じて疑わなかった翼は奏<片翼>とシジフォス<戦友>を『同時に』失った事のだ。

 

ビー!ビー!ビー!

 

突然携帯の着信音が聞こえた。

 

「・・・エルシドか」

 

余り携帯といったハイテクを使わないエルシドからの連絡に少し驚きながらでる。

 

「どうした?お前から連絡するなんて珍しいな。レグルスは?」

 

『既に布団の中で寝ている』

 

「そうか。大丈夫なのか?」

 

『大丈夫だ。“この世界”の事。シジフォスの事。弦十朗殿から聞かされた事に関してはある程度そうではないのかと考えていたらしいからな』

 

「・・・・・・エルシド。彼は。レグルスは“シジフォスの代わり”が務まるのか?」

 

固い声色で翼が聞く。だが。エルシドも固い声色で応じた。

 

『・・・翼。これだけは覚えておけ。レグルスはレグルスだ。“シジフォスの代わり”ではない。“代わり”等いないのだ』

 

「・・・・・・」

 

その言葉に翼は黙る。

 

『良いか翼。“迷い”や“盲信”を持つな。それらは全て“雑念”だ。“雑念”は“心”を覆う雲になり剣を鈍らせる』

 

「・・・解っている。“迷い”等持ってなどいない」

 

『なら良いがな。翼。さっき俺が言った言葉。“代わり等いない”の意味を良く考えておけ』

 

そう言ってエルシドは連絡を切った。

 

「・・・・・・解っている。“代わり等いない”。奏のガングニールは奏の“ギア”だ。彼女に奏の代わりなんて」

 

翼の心に暗い雲が覆い始めていた。

 

 

ーエルシドsideー

 

エルシドが住むのは築30年を経っているアパートだった。近隣の住民達からは「あのアパートだけ昭和の世界にいる」と揶揄される程のボロアパートだったがエルシドは。「ガチャガチャしたマンションよりもこのアパートの方が落ち着く」との事で机と布団しかない六畳半の部屋で予備の布団を敷きレグルスと隣り合わせで寝ようとしていた。

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

静寂。

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・レグルス。起きているか?」

 

ふとエルシドがレグルスに声をかける。

 

「あぁ」

 

それに応じるレグルス。だが。

 

「やはり驚いたか?」

 

「うんまあね。ある程度はそうじゃないかと思ってたんだけど。改めて聞かされるとさ」

 

響と一緒にいた時のような“能天気さ”がなくなっていた。

 

「なぁエルシド」

 

「・・・・・・」

 

「俺達、これで良いのかな?」

 

「何がだ?」

 

「“聖闘士”をやってて良いのかなってさ。だってこの世界には」

 

「俺は・・・・・・」

 

エルシドがレグルスの言葉を遮る。

 

「ここが何処であろうと。何であろうと。俺は“聖闘士”だ。己の“やるべき事”は解っているつもりだ」

 

「“やるべき事”?ソレって?」

 

「レグルス。今日もう寝ろ。明日は立花に“ギア”の事や“俺達”の事を説明しなければならないからな」

 

「・・・・・・うん」

 

レグルスは眠るように努力した。

 

「(レグルス。悩めばいい。迷えばいい。“ソレ”を超えた時、お前は今より強くなれる)」

 

エルシドはレグルスの成長を信じ眠りに付く。

 

 

そして翌日の放課後。響は親友の未来と友達のボーイッシュな感じの『安藤創世』とお嬢様風の『寺島詩織』と若干オタク気味の『板場弓美』と新しく出来たお店に行く誘いを断り教室に残っていた(普段から呼び出し・追試・補習の常習犯の響の居残りは珍しくないので怪しまれなかったが未来は寂しそうにしていた)。

 

「はぁ。私呪われてるかも・・・」

 

「ふ~ん。響って呪われてるんだ」

 

ふと声を掛けられる。

 

「うん。・・・・・・・・・って」

 

どっかで聞いた声に思わず横を見る響。そこには。

 

「よ!」

 

人壊っこい笑みを浮かべるレグルスがいた。

 

「えええええむぐぐぐぐぐ!!!!」

 

驚きの悲鳴を上げそうになった響の口を塞ぐレグルス。

 

「響静かにしなきゃ。騒ぎになったらどうすんだ?」(ひそひそ)

 

ひそひそ声で話すレグルスだが響は。

 

「モゴモゴモゴモゴ!モゴモゴモゴモゴモゴモゴ!」

 

「え?なんで俺が学校にいるのかって?いや~。学校って始めて見るからさ。つい」

 

てへっ失敗失敗♪て態度のレグルスに若干腹が立った。

 

「モゴモゴ!モゴモゴモゴモゴモゴモゴモゴモゴ!!」

 

「フムフム。この学校って女の子しかいない学校だから男の俺がいる方が騒ぎになるって?安心しろ。簡単に見つかる俺じゃないから」(グッ)

 

親指を立てるレグルス。

 

「モゴゴゴーーーーー!」

 

「そうじゃない!って?」

 

何で響の言ってる事が分かるのかはさて置いて。ちょうど二人が漫才している後ろにある教室のドアで翼が無言で立っていた。レグルスは響の口から手を離し。響は翼を見ていた。

 

「重要参考人として再度本部まで同行してもらいます」

 

翼は響と目を合わせる処か見向きもしなかった。そしてまたゴツい手錠を付けてフリーフォールのエレベーターに乗る響(笑)。

 

「な、なんでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「ヤッホォォォォォォォォォォォォォォ!!」

 

エレベーターに響の悲鳴とレグルスの雄叫びが木霊した。

 

 

ー2課本部ー

 

本部に付くと了子からメディカルチェックの結果発表を聞かされた。

 

「初体験の負荷は若干残っているものの♪体に異常はほぼ見られませんでした~♪」

 

壁に写されたバイタルの状態を見る響とレグルス。響は手錠を外された手を擦る。

 

「ほぼですか?」

 

「他に何か異常があったのか?」

 

「うん、そうね。貴女が聞きたいのはこんなことじゃないわよね」

 

「教えて下さい。あの“力”の事やレグルス君の事を」

 

弦十朗は翼に目を向けると翼は赤い宝石のネックレスを取り出す。

 

「“天羽々斬”。翼の持つ“第一号聖遺物”だ」

 

「“聖遺物”?」

 

「“天羽々斬”って。確か“日本神話”に出てくる剣の事だよな?」

 

弦十朗の言葉に響は?となり。レグルスは神話の伝承で聞かされた武具の事かと聞く。

 

「その通り。さすがに神話の武具については知ってるようね。そして“聖遺物”とは世界各地の伝承に伝わる現代では生成不可能な“異端技術”の結晶の事。多くは遺跡から発掘されるんだけど経年による破損が著しくってかつての力をそのまま秘めた物は本当に希少なの。レグルス君やエルシド君の纏う鎧がソレね」

 

響はテーブルの上に置かれた“獅子座”と“山羊座”が描かれたレリーフを見る。

 

「この“天羽々斬”も刃の欠片。極一部にすぎない」

 

了子は壁のモニターで分かりやすく説明する。

 

「欠片にほんの少し残った力を増幅して。解き放つ唯一の鍵が。“特定振幅の波動”なの」

 

「(つまり“天羽々斬”を聖衣とするとその“波動”は小宇宙みたいなものか)」

 

「“特定振幅の波動”?」

 

「つまりは『歌』。『歌』の力によって聖遺物は起動するのだ」

 

「「歌?」」

 

思わずオウム返しする二人。そして響は。

 

「そういえば。あの時も胸の奥から歌が浮かんできたんです」

 

「(だから響は戦いな最中に歌ってたのか)」

 

響の言葉に弦十朗は頷き。翼は眉間に皺を寄せ。エルシドはそっと翼に目を向けた。

 

「歌の力で活性化した聖遺物を一度エネルギーに還元し。鎧の形に再構成したのが翼ちゃんや響ちゃんの纏う『アンチ・ノイズ・プロテクター シンフォギア』なの」

 

「だからとて。どんな歌。誰の歌にも。聖遺物を起動させる力があるわけではない!」

 

不機嫌そうに翼は吐き捨てる。

 

弦十朗は背中を向けたまま。エルシドは目を閉じ。他の皆は翼の方を見た。弦十朗が立ち上がる。

 

「聖遺物を起動させ。シンフォギアを纏う歌を歌える僅かな人間を我々は“適合者”と呼んでいる。それが翼であり。君であるのだ」

 

「どうかしら?貴女の目覚めた力について少しは理解して貰えたかしら?質問はドシドシ受け付けるわよ♪」

 

「・・・あの」

 

「どうぞ!響ちゃん!」

 

「全然解りません・・・」

 

響の答えに「だろうね」や「だろうとも」と言う人達。

 

「いきなりは難しすぎちゃいましたね。だとしたら聖遺物からシンフォギアを作り出す唯一の技術。“櫻井理論”の提唱者がこの私である事だけは覚えておいて下さいネ♪」

 

さらりと自慢する『デキル女 櫻井了子』。

 

「はぁ、あ!そういえば。レグルス君やエルシドさんもノイズを倒せたって事は二人も“適合者”何ですか?」

 

響の質問に弦十朗達はエルシドとレグルスに目を向ける。エルシドが口を開く。

 

「いや。俺達は“適合者”ではない」

 

「エルシド君とレグルス君は云わば“イレギュラー”ってところね」

 

「え?“イレギュラー”?」

 

困惑する響にレグルスは話しかける。

 

「響。これから突拍子も無い事を言うけど。大丈夫か?」

 

「突拍子も無いって。“シンフォギア”の事も十分突拍子も無い話だから今更だと思うよ」

 

だろうねって顔になる大人組。翼は壁に寄りかかり。エルシドは響に少し近づく。

 

「ソレもそうだな。んじゃ話すとするか。俺達の纏う鎧は星座の鎧。聖なる衣。聖衣<クロス>だ」

 

「聖衣<クロス>?」

 

 

その鎧は闘士達を護るため女神が拵えた鎧。

 

 

「俺達はこれを纏い戦う。“ギリシャ神話”の“戦女神 アテナ”に仕える闘士」

 

 

遥か神話の戦士達。

 

 

「俺達は聖闘士だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なるべく原作沿いになるように書きます。
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